妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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むしろ間違い探しならぬ間違ってない探し。
深雪ちゃん、徐々に違いに気付き始めます。



まちがいさがしは難しい?

 

 

「……どういう、ことです?」

 

お兄様の言葉を疑うわけがない。ただ、理解が追いつかなかった。

ここが別世界?私の世界ではない?

 

(お兄様が、――私と楽しく学校生活を送っている……?)

 

それは、いったいどんな夢の世界だろうか。

 

「俺も戸惑いが無いわけじゃない。今、ここにいる深雪が大事な妹であることは間違いない。だが、昨日一緒にチョコレートを食べた深雪ではないことはわかるよ」

「…昨日、一緒にチョコレートを…。昨夜はショートブレッドをコーヒーと共にお出ししました」

 

チョコを一緒に食べた記憶などない。

…私は、お兄様の妹だけど、このお兄様の深雪ではない…?

 

「深雪」

「は、はい」

「勘違いするな。お前は俺の大事な妹に違いないんだ。俺の眼がそう言っている。腕に抱いて、お前が妹だと理解している」

「!!」

 

まるで心を読んだような回答は、私の心の不安を一掃する威力があった。

――お兄様だ。

この、今繋がっているのは間違いなくこのお兄様で、私の大事な人。――大事な…

許容量を超える情報に血の気が引くのだけれど、お兄様に抱かれているという状況が、血の巡りを助けているよう。鈍る思考を回転させてくれた。

 

「なぜ、お兄様には深雪が昨日チョコレートを共に食べた深雪ではないとお分かりになったのです?」

 

そもそも別世界など突拍子もないこと、いくら天才の頭脳をお持ちのお兄様でもこんな瞬時に導き出せる答えではないはずだ。

余りにも荒唐無稽すぎる。

そう心の中で思うと、そうだな。と、また心を読まれたようにお兄様は微笑まれた。

 

「別に心を読んだわけじゃない。深雪がわかりやすいんだよ。特に、今の深雪は動揺もしているから」

 

心を見透かされている!羞恥で顔に熱が集中してしまった。

 

「可愛い、と愛でる時間が無いのが残念だ」

 

一瞬だけ頭を抱き込んで耳元で囁かれる言葉に、これは私の知っているお兄様じゃない!!と心の中で叫んでしまった。

表に出さなかったのは、直後お兄様から向けられる視線に絡めとられて動けない錯覚に捕らわれたから。

 

(こ、こんな強引なお兄様、知らないっ!)

 

心臓がドキドキして痛いくらいだった。

こちらの動揺に気付かれているのか、落ち着かせるように大きな手で背を撫でてくださっているのだけれど、それさえも私の鼓動を早める手助けになってしまっていた。

苦しい、けれどやめてほしくもなくて必死に表情だけでも取り繕ってお兄様のお話に集中する。

 

「実はな。昨日チョコを食べながら深雪と話していたんだ。並行世界というものがあったとして、別の深雪がいたらどう思うか、と。随分突拍子もない話をするものだ、と思ったものだが、それがどうにも不思議な話でな。

仮定の話のはずだったのに、まるで見てきたように語るんだ。随分想像力が豊かな話だと聞いていたんだが、今思うとこうなることを予見していたかのようだな」

「……そのような、ことが…」

 

私には、そんな未来を予見する力は無い。…もしかして、私はこの世界の深雪よりも劣っているのでは、と嫌な考えが過った。

もしかしたら、お兄様はおっしゃらなかったが私と『彼女』では見た目からも違いがあるのではないだろうか?だからお兄様はすぐに気付いて――それだったらエリカたちも気付いておかしくはないから容姿は変わっていないと即座に否定するも、雫たちからはいつもと違うと指摘されていたことから『彼女』との差異は間違いなくあるのだろう。

目の前にいないのだから比べようも無いはずなのに、お兄様の口から私にはない能力を持っていると聞かされると不安になる。

 

「あの時の深雪の状態は普通ではなかったからな…」

 

お兄様が少し遠い目をして思いを馳せていて、余計に胸が苦しくなる。

 

(ここにはいない妹を想っている。私でない私を――)

 

不安で瞳が揺らいだのを、お兄様が見逃すはずもなく。

今度は温かな手が頬に添えられる。

 

「深雪。あの子に予知能力は無いよ。そんな能力があったなら今頃ここでこんなに自由な生活はできていない。――彼らが放っておくはずが無いからね」

 

お兄様の言葉にはっとなった。

そうだ、もしそんな特殊な能力があったなら、あの四葉から出られるわけがない。私たちは生まれた時にどのような能力を持っているのかを把握されているのだから。

それに魔法で予知や未来視ができるなど聞いたこともない。

四葉では直感が優れている者がいるとは聞くが、お兄様のお話を聞く限り直感とはまた違うようにも思う。

 

「どうしてあの子が平衡世界のことを考えたかはわからないが、そのおかげで俺は大した混乱をせず、お前を迎えられたわけだ」

 

先ほどの食堂で、お兄様は私に声を掛けられた直後とても驚いていた。表情にはほとんど出ていなかったけれど、私には伝わっていた。

それでも混乱せずにこのように冷静に対処しているのは、そういう経緯があったから。

 

(…それでも、私にはそんな予感は一切なかった)

 

あちらのお兄様は、私の世界のお兄様は大丈夫だろうか。私のように混乱しているのだろうか。そう思うと、したくて悪いことをしたわけでもないのに胸が締め付けられるようだ。

 

「お兄様…」

 

口からこぼれてしまった言葉に、慌てて口をふさぐも、お兄様は苦笑しつつ優しい手つきで背を叩いた。とん、とん、と宥めるように。

 

「あちらの俺も幸せ者だな。こんなにお前に想われているなんて」

 

その言葉に目の前のお兄様に対しての申し訳なさと、幸せ者との言葉に浮足立つ。

だけど心の整理がつく時間を待てるほど時間は無かった。今はまだお昼時間。皆を待たせている状況だ。

 

「深雪、この後のことだが、授業は受けられそうか?」

「それは、はい」

 

目を覚ましても授業内容は一緒だった。日にちも一緒。いくら校内の雰囲気が違っても習う授業は同じはず。それならば授業を受けることくらい問題ない。

 

「このまま保健室で休むということもできる。生徒会も休めばいい」

「ですが、お兄様は風紀委員でいらっしゃいますし」

「…ああ、そういう違いもあったか」

「え?」

「俺は部活も委員会も入っていない。普段放課後は図書室で調べものをして時間を潰している。だから俺のことは気にしなくていい」

 

…お兄様は無理やり風紀委員に入れられていない、らしい。断れたのか。

 

「その…よく状況を把握できたとは言い難いですが、お兄様が楽しく過ごせているという学校生活を体験してみたいです」

 

ここが、お兄様にとって過ごしやすい学校なら何かヒントになるかもしれない。

何が違うのか、どうしてそうなったのか。知れば、お兄様の為になるかもしれない。

そう思えば未知の世界も怖くなかった。――なぜなら、今ここにいるのは私ひとりではない。お兄様がいてくれるから。

そう告げるとお兄様は、ほっと息を吐かれた。私が落ち着いたことに安堵されたようだった。

 

(…嬉しい)

 

お兄様は、世界は違えど私のことを思ってくださっている。それが何よりも嬉しかった。

 

「時間もない。詳しくは説明できないが、レオ達の説明は俺に任せてくれないか。深雪はご飯を食べることに集中していて欲しい。ただし、急いで食べようとしなくていいから。何を俺が言っても、俺から合図を送るまで何も言ってはいけないよ。できるね?」

「はい」

 

お兄様に優しく問われてしまうと反射的に頷いてしまう。それは私の意思が弱いからではなく、お兄様を信頼しているから。お兄様が私に不利なことなどなさらないとわかっているから。

 

――それは間違っていなかった。間違っては無かったのだけど。

 

どうやらこちらの環境は私にとって知って非なる、未知の世界だったようだ。

 

 

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