奈落2  ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら   作:アズカバー

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やっと!奈落Xやったぜぇ!!ということで続きです。
お待たせしました。今回やたらと挿絵多いです。

あとグロいです。注意してね。
※誤字酷すぎたので書き直し&上げ直ししました。


第十話後編:人ではない者たち

 

 

〈エーベル視点〉

 

 

 

まずいどうしよう終わったまずいなにもできないやばいやばいやば──「エーベル君しっかり!多分もうそろそろオリバーの所だよ!」はっ!?

 

「嘘だろ…まだ鉄パイプ戻ってないだが?…もう少し待たないか?」

「いや、時間制限あるって…それに大したパワーアップはしないんでしょ?あんまし変わんないって」

 

肉壁くらいにはなれると思ったんだけどなぁ

 

「……!」(大丈夫!肉弾戦なら私がいる!)

 

「…いつも君にばかり頼ってばかりですまない」

「(ニコッ)」(こう言う時は、"ありがとう"だよエーベル)

 

「…ああ、そうだな…ありがとう、エンリ…エマは後ろで待機な」

 

「言われなくてもそのつもり…1番役に立たないし」

 

真っ白な廊下を歩いていく…今まで赤黒い血みどろな場所にいたせいか、ここがまるで異界か何かなんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。

 

「…この先かな」

「だろうな」

 

…何だか寒気がする…ふと二人の様子を伺うと、エマは膝が笑っているし、エンリもかすかに手が震えている……当然だ二人とも逞しいが、可愛い年頃の女の子なんだ…当然不安や恐怖は薄れやしない。

 

……ここまで助けてもらったんだ、二人の緊張をほぐしてやりたい。

 

「なぁ二人とも東洋にこんないい言葉があるって知ってるか?」

 

「なに急に?」

「……?」(どうかした?)

 

「まあ聞けよ…次のテスト範囲でもあるんだ……"地獄に仏"と言う言葉がある…意味は困窮や苦しみのときに予想外の助けに出会った喜びというものだ…俺としては宗派的に女神様だと嬉しいけどな」

 

「なにそれ……助っ人の心当たりでもあるの?」

「……えぇと…あっ、S-001とか」

「……?」(えぇ〜本気?)「それ本気?」

「冗談だよ…ならオレの兄貴はどうだ?」

 

「……?」(お兄さん、戦えるの?)

「自慢じゃないが、近所の野良猫に威嚇されただけで逃げる」

「ダメじゃん」

「……」(可哀想だよ)

 

そんな呆れた目で見ないでくれ…息ぴったりでビックリだよ…そもそもアイツはオリバーの部下なんだし、コチラを助ける訳ないし…でも、

 

「…絶望しかないよりマシだろ?」

「……だとしても、もう少しマシな案らなかったの?」

「(コクン)」(エマに同意〜)

 

なんだか、呆れられてるが、目的は果たせたんだ。

二人の震えは止まったようだし、問題ないな。

 

「行こう」

 

重い足を動かして白い廊下を突き進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ…オリバー…っ!?これが、例の…!」

「……!?」(D-029……!?なんで大きさ)

 

「……来たね…待っていたよ…良い反応してくれるじゃないか」

 

オリバーの背後に見える真っ赤な肉の壁は微かに蠢いている…どうやらあれがD-029のようだ。

 

「来たくなんて無かったが、状況が状況だ…最後まで足掻いてやるよ」

「ふふふ…まあ落ち着きなよ…せっかくなら見学するといい」

 

「それが、D-029って奴?…何したらこんなデカくなるのよ」

 

「苦労したよ、このDを作るのに何十万の命を使ったからね…全長100m重量8000トン…この化け物を地上に送るためにとんでもないエネルギーが必要となる…それを補いコイツが十分暴れるようにするのが、オレがここにいる理由であり、我々ロベリアの使命だ」

 

使命か…随分と小綺麗な言葉で言いやがる。

 

「そんなくだらないこと、うちの国でやらないでくれる?迷惑なのよ!」

「…どうだいエーベル君、この化け物を見た感想は」

 

エマを無視してこちらに話を振る…概ねエマに同意だが、敢えて言葉にするならば

 

「……最悪だよ」

 

言いたいことは山ほどある…だが、ここで感情的になってはダメだ…この男の顔は何かある…具体的にはわからないが、何か必ず仕掛けてやがる。

 

「いい答えだ」

 

「…ふぅ……それで、地上に脱出するための昇降機はあるのか?」

「あぁ、あるよ…ここに来る時動かないものが一つあっただろ?あれが地上へと直通になっている昇降機だ」

 

「……本当なんだろうな?」

「おやおや?エーベル、得意の心理読みで分からないのかい?」

「生憎とお前には通じないみたいでな…」

 

魔人の心どころかS-001の心理すら読めるってのに…わからない…コイツの正体が分からない…

 

「正直だね…でもそういうところ嫌いじゃないよ…むしろ好意が持てる」

 

ゾワッてした…

 

「テメーに好意なんて持たれても迷惑だ…」

 

「冷たいなぁ…時間が来るまで残り2時間53分…随分時間が余ってしまった」

 

「……オリバー、俺はお前に確認しなくちゃいけないことがある」

 

「……ん?何かな」

 

「この化け物は、殺せるのか?お前たちは奈落を浮上させて何を得る?…そして……お前は俺の体に何をした?お前たちはオレをどうしたいんだ?」

 

「…………」

「…………ッ」

 

見極めろ…コイツの正体を、目的を…

 

「…その答えをオレに聞くのか?」

「お前以外に答えられる奴がいないからな」

 

「…………クッククッ…はっはっはっ!!エーベル君…君は面白いな…特別だ…答えてあげよう…だが、意外だな…てっきりまたお兄さんのことかと」

 

「兄貴はお前をぶっ飛ばした後でも探せるが、奈落の浮上は違うんでな」

「なるほどね…さっきの質問だが、まず一つめと二つめだか…両方とも可能だ」

 

「…!!」

「さらにもう一つ、君たちにいいことを教える…オレの後ろの機械、ボタン一つでそれらができる。」

 

「な、なんだと!」

「……」(なら、後ろの機械にさえ近づければ)

 

「最後の問だが、我々はある魔人のため、(くだん)の槍を製造した……我々が生み出そうとした魔人の名は【無限の魔人】と呼ばれた存在だ…君たちも教科書で聞いたことくらいあるんじゃないかい?七魔帝と呼ばれた者たちを……我々はそのうちの一人エインス・ミランの細胞を入手することに成功した……君の槍はその細胞を元に作成したものだ」

 

 

「は?」

 

なんでそんなものが?

 

「最上位魔人の異能を完全に再現した個体は君が初めてだった。これは我々ロベリアにとっても、初めてのことだったよ。それに君は選ばれてしまった…なら君で計画を進めるしかないだろ?【人造・無限の魔人】エーベル・アルフィー…君のことをS-006と組織内で呼ぶことが決定した」

 

「そ、んなこと…勝手に決めてんじゃねぇよ」

 

なんだよ、無限の魔人って…意味がわからん。

 

「不快にしてしまったら済まない…一部の幹部からも苦情が来てね「一学生に貴重なサンプルを取られ、そのまま適応して魔人化させるなんて馬鹿なのか?」と悪態をつかれる始末さ。」

 

なんならエンリにも取られてるよなコイツ…なんでこんな余裕があるんだ?まるでやろうと思えば取り返せるとでも言いたげだが…

 

「さて、エーベル君どうするかね?」

 

「…なんだ…簡単なことじゃねーかって、なるかよ!どう考えても罠だろ…それに俺に七魔帝の細胞があるからってなんだってんだよ!残念なことに魔人の槍とやらは失踪中だ!」

 

「…確かに君は一度簡単な落とし穴に引っかかってるわけだし、警戒するのもわかるよ♪…だけど…これだけは変わらない。

 君はこれから真の魔人になり、我々の忠実な僕となる…傀儡になるようならいっそ、俺の部下にならないか?そうすれば3人仲良く助けてやろう」

 

「……私でもわかる…ここまで嘘ってわかる話、初めて聞いた…小説の悪役の方が何倍もマシな嘘つくっての…!」

 

「前ほど馬鹿じゃないらしいな」

「……そうね。私自身、びっくりしてるわ」

 

「……ならこれだけは教えておいてやろう…この機械でD-029を殺すことも、奈落の浮上も両方阻止できるのは間違いない…」

 

(…読めんッ)

 

「さて、貴重な情報もあらかた話したし、今度は君たちに質問しよう……この重要な話を知った今、どう行動する?」

 

「そんなの…決まってる…お前を倒して後ろの機械で全部止める…そうすればこの国は助かるんだろ?」

 

「あぁ、救われるさ…君たちも無事に元の生活に戻れる」

 

「随分親切だな」

 

「……退屈していたんだ…オレの仕事は誰一人後ろの機械に触れさせないこと…妨害してくるような奴らはあらかた始末したからね…君たち3人からこの機械を守る…それくらいの遊びは問題ないだろ」

 

甘く見られてるな…こっちにはエンリがいるってのに……まて、エンリがいるんだぞ?なぜ奴はあそこまで平常心で居られる?

 

あのにやけずらに何が隠されてる……この男は何者だ?

 

「……オリバー、悪いがもう一つ質問させてくれ」

 

「いいだろう…言ってごらん」

 

「……お前、本当に人間か?

「…!クッ…ククッ…クックックッ……いい顔するじゃないかエーベル君…君の、いや君とエンリの疑問に答えてあげよう…オレは」

 

「フフフフフフフフフフッ…………」

 

オリバーが話し出そうとした時、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

 

「!?まさか……」

 

「フフフフフフフフフフッ…………あ゛ぁ゛

 

「S-001…!!最悪だ、こんな時に!」

「ここは君の管轄じゃないだろ…実験の邪魔なんだが…まぁいい…せっかく来たんだ……好きに遊ぶと良い」

 

「…あ゛ぁ゛?」

 

「……」(あなたなら、十分倒せる)

「あの野郎、ほんっとしつこいわね…やっちゃえ!エンリちゃん!」

 

S-001…コイツはエンリであればどうにでもなるか…問題はオリバーと手を組まれる可能性だが…

 

「………」

 

エンリを見つめて固まっている…S-001にわずかだが、恐れの感情が読み取れる…よほどエンリの分身鏖殺が答えたらしい…オリバーの方に近付いていくが…まさか!

 

「ほう?…オレと遊びたいのか?実験体の分際で?」

 

「…あ゛ぁ゛?」

 

「全く、お前は最後まで役に立たなかったなS-001…もういい邪魔だ…消えろ…」

 

…袖を捲り上げ手のひらをS-001へ向けると、重い金属音と共に、腕が裂けるようにして砲台のようなものが生み出された。

 

S爆発音と共に、S-001の上半身が吹き飛び、肉片となった。

 

「……はっ──?」

「…ッ!?」(えッ!?)

「えっ……オリバー…な、何…その腕…!?」

 

音より早いその砲台を見た時、感じたことのない恐怖が全身を震わせた…本能が、"逃げろ"と叫んだ

 

「エマァ!!エンリのそばから離れ──」

身体が大きく体制を崩し、地面に倒れる…エンリに手を引っ張られ尻餅をついたその直後、爆発音がし温かい液体が顔に垂れてきた。

 

「……………えっ?」

 

「ッッッ──!!!?」(っ!!??)

「やはり、エーベルを守ったな…だが、その様子ではもう動けないだろ?エンリ」

 

「ッッッ!!??」(───ッ!!!!)

 

()()()()()()()()()()()()()()エンリは悶えている。

 

「君たちはエンリがいればどうにかなると思っていたらしいが…どうやらお門違いだったようだね…」

 

「エンリッ!!!」

 

「え、エンリちゃん!!!う、腕が…あ、ぁぁ…ど、どうすれば…」

「エマ!さっきの救急セットだ!急げ!!」

「こ、腰抜けて──」

 

ガチャリッと何かを引く音が聞こえた。

「──ほう、そんなのまだ残っていたのか…驚いたな…それにしても予想より耐久力が低いな…一発でこのザマか」

 

「オリバーッ!!!貴様、エンリに何をした!!!!」

 

「何って対物ライフルであっただけだが?」

「な、なんだそれは……ッ!それに、その姿は…機械?」

 

「SFモノで見たことあるだろ?サイボーグってやつさ…つまり何もかもが作られたモノだから君ではオレの心理を読み取れなかったってことさ…察しのいい君のことなら分かると思ったんだが…」

 

「んなもん、わかる訳ねぇだろ……ッ!」

 

 

「それは残念──ところで、おでましだよ魔人の槍が」

 

「……は?」

 

いつのまにか手に握られていた鉄パイプまで…その先端には赤黒い両刃がついており、禍々しい気配を纏っている。

 

「な、なんで今」

 

「魔人は宿主以外はどうなっても構わないと思っているのかもね…それよりもちょうどよかった…エンリの実践データは十分集まった所だし……エーベル、今度は君の番だ…完全な魔人となってオレと戦ってもらおう」

 

薄ら笑いを浮かべ、オリバーはそんな馬鹿なことを口走った。

 

「ッ!!……俺がお前と?…期待に応えれる気がしないな…こんな鉄パイプに槍先が付くだけで俺はそんなに強くなれるのか?」

 

正直、未完成だなんだ言われたあたりからこうなるんじゃないかとは思っていた…だがまさか真っ先に切り札のエンリが…

 

「……それを決めるのは君じゃない…ほら、十王学園学年2の力見せてごらんよ……大丈夫、殺さないよう加減はするさ」

 

ふざけんな。

──この化け物相手に何ができる?勝負すら……体育の実技や騎士団の模擬戦なんてもんじゃ無い…とてもじゃ無いが無理だ。

 

「なんだ…嬉しく無いのか?お兄さんの仇と戦えるんだぞ?……それとも…何もせずここでまとめて蜂の巣にされたいか?ほ〜ら早く」

 

腕の砲台がエンリとエマのに向けられる…

 

「ま、待て!…わかった…戦う…だがその前に…エンリの手当をさせてくれ…頼む…お前だってエンリに死なれたら困るんだろ?あのままじゃ失血死してしまう…」

 

「ふむ…いいだろう…ただし5分だ…5分間だけ待ってやる…その間に精々悔いを残さないようにするといい」

 

 オリバーに背を向け先ほど手に入れた救急パックを使い手当を行う…エンリは歯を食いしばり、痛みに耐えている

 

 (情けない…俺はなんて無力なんだ…)

 

「すまない…エンリ」

 

 傷口に止血用の布を当て傷口を抑える。

 

「…ッ!」(……ッ!)

「すまん…!痛かったよな」

 

弱々しく首を振り笑みを浮かべる…「心配するな」か「大丈夫」か「へっちゃら」か…どれとも取れる笑みを浮かべこちらを見つめる。

 

「すまない…包帯、巻くぞ」

「…布抑えるの…変わる」

 

震える手でエマが傷口を抑えるのを変わった…

 

「布を押さえつけてくれ…その上から包帯を巻く…それで出血は抑えれる……エンリ、かなり強く固定する…痛いが」

 

「(ニコッ)」(大丈夫、私我慢強いから)

 

 

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}【※グロ注意】

 

「……済まない…悪いなエマ…手伝ってもらって…おかげで助かった。」

 

何も言わずに首を横に弱々しく振る…

 

「へぇ…手際がいいね…やり慣れてる感じだ…君は確か医者志望だったね……その技術誰に習ったんだい?素晴らしい人材だ、ぜひスカウトしたい。」

 

「誰が話すかよ──二人とも待っててくれ」

 

大きく、息を吸い心を落ち着かせる。

 

 槍を握りしめ、二人に振り返って笑って見せる…我ながら不気味な笑みをしていることだろう。

 

「あんな奴とっとと倒して3人で帰ろう」

 

二人に背を向けて、オリバーと向き合う。

 

正直、怖い。不意打ちとはいえエンリが重傷を負うな兵器を何発も打てるような理不尽な化け物だ…くそっ、かに戦車とかの方がまだ楽なんじゃ無いのか?

 

「君とこんな形で戦いたくは無かったよ…だが、研究者として自分で作ったものがきちんと完成してるか確かめる必要があるからね…エンリには聞けなかったが、どうだいエーベル君…魔人になった気分は」

 

「…お前のせいで最悪だな」

 

砲台のついた腕に、近未来的な見た目の機械の体…今まで見た化け物どもとはまったく違う異質な化け物。

 

正直勝てる気がしない…

 

「なぁ、危なくなったら降伏宣言はありか?」

 

「……クックック……本当に、君って奴は面白いなぁ……ならそんなこと意識できないようにしてあげるよ……エーベル…お兄さんの行方について気にならないかい?」

 

「は?きゅうになん─「実はね…君は…いや君たちは会っている…この施設に来て直ぐに…ね」……は?」

 

──あの死体の山のことか?でもこいつの口ぶりは…

 

「魔人を作るのには人間を素体として作成するんだが、たまに失敗した個体は…生前の記憶を一部だけ持ってることがあってね」

 

「それが何だって──」

 

オリバーの声がやけに耳に響く。

 

「なぁ…エーベル……ここに来るまでにヤケにしつこい奴が一体いただろ?」

 

「……?………………待て……………そんな馬鹿なこと──」

 

「そのしつこい奴は君がプレス機で押し潰して倒したんだったな…どの個体か分かるかい?」

 

何が、何が生前の記憶だ…その場の嘘に決まってる…だいたい奴がしつこかったのは魔人パワーを察知できるからとか耳が良かったから…鼻が効くから…これらの可能性だって…理由付けなんていくらでもできる…コイツのハッタリの可能性だって…!

そんなわけない!そ、そんな…D-033がウィル兄だっていうのか!?

 

そんなわけが──

 

「……最後に彼からの遺言を君に教えてあげよう…『ロベリアから逃げて』これが彼の最後の言葉だ」

 

「──その言葉は」

 

『ロベリアから逃げて』その言葉はあの日、ウィル兄から聞いた言葉だ…その言葉を知ってるのは俺か、言った本人しか。

 

「きみのお兄さん、最後まで君を案じていたよ…いや〜感動したよ〜。なんて美しい兄弟愛──」

 

オリバーの砲台に槍が突き刺さり、こめかみに足のつま先が当たっている…基本技の三日月蹴りとよばれるものだが、コイツには大して聞いていない。

 

「酷いなぁ人が話してる時に」

 

「お前こそさっきから…ぺちゃくちゃと、よく喋る奴だ…大好きな魔人にフラれてばかりで、ただの女の子に出し抜かれた奴がなに黒幕ズラしてんだか…そんなだから見向きもされないんだよ…間抜けッ」

 

【挿絵表示】

 

 

「好き勝手言うじゃないか」

 

ドス黒い感情が体から溢れてくる。逃げろと叫んだ本能が、憎しみに任せて殺せと叫んでいる……思いのままに殺せと、その感情のままに動けと…体の全細胞がそう叫んでいる気がした。

 

槍先を外しオリバーの腕に刺さりっぱなしにする。

 

「そんなやり方が─」

 

そうして普段の鉄パイプに戻る…これでもう撃てないし、こちらの攻撃もできる。

 

「オリバーァァァア!!!」

 

大きく、腰を捻って顎をかち上げ、そのまま殴打する

 

何度も何度も何度も何度も顔を殴る。

 

「くたばれッ!!」

 

振りかぶろうとしたとき、喉に鋭利なものが突き刺さる。

 

「──妙だな…前の未完成の変身時よりパワーが上がってる…性能は変わってないはずだが……いや前より知性な下がってるのか?」

 

「ごッッ!!」

「エーベル君!」

 

先ほどの槍先を抜き取り喉元に突き立て、後ろによろめく…だが、目的は達した。

 

「…しまったな…無理やり抜いたせいか銃身が曲がったな…ひょっとしてこうなることが狙いかい?」

 

…歯を食いしばり、刺さった槍を抜き取り槍先を取り付ける…血管のようなものが伸び、鉄パイプに結び付く。

 

「…-これで心置きなくお前を殺せる…後のお前はただ硬いだけのサンドバッグだ」

 

「だと、いいね」

 

手にしただけで傷も癒えていく…これが"無限の魔人"の力なのか…だが、回復するからって慢心はできない。

 

奴のことは、鉄パイプで殺す気で殴ったが、凹みすらしない…だが槍は奴の腕に傷をつけることができる。

 

ならば、確実に急所を削っていこう。

期待していいんだよな、魔人の槍…いや、その中に眠る魔人よ。

 

「…オリバー、お望み通りの真の魔人化とやらだ…散々人を笑いものにして、エンリの腕を奪い…俺から家族を奪ったんだ…持てる全てを使ってお前を地獄に引き摺り落とす……」

 

たとえ、相打ちになろうとも。

 

金網の床を踏みつけて助走をつけ、地面スレスレまで姿勢を下げ、下から奴の装甲をむき出しにした右の顔の目を狙い、上段突きを放つ。

 

「……!……クク…危ないじゃないか…肝が冷えたよ?」

 

オリバーは上に飛び上がり、回避した。

 

「──そんなのねぇだろ?化け物が」

「酷い言い草だね…見かけで判断しちゃいけないよ、エーベル君」

 

化け物同士の戦いが始まった

 

 

 

 

 

〈???視点〉

 

 

 

 

──この光景は想像もしていなかった

 

 

青い髪の少女が少年を守ろうとして腕を失い、その傷を必死に抑えている黒髪の少女…止血を行い、槍を持って立ち向かおうとする少年…

 

だからこそ、分からない…先ほどまで命乞いをしていた筈の少年があのオリバーの互角の戦闘を繰り広げている…いや押している。

 

「…!?…へぇ」

 

だけど、奴は笑みが浮かべていた。

 

「ふぅ……アァッ!!!」

 

息を深く吸い込み、雄叫びと共にオリバーの懐に飛び込む。

 

対物ライフルを破壊されたオリバーは格闘戦に切り替えて、片腕と足を用いて少年の連撃をいなしている。

 

後頭部を狙った突きは手の甲で弾かれるが、その反動を利用し空中で回転して薙ぎ払いを首に放つが、それもまた避けられる。

 

腹部を狙った攻撃はオリバーが膝と膝で槍先を挟むことで防ぎ、空いた足で彼の顔を蹴り飛ばし、後方に飛ばす。

 

だが、彼は怯まずにまた攻撃を続ける。

 

ダメージは間違いなく蓄積させている…側から見ればオリバーが不利と思うだろう…しかし、まだ彼の攻撃はオリバーを殺すまでには至っていない…勢いはますます落ちていき、キレが落ちてきている。

 

「S-001の返り血部分が削られたせいか…まるで俺に血が流れてるみたいになってるな…こんな偶然もあるんだね…」

 

「…はぁ…はぁ…余裕かよクソが」

 

オリバーの口元はまだ笑っている…少なからず追い詰められてるはずなのに奴にはまだ余裕がある。

 

「───いいやここまでだ……本当にこんなに運動したのは久しぶりだった……楽しかったよエーベル君」

 

だが、オリバーは構を解いた。

彼の攻撃を防ぐのをやめ、胸を突き出すようにして手を広げた。

 

まるで『ここを狙え』とでも言いたいように奴は防御を、勝負を捨てた。

 

「ご褒美といこう…この胸を貫く権利を──君に贈ろうエーベル・アルフィー」

 

「舐めんなよ、ロベリアぁぁぁああ!!」

 

彼の槍がオリバーの胸を貫き、止めを──

 

 

 

 

 

「爆発反応装甲起動」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その呟きは彼には届かず、渾身の力を込めた一撃はオリバーの胸に突き刺さり──その刹那、爆音と熱風、黒煙が部屋に充満する。

 

「きゃあぁぁ!!!??」

「………!!?」(え、エーベル……!!?)

 

 肉の焦げた匂いがし、柔らかいものが落下する鈍い音が金網の床から聞こえた。

 

「──あぁ…うっ…ごぁッ!!?」

「エーベル君ッ!!!」

 

爆発を至近距離から受けた少年は利き手である右手の指を失い、全身に大火傷をおっている…うまく声も発せられていないことから喉も焼けているのだろう。

 

「うッグゥ……ゴホッ…」(い、今何が起きた…?…くそ、うまく呼吸が……傷が、治らねぇ…!?)

 

 

「エーベルくん!…なにが、何が起きたの!?」

「…ッ!……ッ!!」(エーベル!…エーベル!!!)

 

悲痛な表情を浮かべ、必死に手を伸ばす少女。

 

 切り札の斧の無い今、希望は少年に掛かっていた…だが、それを嘲笑うように硝煙を掻き分け機械の体を剥き出しにした化け物が現れる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「──ふぅ…驚いたよエーベルくん…この爆発反応装甲は対D-033対策の一つだったんだが…そこまで形を保っているとはね…槍が守ってくれたのか、それとも、槍の中身が護ったのかな?」

 

槍はほぼ壊れ、彼自身も火傷と出血がひどい…本来の彼であれば痛みのショックで気を失っているほどの重症だ。

 

 

【挿絵表示】

【※グロ注意】

 

 

 

 

 

「でも惜しいな…その魔人の異能が戦闘向けのものだったら結果は分からなかったが…"無限の魔人"の力はあくまで再生力…戦闘力の低さを補うために魔神の要素を入れてみたが…その分知性が下がるとは……フルに活かすには君では些か精神が幼かったかな」

 

「お゛り゛ぇゔあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……!!!」

 

破損した槍を握りしめ、無理やり立ち上がろうとするエーベルをオリバーは蹴り飛ばした…踏ん張る力も残っていないようで二人の元まで転がり、槍がその手から離れ、完全に折れた。

 

【魔人の槍が姿を消した】

 

「だが、君に腕を破壊されたのは想定外だったなぁ…これは君の技量を甘く見ていたオレの失態だね…さてと…エーベル君、オレは欲しいデータはある程度取れたし、先ほど言っていた降伏宣言…聞いてあげようじゃ無いか」

 

 顔にはおよそ人らしさは消え失せ、機械の顔が露出している。

 

……怒りに燃えた瞳でオリバーを見つめている少年。その顔には悔しさと憎しみが滲み出ていた…そんな少年を慰める為に青髪の少女は少年に寄り添り、もう一人は二人の盾になるよう前に出る。

 

「……!」(エーベル!…ごめん…ごめんね…!)

 

涙を流し、少年を抱きしめている…

 

「ッ!……エ、ンリ…!(…ぁあ…すまない…本当に、すまない)

 

「い、いい加減にしてよ!!何がしたいのよアンタは…!なんで、彼やエンリちゃんを苦しめるの!!…二人が、二人が何したっていうのよ!!!?恨みがあるのは私でしょ!?」

 

怒りに燃えた少女は叫んだ。二人を庇うように…生まれたての子鹿のように震える足に力を込めて必死に虚勢を振り、護ろうとしている。

 

「信じがたいが、本当に変わったな……本来はエーベル君にやらせるつもりだったが…元気そうだし、やる気もあるならお前にやらせるか…今から10秒数えるからそれまでに…二人を連れてこの下に落ちろ…D-029の餌になれ。」

 

悪意のこもった醜悪な笑みを浮かべそう宣う。

 

「……なにそれ…そんなの死刑宣告と変わらないじゃない…クソゴミ野郎…」

 

「それがお前の素か?初めて見たな…今この場で3人まとめて風穴が開いて死ぬよりはマシだろう…最大限の慈悲とも言えるな,。」

 

左腕を変形させ、もう一つの砲台ご対物ライフルが姿を現し、その銃口を3人へと向ける。

 

「ほらどうする?今死ぬか…それとも一か八かにかけて落ちてみるか…」

 

「どうする?」と銃口を突きつけるオリバー。

 

こちらからではこの男の顔を見れないが、ひどく醜悪な顔をして笑っているのだろう。

 

「二人ともごめん…私に捕まって」

「…すまん」

「(コクン)」

 

 

 

「あぁそうだ……お別れの挨拶だエンリ…『オレを恨んでくれても構わない…ごめん』ってね♪」

 

「……ッ!」(オリバー…ッ!)

 

「?」

「…何の話を」

 

 

「ああそうか…二人は知らないんだったな…気にしなくていいよ…もうどうでもいい事だからね…カウントダウンだ "1"」

 

「…二人とも、痛いだろうけど…ごめん」

二人をなんとか支えて

 

「2……3……4……」

 

「……!ウゲェ…ち、血の匂いが…」

 

「5……6……7……は〜や〜く〜♪」

 

「…うっ……もうっ!!」

 

地面を力一杯蹴り上げて血の池へと3人は姿を消した。

 

「……ふぅ…さて、これからどう成るかな…ん?」

 

ブルルル♪とバイブレーションの音が聞こえ、そこから女とも男とも区別のつかない声が聞こえてくる。

 

「ああ、君か…なんのようだい?…ああ、予定と少しズレたが計画通りエンリとS-006を接触させることに──『そんな番号で呼ぶな』怒らないでくれよ…新入り君…大丈夫だ、多少手荒くなったが、彼は少なからず死なないよ…君の遺言通りにね」

 

『……管理長、失礼ながら一つあなたに忠告を』

「何かなアルフィー隊員。」

 

『……もし、弟をこれ以上傷つけるなら俺はお前を許さない…例え、幹部だろうが、絶対に…』

 

 

【挿絵表示】

 

 

「…ここにいて随分とやさぐれだね…」

 

『ほっとけ…だいたい、お前は嘘しか言わないからな…家族に手を出さないなんて言っておきながらこのザマだ…次は無い』

 

「わかったわかった…これ以上オレから手を出すのは控えるよ…君の上司は怒ると何をするか分からないからね……それしゃ切るよ….あと、彼女にはエーベル君の名前だけ伏せてるから報告は君からお願いね。」

 

『は?』

 

「それじゃ、頑張って」

 

『おい!そんなのお前が──』

 

ブツッと何かわかる音と共に静かになった。

 

「……さて、彼らはもう喰われたからかな?」

 

 

男は静かにコチラを数秒見つめ、退屈そうに去っていった。

 

 

〈???視点〉

 

 

 

 

「うぇ゛気持ち悪いよぉ…臭いよぉ…うぷっ!!」

「……あぁ、ほんとに最悪だ…最悪だけど頼むから吐かないでくれよ」

「ゲホッゲホッ」(うっッ一年ぶりのこの感覚)

 

「…エンリ!大丈夫か?」

「(コクン)」(私は平気、二人は?)

「……全然平気じゃないでしょ!そんな怪我で!」

 

黒髪の少女、エマが無事な方の腕に肩を回してエンリを支えている。黒髪の少年も同じようにエマに肩をかされ血の池に浮いている状態だ。

 

「……二人とも、すまない」

 

「?」

「何が?」

「……何もしてやれなかった…助けるって言ったのに…アイツに一泡吹かせることもできなくて……冷静さを失って……俺は…」

 

「…私は気にしない…なんならあんなこと言われて怒らなかったら私エーベル君に幻滅してたし…エンリちゃんは?」

 

「(……グッ)」(正直、ボコボコに殴ってるところは見ててスッキリした…次は私もやるね)

 

「……二人とも…ありがとう」

 

なんだか、目の休まる光景だ…ちょっぴり羨ましいな。

ここにいてから一度もこんな気持ちになる事もなかった。

 

3人のような関係性について私の記録は役に立たない…良いなぁ。

 

「D-029の餌になれとか言ってたよね」

「ああ…これはもう、ダメかもな」

「……そっかぁ」

「……」(……喰われて終わりか…やだなぁ)

「……ねぇエーベル君、エンリちゃん…最後に君に言いたいことがあるの」

「えっなに?喰われる時は先に行けって?」

「はっ倒すわよこの重病人!」

「(苦笑い)」(二人はブレないなぁ)

「……オホン…助けてくれてありがとう…迷惑かけてごめんね…あと、これ1番大事!私ね、エーベル君のことが──「……ばぁ」

【挿絵表示】

……えっ??」

「…は??」

 

「???」(ば、ばぁ???」

 

「…いま、喋ったのか?」

 

「うん」

 

しまった、驚かせてしまった。エマなんて白目剥いてるし…驚かし甲斐があるなぁ…

 

あぁそうだ…アイツが見てるからなるべくしらばっくれないと。

「…君は…だれ?」

 

「……なぁ、俺たちは…君に…喰われるのか?(まずいな、せっかくのチャンスかもしれないのに…喉がヤバい…肺がやられてたのが不味かったか)」

 

「……お腹すいた」

やばっエーベル死にそう…しかもエマのこと振り解いて近づいてきたし、無茶だって大怪我してるのに…

 

「頼みがある…この二人だけは見逃してもらえないかッ!こぼっごほっ!!頼むッ!た、大切なんだッ…俺らどうなってもいい!だからッ!」

 

「なっ!?何言ってるの!?」

「ッ!」

 

彼は今、精神が不安定になってるようだ…ひどく焦っているし、己の怪我のことも忘れて叫んで…ほんとに危険だ。

 

「……君、美味しそう」

「……そうか…なら、一思いに食え…でもさっきの話は」

 

「ふざっけんしゃないわよ!なら私も食いなさい!エンリやエーベルほど食いではないけどね、味だけなら一級品よ!何せ美味しいものしか食べた事ないんですから!…さぁ!食うなら私も食え!」

 

あっよかった並んでくれた。これなら──

 

エンリがエーベルの袖を掴み、

 

 

「(ふるふる)」(いかないで…お願い!)

 

「エンリ…エマ……良い子だから離れて──」

よし、三人並んだ。

「いっただきまーす♪」

 

「はっ?ちょま──」

 

大きい肉壁が口のように広がり三人丸ごと飲み込んだ…途中、何かとんがったものも飲み込んだが、多分大丈夫。

 

それにしても、名前かぁ…私の名前ってなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






※挿絵の解説

1枚目
欠損部位に包帯を巻いたエンリちゃん…ぶっちゃけこの差分書くために前回救急箱生やしました。

2枚目
煽りブチ切れ顔のエーベル君…本来は叫ばせながらの戦闘カットイン的なのにするつもりだったけど技術不足で断念…その代わりエーベル君にオリバーを煽ってもらう差分に変更。
背景オーラはエインスさんのオーラに魔人要素を足したものをイメージしました。

3枚目
爆発反応装甲の煙から姿を現すオリバー
お腹の傷が赤いのはS-001を吹っ飛ばした時に服に血がつき、そのついた部分をエーベルに切られたためできた偶然の産物。

4枚目
瀕死のエーベル。
爆発を正面から受けたにしては服が無事なのはどうか気にしないでください…流石に半裸に傷だらけの体で全裸の少女と戯れるのは犯罪臭がすごいのであえなくボツに。

5枚目
これは一言で。
ただD-029を描きたかった…それだけです。

以上、挿絵紹介でした。

次回はついに本格的に029ちゃんが参加するぜ!
悪いね文字数足りなそうだったんだ。
それじゃ!次回も楽しみにしてて下さい!

※主は奈落Xが嬉しすぎてテンションがおかしくなっています。どうか温かい目で見てください。

誤字が酷いと思われるので躊躇してください。
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