奈落2 ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら 作:アズカバー
奈落X、リリースがもうすぐということで先に前編を。
ごめんなさい戦闘シーンと029ちゃんの登場はもうちょい先です…配信日に合わせたいんです。どうか主のわがままを許してください。
多くの応援コメントを下さった皆様には頭が上がりません!ありがとうございます。
前書きはこのくらいにして本編はどうぞ。
〈エマ視点〉
私たちは
「エマ、傷は大丈夫か」
「こんなのかすり傷!今はまたあの赤い化け物が来る前に逃げないと!あっ叫ぶ蜘蛛の方ね!」
「D-033だな…アイツもそろそろ何とかしないとな」
血溜まりによって塞がられていた道を進み、真っ赤な廊下を走り抜けた…もううんざりだ…この施設にも、血にも…
「何でどこいっても血があるのよ…アクシュミミドリゴミヤロウ…ユルサナイ」
「あの〜エマさん?呪詛漏れてますよ」
「……。」(ま、魔人より怖い顔してる…)
今誰がとんでもなく失礼な事考えたな…どうせオリバーか…よし、機会があったらぶん殴ってやる。
そんな思いを抱きながら奥へと進んだ。途中、何か水飛沫のような音がしたが、多分S-001だろう。なら怖くない…二人が揃ってるなら負けるわけがない…音的にあの蜘蛛は違うはずだし…大丈夫…
そんな不安を覚えながらも進み、奥につくとやけに広い部屋に出た。少し先には昇降機もある…ようやく次の階層だ。
「……昇降機に着いたな…動きそうだしさっさと──」
ビビッと小さい無機質な音が響くと、壁が動いて道を塞いだ。
部屋を文字通り壁が埋め尽くしてしまった動く鉄の2枚の壁。一瞬山でも現れたのかと思うほどの重さが、エーベル君の目前で巨大プレス機は行手を塞いだ。彼が後一歩でも前に出ていたらと考えると──
「エーベル君!」
「……!??」(大丈夫!?怪我は!?)
「ッ!!??……ないが…し、死ぬところだった…この赤いマークからの前から先に出てたら間違いなく……なんですかねこれ…プレス機?デカすぎんだろ…!壁かと思ったわ!何潰すってんだよこんなので…!!」
全くだ…これも罠の一つなのか…それとも何か意味があるのかな…ひとまずはこの先に進む方法を考えないと。
「仕方ないか…左右の部屋を調べよう。」
左の部屋にはボタンと赤い石以外目ぼしいものは無かったが、右の部屋には四つのランプとボタンのいつものが置いてあった。
「よし、二つはもうついてるからあとはこれだけだな」
なんとも簡単に終わっちゃった…でも、こんな簡単な事で罠が解けるのかな…
「(グイグイ)」(エーベル、アレは?)
「どうしたエンリ…ん…?」
相変わらず会話もなく話す二人は同じ方向を見ていた。
青い画面が光ってる?…ボタンを全部押したからかな
「……通行許可書をお取り下さい?…これのこと?」
「…っぽいな」
『謎のチップ』を手に入れた。
「…よし、進もう…こんだけやって進めません…とかないよな?」
「こ、怖いこと言わないでっ」
こんなチップひとつでどうにかなるの?とか思ったけど!
プレス機の元に行き、3人で立ち止まってしまう。
流石に勇気がいる…もしダメだったら即死だ……でも、二人は沢山頑張ってたし、ここは私が!
「わ、わゎ…私が…いっ…いッ…………ごめんやっぱムリ」
チップを持つ手どころか、恐怖で全身がガタガタ震え始めて、体がびくともしなくなった。
「まぁはい…知ってた…ほら貸せ…ここは俺が」
そう言って彼はチップを受け取り魔人化をして、一歩踏み出そうとして立ち止まり、背中を向けたまま子鹿のように震え始めた。
「……ところで二人とも質問なんだが……俺の魔人化って再生力とか上がるんだけど万が一跡形もなく潰れたりしたら治ると思うか?」
か細い声で恐ろしいことを聞いてきた。
「………?」(流石に無理じゃない?)
「ごめん…保証できない…」
「はっはっは……だよな」
乾いた笑いと共に段々と顔を青くしていき、固まってしまった。
「…………………ごめん、やっぱムリ…怖い怖い怖い」
「……」(うん、知ってた…それ貸して、私が行くから)
「……情けない男ですまん…」
「右に同じく…ごめん」
エンリちゃんはチップを握り、堂々と進んで真ん中で立ち止まった…これが強者の余裕なのかな…
「……」(ほら通れるよ。二人とも来て)
「お、おう…エンリさん、流石っす…ありがとうございます。」
「何で敬語……とりあえず行こう…オリバーが何かしてくるかも知れないし…」
おずおずとエンリちゃんの方へ進むが問題なく昇降機の前まで来ることができ──アァァァアアアアアアア!!!
悍ましい咆哮が響いた。
「ざけんなッ!!あの野郎!勘づくの早すぎるんだろ!!」
「エーベル君!早く逃げよう!」
さっきフラグを立てたせいだ絶対!二人とも、ごめん…!
「────二人とも、あの化け物を
「えっ?…う、うん!」
「……」(エーベル、ひょっとして…これを)
「条件は揃った……これなら、やれる」
地響きが聞こえてくる。もう数秒でここにやつが来る。
「エンリ、チップを俺に貸して、エマのところまで下がっててくれ…心配するな、任せろ」
彼はそういうとプレス機の中心に鉄パイプを構えた
「アァァァアアアアアアア!!!」
「来いよ化け物!」
「アァァァアアアアアアア!!!」
化け物はエーベルに飛びかかるその寸前で、彼は後方へ飛び、標的を外しその場に立ち止まってしまう。
そしめD-033はコチラに視線を向けると同時に昇降機の扉が閉まり、
ビビッと無機質な音と共に、轟音が処刑の執行を伝えた。
「やったの?」
昇降機で下に向かいながら、先ほどのことを思い返す。あの怪物は本当に死んだのだろうか。
「……おそらく…だが奴が生きていたとしても、あのプレスの中だ…そうそう這い出てこれはしない…もうアイツに追われる心配はない。」
「……よかったぁ〜」
ちょっぴり安心した。
「それより、着いたぞ…次の階層だ。」
昇降機を降りるとすぐ近くに別の昇降機を発見したが、動いていない。この道を進むしかないようだ。
「今までと雰囲気が明らかに違うな」
「この先に、オリバーがいるんだよね…」
「………」(そして、D-029も)
「行こう」
そうして奥の部屋へと入っていった。
〈エンリ視点〉
奥の部屋は何か研究室のようでガラスに赤い液体(おそらく血)の入った部屋とガラスケースに保管された救命道具が入っていた。
「こんな所にまともな救急道具なんて罠と思ったが、質の良いものばかりだな…市販では見たことない…クロイス商店のものより質がいいとはな」
少し機嫌が良さそうにエーベルはエマの手当てをしていた…傷薬に、包帯と手際よくこなしていく。
「エーベル君って器用だよね」
「(コクン)」(うん…知識も豊富だし)
沢山書類が散らばっていたのでそれに目を通しておくが、どれもこれも魔人のことについてばかりだった…その中には私がスラムで倒した怪物のことや蜘蛛の資料などもあり、責任者の名前には全て『オリバー・G・ロベリア』と名前が記されていた。
「…おいエマ、あんまし動くな…包帯に皺が入る」
「はーい…エーベル君って過保護だよね…これぐらいなら自分でできるよ?…フフ」
エマは嬉しそうに笑っている…がエーベルは顔をしかめ、捲し立て始めた。
「その血のついた手でか?いいか?こんな不衛生な施設、しかもそこら辺に死体が転がっているような場所ででた血なんてどんな細菌が混ざってるかわかったもんじゃない!…かすり傷だから、だなんて甘く見てると地獄を見るぞ…そのかすり傷一つから、感染症になったり免疫力が落ちて怪我の治りが遅くなったり最悪の場合新たな病気にかかって治らない…いや、どこかしら切断なんてことも───」
「わかった!わかったから!…私が悪かったから…うちの執事やメイドみたいな怒り方しないでよ…耳が痛い…」
凄まじい勢いで捲し立てるエーベルに、屋敷にいた頃を思い出してしまう…私も似たようなことをメイド長に言われたことがあった…少しの怪我でも大袈裟な反応する従者というのはどの家にも必ずいるんだと少しシンパシーを感じた。
「……俺は医者志望の見習いとして、客観的な意見をだな」
「(苦笑い)」(まぁ、まぁ…)
エマの言うことも分かる…分かるが心の中に留めておこう……下手に顔に出したらエーベルのが飛び火するかもしれない。
「手当はこのくらいが限界か……地上に出たら念の為病院行って検査しとけよ…あと傷口は──」
「しつこい!…心配しすぎでキモい…そんなだと結婚した時子供に嫌われるよ?」
「えぇ…話飛びすぎだろ…」
エーベルが萎んじゃった…私としては、エーベルは優しいから楽しい家庭を築ける気がするけど……心配性でおせっかいなところも彼の魅力だと思うし…
「あっ!エンリちゃんの方も見てあげたら?あの子1番化け物と対峙してるし…どこか怪我してるかもよ?」
「〈ぶんぶんぶん!〉」(私はいい!無傷!)
必死に両手を振ってアピールする。
私は傷ひとつない状態だ…多分。
「エンリは自己申告してくれるからな…お前と違って意地も強がりも言わないし…お前と違って、俺が口うるさくなる必要が無いんだよ。」
褒められるのはやっぱし照れるな…
「嫌味ったらしいわね!だいたいエンリちゃん一言も話してないでしょ!?…それに心配するべきはエーベル君自身なんじゃない?」
「(コクン!)」(確かに…!)
1番心配すべきはエーベルだよね…1番襲われるし、怪我もするし…あれ、でも出血が止まってるどころか…傷口すらない…?魔人化にそんな効果あったっけ?
「あ〜、俺はなんか治るからいいわ……さて、ここは研究室か?「話逸らした!?」なんか気味の悪い部屋だなぁ」
なんとも彼らしくない雑な逸らし方を…目が泳いでるし…でも、研究室か…あの"奈落"にはこんな場所は無かったし、ひょっとすればここにD-029を止める手段があるかも。
「…あれ?二人ともこれって…」
「……!」(これは!)
「…なるほど…何作ってるか、わかったな」
中には金属のようなものが見える…微かに動いているようだ…まるで私の斧やエーベルの鉄パイプのように。
「……なんだこれ、剣?にしては短いような──」
【魔人の槍が再び姿を消した】
エーベルが一つの試験管の前に止まる…いつの間にか持っていた鉄パイプが姿を消していたのだ。
「???」(──なんで???)
だが、ほんの一瞬、感じたことのない悪意とはまた別のナニカを感じた…今まで感じた中で最も異質なそんなナニカを。
「鉄パイプが消えたんだが!俺何もできなくなったんだが!?」
「はぁ!?何してんの早く探してよ!エンリちゃん一人に戦わせるつもり!?」
二人がすごい顔して部屋を探し回ってる…つ、伝えたほうがいいよね?
「………」(あの〜、心当たりがあるというか)
「分かるのか、エンリ!」
「(コクン)」(うん…私も経験あるから)
「私にも分かるようにお願い!」
あぁうん……いきなり難しくなった…えっと〜……エマにも伝わるように…でも割とエマにも伝わるようになったしなぁ…
「……(斧を指差す)(斧を隠す)(また斧を持つ)(魔人化する)」
「……?」
「……」
ダメだエマに伝わってない…いいやエーベルに翻訳してもらお。
「…つまり、こういうことか?…魔人化は一度その武器が姿を消して、再び遭われた時に変身できる……ってことか?だが、一度俺はその条件を満たしている……いつ出てくるか分かるか?」
「(フルフル)」(わかんない…一応壊れたりしても姿は消すけど)
私もギリギリで魔人化できるようになったし…
「だが、俺の鉄パイプは無傷だったし、俺もしてなかった…謎だ」
「……なんで会話が成立してるの??」
「その怖って顔やめてね傷つくから」
ぶっちゃけ私も最初は驚いた。
「エンリさん!?」
あ、読まれた。
「………!!」(え〜と…よし、先に進もう!オリバーを止めないと!)
「エンリちゃんエーベル君に似てきたね…誤魔化し方とか」
「(!)」(そうかなぁ〜)
「いや褒めてないから…嬉しそうな顔しないの、不名誉でしょ?」
「それは俺のセリフだよ」
そうして、奥へ奥へと進んでいった…不安を誤魔化すための彼女たちとのおしゃべりはもう終わり…ここからは決戦だ。
だが、どうしても考えてしまう。
私はオリバーに勝てるのか…いや…私たちは生きてここから出られるのだろうか…と、どうしても不安になる。
この事だけはどうか彼らには悟られないように…隠さないと。
きっと彼は守ろうとるし、彼女を不安にしてしまう。
彼はきっと口では何と言っても必要なら自分を迷わず切り捨ててしまえる人だから…彼女には、エマにはきっと伝わらない。
(せめてオリバーの正体がつかめれば…)
1番の最悪は3人まとめて殺されること…何も阻止できずにただ死ぬ…それだけは何としても避けないといけない。
「───」
声は"魂"
意思は"鋼"
力は"支"
ルーブル家の教えより
(お父様、お母様…どうか私にお力を貸して下さい──二人を守れる力を)
震える足に喝を入れ、前に進む…。
奈落の底からはいあがるために
なんか後半がうまく保存できなくて早めの投稿になりました。
負担の半分くらいの文字数ですが、楽しんでもらえたら幸いです。
奈落X楽しみですね。