妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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婚約者後、恋人未満です、一応。
今回はちょっと品の無いお話()です。Rは付けなくて大丈夫だと思うのですが…

先に言っておきます、妹がおっぱい教の信者です。兄妹揃ってイメージが損なわれる可能性がございますのでご注意ください。
シリアスに見せかけたコメディ。無駄に長くなってしまいました…。



11月の記念日 11/8

11月8日

 

 

深雪は数度、深呼吸を繰り返してから兄の部屋のドアをノックする。

一拍置いて開かれた扉だが、それはノックをされてからここに至るまでに時間を要したのではなく、深雪の為に作られた一拍であったことを深雪は理解していた。

達也が、深雪がこれだけ傍にいて存在に気付かないわけがないのだから。

ノックをされる前に気付いていたにもかかわらず、深雪の心が決まるまで待ってくれたことに嬉しくなると同時に、緊張が高まった。

 

「どうぞ」

「…失礼します」

 

あまりの緊張ぶりに、達也も笑いがこらえきれなかったようで、くすりと笑って招き入れた。

添えるように肩を抱き、ベッドまでの短い距離をエスコートする。

紳士的な仕草に見せているが、ドアをしっかり施錠して、緩やかに囲い込んで逃さないようにしているだけなのを、緊張で頭がいっぱいいっぱいの深雪は気づいていない。

いつものように遠慮して深く座ることのできない深雪はぎりぎり浅いベッドのふちに腰掛ける。

もう幾度となくこのベッドに触れているのだが、深雪にとってはいつまでも慣れることは無い、緊張を強いられる場所だった。

特に、このベッドで過ごした記憶が余計にそうさせているのだが、今日はそれとは別の要因もある。いつも以上に体を緊張で強張らせていた。

そうと悟らせまいといくら表面を取り繕ったとしても、相手は深雪のことを本人以上に知り尽くしている達也だ。無駄な足掻きであったが、だからといってしないという選択肢は彼女にはない。

羞恥で身を焦がれても、彼女には今日、どうしても聞きたいことがあった。

だからこそ今、覚悟をしてここにいる。

――それがたとえ、心底くだらない内容であったとしても。

そんな覚悟を背負っているとまでは露知らず、達也はまず、声を掛けるより先に頭に手を伸ばした。

洗い立ての髪は艶やかで、丸い後頭部までを撫でつけているだけでも気持ちのいい手触りだった。

それを何度か繰り返してから今度は長い髪を掬い上げ指に絡めて梳く様に指を滑らせていく。

極上の生地に触れているような、滑らかな感触。頭から毛先に行くと温度が伝わらずひんやりとしていてそれもまた心地よかった。

いくらでも撫でていられるな、と思いながらもそれだけでは満足できなくなった己の底なしの欲望に呆れつつ、それも仕方が無いだろうと納得もしていた。

背中にまで流れる黒髪だけでも芸術作品のような、絹のような光沢を放つ艶やかな美しい髪。

その黒により際立つ、透き通るような白い肌。小さな顔はどのパーツも見事な造形美で、これ以上ない絶妙な位置に配置され完璧な美を体現している、この世の美の最高傑作。

華奢であるが女性特有の丸みのある体もさることながら、そのしゃんとしている姿勢も、彼女の内から発せられる品格も、すべて彼女の美しさを引き立てる。

どんな人間もその美しさを感じずにはいられない、これ以上の見本などない世界共通の美しさを誇る美少女。

男であればただ眺めるだけではなく触れる以上を望むのは正しい本能だろう。

達也は一般的な男と違う精神構造をしているので女性に対し衝動を抱くことは無いが、この深雪に関してだけはただの普通の男と何ら変わらない。

いや、唯一感情をフルスロットルで抱けることからこそより執着は強い。

少し前までは愛おしく可愛い妹であったのに、今では最愛の女性にもなった、達也の世界の中心だ。

その彼女が、緊張に体を強張らせつつ、それを隠そうと気丈にも微笑んで横に座っている。

怖がられているわけではない。そんな感情を向けられていないし、そもそも怖がらせるような真似をした覚えもない。

今日は至って普通に過ごし、逃げられるようなちょっかいも掛けてはいない、と今日の行動を反芻した。

学校でも大した事件も無い、ごく普通の日常だったはずだ。

家に帰ってからもあまりしつこく触れるのはよろしくないと自制をし、最小限の触れ合いだけで済ませた。していないのはおやすみのキスだけだ。

 

(さて、これはどうしたものだろうな)

 

達也は次の手を考えあぐねていた。

このまま抱きすくめて宥めてリラックスさせるべきか、どうしたのかと正面から尋ねるべきか。はたまた口を開くまでこのまま撫でて待つべきか。…正直に言えば、このまま更に触れ合いたいところではあるが、それでは深雪のペースを崩すことになる。

あまり強引な手段に出るのは避けるべきだ、と撫でていたのだが、答えを出すよりも先に深雪が動いた。

 

「あ、の。今日は聞きたいことがありまして」

「何だい?」

 

緊張のあまりゴクリと喉を鳴らす深雪を、安心させるように優しく見守っていた達也だが、次の言葉で思考が停止し固まることとなる。

 

 

「その、お兄様は――胸派ですか、お尻派ですか?!」

 

 

「………なんだって?」

 

達也の優秀な情報処理能力をもってしても、理解できないほど複雑怪奇な質問であった。

いや、質問自体は至って単純な二択だ。

男であれば誰しも一度は聞かれる質問である。

しかしまさかその質問を妹から、それもこんな意を決して聞かれるようなことだとは思わず意味と意図を理解することができなかった。

しかも彼にとって何より失態だったのは何の考えも纏まらない状態で訊ね返してしまったことだ。

おかげで彼はその難解な質問をもう一度受けることになる。しかも、更なる衝撃を添えられて。

 

「えっと、おっぱいとおしり、どちらがお好きか、と…」

 

言った言葉が恥ずかしかったのか、それとも何を言っているのかと自覚したことによってかみるみる顔を赤らめ瞳を潤ませ俯いて震え出した深雪に、達也は質問云々よりもこのままベッドに押し倒したい衝動に駆られるが、それは今絶対してはならないことだと奥歯をかみしめて耐える。

耐えながら、思う。

 

(これは、一体何の試練だ?)

 

達也は今、身動きもままならない状態に陥りながら妹をじっと見つめているが、脳内はフル回転していた。

ただ、混乱しているためか思考がおかしな方向に進んでいく。

 

(自滅して照れる深雪の可愛さは戦略級魔法に匹敵するな)

(…まさか深雪の口から…)

(胸派と尻派、今まで聞かれてもその場で適当に答えてきたツケがこんなところで)

(胸ならばともかく)

(彼らの意見を参考にするか?いや、そんなもの深雪に聞かせるわけにいかない)

(その四文字を聞くことになるとは)

(そもそもなぜそんなことを聞かれているんだ?)

(…おっぱい…)

(おっ――胸と尻なんて、脂肪の塊でしかない)

 

「…もう一度言ってくれないか…?」

 

(だが、その脂肪の塊も触れれば温かく、柔らかく、気持ちのいいものだと認識はしている――特に、深雪のものは格別だと)

 

「で、ですからっ、お兄様はおっぱいはお好きですか!?」

「深雪の体で好きでない所などどこも無いよ」

 

自棄になったように質問を繰り出した深雪に反射的に返答してから、達也は自分が質問の催促を無意識にしてしまっていたことに気付いた。

そして同時に結果希望通りの言葉が聞けたことに拳を握りしめていたことに呆気にとられた。

 

(……並列で別思考が働く弊害がまさかこんな形で出ようとは)

 

完全に無意識だった。煩悩に塗れた発言であったが、達也の返答に困って視線をさ迷わせている深雪の可愛さに更に理性は解けていく。

深雪の自棄に感化されたように達也も開き直った。

もう口に出したものは戻せない。ならば、強引に突き進むのみ。

 

「胸や尻に限らず、手も足も、まっすぐな背筋も、この括れから腰に掛けてのラインも、全てが愛おしい」

 

するっと背筋から下に向けて撫で下ろすとびくびくと身体を震わせる、その敏感な反応と仕草がたまらない。

 

(もう、深雪が何を目的としてこの部屋を訪ねてきたのかを待つ理由があるだろうか?)

(それは、ある。落ち着け。それ以上手を動かすな)

 

所謂天使と悪魔に挟まれた状態の達也だったが、何とか兄としての理性が勝ったようだ。

腰に手を当てたまま、すまない、と謝った。

 

「これではお前の質問に答えてないことになるのか」

「いえ…趣旨は確かに外れておりますが、回答はおかしくありませんでした」

 

お兄様が謝ることなどありません、とゆるゆると頭を振る。

深雪が意図していない答えではあったが、そもそも質問がおかしいのだからお兄様が間違えたわけではないと羞恥を押し退けて答えた。

達也が我慢を強いられている中、深雪も引っ込みがつかなくて困っていた。

なぜこんな複雑怪奇な状況に陥っているか。

それは深雪の――妄想の暴走事故、としか言いようがない。

 

 

回想~少し前、深雪の思考にて~

 

(あ、そういえば今日はおっぱいの日だった)

 

声には決して出せないので堪えた。深雪ちゃんはおっぱいなんて言葉は言わない。と無意識にでも口にしないよう口に手を当てながら今日というネタ日に思いを馳せた。

前世、散々おっぱいに夢を見てロマンを抱き幸せに耽ったあの頃。

おっぱいに夢を見るのは何も男子だけではない。

あそこには夢とロマン、希望と欲望がたっぷりと詰まっているのだ。

女性のおっぱいのふわふわの柔らかさと温かさは何もかもを受け止めてくれる包容力が。

男性の雄っぱいには張り裂けんばかりの弾力とその力強さに反して力が抜けた状態の柔らかさの二面性が懐の広さを。

それぞれがそれぞれの良さを持ち、人に豊かさを齎すもの。それがおっぱいだった。

おっぱいとは魅力的で、神秘的で、時に人の信仰さえも集めるほど神聖なものであった。

――そう、過去の彼女はおっぱい信者だった。

故に思うのだ。

 

(深雪ちゃんは確かにパーフェクトボディだ。欠点と呼べることは何一つない。出るところは出て引っ込むところはっ引っ込む。そのバランスは見事黄金比と言っても過言ではない。だけど――)

 

バランスはいい。

だが、アンバランスにはアンバランスの良さもある。

 

(ぼん、やら、ばーん、やらの効果音は深雪ちゃんの体には付かない)

 

けして小さなわけではない。標準以上であり、色や形も申し分ない。というより素晴らしい傑作と言っていい。

だがしかし、そこにそれ以上の質量がないわけで。

 

(お兄様は私を好いてくださっているという。でも、お兄様の周りには魅力的な女性が集っているわけで)

 

妹しか愛せない、衝動を抱けない達也だが、性欲は一般にも向けられる。襲い掛かりたくなるような衝動が無いだけで好意を抱き、抱くこと自体はできるはずなのだ。

強い衝動は確かに何にも勝るだろう。

それを愛情が深くなったことで恋に適用されてしまったのではないかと、勘違いが起きているのではないかとの疑念がずっと胸に巣くっていた。

 

(だって、お兄様が自発的に深雪ちゃんに恋心を抱けるわけがない)

 

達也はその非常識な出自と教育環境の中で育ちながらも常識を学び、知識で得た常識を手放せなかったのだから。

兄が妹に恋慕するなんて非常識、お兄様だけの考えで浮かぶわけがないのだ。

深雪が苦しみながら告白し、兄以外はいらないと、他の男に抱かれることが嫌だと言ったから、妹が誰かのモノにされることを具体的に想像し、初めて正面から女性として認識し始める――。

 

(深雪ちゃんが誰かに惚れられることが当たり前だったとしても、深雪ちゃんが誰かに惚れることがあるなんてお兄様は想像できていなかったのだろうから)

 

あれだけ真っ直ぐ慕われていれば無理もないことだと思われた。

深雪が兄を異性として愛しているのだと訴えることが無ければ遠くから幸せを願って余生を過ごすつもりであったと、まだ十代の少年が思い描いていた未来図。

寂しい未来であるはずだが、お兄様にとっては妹の幸せこそ全てであり、それで十分のつもりだった。

 

(そんな孤独な未来を受け入れようとしていたお兄様に幸せを、もっと明るい未来を、と願って何がおかしい)

 

未来を改変してお兄様に幸せを。

そう思って原作とは違った未来を――妹と二人きりの世界ではなく、お兄様自身が恋をして四葉という狭い世界から飛び立ってくれれば、とそう願って行動を起こした。

そのためにも愛を伝え、周囲と交流を持ってもらい、好意を抱ける環境も整えた――つもりだった。

 

(私がトリガーさえ引かなければ、妹以外に向いてもいいはず、だと思ったのに)

 

原作の強制力か、思っていた以上に母の精神干渉魔法の縛りが強固だったのか、他に向けられる可能性があった恋心まで妹に向けられてしまった。

 

(でも、それも一時の気の迷いの可能性だって――ないわけじゃない。その、お兄様だって男の人だから性欲はあって、家にとんでもない美少女がいればよ、欲情?することもあ、あって然りだと思うしっ、その考えに至るのは恋をしているからではと錯覚するのもおかしな流れじゃないかと!)

 

つまり欲情の理由を恋と紐づけ、思春期特有の勘違いが起きた恋なのでは、と疑っているのだ。

と、ここまでつらつらと語ってきたが、要は何が言いたいかと言えば――

 

(おっぱいが大きくて魅力的な女の子にお兄様が惹かれてもおかしくないのでは?!)

 

おっぱいの日に、おっぱいに夢と理想を抱いたおっぱい信者が、現在抱えている悩みを懺悔した結果、お兄様の勘違いはおっぱいによって目を覚ますこともあるのでは?という神託を受けた気がして、暴走した。

――当然、そんなもの神託でも何でもない。ただの妄想と原作の強制力という呪いに振り回された結果がもたらした自身の内なる声が戦犯だった。

 

 

回想終了。

 

 

(そ、そうだよね。お兄様は深雪ちゃんに対しては言葉のスペシャリスト、どんな場面でも誉め言葉に変えられる。けして小さな胸ではないけれど、巨乳という程大きくもない。そこに触れずにまとめるしかなかったよね。ごめんなさい。コメントに困ったでしょうに)

 

と反省をしている深雪だが、見事にすれ違った思考を披露していた。

 

「…何故、急にそんなことが気になったんだい?」

「本日は、語呂合わせでいいおっぱいの日でしたので、これを機にお兄様に聞いてみようかと」

 

だがしかし、深雪の欲する答えは得られていない。

達也が後には引けない、と真顔を貫き質問したと同様に、深雪もここで引いてはせっかくの特攻が無駄になる、といらぬ覚悟を決めた。

 

「お兄様には私の胸ではご満足いただけないのではないか、と」

 

そう、思ったものですから…、と最終的に失速し俯く深雪は達也の瞳孔がかっぴらいたことなど気付く訳もなく。

 

(この試練の正解は何だ?)

 

思考は冷静に、だが心は今にも爆発しそうな熱を持っていた。

激しい衝動を抑えながら達也は自問する。

どう答えることが、最適解なのかと。

はっきり言えばもう深雪の求める回答を答えることは諦めた。きっと何を答えても不安げに揺れる瞳は安堵に変わることは無い。なぜなら彼女はまだ自身の気持ちに気付いていないからだ。

どういうわけか、これだけ優秀で称賛しかされてこなかったはずの深雪は自分に自信が無いようだった。

いくら女性として愛していると伝えても、受け止めてはくれるものの、受け入れてはもらえていないと達也は気づいていた。

だから彼女が自身にしてくれたように沁みこませる様に愛を伝えたら、いつかわかってもらえるのではと待つことにしたのだ。

だが、待つと言っても何もしないではいられない。

愛を伝えたい。受け入れてもらいたい。――人の欲は際限がないことを達也は深雪に恋心を抱いたことで実感した。

三回に二回は我慢をする。だが、内一回は想いを伝えたい。

怖がらせないよう、気付かれぬよう囲いを作って自発的にそちらに向かってもらって罠にかける。

そのことに深雪も気付いているようだが、待たせている負い目か流されるように身を委ねてくれることで、達也はこれでもう少し我慢ができると外した箍を元に戻すのだ。

だが、今回は深雪の方から檻の中に飛び込んできた。

しかも鍋と食材すべて持参してきてくれたかのように。後は火が付けば美味しく食べられる。

問題はその火をどうつけるか、だ。

ここで何か選択をミスしたら美味しくいただくことはできない恐れがあった。

 

(しかし、深雪の胸で満足できないとは、どういう意味か…しつこいくらい触れているから嫌がられていたとか…?)

 

深雪の感度は非常に優れていて、小さな刺激も拾い上げる。特に胸は極上の柔らかさもさることながら反応も良く、気持ち良くさせてあげられているとの実感もあり自身も興奮を得られる為、ついしつこく触れては涙を溜めて善がるまで追い詰めてしまうのだが、深雪はそれでも満足していないと思っているのだろうか、と達也が顎に指をかけ長考の姿勢を見せると、深雪は慌てたように手を振って止めようとした。

 

「申し訳ございません!お兄様を悩ませるつもりなどなかったのです!ただ、お兄様にはもっとふさわしいおっぱいがあるんじゃないかって」

「………ふさわしいおっぱい?」

 

本日二度目、達也痛恨のミスである。

理解が及ばずその言葉を口にしたことで深雪の混乱は極まった。

 

「ふわふわのおっぱいに挟まれたり片手で溢れんばかりのおっぱいの重量を押し当てられたり、おっぱいに顔を埋めて眠って呼吸ができなくなって目を覚ましたり――もっともっと、お兄様は素敵なおっぱいに幸せにしてもらうべきでh」

「待て待て待て。深雪、落ち着きなさい」

 

処理する情報が多すぎて達也がストップをかける。言葉の荒れ具合から常に冷静沈着を体現したような達也であっても大変混乱を来しているようだった。

 

(…深雪は今、何を、言った?)

 

というか何回彼女の口からおっぱいという言葉が口にされただろうか。それだけでも達也が固まるのに十分な理由だったのに、その可愛らしい口から零れ落ちた内容は――

 

(なぜそんなに胸の用途が?…誰かに入れ知恵でもされた、のか…?だとしたら一体、誰に…?俺以外に彼女が教わる…そんなことがあっていいはずがない)

 

何の考えもまとまっていない。何一つ処理ができていない中で唯一はじき出した答えがそれだった。

そしてそれは怒りの衝動にも繋がり、もう止める理性が働かなかった。

達也は深雪の腰に当てていた手をぐるっと腹まで回すと太腿の下に残りの手を差し入れて素早く自身の足の上に乗せると、戸惑っている頬に手を当て逃さないとばかりに顔を寄せてじっと瞳を見つめた。

触れるほどの至近距離に、「な、なっ!?」と混乱しているが、達也は宥めることもせず、問いただす。

 

「――誰がお前に教えたんだ?」

「…え?」

「俺は深雪とそんなことをしたことも無ければそうしたいと伝えたことも無い。深雪は一体どこでそんなことを覚えた?」

 

達也の怒りが伝わり、深雪の瞳が怯えたように揺れる。

いつもならそれで冷静になるのだが、さんざん煽られたところに怒りの衝動も加わったことで箍も外れていた。

するり、と顔に添えられていない手が腰を撫で、背を撫で、――胸にまで至ると深雪の体が大きく跳ねた。

 

「どこで、って…」

 

明らかにある意思を持って触れられる手に深雪の心臓が痛いほど暴れまわるが、同じくらい頭もパニックを起こしていた。

…深雪の場合、ここに来るまでもずっと起こしているようなものではあったが。

 

(前世ですけど!?なんて言えないし…え、でも誰に教わったって、なにやら変な勘違いが起きてる?!)

 

残念ながら勘違いならずっと起きっぱなしである。

 

「お、お待ちくださいませ!別に誰かに唆されてお兄様に聞いているとか、そういうわけではありません!」

「ではどこでそういった知識を得る?」

「………ほ、本で(前世で、だけど)」

「何のために?」

 

(何のために!?)

 

そこまで聞かれるのかと慄きながらも深雪は蚊の鳴くような小さな声で、「…興味本位で」と答えた。

薄い本だったりネットの海を潜って得た知識を、何のために得たかなど何と答えるのが正しいというのか。

 

「本には何と書いてあったのかな?やたらと胸のことばかりだったようだが、深雪はそこに興味を持ったのかい?」

 

正面に向かい合う形で体の向きを変えられ、その背後からする、と動いた手により胸の輪郭を下着の上からなぞられ、困惑しながら深雪は思った。

 

(…これは新手の言葉攻めです?)

 

混乱の深みにはまっていた。

達也はなぞっていた手を止め、包み込むように胸に手を添えた。

揉むでもなく、ただ添えるだけ。

それでも深雪は息を飲んだ。

何が起きているのか、これから何があるのか――どうすればいいのか。

わからない。わからな過ぎて添えられた手に手を重ねた。

理由なんてない。ただ手が勝手に動いた。

止めようとしたわけではない手を、達也は払うことなく好きにさせる。

深雪が混乱していることは理解していたので、何かをして余計混乱させないためにそのまま何事もない様に話を続けた。

 

「深雪の胸も片手で覆うには困るほど十分大きいと思うのだが?」

「…それでも、手から零れるほどではないでしょう?」

 

なんとなく、話していくうちに彼女が浮かべている対象がいることは分かった。

だが――と達也は思う。

 

(身近なところでは美月やほのか、もしくは七草先輩か。藤林さんも入っていそうだな。深雪の周囲で彼女より目に見えて大きく、それでいて彼女のお眼鏡にかないそうな美女や美少女はそれくらいか。だとしても、だ)

 

「だからと言ってなぜそれが深雪を差し置いて俺に相応しいとなるんだ?」

 

相応しい、と言うからには深雪は自身を不相応だと思っていることになる。理由はどうやらサイズにあるということも今の話で分かったが、それがなぜだかがわからない。

 

「えっと、ですから、私ではお兄様を満足させられないのではないかと」

 

それがそもそも間違いなんだが、とは口にしなかった。それよりも先に聞かなければならないことがある。

 

「俺は満足していないように見えたか」

「いえ、その…」

 

深雪はきゅっと達也の手を握った。

 

「…その時私はいつも自分のことで一杯になってしまい、お兄様が気持ち良くなられているかわからなくて…」

 

その返答が可愛らしすぎて顔を緩めそうになるのを引き締めた。まだ話を終わらせられない。ここで終わるわけにはいかなかった。

 

「それで?」

「お兄様は執拗に…ではなく、過剰に?…たくさん?胸を触られるので、もしかしたら物足りないのでは、と」

「それは誤解だ」

 

深雪の言葉に達也の怒りは一瞬にして消え去ってしまった。

そして同時に申し訳なくも思った。

 

(…やはりしつこすぎたか)

 

言い淀み、言葉を探して伝えようとしていたが、端的に言えば胸をしつこく愛撫したことにより、気持ちがいいからずっと触っていたいのではなく、物足りないと感じているのでは?と不安にさせたらしい。

実際のところサイズは手に余るくらいでちょうど良く、感触は程よい弾力と柔らかさであまりに気持ち良すぎるのと、反応の可愛さからじっくりと胸を愛撫してしまっていたことが、結果的に彼女に勘違いを引き起こさせていたのだと知り反省する。

言葉にすると深雪が恥ずかしがってしまい、堪える様になったり口を閉ざしてしまうことがあったからできるだけ言葉にしないよう抑えていたことも要因だった。

 

「物足りないだなんてとんでもない。あまりの気持ち良さに手放せなくなっていただけだ。ずっと触っていたい、と。…すまない。そんな誤解をされているとは思わなかった」

「そ、そうなのですか…!ぁんっ」

 

羞恥で真っ赤になる深雪につい手に力が篭って包み込んでいた胸を鷲掴む形になってしまい、中心を擦るように触れてしまったことで声が上がりぎゅっと体を縮こまらせてしまった深雪を、しまったと思う反面興奮を抱いた達也はそっと抱きしめることにした。…手はそのまま胸の上に置いたまま。

 

「すまん。力が入ってしまった」

「いえ、こちらこそ…はしたない声を」

 

羞恥で真っ赤になる深雪に達也はもっと聞きたいという心を押し殺し、腹に回していた手でポンポン、と宥めるように軽く叩く。

そして今度こそ、伝えるべき言葉を口にする。

 

「あのな、深雪。俺は女性の胸を見るだけで性的欲求を抱くことは無い。それは衝動云々以前に人の個体を判断する目安の一つと捉えているからだ。身長はどれほどか、髪の長さは、と同様で個人を認識するために見るくらいだ。

男の目は自然と女性らしい箇所を追うこともある。俺だとてそれは例外ではない。だが、そこにその先どうしたいかという想像には及ばない。意味がないからだ。必要としていない、と言えばいいか。

触れたいという欲求が生まれないんだ。――俺はもう、唯一触れたい女性がいるから。

もし女性の胸を見て興奮を覚えるなら、それは深雪の柔らかさを思い出してのことだろう。その女性に触れてどうこうしたいと思うことは無い。胸だからとか、大きさがどうの、等関係ないんだ。

深雪が欲しい。深雪だから触れたい。――相応しいとか関係ない。俺が深雪を望んでいる」

「…お兄様…」

 

誰かと比べられても困るのだ、と達也は思う。

なぜなら達也にとっての唯一は深雪で、それ以外はどうでもいいのだから。

それは唯一の妹であり、兄妹愛が達也にとって残された唯一の愛だから、ではない。

達也自身が深く愛し、その上で至った結論だからだ。

 

(でなければいくら四葉が実の妹であろうとも子を作れると言われたとて、なら妹と交わろうなどと思うわけがない)

 

仮に深雪が達也を兄としてではなく異性として慕ってくれていたとしても、兄妹愛にだけ縋っていた達也では同じだけの熱量で愛を返すことはできなかったはずだ。

大事な妹なのだ。何故敢えていばらの道を歩ませねばならない。

兄妹という揺ぎ無い絆があるのに、恋などと不安定で形の変わりやすい繋がり等持ってしまえば、今まで築き上げたすべてが崩れてしまうかもしれない。

それを思ったら深雪を諭してでも兄妹でいることを望んだだろう。

だが、達也は深雪を愛した。愛して、しまった。

妹として手放せないと思いながらも、もう一つの関係性を望んでしまった。

 

(俺の全てを差し出すから、どうか俺のものになってほしい)

 

そう、願ってしまった。

そして深雪も達也を憎からず想ってくれていることを知っていた。それが恋かは正直はっきりとわかっているわけではない。ただ、好意は向けられている。それもただの兄妹としてではなく異性としても意識してくれている。

それがわかっているから達也は早い段階から動いたのだ。

――余所に目が向かないうちに、その目を覆ってしまおうと。

汚い手段と言われようとも、手に入れる為なら構わなかった。

だから、達也は言葉にする。

 

「愛してる」

 

刷り込むように。

 

「深雪が好きなんだ」

 

他の誰かなんていらない。

 

「それを、否定しないでくれ」

 

懇願する。どうか、想うことを許してほしい、と。

抱き込む腕を強めて彼女の首元に顔を埋める。

片手は相変わらず胸の上に置いたままで、深雪に掴まれている状態であり、彼女の動悸が早まるのが伝わってくる。

だが、同時に彼女にも伝わっているはずだった。ぴたりと背にくっつく様に触れている達也の胸からの尋常でないほどの早い鼓動が。

達也は鼓動と共に想いが伝わればいいと更に体を密着させようとして――

 

「…お兄様はまだご存じないから…」

 

まだ、おっぱいの魅力を知らないから――と、恥ずかしさのあまりこぼした不満に、流石の達也も我慢の限界が来た。

 

「――なら、教えてもらおうか」

「っ、お兄様、なにを」

「お前の言うおっぱいの魅力だ。俺は知らないらしいからな。ぜひご教授願おうか。深雪の胸が大きかったとして、一体俺に何をしてくれるというのかな?」

 

耳を食み、唇を当てながら声を吹き込むと身体を震わせた深雪が身を捩るが、すでにホールド済みだ。逃がすわけがなかった。

 

「で、ですから!私の大きさでは」

「俺では想像ができない。実演してみせてくれ」

「じ、じじっ、実演?!」

「何をすれば俺が満足するのか俺にはわからない。俺は今までで十分に満足しているのにその上があるなんて信じられない。だが、深雪はそれを知っているのだろう?」

 

どうか、何も知らない憐れな俺に教えてくれないか?との言葉と共に達也の手が深雪の胸から離れ、重ねられた手を掴んで口元に運んでキスを落す。二人の温度でいつもより温かくなった深雪の手は赤みが差し、薄い桜色に染まっていた。

 

 

 

えっと、屈んでいただいても?ありがとうございます。

こうして、その、お顔をですね、おっぱいで挟んで――いかがです?あ、そこでしゃべったら――擽ったっ…んん、だ、だめです!動かないでください!な、舐めるのもダメです!や、ちょっ――そのように触れられてはっ…あ、ゃん!お、おまちくださ――きゃあ!や、まって…ちがっ…ああんっ!!いたずら、しないで――…

 

 

 

結果、いつもよりも盛り上がってしまい、次の日の朝二人して寝不足となり、深雪の機嫌はなかなか治らず達也がひたすらご機嫌を取ろうとする姿が見られた。

 

 

 

「確かにおっぱいにはいろんな可能性があったな」

「……その通りではありますが、大変遺憾です…」

「ならリベンジするか?」

「無理です…もうお許しくださいませ…」

「それは残念だ」

 

 

 

 




――

おっぱいには夢と希望とロマンが詰まっていると信じてます。
ということでいいおっぱいの日でした。
シリアスで始まったかと思ったらただおっぱいについてしか考えていない妹と、おっぱいという言葉を口にする妹に興奮を覚えつつ、妹以外を勧められブチ切れしそうになったお兄様。キレてないですよ。キレかけたけど。キレてたら妹監禁ルート。
自身もおっぱいという単語を口にするのは躊躇いがあるものの妹の反応が見られるなら躊躇しない。照れる深雪が今日も可愛い。
お兄様は胸派とか尻派ではなく妹派。妹でなければ選考外。なら妹で考えると――それでも選べなさそう。きっとお尻も好き。ずっと触っていたい。あ、お尻じゃなくて妹にね。
妹はおっぱいの日だから、これを機にお兄様に自分が相手でいいのかとぶつけたかった。
お兄様の周りには魅力的な柔らかボディの女の子たちがいますからね。深雪ちゃんの体も素晴らしいのだけれど、バランスの取れた体と魅力的な体はまた違うから、と本当に自分でいいのか確認したかった。
もっとおっきなおっぱいじゃなくていいの?…お兄様には原作と別の道を進んでほしいと思っていたからこその暴走。
とりあえずぱふ〇ふかな、と実践したらお兄様にいたずらされて上手にできなかった。
すまない、と謝られて仕切り直しをするも、次に進んでも同じ結果に。おっぱいの魅力を上手く伝えられないし翻弄されるし、結局美味しくいただかれているしで大変遺憾。教えてと言ったのはお兄様ですのに!おこである。
しばらく拗ねてお兄様を困らせた。


この後、

「そんなに胸が大きいのがいいのであれば協力しよう」
「協力、とは?」
「胸は揉めば大きくなると」
「そ、それは根拠のない噂話というか都市伝説では!?」
「根拠ならあるぞ。若い頃から異性に揉まれて刺激を受けるとホルモンの分泌量が増え大きく育つらしい」
「……え、本当に?」
「ということで今晩からチャレンジするか」
「…!いえ大丈夫です!」
「遠慮することは無い」
「遠慮ではなくっ」
「俺も気持ちが良くて、深雪も胸が大きくなって一石二鳥だろう?」
「……やっぱりお兄様も大きい方がよろしいですか?」
「何度も言っているが俺は深雪の胸だから好きなんであって、大きさは深雪であればなんでもいい」
「え、お兄様ちっぱいでも構わないのですか?あっ」
「…その言葉は初めて聞くが、深雪、とりあえずそこに座りなさい」

こんな会話があったりなかったり。
実は中学時代からこっそり豊胸マッサージを続けていた妹がいたらいいなぁ、と。

番外編ですので、お許しいただければと!

お粗末様でした。
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