妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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IF設定。もしも古都内乱編の直後、九島光宣が一高にやってきたら。

ホームステイネタです。が、序盤の説明で終わってしまいました。こんな設定で一緒に暮らし始めたらいいなぁと。


11月の記念日 11/12

 

11月12日

 

 

「と、いうわけでこちら、九島光宣君です」

「いやいやいや!どういうことよ?!」

 

エリカちゃんのツッコミは今日も冴えわたり、食堂に声が響き渡った。

その声は生徒たち皆の声と代弁しているようで誰も声を上げることなく、固唾を飲んでその先を見守っている。

まあ、この非日常の光景を誰もが気になっているだろうから。

 

――この、暴力的かつ圧倒的な美貌が二つも並んでいる状況を。

 

 

「彼は二高の生徒会役員でもあるのだけど、一高のカリキュラムを是非二高の参考にしたいからと出向――じゃないわね、留学という形で学びに来たのよ」

「…それって普通教員たちの役目じゃないの?」

「僕が無理を言って留学させてもらったんです」

 

エリカちゃんは光宣君を直視しないよう私を中心に視線を向けていたけれど、その説明は僕がしますね、と光宣君が引き継ごうとしたことでうっかり直視してしまったのか、うわっと眩しそうにして顔ごと反らした。

その反応にくすり、と光宣君が笑ったのはその動きが今まで自分が受けてきた反応の中で初めて見たコミカルなモノだったからだろう。

こうも遠慮なしに正直にまぶしっ!と顔を背けられるのは中々ない反応だったでしょうから。

微笑む光宣君に楽しそうでよかったねー、とニコニコして見つめていると、ざわわっ、と周囲がざわつくがそちらの方に光宣君は気を引かれることなく説明を再開した。

こういったざわつきは私たちにとって日常茶飯事だからね。気にするほどのことではない。それにもし何かがあればお兄様が教えてくれます。

何事も無いように光宣君は経緯を掻い摘んで説明してくれた。

魔法科高校は一高から九高まで同じ系列の学校ではあるが教育方針は全く違う。専門分野がそれぞれ分かれているのだ。

だからカリキュラムも当然違っている。

特色もバラバラの九校ではあるが、実力が拮抗していなければ強い学校ばかりに生徒が集中してしまう。

特に入学前は百家でもない限り入学前に魔法技能を教わる場もほとんどない。塾のある地域もあるが都市部に集中してしまう。

自分の特性を見分けることもできず、後の就職の為自分を磨き上げられる学校として、強いと有名な学校を選びがちになる。後は地元の高校とかが選考基準になるけど、将来を考えれば実力を伸ばした方がいいからね。

ここ5年連続九校戦で優勝している実績のある一高を進学先に考える受験生は多くなるはずだ。

十師族が二人同時に入学していたとはいえ、実力が偏りすぎているよう映るだろう。

特に今年はその二人が卒業したはずなのに二位との点差を引き離し、ダントツの一位。

優勝をかっさらわれた理由に十師族を言い訳にすることもできない、文句なしの優勝であった。…まあ、実際は隠れ十師族がいたわけだけど。

しかしこの結果に各学校側は焦りを抱いた。

ただでさえ少ない魔法師の卵をこぞって一高に持っていかれたのでは溜まったものではない。定数が決まっているとはいえ、生徒たちの学習意欲にも関わる。

これだけ結果を残せるのはもしや一高のカリキュラムに何か秘訣があるのでは、と考えるのもおかしな流れでもなかった。

生徒会にもそんな議題が上がる中、いち早く学習の差に気付いたのは水波ちゃんとの交換日記で授業内容を教えてもらっていた光宣君だった。

実技の方針が大きく違っている、と。

一年生ということもあり基礎学習に沿っているのだが、早い段階で互いを競わせる授業というのは二高にはなかった。

まずは基礎を、それから自らの特性を、という教育が間違っているわけではない。だが、実践をさせ、何が得意かをぶつけ合って見つけ出し、伸ばしてく方法は満遍なく学ぶ方法より先に得意魔法が見つかりやすく成長を促す。

新人戦で一般生徒が活躍できるのはこういう差ではないか、と光宣君は学校側に進言した。

この話が上がった際、二高側は当初教員が動く予定であった。

基本生徒主導で学校行事は行わせているが(九校戦やコンペ等)学校の授業プログラムを生徒に任せるとは、いくら提案が生徒からのものであってもすぐに了承はしなかった。

だが、相手は次期当主になることは無いだろうが十師族。それも九島老師が可愛がっているお孫様となれば、教員たちも彼の要望をそれなりに形にした方がいいのでは、という緊張感まで抱いたのではないだろうか。

 

(…私の憶測だけど、恐らく彼の優遇具合からそれはあながち外れてはいないと思う)

 

表立って光宣君が可愛がられていることは知られてなくても、校長クラスはそれとなく情報が入ってくる――というか閣下から圧がありそうだよね。

あれだけ学校通ってないのに単位取れてるわけだから。いくらか優遇はしてもらってるはず。

実力を示す場にほとんど出られてないのに授業もほぼ出ていない彼がコンペに出るのも恐らく教員たちのフォローがあったと思われる。…だから光宣君も微妙に遠慮して学校に馴染みきれないんだろうけど。

話を戻して、学校サイドとしては自身たちもテコ入れが必要だと思ったタイミングで十師族当主のご子息からの提案。他校に出し抜かれる前にこれにいち早く乗っからない手はなく、すぐに臨時教員を雇って動き出すつもりであったのだが、そこでもって彼が提案したのだ。

 

「『ただでさえ教員は少なく、生徒を見るギリギリの人数しかおりません。それに、他校の教員が他校のカリキュラムを教授してもらうなど、なかなか複雑なことでしょう。わが校にもプライドがありますし、正面から一高に借りを作るのもいかがなものか』と。

ですので、生徒の自主性を重んじた形で、生徒会役員を代表して僕が留学という形で学んで来たらどうかと提案させていただきました。僕は学校を休みがちでしたが授業には付いていけていましたので学校を長期で離れても問題はないと判断されたのと、他校での学びは単位を取得させる良い理由にもなったようです」

「あ~、出席日数足りないのに単位が取れたらいくら優秀でも贔屓されているってなるけど、外部に行って学んできた実績でカバーするって?何をしていたかなんて在校生にはわからないものね」

 

流石エリカちゃん。学校の火種に敏感だね。いくら優秀でも高校は出席日数が必要だ。

体が弱いからと言っても一度のみならず何度も特別措置が取られれば優遇されすぎだと非難を免れない。

特に彼は十師族。いらぬ禍根を生むわけにも、との大人たちの思惑も読み取ってる。

相変わらず察しが良いったら。

そして、そんな計画を立て見事その流れに持ち込み、自分の理想を実現させる光宣君もなかなかだけど。

 

「いいの?そんな裏事情こんなところでばらしちゃって」

「こちらのカリキュラムは参考にさせていただきますが、すべて同じにするわけではありません。やはり学校にはそれぞれの特色が無ければ成り立ちませんから。ライバルが全くいなくなってしまえば一高も成長が停滞してしまうかもしれないでしょう?いつまでも一高と三高だけがライバル関係、という構図は面白みが無いでしょうから」

「いいね!気に入った」

 

光宣君の挑発交じりのライバル宣言にエリカちゃんはぐっと親指を立てた。

ここ数年の九校戦は確かに一高と三高が競っていた。三高は一般生徒でも魔法技術が高い。それは身近に争いがあったから。今でも緊張感がある地域では生徒たちの意識も違う。一条君と吉祥寺君が入ってからは特に成長著しい。

一高もうかうかしていられない、と発破はかけるも、今回これだけ圧勝してしまうとうちの生徒もダレる可能性もあった。

それを彼はライバル宣言をする形で引き締めてくれている。

これはわが校にもプラスに動く、互いに成長を促すことに繋がる発言だった。

 

「気に入った、て…お前は何様だよ?」

「一年生相手なんだからただの先輩でしょ。それとも何?留学生を気に入ってなんか悪い?」

「ま、まあまあ二人共」

 

自然と空気をいつものものに戻す西城くんと、それに乗っかるエリカちゃん。無自覚にほんわかさせてくれる美月ちゃんのおかげで食堂はいつものにぎやかさを取り戻しつつあったのだけど――

 

「ふふ、賑やかでしょう?」

「ええ」

 

私たちが顔を見合わせて微笑み合うとまたもざわっと視線が集中。そしてひそひそ声が至る所から上がる。

 

「あ、あの達也さん、あの二人距離が近くないですか!?」

「そうか?」

 

ほのかちゃんがつんつんお兄様の袖を引くので二人の距離もいつもよりちょっと近いよ!ほのかちゃんの涙ぐましい努力が見える様。

だというのにお兄様ったらしれっと首を反対側に傾げていた。反対に倒せばくっつくのに。…くっついちゃうから反対にしたんだろうけども。

ああ、先にほのかちゃんと雫ちゃんが座っているのは私が光宣君を迎えに行っていたから。

 

「それよりいつまでも突っ立っている時間はないぞ。深雪、食事を取りに光宣と行っておいで」

「行きましょう、光宣君」

「はい」

 

光宣君は食堂自体が珍しいみたい。二高にも当然あるけれど、彼は彼用に用意された食事があったのでこうして学食を利用するのは初めてなんだとか。

うーん、過保護。いや、彼の場合仕方が無いんだろうけどね。

ここでは一般生徒として普通に過ごさせてもらう許可を取っているので、一緒に昼食を選ぶ。

 

「へぇ、定食だけで色々種類があるんですね」

「選ぶのが難しかったらお肉とお魚と精進料理のどれかに絞って選んでみて良いと思うわ」

「そうですね…では魚で、煮魚にします」

「ふふ、なら今晩はお魚ではなくお肉メインにしようかしら」

「!それは楽しみです」

 

私もお魚のフライ定食にして席に戻るとお兄様の横にはほのかちゃんと、空席が二つ並んでいる。

いつもなら私が隣、なのだけれど――

 

「光宣君はそっちね」

「わかりました」

 

光宣君をお兄様の隣に、私がその光宣君の隣に座るとどよめきが起こった。

 

「え、と…今達也さんからお話を聞いたんですけど、九島さんは達也さんたちの家にホームステイをしている、と」

 

そのどよめきを精一杯気にしないようにふるまいながら美月ちゃんがぎこちない笑みで質問する。

エリカちゃんの切り込み隊長役も多いけど、美月ちゃんもなかなか聞きづらいことを直球で突っ込んでくる。

弱気で大人しめな文芸女子、って感じだけど、見た目を裏切り美月ちゃんの好奇心や行動力って結構高いんだよね。

 

「光宣で結構ですよ」

 

美少年の微笑み!美月ちゃんははわっ!と固まった!!連動するように吉田君もがたっと動いたけれど、不安に思うことはありませんよ。光宣君の微笑は無差別攻撃だし、美月ちゃんの頬が赤いのは私の時と一緒だから。特別な感情が芽生えたわけではない。

ここで一旦自己紹介を軽く。エリカちゃんたちは京都で一度会ってるから割愛された。

 

「それで、達也さんたちのお家にお邪魔している件ですが、祖父にお願いしたんです。どうせ一高に行くなら少しでも達也さんたちとご一緒したくて。我侭を言いました。大分渋られましたけど、お二人からの後押しもあってこの留学が叶ったんです」

「随分お二人を慕っていらっしゃるんですね」

「九校戦での活躍を見て、すごく感動したんです。深雪さんはもちろんですが、達也さんの昨年の活躍や、そのサポート力も素晴らしくて」

「中学生でそこに着目するなんて、光宣君は見る目があるでしょう?」

「…ああ~、もしかして、ご自慢の兄さんに一目置いてくれたことが嬉しくて初めから好感度が高かったってこと?」

「それもあるけれど、光宣君は素直で可愛くていい子だもの。それだけでも十分好きになっておかしくないでしょう?」

 

光宣君とその光宣君が憧れるお兄様すごいでしょ、と自慢をしたら、なぜか光宣君を好きな理由の話になった。

お兄様の実力を見抜き慕ってくれるところはもちろん好感を持つきっかけにはなるけれど、彼自身の魅力もあるよ。

尻尾ぶんぶん振り回して好き好き!って慕ってくれるわんこは愛でる一択でしょう?

そう答えたら皆が私からお兄様に視線を集中させた。

遅れてお兄様を見ればお兄様も不思議そうなお顔。なぜ自分に視線が集まる?とお顔に書いてありますね。

 

「達也はいいのかい?」

「京都でも似たような質問を聞かれたような気がするが、仲が良くて何が悪い?」

「いやぁ…悪かねぇけど、さ」

 

西城くんにしては歯切れの悪い物言い。皆もなんだか戸惑ってるようだけど…あ、もしや。

 

「もしかして私は恋バナを期待されているのかしら」

「恋?深雪がか?…ああ、光宣か。考えたことも無かったな」

 

私の言葉に皆が気まずげな表情に変わったことでどうやらビンゴだとわかり、お兄様は私と光宣君を見比べてから、お目目ぱちぱち。

以前、考えたことはあったみたいだけど、交換日記をするにつれその関係性は大いに変わり、今ではお兄様と私の可愛い息子のポジションに落ち着いたことでそのような誤解など生まれる隙も無くなった。

が、そんな事情を彼らは知らないわけで。

 

「水波ちゃんと一緒で、親戚のように受け入れていたからこの距離で落ち着いてしまったみたい。ホームステイ――といってもそもそも語学留学でもないのだからこの言葉自体可笑しいものなのだけど、編入とも転入とも違うし、ある種異文化を学びに来るようなものでしょう?留学という形を取っていることからそう呼んでいるんだけど、その影響もあるのかも。ホストファミリーとして受け入れて家族同然で暮らしてもらっているから。家ではお手伝いもしてもらっているのよ」

「手伝いといっても、子供のお手伝いみたいなもので。食器を拭くのだってお皿を割ってしまったりして失敗ばかりで」

 

しゅん、と申し訳ないと縮こまる光宣君。耳が垂れて尻尾がしょんもりしている幻影が見えますね。

割れたお皿で怪我をしなくてよかった。ちなみにそのお皿は後でこっそりお兄様が直してくれていた。お気に入りだろう、って。

母と三人で使った食器はどれも思い出深くて、これもその一枚だったから気付いてくれて嬉しかったなぁ。

 

「慣れていないんだもの。仕方ないわ」

 

むしろそのおかげでお兄様と懐かしい思い出に浸れたので感謝したいくらいだ。

気にしないでと伝えるけど割った本人は心臓に悪かったよね。

 

「ちなみに俺も初めは皿を割ったぞ」

「え、達也君が!?」

「力加減を誤った」

「その話は初耳です!」

 

エリカちゃんが驚きの声を上げ、皆も目を見開いてお兄様を見つめた。

お兄様がその手の失敗するなんて思わないものね。その失敗はただ力加減を間違えただけではないのだけど、お兄様の目が、ここでは言ってくれるなと言っているのでお口チャック。

でも光宣君が目を輝かせて教えてほしそうにしているので帰ったらきっと逃れられない。お兄様も光宣君には甘くなるからきっと教えてあげるのだろう。その光景が目に浮かぶようでほっこりしちゃう。

今はこの話はこれ以上しない、とお兄様が食事の続きを促し、光宣君うずうずとしながらも『待て』を受け入れた。

その様子を見た皆は生暖かい視線を向けていた。

 

「なんていうか緊張した私たちがばかだった、みたいな?」

「まあ、上手くやってんならいいんじゃねぇか?」

「…深雪とくっつけば可能性があったと思ったのに」

 

…ほのかちゃんの発言が不穏です。というか私と光宣君がたとえお付き合いすることになったからといってお兄様の意識が変わるかといわれると今まで通りだと思うけど。

いや、でも妹離れが起きればお兄様も寂しくなって人恋しくなったり?…するかな、お兄様が。

だとしても友人たちと賑やかに過ごせれば満足しちゃいそうだけど、どうだろう。

だけど妹が離れればアタックはされやすくなる?やっぱりもう一度検討した方がいいかな。光宣君のことが終わるまでにまた計画を立てよう。

 

「しっかし、異文化って。同じ日本の学校なのにな」

「でも東京と京都ってちょっと別世界みたいなところありますよね」

「確かに」

「それに何より――二人の家に滞在してるんでしょ。大丈夫なの?」

「水波さんもいるので三人の家だと思うのですが――大丈夫、とは?」

 

こてん、と首をかしげる美少年の威力に見ていた生徒は眩しい!と顔を背けた。わかる。美少年のそれはもはや攻撃。

正面の西城くんだとてぽりぽり頬を掻いてる。エリカちゃんも美月ちゃんも吉田君も視線を逸らしていた。

 

「ああっと、ほら、二人の仲の良さに中てられたりとか」

「ちょっとエリカ、何を誤解しているの?私たちは普通に過ごしているだけよ」

「その普通は絶対普通じゃないから!」

 

…まあ、普通より仲が良いことは認めるけども。だけど光宣君の前でべったりなんて…しないようにしているんだけどね。お兄様がね。ちょっかいを掛けては水波ちゃんに怒られてます。賑やかなお家です。

 

「僕には普通の兄妹というものが良くわかりませんが、お二人が仲良くしているのを見るのは楽しいです」

「……こりゃ大物だ」

「あれを普通に見られるんだ」

「達也の言うように案外家では普通、とか?」

「案外とは何だ。それに家ではって、学校では普通ではないみたいじゃないか」

「達也さんはまず普通を知るべきです」

「普通妹と見つめ合って微笑むなんてありえないから」

 

あ~、そう言えばそうだった。

普通の兄妹は肩を抱くとか腕を組む以前に無言で微笑み合うなんて早々ないことだった。慣れって怖い。

お兄様はそれもか?と訝しんだお顔に。でも思い出してください。中学まではそんな感じでしたでしょう?ここでそんなこと言わないけど。

 

「でさ、今頃こんなこと聞くのもあれなんだけど、よかったの?一年同士で食べなくて」

「明日からはクラスの人たちと食べることにしています。今日こちらに参加させていただいたのは――」

「俺の提案だ」

 

これは通学前に話し合って決めたこと。

何かと注目される私たちと光宣君が登下校を共にしていて気づかれないわけがない。

つい先日も七草先輩がお兄様を訪ねただけで婚約するのではとうわさが駆け巡ったくらいだ。

説明も無しにそれを目撃した生徒たちが変に妄想の翼を広げるんじゃないかと危惧した私たちは、生徒の半数以上が集まるこの場を借りて説明してしまえばいいのでは、と結論に至った。

 

「ここで皆に事情を話せば正しい情報が拡散されるだろうからな」

「まー、確かに速攻で広まるでしょうけど」

 

ちらり、と周囲を見るエリカちゃん。そうだね。すでに端末を操作してどこぞに連絡しているように見える。…あれは演劇部に送ってるのかなぁ。

 

「なら、その正確な情報というのを教えてもらいたいんだけど」

 

と突っ込んだのは吉田君。風紀委員としても聞いておきたいってとこかな。揉め事が起きるとは思わないけど学校の事情を知っておくのは彼らの業務にとってある程度必要なことだ。

 

「そもそもどうしてホームステイなんだい?九島ならこちらに別宅くらいあるだろう」

「確かに、そこから通うことを最初は提案されました。ですが…憧れていたんです。普通の暮らしというモノに。

ここ最近は調子が良くなってきているのですが、うちの者はいつも気を張り詰めていて。それだけ心配をかけすぎたということなんでしょうけど、息が詰まると言いますか。

だから普通の生活というモノをしてみたかった。そこで以前お世話になった達也さんたちを頼ったんです。

先日、京都で体調を崩した時の対応が良かったことで達也さんたちの下でなら預けてもいいと祖父も許可を出してくれて」

「普通の暮らし、ねぇ」

「まあ、使用人のたくさんいる家からしてみれば一般家庭の枠には入るんじゃない?」

 

ううん、普通の暮らしってところが引っかかってるみたいだけど、うちの生活は一般的で間違いはないよ。

水波ちゃんがメイドさんだったりするけど、表向き従兄妹だし。自分のことは基本自分でやっているから。

 

「そっちじゃないことわかってて言ってんだろ」

「だって彼、受け入れてるじゃない」

 

こそこそ話すエリカちゃんと西城くん。聞こえてますよー。普通じゃないのは家じゃなくて住人の話ですね?

 

「楽しい?」

 

ずっと黙って聞いていた雫ちゃんからの唐突な質問に、しかし光宣君は目を見開いたのは一瞬、とてもいい笑顔で返す。

 

「とても」

 

それは綺麗な笑みで、本心から言っているのだと誰もがわかるものだった。

そっか、と返した雫ちゃんはすごい。あの光宣君の笑みに照れることなく返している。

尊敬の視線を向ければ、

 

「深雪で耐性が付いた」

 

とのこと。

え?!私声に出してたかな?と思ったら今度はお兄様から。

 

「顔に書いてあったぞ」

 

どうやらお兄様にも筒抜けだった模様。恥ずかしい。淑女の仮面は何処に行ってしまったのか。

 

「照れる深雪も可愛い」

「もう、何言ってるのよ雫」

「雫の言う通りだろう」

「兄さんも!」

 

今日の主役は光宣君なのに何を言ってるの、と窘めるけど二人は通常運転とばかりに気にしない。

 

「ふふ、お…深雪さんは愛されてますね」

 

今完全にお母さんって言いかけたね。修正できてよかった。ここでその設定を持ってきたら大変な騒ぎになるだろうから。ごっこ遊びはお家だけですよ。

危なかったねと微笑みかければ、うっかりしてました、と眉を下げて反省顔。可愛いね。何でも許しちゃいそう。

お兄様も頭にポン、と手を置いて気を付けろよ、とサインを。

それを見たエリカちゃんが一言。

 

「何か後輩っていうより親子のやり取りみたい」

 

…相変わらず鋭い。

思わずドキッとしてしまったけれど、表には出さない。

 

「だって、兄さん」

「ホストファミリーだからな。それも有りかもしれんな」

「ちょ、ちょっと!冗談だからやめてよ」

「そ、そうですよ達也さん!一個しか違わないんですからお兄さんでしょう?!(達也さんがお父さんになったら必然的に深雪がお母さんになっちゃう!)」

 

おっとほのかちゃん、心の声漏れてますよ。そしてビンゴです。私が光宣君の母です。

 

「俺の兄妹は深雪だけだからな。それなら父親役の方がいい」

「達也さんが僕の父親ですか?それは素敵ですね」

 

こっちはこっちで便乗して学校でもごっこ遊びをするつもりかな?そうすればさっきのような言い間違いもそういう設定だと説明すればおかしくない…のか?高校生がおままごとって変に思われるよ。

 

「ということは光宣の母親は深雪になるから、俺たちは夫婦になるわけだ」

「「「「「「はぁ!?」」」」」」

 

 

 

食堂中が大混乱に陥り、食後のコーヒーが飛ぶように売れた。

 

 

 

 





長くなりそうだったのでぶった切りました。
留学の日で、育児の日だというので二人のお子さんに来てもらいました。
設定適当ですみません。留学理由浮かばなかった。一時留学。京都コンペ終わってすぐ、年末までの二か月間限定で一高生徒になってもらいました。
疑似家族生活楽しい。
妹は光宣君の母親にはなるけどお兄様の奥さん()は無理!恥ずかしい!!受け入れがたいけどノリノリのお兄様から逃げられない。
多分この時ほのかちゃんは魂が抜けてた。光宣君は何でお母さんまで驚いているんだろうと不思議そう。だって両親だもの。夫婦で間違ってないでしょう?
お兄様はわかってて言ってる。困惑する妹も可愛い。…これで無自覚なんですよ。困ったね。
仲間たちは妹と光宣君の関係がイマイチつかめていない。
そんなに仲良くしてるのに達也から睨まれてない、だと!?と驚愕、困惑中。



家に帰宅してから、

「それで、お父さんはどうしてお皿を割ってしまったんですか?」
「あの時はまだ深雪からの「好き」という言葉に慣れていなくてな。つい手に力がこもって」
「…私のお伝えしたタイミングも悪かったの」

お兄様が力加減を間違うことが信じられなくて尋ねたら好きって言われて動揺して割ったとの回答に、お父さんたちにも初々しい時期があったんだ、とにっこり笑顔に。馴れ初めを聞いているようで嬉しい。
水波ちゃんはそんな光宣君の笑顔に心臓が危ない。…同じ屋根の下で生活していることに慣れない。でも最後の頃にはきっと「達也様!光宣様のお父様としての自覚を持ってくださいませ!」とか叱ってそう。

一応設定として、体調管理を徹底することを条件に司波家で預かることに。
学校の間はピクシーが主に光宣君の体調チェック。もし数値が変動したらすぐお兄様に連絡がいって保健室へ。
光宣君も体調を崩したら即帰還になってしまう!と言うことをちゃんと聞く。老師からしたらいつもそれくらいしてくれていれば…でしょうけど高校生ならもう少し、と無理をしちゃうのもおかしくない。
この四人の共同生活を見てみたい。きっとほのぼの家族。お兄様の猛攻はきっと鳴りを潜めてくれる、はず。でも二人きりになるとね…
こんなことがあったら一条君が血の涙を流してそう。ま、IFなので。


お粗末様でした。
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