妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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まだまだ二人きりの時空です。


11月の記念日 11/4

 

11月4日

 

 

さぁて、本日のネタは何かな~、と端末を開いて固まった。

 

「いいお尻の日…」

 

うん、いや、ほかにもね、推しの日、とかも目に入ったのだけどついね、そこに引っ張られてしまったというか。

今晩はとりあえずかき揚げに決まった。

秋の天ぷら祭りですね。楽しみ。

楽しみなのだけどもう頭の中がね、何を着よう?に舵を切ってましてですね。

 

(深雪ちゃんのパーフェクトボディの魅力を引き出すには何がいいかな。フェミニン、スポーティーカジュアル、エレガントセクシー系にガーリッシュ等々…うむむ)

 

これは難題だ。

どんなスカートにしよう?深雪ちゃんのお尻をもっと魅力的にさせる一番の恰好を浮かべる。んだけど…実はこんなことを言っては元も子もないかもだけど、深雪ちゃんの魅力を引き出すのにこの一高の制服が一番エr…ごほん、魅力的に映るんじゃないかな、と思わなくも無い。

まあ、そこには新鮮味はないのでね?他を考えようとするんだけど、気が付いたら原点に戻ってしまうというか。

一応鏡の前で腰を捻ってはい、ポーズ。…うん、見事な曲線美。

この括れといい素晴らしい黄金比をしておりますね。

まだ少女の段階だというのにこのエr、ごほごほ。…いや、いいよ。言うよ。えっちぃよ!

誰なのこの制服を作り出したの!そして起用にGOサイン出したの!高校生に着せていいものじゃないよ!!

こんな体のラインを思いっきり浮き彫りにさせる制服なんて、何を考えているのか。

露出が少なければいいってもんじゃないんだよ。着ているからこそのエロスってものを知らないの!?

それともわかっていてやっている?…異性を意識させて早婚をさせようとか。

流石にそれは無いか。

なんというかこの時代、ファッションの感覚が微妙にずれているんだよね。ミラージバットとか。

魔法科界隈だけなのかと思ったけど、そういうわけでもないことは情報誌でもわかっている。

戦後独特な進化を遂げている模様。

と、そんなことは置いておいて。

深雪ちゃんのお尻は安産型という程大きくはなく、かといって小ぶりでもなく女性らしい丸みはしっかりとある。…これからどう育つかはまだ分からない。

もう少しメリハリがつきそうな伸びしろがありそうではあるけれど、今でも十分魅力的。特にこの未完成の状態はこの時期しか見られない特別感がある。

女性の一歩手前の、今にも開きそうなつぼみ状態のバラのよう。

 

「薔薇、ね」

 

ふむ、とクローゼットの奥にある秘密の洋服の列に手を伸ばす。

お兄様の前では着ることの滅多にない秘蔵のコレクションの中から巻きスカート型のマーメイドスカートを取り出した。

巻いて描かれる螺旋が、開花直前のつぼみを連想させたのだ。

さっそく着て見ると、思ったよりかなりタイトなスカートで、腰のラインからお尻までが浮き彫りになり、足元はふわりとフレアになって裾が広がる形が、とてもセクシーなのに可愛らしさを演出していて、下品には見えずエレガントさもある。

深雪ちゃんが履くとラインが浮き上がり15歳とは思えない色気まで見える。

これに清楚なブラウスにボレロを羽織れば高級レストランにも入れそうだ。

もちろんそんなコーディネートはしないけれど。

これからあるのはお兄様とのリラックスできる日常の夕食だ。

 

(しかし…うん。これはまた、見事なヒップラインだこと)

 

自身の体でもあるとわかっていても見惚れてしまう。

お美しい。流石神が造り錫た最高傑作。この世で最も美しくあれと生み出された美少女様である。

これはたとえあのお兄様であろうとも動揺を与えてしまうだろう。…お兄様の為にも着替えるべきか?だけど似合うだけにとっても惜しいと思ってしまうわけで――あ。

目に入ったのはロングカーディガン。これならお尻まで覆ってくれるのでうまく隠してくれるはず!

正面から見ればエレガントなロングスカートだろうから。

というわけでさっそく着替えて姿見でチェック。

…ボタンはしない方がいいみたい。今度は上半身のボディラインがね、浮き彫りになっちゃう。

できるだけ女性らしいボディラインはぼやかして――はい。これで清楚系になったかな。がっちり守備力を高めにしないとね。お兄様のラキスケの呪いは妹相手だろうと関係なく発動してしまうから。

無事着替えられたところで、かき揚げを作りに行きましょうかね。

 

 

エプロンを身に纏いルンルンと鼻歌交じりに油で様々なものを揚げていく。

椎茸、しし唐、南瓜、大葉に銀杏は串で、海老に茄子、さつま芋も外せない。

 

「今日は天ぷらか。豪華だな」

「はい。あと少しで揚げあがりますのでもうしばらくお待ちください。あ、つゆと塩ではどちらがいいですか?抹茶塩などもご用意できますが」

「そうだな。銀杏があるなら塩にしようか」

 

揚げ終わっている天ぷらを見て塩をセレクトしましたか。良い選択だと思います。

微笑み合っていると、お兄様は目を細められて。

 

「それにしてもご機嫌だね。可愛い鼻歌が廊下まで聞こえていたよ」

「まあ、それはお恥ずかしいところを…」

「恥ずかしがることなんて無いよ。ずっと聞いていたいくらいだ」

 

いやいや、恥ずかしがるところですからね。

うーん、浮かれすぎてたみたい。気を付けないと。

 

「それで、深雪はどうしてそんなにご機嫌なのかな?」

「今日が何の日かご存じですか?」

「さて、11月4日には一体何の記念日があるのか。見当もつかないな」

 

教えてくれるか?とスッと隣に立ち自然に腰に腕を回す。でもね、本日そこは危険領域です。

 

「お兄様、揚げ物をしている時はお触り厳禁ですよ」

「…それは悪かった」

 

すぐさま腕を外して解放してくれたけれど、ちょっと間が空いたのは何でだろう?

 

「それで、教えてくれるか?」

 

じっと見つめると、ゆっくりと視線を私から揚げられているかき揚げに移しながら訊ねられた。

聞かれると気まずい何かがあったよう。私はお兄様と違って意地悪ではないので追及は避けてあげましょう。

 

「今日はいい推しの日、だそうです。つまり私にとってはお兄様の日になります」

「推し?…たしか応援したい人などを指す言葉でもあったか」

 

おお、流石辞書を読むお兄様。オタク文化は廃れても、意外と言葉は生き残っていたりする。

 

「はい。私の一番応援しているのはお兄様ですので!」

 

にっこり微笑むと眩しそうに目を細めてまた視線を合わせてくれるようになったけれど、少し照れていらっしゃるみたい。

 

「ご存じありませんでしたか?」

「いいや」

 

ちょっとあざといかな?と思ったけど見上げるようにして上目遣いで問えば、お兄様は降参とばかりに手を上げられた。

そうですよね。お兄様が知らないわけがない。

私がずっとお兄様を推し続け応援してきたことを。

 

「ふふ。お兄様は私の一番の推しですもの。一生応援しておりますとも」

「それは、心強いね」

 

そしてお兄様はそれを拒絶することも無く受け入れてくれる。まあ、お兄様が妹を拒絶できるはずはないのだけれど、お兄様自身の意思を感じられるから。

これしかないから縋る、ではなく、妹を――私を愛してくれているのだとわかるから。

 

「さ、揚げ終わりましたよ」

「なら俺は机を拭いてこよう」

「ありがとうございます」

 

いつもお手伝い助かりますお兄様。

私の推しは今日も素敵だ。一生推す!

まだ少し照れを引きずっている様子も、そそくさとこの場を離れようとする背も愛おしい。

うふふ、と上機嫌になりながらターンを決める。

ふわりと広がる裾が、また気分を押し上げた。

 

 

 

天ぷらの盛り合わせを食べ終えると二人して艶々の唇に。

油モノ食べるとこうなるよね。わかっていたので濡れタオルを用意しておきましたとも。

じっとお兄様の唇を見つめないよう視線を逸らしながら自身の分もきちんと拭う。

それから食器を片付けて、リビングで先に寛いでくださっているお兄様の下へ。

 

「それで、今日は天ぷらの日だったのか?」

「かき揚げの日、だそうです。うどんやそばの上にかき揚げがのっているものがありますでしょう?11日が麺の日だそうなので4日がかき揚げの日になったそうです」

「…11日が麺の日だと何故4日がかき揚げの日になるんだ?」

「カレンダーを浮かべてくださいませ。11日の上は何日になりますか?」

「…そういうことか」

「ショートケーキの日の理論と同じです。ショートケーキの日は毎月22日なんですよ。どうしてだと思います?」

「22日の上は15日…イチゴか」

「正解です」

 

お兄様に無駄な雑学を教えてしまった気分。でもお兄様は呆れながらもどこか楽しそう。

 

「よく思いつくな」

「面白いですよね」

 

こういう発想は日本人ならではだろう。

 

「――ところで深雪。今日はそっちのソファに座るんだな」

「え?…ええ」

 

ん?急な話題の変わりように目を開閉させつつ答えると、お兄様は指を顎にかけて推理モードに。

…なんだか嫌な予感。少し寒くなってきたのかな。背筋にヒヤリとするモノが。

 

「深雪が自主的に俺から離れて座る時は必ず理由がある」

「そんなことありましたでしょうか?」

 

はい、思いっきり心当たりがありますね。

 

(で、でもこれはお兄様の呪いを考慮してのことでしてですね?!)

 

お兄様には一生解けない恐ろしい呪いが複数掛かっている。

女難の相とか不幸体質とか巻き込まれの星とか、その他諸々ある中でもひときわ異彩を放つのがラッキースケベの呪いだろう。

これは女難の相ともセットだったりもするが、お兄様のこの呪いはかなり強力なものであり、原作一巻だけでどれだけ災難に見舞われたことか。

その呪いはたとえ身内だろうと関係ない。…とはいえ原作では妹が率先してお兄様が困る状況へと導いていましたがね。

私はそのつもりはないので、できるだけ自発的に呪いを避けるためにも、服装はできるだけ露出の少ないものを選び、体のラインもふんわりぼかすものを心掛けている。

それでも深雪ちゃんの素晴らしい魅力は損なわれることは無い。

むしろ清楚で落ち着きのある恰好は彼女の上品な仕草と相まってより女性らしさを引き立てていることにはなるのだが、お兄様が目のやり場に困るということにはなっていないので問題ないはずだ。

今日だってそのはずで、ちゃんと隠し通せているはず、なのだけど――

 

「なあ深雪。俺に何か隠していることは無いか?」

 

無いか?と尋ねられているけれど、あるだろう?と確信があるご様子。ご明察の通りです。が、それを口にするのは流石に淑女としてどうかと思うわけでありましてデスネ?

 

「深雪」

 

………確実に心の中を読まれている。そんな気がした。

そして、お兄様は端末を取り出して。

 

「調べればわかることなのではないか?」

 

そうですね。すぐに答えは見つかると思うのですけど、あえて自白をお望みですか?

 

(…ここは沈黙を守り、お兄様自身に調べてもらって口を閉ざしてもらう、が最も傷が浅くて済む最善の策では?)

 

最適解を瞬時に導き出せる深雪ちゃんの優秀な脳に感謝しつつ口をしっかり結んで微笑む。

淑女はいついかなる時も笑みを崩してはならない。

 

(お母様。貴女の教えはばっちりと守っております)

 

ですからどうか、助けて下さいと心の中で必死に祈る。

その祈りは天の母に届いたのか、イマジナリーお母様からの返答は――無表情で首を振る、だった。

え!?見捨てられた?!手遅れよ、とはどういうことです⁇

 

「実はな。すでに調べてきたんだ。今日はどんな記念日があるのか」

「!!」

「その中に一つ、気になるものがあってな」

 

え、お兄様あれだけある中で一つしか気にならなかったのですか?じゃなくて。

冷や汗がだらだらと背筋を伝っていく様。追い詰められた鼠の気分です。

 

「…わかりました。白状します。本日は――いい姿勢の日です」

 

まだだ!まだ私は諦めない!!と、起死回生を図る。

お兄様は先を促すようにじっとこちらを見つめてくるので口を開いた。

 

「腰から少し上あたりを強めに締め付けると姿勢が良くなるのです」

 

してないですけどね、コルセット。

というか深雪ちゃんである以上、いつでも姿勢は崩していない。…自室は別枠でお願いします。

これで誤魔化せたかな?と思ったのだけれど。

 

「それは、心配だな」

「え?」

「深雪、こちらに来なさい」

 

珍しいお兄様の命令口調。

気が付けば魔法がかかったようにふらりと立ち上がっていた。

そしてぽすん、とお兄様の横に腰を下ろした。

 

「確かに深雪の姿勢はいつだって綺麗だが、締め付けるのは良くないんじゃないか。そんな無理をすることは無い」

「つ、よくといってもせいぜい帯を締める時くらいのものですよ」

「それでもだ。家にいる時くらいリラックスしても良いだろう」

 

どうやら心配をさせてしまったらしい。強い締め付けと言ってしまったことが原因か。失敗した。

心配そうに顔を覗き込んで腰を引き寄せられる。

 

「いつもと違うスカートを身に着けているなとは気づいていたんだが」

 

…お兄様本当によく見ていますね。お兄様の前でこのスカートは穿いたことが無かった。

というか、これ単品ではとてもお見せできない。

 

(なにせ、とてもえっちぃので…)

 

だから必死に隠しているのだけれど。

 

「この形状なら巻きスカートなのだろう?少し緩めたらどうだ」

 

これは紳士なお兄様にしてはあるまじき発言。まさかこの場で、お兄様の目の前で緩めろ、と?

そんなことできるはずも無い。

 

「……申し訳ございません。お兄様、深雪は嘘を申しました」

 

性格には嘘ではなく誤魔化そうとしただけなのだけれど、もうここは罪を告白して逃れるしか方法がない。

そして口調はうっかり深雪ちゃんのモノに。

 

「どんな嘘を?」

「…本日はその、…いいお尻の日、だそうです」

 

ううぅ…結局白状させられてしまった…。羞恥に耐え切れず俯いてしまう。

こんなことなら初めから…なんて言えるはずも無い。

 

「そんな日だったのか。では、深雪はそのためにそのスカートを?」

 

こくん、と頷くと、お兄様はよく告白してくれたね、と頭を撫でてくれた。

これで話はおしまい、とコーヒーを勧められ、一口飲む。温かさと苦みが広がり少しホッとする。

それからは追及されることなく他愛ない話をし、いつもの時間を過ごしたのだけれど――

 

「なあ深雪」

 

カップを片付けにキッチンへ移動しようとしたところで待ったがかかった。

コーヒーを一杯飲む時間、他愛ない話をしたことで完全に油断をしていた。

 

「せっかくだ。そのスカートを良く見せてくれないか?」

 

(…あ、これ逃れられないやつぅ…)

 

 

 

その後、カーディガンを脱ぎ、くるりと一周した私を見たお兄様はしばし目を瞑った後、「深雪は本当に何を着ても似合うね、とても素敵だよ」と感想を述べた後、ただし、着る時には必ず今日みたいにしっかり覆い隠すようにね、と厳重に注意をいただいた。

 

 

 

 

 






いい推しの日でいいお尻の日でいい姿勢の日で、かき揚げの日でした。
お兄様は事前に今日は何の日かと調べていました。
2日前のタイツのようなこともある、と警戒していたらビンゴだった。深雪には危機管理が足らない、と思いつつもしっかりと妹の姿を目に焼き付けている、無自覚なのに危ないお兄様。
隠されると探りたくなるよね。
わざわざあのように追い詰めて自白を迫るなんて…完全にドSですね。妹逃げてー(無理)。
これが婚約者だったなら大変なことになっていたんだろうなぁ…。
あと、妹の『お触り』発言に思わず黙ってしまった。この時はそんなつもりじゃなかったお兄様。無意識だった。だからって無罪にはならないですよ。

お粗末様でした。

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