妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
11月2日
昨日は食べ物尽くしだったので今日は、と記念日をざっと見る。
『タイツの日』。
…これはお兄様の
(見えなければセーフ?)
ということで一組のちょっとセクシーなタイツを一つ。
一目惚れで買った、薔薇の刺繍の施された黒のタイツ。右の太腿のあたりから足首まで施された刺繍がとってもエレガント!…なのだけど透け感もあってとってもその、えっちくもあってですね。深雪ちゃんの白い肌にとっても映えるのですよ。
というわけでさっそく鏡の前でその刺繍を眺めているのだけれど…うん、ヒップがね、キュッと上がってとってもせくしぃ。
成長なさいましたね深雪様。
締め付けられた足の、太ももからふくらはぎにかけてのこの肉感よ…。タイツの引き延ばされる感じがたまらなくえっち。
語彙力?そんなもの一瞬で灰にされたよ。
(これをもっと魅せるならミニスカートかスリット入りのスカート、だけれど)
私としてはがっつり見るよりチラリと覗くのが好みなのでそうなるとスリット入りになるのだけど、果たしてお兄様の前でそれが許されるかと言うと…やめた方がいいよね。
ほら、家は落ち着くための場所だから。
だから自分だけ、ちょっとだけ楽しむとして――
「深雪、ちょっといいか」
「っ!少しお待ちくださいませ」
いそいそと準備をしていたら唐突にノック音が響き、続いてお兄様の声がかけられる。
まって!スカート穿いてない!!
目に入るのは先ほど悩んでいたミニスカートとスリット入りロングスカート、選択肢は一択しかなかった。
すぐさま身に着けて鏡の前で整えてから深呼吸。
何事も無かったようにスッと落ち着かせてから扉を開く。
いつもより薄く開いた扉。下半身はできるだけ扉の陰に隠して顔を覗かせる。
「お待たせしました。どうしましたか?」
しかし答えはすぐに返ってこず、じっと見つめられた。
時間は無かったもののちゃんと鏡もチェックしたし、この短い距離を歩いただけで乱れていない筈だけど、とバクバク音を立てる心臓を無視しながらなんでしょう?と首をかしげる。
さらりと流れる黒髪にチラリとお兄様の視線が逸れるもまたじぃ、と見つめられる。
(な、なに?もしや芋けんぴ付いて――るわけはないけど、何かが付いてる?でも鏡を見た時何も無かったはずだし、…お兄様の眼は特別だから、サイオンの乱れとか?…あれかな?興奮したのが異常値を出しちゃった的な?だとしたらめっちゃまずい!)
内心は大慌てでも、淑女教育が見に付いているおかげで微笑みは崩れていない。
そこに心当たりがないとばかりに困惑を滲ませる。
「あ、あの…」
「ああ、すまない。いつもより輝いて見えたからつい見惚れてしまった」
「え!…それは、えっと」
「何か良いことでもあったのかい?」
優しく微笑まれているのに窮地に追いやられている気分だ。
お兄様としてはそんなつもりはないだろう。ただいつもと違う様子が見えたのでどうしたのか、と気になって訪ねているだけに過ぎない筈だ。
だが、私としてはとってもやましいことをしていたので素直に応えられない。
内心汗をだらだらと流しながら、どう返答すべきか脳をフル回転させて考える。
「――今日11月2日はいい二人の日だということでしたので、何をしたらいいかと考えておりました」
…ってことにしました。
実際、今日は何の日?って調べた時に見つけて何をすればいいんだろう、と考えたのは事実だからね。嘘ではない。
でも今楽しんでいた理由は別なので誤魔化したことにはなるので、お兄様の笑みが心に痛い!
「いい二人の日、か。確かに何をしたらいいのかさっぱりわからないな」
この記念日、どうやらジュエリー会社が考案した日らしく、ペアの指輪を贈ろうって魂胆らしいのだけど、恋人だけでなく親子だったり友人だったり、とにかく二人であればその関係性を見つめ直してみませんか、というコンセプトとのこと。
これなら兄妹も当てはまるだろうけど、指輪をプレゼントは流石にないかなぁ、と思うわけで。
ペアで何かを分け合って、というのはちょっと憧れるけどね。
「お兄様は二人で分け合うとしたら何がいいですか?」
「…分け合う、か。与えるだけじゃだめなのか?」
…そういえば、お兄様と何かを分け合うということはしたことが無かった。
いつもどちらかが譲り合ったり、贈り合ったり。
「二人で一つのモノを分け合うというのもまた、違った喜びがあるものですよ。お兄様のおかげで決まりました」
「そうか、それは楽しみだね」
今日の夕食は二人で分け合って食べられるものを、と決めたところでお兄様が。
「ところで深雪」
「はい、なんでしょう?」
「なぜ扉から出てこないんだ?」
んー、気付いてしまいましたか、その事実に。
完全に流れたと思ったけど、お兄様気になっていた模様。
…どうしよう。このまま出てもいいものか…いや、スリットの隙間なく重なったままで見えなければ問題はないはずだ。
「新しい服の試着をしていたので、お見せするのが恥ずかしく…」
「深雪に似合わない服などないよ。俺にも見せてくれないか?」
…お兄様からの期待を向けられてしまっては断れるわけもないね。
では、とゆっくり扉を開いて少し身を捩り、スリットが見えない角度で不自然にならないように立つ。
何とか成功。巻きスカートに見えなくもない――のだけど、お兄様の視線が徐々に下りていき、最終的に足に向けられている。
「――深雪」
「はい」
「別に怒ってはいないから、そんなにかしこまらなくていい。よく、似合っているよ。秋らしい色合いでぐっと大人びて見える。綺麗だよ」
「あ、ありがとうございます…」
お兄様のストレートな誉め言葉に頬が熱くなると同時に、背筋がぞくぞくと震えるのはお兄様の目が狙った獲物を逃さないとばかりに鋭くなっているから。
「だけどこれは、少しまだ早いんじゃないかな」
これ、と言いながらすっと足元に傅くように膝を折り一本の指で軽く捲られたことで現れる、黒い薔薇。
「ほう。見事な薔薇が咲き誇っているね」
美しいよ、深雪。
と、掛けられた声は先ほど綺麗だよ、と褒めてくれた時とは違う低い声色で、全身を撫でられたような感覚に襲われ全身がぶるりと震えた。
「あ、の。これは…本日はタイツの日ということでしたので」
「それはまた…どのように制定されたのか気になるところではあるが。つまりこれは今日限定、ということか」
本日限定というより個人限定で楽しむ予定の品だった、とは今更口が裂けても言えない。
「すぐに着替えてまいります」
「いや、このままでいいんじゃないか。あと数時間しか見られない幻のバラなのだろう?」
捲っていた指がするっと薔薇を撫でる。
「!お兄様!薔薇にお触りは厳禁です!!」
「っと、すまない」
いや、薔薇を撫でるって言ってはいますけど実際足を撫でられているわけだから!危険!!
というかお兄様その反応、まさかの無意識です!?注意をすればすぐに手を引っ込めた。
だが動揺を見せたのは一瞬で、スッと無駄な動作なく立ち上がると肩にぽん、と手を掛けられて。
「あまりに魅力的過ぎて引き寄せられてしまったな。すまなかった」
「…花に吸い寄せられるだなんて、お兄様はいつから蝶々におなりに?」
「俺の場合は蝶なんて優雅なものでは無く働き蜂の方がお似合いだと思うが、深雪という美しい花にはたとえ兄であろうと抗えない、ということだな」
「もう、お兄様ったら」
あはは、うふふ、と会話を交わしつつ徐々に平常心と距離を取り戻す。
「ところでお兄様、ご用向きは何だったのです?」
「今度ツーリングに行く約束をしていただろう?まだ先だが、今の内から用意した方がいいと思って」
そう差し出されたのは端末で、そこにはライダースジャケットやスーツがずらり。
確かに、こういうのは早めに用意した方がいいね。
この時期だとこの辺か、と言いながらある程度絞り込んでもらい一着選んだ。
その時にはすでに先ほどまでの気まずさは忘れ、お兄様はそのまま一旦自室に。
私はキッチンへつい先ほど決めたばかりのメニューのレシピを脳裏に浮かべながら夕食を作りに行くことに。
そして――
「これは、すごいな」
「ふふ。ちょっと頑張りました」
机にどどーん!と大判のハンバーグが。ソースはお供にパンを添えているのでデミグラスで。
付け合わせにニンジンのグラッセ、ポテトとブロッコリーの蒸し焼き、オニオンリングを添えて、グリーンサラダとコンソメスープを。
一般的なハンバーグセットを二人前?いや、多分四人前くらいは用意したかも。それくらい大きなハンバーグが鎮座している。
「こんなに大きいのは初めて見た」
「お兄様でしたらこれくらい食べてしまいそうだと思ったらどんどん大きくなってしまいまして」
これくらい、と顔の前で顔を挟むサイズを見せると、お兄様はそれも十分な大きさだな、と笑う。
私にはそれでも十分大きいけれど、男子高校生のお兄様ならペロッといけちゃうかもしれない、と大皿にも負けない大きなサイズの、顔より大きいハンバーグ、という子供の夢のようなハンバーグを作ってみました。
シェアするならこれくらいあってもいいかな、と。
そう。シェアをするので一つしか作ってません。
ナイフとフォークは一組ずつありますけどね。
「隣同士で座るのも久しぶりだな」
「シェアをするのに向かい合わせでは難しいですから」
鍋は向かい合わせでも問題ないけど一皿しかないハンバーグを分け合うのは隣同士でないとね。
というわけで着席していただきます、と声を揃えたのだけれど、さっそく切り分けたところでお兄様が。
「深雪」
「え…と?」
「ほら、分け合うんだろう?」
うん?何故切り分けられたハンバーグを口元に向けられているの?と思ったらどうやら私に食べさせるまでが分け合うことだと思われている模様。
「お兄様、自身の分は自身で切り分けて食べていいのですよ」
「いい二人の日というのが何かわからないが二人で分け合うのも食べさせ合うのもその一環にならないか?」
大真面目なお顔で何かとんでもないことを言っているお兄様。
一体どのような理屈でそんなことに?
口を開けて、と催促されているけれど、いい二人の日ってそういう日なの?
「ちゃんと開けないとソースが口についてしまうよ。――そう、上手だね」
十分冷まして入れてもらったハンバーグは冷却魔法の応用により肉汁が閉じ込められていて噛めば噛むほど溢れる旨味に、いい出来だ、と自画自賛して現実逃避をしているが、この状態にとっても混乱している。
私今、お兄様にはいあーん、されました⁇
そして、
「深雪」
期待の視線を向けられてますね。
更にダメ押しで、
「…だめか?」
まで頂きました。
…お兄様のだめか、は攻撃力が高いのであまり乱発しないでいただきたい。私の心臓が持たない。
謹んで差し出させていただきますとも。
「お兄様、お口を」
動揺を表に出さないよう心掛けながら、あ、と開けられた大きな口に小さく切り分けたハンバーグを。
「ん、美味い」
「それはよろしゅうございました」
それからすぐに自分の分を切り分けて自分でぱくり、と食べてこれ以上はやりません!とアピールしたのだけど、これ、もしかして間接――いえ、私は何も気づかなかった!!
「こうして分け合うというのもいつもと違って楽しいものだな」
「そうですね」
肩を並べて食べるのも、距離が近いのも非日常すぎて、いつもと同じ食卓が全く別のもののように感じられた。
その後のコーヒーブレイク。
少し食べ過ぎたかもしれない。少しお腹が苦しかったので今日のお供はアーモンドチョコレートを。
お兄様の隣に座ろうとしたのだけれどふと自分の恰好を思い出し、すす、と一人掛けのソファへ。
「さっきまであんなに近かったのに」
くすくすと笑うお兄様は、離れた理由にお気づきだろうに。意地悪だ。
でも、お色気モードではなく揶揄いモードなのでちょっと安心。…触れられたあの時ははちょっと怖かったので。
「残念だ。ここからでは薔薇が見えないな」
「お兄様」
窘めるように呼べば、両手を上げて降参ポーズ。
「しかし、タイツと言っても色々とあるものだな」
お兄様の興味は私の足ではなくタイツ自体に向けられた。
「そうですね。カラフルなものからこのように装飾を施されたモノまで色々とありました」
タイツの世界もまた深い世界でした。
「学校の規定では無地が望ましく柄物等は禁止とあったが、確かにこれは校則違反になるな」
風紀が乱れる、とお兄様は何処までも真面目な顔で言う。
あの制服の形状では大して足は見えないから実は隠れておしゃれなタイツを着ている子もいたりする。
私は無難な指定のタイツから選んでいるけれどね。
でも、このタイツだと足首まで薔薇の蔓が伸びているのでバレてしまうだろう。
だからと言って風紀が乱れる、とまではいかないのでは?と思ったのが伝わったのかお兄様の眉間にわずかに皴が。
「わずかにその模様が見えたならその先を想像するものだ。そしてその先を辿りたくなる――先ほどの俺のようにね」
…すごい説得力ですお兄様。
ネタや冗談でもお外で着用はよした方がいいようだ。
ちょっと尻切れトンボに。これ以上だとお兄様がね。蜂に戻って蜜を集めようとしちゃうから。よくないので強制終了です。
ということでタイツの日といい二人の日、でした。
お兄様の用事が思いつかずに秋だから横浜後の四葉本邸前かな、と。曖昧時空だけどお兄様が妹の部屋を訪れる理由にさせてもらいました。
そしたらラキスケ発動…というか、ただのすけべですね。事故じゃない。ただお兄様が妹のスリットに気付いて吸い寄せられたら綺麗なお花が!で触れちゃったお兄様。アウトです。
そして指輪を分け合う日なんですか?「いいふたりの日」って。二人という関係性を見つめ直す日だそうで。…この二人は本当に見直すべきだと思います。兄妹とはどうあるべきなのかをね、ちゃんと知るべきだと思うのです。互いに。
分け合うものってことで食事をシェアすることに。おっきいハンバーグっていいですよね。
お兄様は何を思ったのかあーんをご所望だったので一口だけお付き合いすることに。でもそれ以上は無理!と急いで次を切り分けて自分の口に運んでから気付く間接キッスの事実。叫ばなかっただけでも偉い。ぷるぷるはしたけども。当然お顔は真っ赤だった。
妹が狼狽えるのを内心ニコニコ眺めていた悪いお兄様。今日も妹が可愛い。
実は妹の姿にドキドキしていたので可愛い姿にほっこりしていた。これで無自覚なんだから酷い。
お粗末様でした。