妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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一年生の頃の謎時空。



11月の記念日 11/10

 

11月10日

 

今夜は珍しくリビングで予習をしていた。

何故か?それは――

 

「こんなところで勉強なんて珍しいね」

「お兄様を待っていたのです」

 

正確に言えばお風呂上がりのお兄様を、だ。

勉強は時間つぶしだったと端末を閉じてお兄様の下へ。

風呂上りでも水気の無い髪はドライヤーではなく発散で乾かしたのだろう。お兄様はご自身のことに無頓着だから時間のかかるドライヤーではなくパッと済ませる方を選んだのだろう。合理的だけどね。

そのおかげで頭を拭いてあげる等のときめきイベントは発生しない。スチル欲しさに残念に思うが、無くていいのです。妹は攻略対象外だから。

 

「言ってくれれば早く出たのに」

「それでは意味がありません。私はお風呂上がりのお兄様に用があったのですから」

 

私の言葉にこてっと首をかしげるお兄様。可愛いかな?仕草が幼くてきゅんっと胸が高鳴った。攻略対象外であろうとときめくものです。しょうがない。好感度なんて元からカンストしてますしね。

 

「どうぞこちらへ」

 

ソファに案内すると素直に従って腰を下ろす。

次いで私も座り、お兄様の手を取って用意していたハンドクリームを適量取り出しお兄様の手に乗せる。

 

「いつも頑張っているお兄様の手を、労わせていただこうと思いまして」

「手、だけなのかい?」

 

あらぁ。揶揄いモードのお兄様がお顔を出しましたね。

もちろん頑張っているのは手だけではありませんけれど。

 

「今日がたまたまハンドクリームの日でしたので」

「そんなことだと思ったよ。今朝もパンケーキだったのは」

「パンケーキの記念日だったので」

「もしかしなくてもいつもと違ったあの紅茶もか?」

「紅茶は紅茶でも和紅茶でした。和紅茶の日でもありましたから」

「…なんだか記念日で一日の予定が立ちそうだな」

「ふふ、確かに」

 

ぽんぽんと会話を続けつつお兄様の手をマッサージしながら塗り込んでいく。

男性らしい、硬くて大きな掌を、ツボを刺激しながら触れる。

ただマッサージしているだけなのにドキドキしてくるのは、自分との違い、異性のものだと思うからか。

お兄様以外の男性に触れる機会は無いから、異性を感じる相手はいつだってお兄様で。

 

(…硬くて、皮膚も厚い。私の軟弱な手と違って、力強い、並々ならぬ努力を知る手だ)

 

手一つでもカッコいい。

お兄様の人柄が見える様な、そんな素敵な手にうっとりしているとくつくつと笑い声が。

 

「深雪は手が好きなのか?」

 

あ、これは手に見惚れているのがばれていますね。

ならこちらも堂々と返す。

 

「もちろん、お兄様の手だから好きなのです」

 

お兄様の挑発に負けじとこちらも平然と答えると、更にわるぅいお顔に。

 

「手、だけか?」

 

先ほどと同じような言葉なのに、こちらには先ほど見られなかった色気がプラスされている。

低く、いいお声と窺い見る顔にも期待が込められていて、妹としては恥ずかしかろうとも応えないわけにいかない。

 

「この指も、その先の爪さえ愛おしく思います」

「…そう来たか」

 

まさか手の部位で返して来るとは思わなかったんだろうね。

でも、嘘ではないから。

私の指よりも太いそれが繊細にキーボードの上を滑るように踊っている様はいつも見惚れてしまう。

細やかな作業をするために整えられた爪も綺麗で、手を繋いでいる時こっそり偶然を装って触れることもある。

 

「包み込んでくれる掌も大好きです」

 

しっかりとクリームを揉みこんで、今やしっとりすべすべのこの掌に、どれだけ助けられたことか。

いつだって支えてくれる温かい手。

両手で挟んで祈るように額に付けて。

 

「お兄様の手は魔法の手。新しいものを生み出し、人を癒し、私をあらゆるものから守って下さる――素敵な手です」

「…持ち上げすぎだ」

「そんなことございませんとも」

 

お兄様は客観視できる視点をお持ちなのに、自身のこととなるとどうにも採点が辛くなる。

 

「お兄様も偶にはこうして労わってあげてくださいね。お兄様同様よく働く手なのですから」

「次も深雪が労ってくれないのかい?」

「頼って下さるのは嬉しいですが、これも自己管理の内では?」

 

私がいる間は尽くして差し上げたいと思う。でも、兄妹はいつまでも一緒にいられるものでは無いから。

軽くたしなめるように伝えれば、残念だ、と首を振る。

 

「ふふ、そうこうしている間にお兄様の手がすべすべになりましたね」

 

流石叔母様から頂いた高級クリーム。市販のものとは比べ物にならない即効性。…変なお薬入ってないよね?

するとお兄様の手がするりと抜けて頬に当てられた。

 

「違うか?」

 

チェックをご希望です?頬は皮膚が薄いですから敏感に違いが判るかも。

手を抑えるように重ねてすりっとね。

…うん。

 

「違うような、違わないような…頬ではわかりづらいですね。でもマッサージの効果でしょうか。いつもより温かくて心地の良い手です」

「もし効果があって深雪がすり寄ってくれるなら毎晩でもケアをしようかと思ったんだがな」

「私の為にケアをして下さるのですか?」

「むしろお前の為でなければする意味が見出せないな」

 

あらまあ。私にゆだねられてしまいましたか。困りましたねぇ。

 

「すべすべになると気持ちがいいですよ」

「おかげで深雪の手はいつでも気持ちがいいな」

 

抑えていた手がまたもするっと抜けて掴まれて、指を絡ませられる。

…どうしてそんなことが自然にできてしまうのです?やっぱり生まれながらにお持ちの、天性のたらしの才能のせいです⁇

恐ろしい。

普通こんなに自然にボディタッチなどできないからね?

 

「お兄様ったら。まだ次があるのです。お手を離してくださいませ」

「次?まだ何かあるのか」

「今日はいい頭皮の日でもあるとのことでしたので」

 

手を外してもらい、少し離れたところに座り直して太腿をポン、と叩く。

日ごろから目を酷使し、頭もたくさん使っているお兄様だから凝っていないわけがないのでね。

本当はこんな膝枕のような形ではなく、後ろに立ってやりたいのだけど、妹を立たせてやってもらうのは嫌だということですったもんだの末、この形に落ち着いた。

膝枕なんて、考えるだけでも心臓がおかしくなりそうだけど、深呼吸。

ハグと同じだ。慣れです慣れ。ハグだって正直いつまで経っても慣れないけれど、もうこういうものだと思って割り切ってます。大丈夫。

お兄様も指示された通り横になり、頭を預けてくれた。

 

「しかし、いい頭皮とは。薄毛の心配をされているみたいだな」

 

この状況にお兄様も照れが無いわけではなかったらしい。

意識を逸らすためか、話を振ってくれたお兄様の一言に、つい噴出してしまった。

 

「お兄様でも、そんな心配を?」

「別に自分の容姿にこだわりはないが、深雪の前では恥ずかしくない恰好でありたいと思うからな」

「遺伝的にも問題はないと思いますが…そうですね。もしそうなったとしても――例えば先生のように剃髪されたとしてもお兄様は素敵だと思います」

 

薄毛のお兄様があまりにも想像がつかなくて、つい先生のような頭を想像してみたけれど、剃髪したお兄様――有りだと思います。

そう説明したのだけれど、渋い顔を浮かべられた。

 

「それは…少し嫌だな」

「あら、先生とお揃いはお嫌ですか?」

「お揃い…いや、そもそも薄くなるのと坊主頭は別だろう」

 

あら、すり替えたのがばれましたか。

 

「そうですねぇ。気になるのでしたらウィッグもありますし」

 

今の技術なら植毛も自然に見える。こういった技術は視力同様100年の間に画期的に進歩していた。

 

「…やめよう。この話はダメージが大きすぎる」

 

お兄様には無縁のお話だと思うのですがね。でも男性にとってはしたい話ではなかったか。

今のうちに頭皮を解してケアしておけば抜け落ちる原因の一つは解消できるかと思うのだけど、そっとしておこう。

何より一番抜け落ちる原因のストレスでも落ちていないのだ、きっとお兄様にそっちの心配はいらない筈だから。

 

「どこか痛いところはございますか?」

「いいや、とても気持ちがいい。このまま眠ってしまいそうだ」

「眠っていただいてもよろしいのですよ」

「深雪を枕にしてか?それは魅力的ではあるが、もったいなくて眠れないよ」

 

妹の膝枕では休まらないか。残念。

 

「本日もお疲れ様でした」

「なんだったか。マッサージをしてもらったらお小遣いをあげる慣例があったと聞いたことがあるな」

 

…ん?ああ、父親が肩たたきをしてもらった子供にご褒美としてお小遣いをあげるというアレですか?

周囲にいない一般家庭の慣例――というか、買ってほしいモノ欲しさに頑張るお子様たちの精いっぱいの媚ですが。

 

「おねだりがしたくてマッサージをしたわけではございませんよ」

 

むしろいつもいただいてばかりのお兄様への恩返しのつもりなのに、何か貰っては本末転倒になってしまう。

 

「いいじゃないか。俺があげたいんだ。何が欲しい?」

 

あら、まあ。お兄様、そんな甘やかしますといつかできるだろう奥様に調子に乗られて大変なことになりますよ。

妹はそんな真似しないけど。

 

「それでしたら――お兄様、起きていただいても?」

 

座り直したお兄様に身を寄せるようにソファに手を突き、頭を差し出す。

 

「頑張った、と褒めてくださいませ」

「……そんなことでいいのか?」

「それがいいのです」

 

頭にぽん、と手がのる。

そしてなでり、と撫でられて。

 

「大変だっただろう?おかげでとても気持ち良くなったよ。ありがとう」

「うふふ。どういたしまして」

 

 

 

次の日。

 

「お兄様、これは?」

「昨日はいい音の語呂合わせでオルゴールの日だったらしいからな。昨日頑張ってくれたご褒美だ」

 

手のひらサイズの可愛らしいオルゴールをいただいた。

ねじを巻くと、可愛らしい音色が響く。

 

「素敵な音ですね」

「気に入ってもらえたならよかったよ」

 

この夜、コーヒーを飲みながらぴったりくっついてオルゴールの奏でる音色に聞き入ったのだった。

 

 

 





なんて、次の日はまた11月11日でそんなことはできないですけどね。次の話とは繋がっていないということで一つ。
パンケーキの日で和紅茶の日で、ハンドクリームの日でいい頭皮の日でいいオルゴールの日でした。
朝からパンケーキ…カリカリベーコンがお供だったんじゃないかな。妹はベリーとかのせてそう。
真夜様からのハンドクリーム、この時はまだ変なものはきっと入ってない。婚約後なら…何か仕込みそうだよね。(←
この時の妹はお兄様主人公のギャルゲーが進行していると信じていた。そして妹はサポキャラかと思っていたり。
そんな美少女なサポキャラはいません。どうあっても深雪ちゃんは主役級。高難易度ヒロイン枠です。
お兄様いくら柔軟をしていても頭はめちゃくちゃ凝っていそう。妹の膝枕に抵抗を感じないわけではない。だが嫌なわけでもない。顔には出さないけど。
しかし、お兄様が薄毛に悩まされてしまった…きっとそんな必要無いのにね。眼鏡が必要とされない発展した技術があるんだからきっと薄毛治療だってすごい技術で何とかなっているのでは、と。
いや!だからお兄様は〇げる心配ないから!きっと毛根も最強だから!
…失礼しました。

お読みいただきありがとうございました
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