奈落2  ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら   作:アズカバー

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奈落Xむず過ぎて笑う。
どうも主です。
やってみた感想は、アマリアさんが可愛い
アマリアさん推しはぜひ遊んでみてください。
前回の話にエーベル君の挿絵を追加しました…下手な絵ですが良ければ見てみてください。

それと今回、進み遅いです。





第十一話:君/貴方の名前は?

 

 

 

 

 

 

 

〈エーベル視点〉

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ここは、どこだ?)

 

「起〜き〜て〜!」ピョンピョン

 

目が冴えてくると、目の前で全裸の白髪の美少女が腹の上でジャンプして──「ぐえッ!?」

 

 

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「あっごめん…み 鳩尾しちゃった」

「ぐっ…うぅッ…み、見えていた結果だろ…ッ!」

 

人並みに鍛えていて良かった…危うくまた意識を失うところだった

 

「何故初対面で踏みつけられてんだ俺は?…つか、早く降りろ…」

 

目に悪い…いや本当に…頼むから隠す努力をしてくれ

 

「ごめん…()()()()()()()()()急いで処置が必要だったから」

「そうか…なら仕方な──ゑ…なんて?」

 

さりげなくやばいこと言わなかった?

 

「君、私が食べた時点でもう息してなくて…急いで蘇生したの…何とか息は吹き返したけど、そこから君は起きなくて…エンリの傷治す方が早かったくらい…」

 

思い返せば……内臓もやられてたし骨も逝っていた…確かに助かる状況とは思えない…だがこの子に治せるのか?

 

どう見ても中学生くらいにしか見えないが…いや魔人ならわけ無いのか?

 

「そ、そうか…つまり君は命の恩人となるわけだな…感謝する…その、なんだ…俺と一緒にいた二人は無事か?今、どこにいる?」

 

「今は別のとこ…君の治療が終わり次第会わせてあげる…もうちょっとそのままね」

 

 

もうちょっとそのまま?…そういえば何か、温かいものに包まれる感覚がする……何かに包容されているような…だが、どこか湿っていて、生暖かいというか…つか、首から下が動かないっていうか……何かに包まれているような…

 

ゑ?

 

「……あの、何すかこれ?」

「治療」

 

 

【挿絵表示】

 

 

朦朧としていた意識がはっきりとしてきて、自分の状況がようやく把握できた。

 首から下が肉でできた寝袋のようなものに包まれており、何だか生暖かい液体に全身を浸されていていて、やけに粘度が高いし、頭にずっとたられてる…服がベタベタして気分は最悪だ。

 

「全身大火傷に大量出血…骨も折れてたし、左薬指と中指も欠損してる…けど、あの爆発を食らってこの程度で済んでいるのは運が良かったね。」

 

「あの爆発について知ってるのか?」

 

「爆発反応装甲…の改造版…爆発反応炸裂装甲は失敗した魔人の武器を再利用した物。爆発と同時にDの細胞が組み込まれた金属片が飛び散って攻撃する…刺さった金属からDの細胞を寄生させて細胞単位で破壊する…人間に使うとその場でDに変貌しながら死ぬ…Dに使うと魔人細胞を破壊してどんなDでも再起不能にできる」

 

「…それをモロに喰らって、俺は死にかけていたのか…細胞破壊とかDに変貌とか…色々と怖いんだが…」

 

あいつ人になんてもん使ってんだよ…殺す気か!?……殺す気か。

 

「安心して、今君の体の7割ほど完治したから…私の唾液に万能細胞を混ぜて君の体に馴染ませるの…で、悪い部分を少しずつ治してる」

 

だ、唾液…どうりでベタベタしてると思ったら…あと万能細胞?ダメだ…わからん。

 

「その…色々と聞きたいことがやまほどあるんだが…1番大事なことを聞いてもいいか?」 

 

「いいよ」

 

「…君はオリバーに作られたんだろ?良いのか俺たちを助けて…アイツは君をボタンひとつで殺せると言っていたぞ」

 

「オリバー?…あのずっと私を見てる奴?」

「上で俺らが戦った奴」

「アイツ、監視カメラで常に見てくるから嫌い…それと、X線で私の内部まで見ようとしてくるから本当に嫌い」

 

「そ、そうか」

 

アイツ、自分で生み出したDに嫌われるとか…いいきみだ…ざまみろオリバー!ポンコツおしゃべりブロッコリー!……じゃねぇよ…嗤ってる場合かよ…疲れてんだな、俺。

 

「…えっと、もう一ついいか?」

 

「うん、いいよ〜」

「……どうして俺たちを助けてくれたんだ?オリバーが嫌いってだけじゃないんだろ?」

 

…俺が彼女の立場だとして、外から来た人間をオリバーの目を掻い潜ってまで助ける理由がない…あまりにもリスクが高いし、メリットもない。

 

「…見てたから」

「見てた?」

「アイツに追い詰められてる所も、エンリが君を庇ったのも…君が二人に笑いかけた理由も…エマが怒っていた理由も……気になったの」

 

「?」

「どうして君を庇ったのかとか、彼女は傷ついてないのにどうして怒ったのかとか…どうして君はアイツと戦うとき笑ったのかずっと…気になってる…だから君も、エンリもエマも助けた」

 

「答えを…聞きたいからか…」

「うん」

 

…参ったな、そんな大した理由が思いつかない…二人のこともそうだが、笑いかけた理由って言われてもな

 

「君の答えを聞かせて…どうしてエンリは君を庇って、エマは怒ったの?君はどうしてあの状況で、二人に向かって笑ったの?」

 

……エンリが俺を庇った理由は…正直俺も分からない………エマは…初めて会った頃だと、あの場面を見ても理不尽な目にあったから怒った…くらいにしか思わなかったろうが、今のアイツは別人のように変わった。

 

今のアイツは、俺でもたまに心理が見えない…腹黒さが薄れていて、よく分からない。

 

「二人には聞いたのか?」

「内緒にしてって言われた」

 

「そうなると、助けられた側としては二人の意図を答えるのは間違ってる気がするな…」

 

「わかった…なら君への質問だけ答えて」

「と言われてもな…まぁなんだ…笑顔自体に意味はないな…二人を不安にしたく無いから…笑ってみたってだけだな」

 

…なんだか恥ずかしいことを言ってる気がする…だってこれ、『カッコつけただけです』『精一杯の強がりです』って説明してるわけだろ?…絶対二人にだけは知られたく無い。

 

「…笑うと不安じゃなくなるの?」

「少なからず、不安げにするよりは格好つくだろ…あれだ、物語に出てくる英傑たちは仲間を不安にさせないためにあえて強気なことを言ったりする…それと同じだ」

 

正直、カッコつけただけで深い意味とかないからこの話題は早々に終わらせたい…思い出したくない。

 

「カッコつけただけ?えっそれだけ?」

「皆まで言うなよ…恥ずかしいだろうが…」

 

思い返すと…我ながらどこまでも情けない…頭に血が昇って判断を誤り罠にハマるとか…完全に噛ませ犬の活躍だな…

 

「よし、この話終わり。それよりも、これくらいの疑問ならあの血溜まりで聞けば良かったんじゃないのか?」

 

「それはダメ…オリバーは私を常に監視している……だから私の知能能力を知られるわけにはいかないの。

 

「……?それは、どう言うことだ?」

 

「オリバーは私の知能が低いと判断してるの…精々、最低限の会話ができる程度の魔人としてね…だから私を地上にあげて王国を襲わせようと考える」

 

「…そこまで理解してるのか…しかし、どうやってそのことを知ったんだ?」

 

「…上から降ってきた死体の脳細胞を取り込んで、その死体の持っている記憶、知識、技術全てを私のものにできるの……その死体からこの施設のこと、私の存在、Dとは何かを知った。」

 

「殆どが犯罪についての記憶ばかりだったけど」と彼女はつまらなさそうに呟いた。

 

「死体を食べることで全て自分のものにできるのか…まさに魔人だな」

 

なるほど…悪意と犯罪の記憶が多いからこそ、普通の人間の行動に関心を持ったわけか…

 

「……死体ばかりで話すこともできなかった…だから、君たちが初めてのお客さん。生きた…初めての…だから食べない」

 

「そうなのか?」

 

「うん、生きた人を近くで見るのは初めて……人の声、人の鼓動、仕草、目線、動き、感情、思考、流れる血…食べた記憶にはそれに関する情報が山ほどあった…でも私自身の記憶には何もない…だから君たちが私の初めて会った人…私自身の初めての記憶になる」

 

…この子は知性が高い赤子の魔人……のような存在ってことか?だからなんでも知りたがる…と

 

「私のこと、考えてる?」

「!…まあそうだな」

「私も君が気になってた…」

「そうか?そんな気になる要素は無いと思うが」

 

「まず『目線』…わたしの小さな動きも見逃さない様子から観察力が恐ろしく高い…あと、オリバーとの戦いで見せた銃口の破壊の仕方もその観察眼から構造を予想して動いたと思う……『思考』、君は考える時動きが1秒止まる…ただ、その時間内で相手の分析、相手の考えを見抜くことができる…頭の回転もかなり早い……『癖』、考え込むと息を通常より少し多く吐く…誰にも悟られたいように、静かに吐く…『反応』、言葉で相手の動き、出方、目線、癖、全て観察している……これら全てを用いて君は『予測』をして、相手の考えや動きを先読みすることができる……『総合』全てを合わせて相手を知る……それが君。」

 

(うぁー……俺が二人いる…)

「『うぁー俺が二人いる〜』かな?」

「正解…ってまじかよ」

 

知能も無限に近くて、見た目も良くて、他人の傷も治せる…しかも心理読みも使えるとか、俺の完全上位互換じゃん。

 

「嬉しいなぉ……会話が弾んだ♪これも私自身の記憶♪…あっ、…君と私…になるのかな?…」

 

(なんかその言われ方恥ずかしいな)

「照れてる♪」

「照れてない」

 

膨大な知識とそれを自らの制御化における知能…そして、腕やら内臓やらを治療できる万能細胞とやら…控えめに言った最強だろこの子。

 

「…でも食べた記憶情報が多すぎて何が普通で何が常識なのか分からない…」

 

「…ここにいる連中は犯罪者か裏切り者かしかいないからか」

「うん…だから普通の人の常識が知りたい…普通の暮らしが…どんなものか知りたい」

 

「…普通…か」

 

……エンリはなんかスラムにいたらしいし、エマは貴族だしで普通とは言えないよな…それにこの子は魔人、それも犯罪者の記憶しか知らないとなると…いや、しかし危険もないよな…敵意も悪意も感じない…

 

本当に、人間の赤子を前にしてるみたいだ。

 

「よし…だったら簡単な常識を教えてやるよ…」

「ほんと?教えて!」

 

意欲的で素直だな…少しだけ、教えるのが楽しくなってきたな。

 

「…まず人は殺しちゃダメだ…そして、死体も食べるのもダメ…普通なら死体は墓地に運んで埋葬するんだ」

 

「え…そうなの?青酸カリウムで溶かしたり、コンクリートに詰めたり、燃やしたりするんじゃないの?」

「それは犯罪者共が証拠隠滅の時にやる死体処理だ…火葬って方法もあるが、そっちの燃やすとは訳が違うな…」

 

「なるほどー」

 

…なかなかに偏った知識だ…これは後であのふたりが何教えたかきっちり聞いておかないと…

 

つか会話も長くなってきたし、そろそろ傷も治っただろ

 

「そういえば、二人はどこにいるんだ?」

 

「エンリは腕の治療が終わったからエマのところにいるよ…今こっちに向かってるから……あとは君の治療待ち…ここから出たら目の前にいると思う」

 

「そ、そうか…エンリの方が重傷に見えていたんだが、俺の方が時間かかるのか?」

 

「……うん…だいぶ危なかった」

「えっ…」

 

怖いんですけど…何危なかったって?

確かに爆発は食らったが、腕が吹き飛んだことに比べると…あれ、そういえば喉やら肺やらが焼けてたような……

 

「君の体の中には爆発反応炸裂装甲によって、体内にも酷いダメージが入ってる…君が槍を持ってなかったら今頃ぐちゃぐちゃになって死んでる」

 

「…え…マジで?」

「マジ…その槍、君の壊れた細胞を秒感覚で回復させてる…私の知ってる魔人の中でここまで回復力の高いのは知らない…自己修復の速さなら君が上」

 

魔人の槍…確かエインスとかの細胞を使ってるって言ってたな…七魔帝……とか言ってたけど…

 

「槍ってどこだ?」

「君が起きると同時に消えちゃった」

「なるほど…まぁ今更だな…あの槍しょっちゅう消えるし…それよりさっき言ってた爆発炸裂何ちゃらってのはどこまで強力なんだ?…ウィル兄──いや、D-033…も殺せるのか? 」

「……?…んと…D-033はオリバーそのものを警戒してるから近づかない…ただ、記録だと行動不能には出来たみたい…しばらくすると動き出したみたいだけど」

 

「マジか…エンリの攻撃すらびくともしないような化け物を一時的とはいえ行動不能に…」

…そんなの喰らって…よく生きてたな…俺…

 

「…ところで、ウィルって?」

「………あぁ…そうだな…色々話してくれたし、話しとかないとな…ウィルってのは俺の兄貴で、このロベリアに攫われて魔人に…D-033に変化させられた人間だ「え、違うけど」──は?」

 

なんて?

 

「D-033が誕生したのはかなり前だよ…少なからず、ロベリアがこの施設を作り始めた頃にはもう誕生してた…性能特化型の中で3番目に誕生したのがアイツだし…元になった人間のデータもあるよ?確か元王子の護衛騎士だって」

 

「…………え?あ、じ、じゃあ…兄貴の遺言は…?あれは間違いなく」

 

「…半年前にオリバーの部下にアルフィーって名字の黒髪長髪の男性が研究員として雇われたらしいけど、その人じゃない?……顔もこんな感じで──「いや良い!わかった十分だ!再現はいい!」そう?」

 

目の前の少女の容姿が一瞬変わったが、どうやら記憶の中の人物にも変身できるらしいが……全裸の兄貴とか罰ゲームかよ勘弁してくれ。

 

(いや、それも凄いことだが今はそれよりも……)

 

「ふぅぅ───なるほどな…そもそも自分の部下なんだからどんなことを話したか聞けばいい……つまり遺言云々は嘘で……ふざけやがって」

 

「うん…そうなるね」

 

あの野郎、どこまでも人をコケにしやがって…あと、兄貴もだ。会ったら殴る…どれだけ周りに心配かけたと思ってやがるんだ……何よりも、どんな理由があれ親父とお袋を泣かせたことだけは許せん。

 

「アイツが言う言葉は何一つ信じない方がいいよ…話すこと全部嘘だから」

 

「…そうだな…そもそも悪意の塊みたいなあいつの言葉を信じた俺が馬鹿だったよ…我ながら情けない話だ」

 

「エーベルは感情的になりやすいのが弱点だね」

「……耳が痛いな……俺の怪我ってどれくらい治った?」

「ん〜もうちょい……よし、取れた」

 

「?……何が取れたんだ?」

「心臓に刺さってた破片」

「……(絶句)」

 

……本当よく、生きてたよな……俺…心臓って

 

「…うん、これで君の体にあった破片はあらかた取れたかな…行こう…みんな貴方を待ってる」

「お、おう…」

 

あ、あらかた?…なんか怖いな不吉で……それにしてもとんでもない助っ人を仲間にした気がする…戦闘もこなせるのだろうか?だとしたら本当に俺は役立たずだぞ?

 

 

 

〈エンリ視点〉

 

 

 

 

肉でできた壁に穴が開くと同時に透明な液体が流れ出てきた…おそらくさっきの子の唾液だと思う。

 

「終わったよ〜」

「……あ〜その…えっと……二人とも、無事でよかった」

 

バツが悪そうに目線を逸らしながらベタベタの姿で彼は出てきた…さっきまでの火傷も、傷も塞がって……彼は生きていた。

 

「………おはよう、エーベル君」

「お、おう…」

 

泣き疲れたのか、エマは目元が腫れてしまっている…きっと私も同じような顔をしていると思う。

 

「えっと…だ…エンリ、腕は大丈夫か?」

「(こくん)」(……うん)

「そうか…良かった」

 

安堵したのか、緊張のあった顔が綻び、彼は優しい眼差しでこちらを見つめる…その視線にはこちらを心配すると同時に申し訳なさが見えていた。

 

「……???」(エーベルは?本当に大丈夫?怪我は?)

 

彼に近づき、様子を伺う…彼はいつも私を心配してくれるし、その気持ちは嬉しい…けどもっと自分を労って欲しい…

 

彼とは今日初めて逢ったけど、分かったことがある。

彼は…エーベルは酷く自分に厳しい人で、どこまでも自分以外に優しくなれる人なんだ。

 

だからきっと、私は彼を──守りたいんだ。

 

「…にしても、アレだな…俺の言った通り地獄に女神…だったな…どうやら今日に限って女神様は残業してくれているらしいな」

 

「また変なこと言って… スフェーン協会の人たちに叱られるよ?」

「……はははっ」

「エーベルくん君何しでかしたの!?」

「お〜…目が凄い泳いでる」

 

 こんなたわいもない会話を誰かとできる日が来るなんて思ってもいなかった…こんなに楽しいって思える日がまた来るなんて思ってもみなかった…ほんとに生きてみんなとまた会えたんだ。

 

怪我も治って、無事にまた会えた…そっか…今度はみんな助かったんだ───よかったぁ…

 

「ん…エンリ?……え、エンリさん?」

「エンリちゃん…!?」

 

「(ぽろ…ぽろ…)」(良かった…!)

 

目元がまた熱くなって…視界が朧げになって彼の顔がよく見えない…彼の声もよく聞こえなくて…でも、目の前の彼は確かに生きている。

 

「……その、なんだ…心配かけてすまな──うおっ!?」

 

「……っ!」(ぎゅー!!)

「は──?へ……?え、エンリサン!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

嬉しくて…苦しくて…思わず彼を抱きしめてしまう。私でもよく分からない感情が押し寄せてくる…ただ、今は彼から感じる体温が愛おしい。

 

本当に…彼は、生きてる…また、護られたらって…また誰も助からなかったらって…不安で、仕方なかった。

 

(エンリサンガゼンゼンナキヤンデクレナキヨ!?ナニカ柔ラカイヨ!?今ナニガトウナテル!?)

 

──温かい…思えば、ここまではっきり他人の心音を聞くのは初めてのことだ…やけに心臓の音がうるさいけど…どちらの心臓の音だろう…ひょっとしたら、二人分の音だから大きいのかもしれない。

 

──でも今は、この音が心地いい。

 

「……」(ぎゅッ)

「はっ!?…え、エマ!?お、お前まで…何か言ってもらえません!?背後から抱きつかれて怖いわ!」

「……心配かけたんだから……これは罰よ…てか何が怖いの?言ってみなさいよ」

 

「クソ、なんて罰だ…ッ!」

(何も苦しくねぇ!ありがとうございます…)

 

「みんな抱きついてる〜私もー」

「お願いしますから勘弁して下さい!全裸の幼女が抱きついてくる絵面は色々と死ぬ…社会的にも精神的にも!せめてなんか着てくれ!」

 

「嘘だ〜喜んでるくせに」

「心を読むな!バラすな!話すな!?…つか、二人ともいい加減離れてくれません!?いい加減俺の理性が死ぬ!と言うか心臓が爆発する!!」

 

「……!」(ご、ごめん!…生きてるのが嬉しくって…も…もう少しだけ)

「エンリさん!?」

「また変なこと言って…2回目なんだから慣れなさいよ」

「無茶苦茶だこの女!?」

 

 

 

 

〈D-029視点〉

 

 

 

 

数分ほどで二人はエーベルから離れたが…3人の間で妙な空気が流れている…わたしの記録にはない雰囲気だ…いわゆるこれが青春というものなのかな…?わたしも混ざりたいなぁ〜

 

(ようやく前後の柔らかい感触から解放された…特に正面)

「『ようやく前後の──』」「あー!あー!!頼むから!ここでたらなんか買ってやるから!頼むから読まないでくれ!」

 

「……ほんと!やったー!…あっ、そうだエンリ…腕はどう?違和感ない?」

「(コクン!)」(問題なし!)

 

「エーベルは?」

 

「心配するな…おかげさまでで全回復だ…君には頭が上がらない……エンリも治してくれて…エマも助けてもらって…本当に…ありがとう」

 

深くこちらに頭を下げてくる…ほんの少し肩が震えている…どうやら二人が無事だったのを喜んでいるようだ

 

「(ぺのり)」(お礼が遅れてごめんなさい…彼や私を助けてくれてありがとう)

「私からも…二人と、私のことも助けてくれて、ありがと…」

「え…うん…???なんだろこの感じ…なんか、むず痒い」

続けて二人から感謝される…この感覚はなんだろう…未知の経験…全身がむず痒くて、体温が上がっている気がする…

 

「それも普通の感性の一つ、"照れ"だな…感謝されるのは悪く無い気分になれるが、小っ恥ずかしくなる事がある…今のうち慣れとけ」

 

「うぁ…心理読まれた…恥ずかしい…」

「いや今更だろ」

 

辱められたから、揶揄ってやろう

 

エーベルの袖を引っ張り、上目遣いで彼を見つめる…そうすると、彼はんのり耳を赤くして、でもしっかりと二つの目で私の顔を見つめてくる…うんうん、揶揄いがいのある良い顔。

 

「ねぇねぇ、君の服一枚ちょうだい」

「え、あ〜…これは2枚に見えるだけで実際は一枚なんだ」

「そうなんだ、残念…服着たら抱きついてたのに」

 

「やめろっての」

「え〜さっき二人に抱きつかれてよろこ──「髪の毛が乱れてるな直してやろう…くらえこの!」わっ!?……ふふっ、あったか〜い♪」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

エーベルが手を頭をクシャクシャとしてくる…これも未知の経験……ちょっぴりくすぐったいけど、悪くないかも

 

「あの二人、互いに心を読めるせいか仲良いね…」

「(こくん)」(うん…二人とも楽しそう)

 

「…エンリちゃん、本当に腕治ったんだね…あんな重傷だったのに….冷静なると、貴族病院ですら不可能なことやってるのよね、この子…現代医療の何年先にあるんだろ」

「……」(確かに…)

 

3人が私を見つめてほめてくる…なんだか褒められっぱなしで、嬉しくなってくる…もっと褒めてくれないかなぁ♪

 

「ん〜私、凄い?」

「ホワイト家でで雇いたいくらいには…今の私にそんな権限ないけど」

「お〜そうなったら私、爵位とかもらえる?」

 

「悪いけどそれも無理……養子として迎え入れるならまだしも、せめて、ちゃんとした名前がないと」

「……?」(そういえば、D以外なんで呼ばれてるの?)

あ…困った…D-029か細胞の魔人くらいしかないや…名前…名前か〜…う〜ん…普通の名前ってなんだろ?

 

人だった頃の記憶とか無いしなぁ…

 

「ん〜……それ以外で呼ばれたことないや……それじゃ、私の名前決めて♪」

「…俺はネーミングセンスは無いので、二人に任せる」

「……」(私も自信がない…)

「名前…難しいわね…」

「それじゃーまず私から…名前はThe final weapo-「【最終兵器】はやめろ…そもそも呼びにくい」え〜」

 

「……?」(じゃあエンジェルは?)

「おっ、それいいね」

「なんて?」

「"エンジェル"だって」

「いや【天使】ではないだろ…魔人だし…」

「むー」

 

魔人差別だ!魔人だって天使にくらい…無理か…

 

「じゃあ、"ジェン・ドゥー"は?」

「おっなんだかかっこいいね」

「…いや、それ【名無し】って意味だぞ?偽名と思われるからやめとけ」

「えー…じゃ、君はなんか無いの?」

 

かっこよくて、可愛いのがいいなぁ…おっ私の心理を読んだのか割と困った顔をしてる…めちゃくちゃ悩んでる…

 

「…そうだな…D-029…ディー…ツー…ナイン…ゼロツー…ナイン…ゼロツーナイン…あえて逆にして、ナイン・ゼロツー…で、いやもう少しひねって…ナインをノインに変えて…」

 

「"ノイン・ゼロツー"でどうだろう?」

「直訳すると902だね」

 

「言っただろ、ネーミングセンスは無いって…悪いが俺のセンスじゃこれが限界だぞ…」

 

「ううん….ノインでいいよ♪なんだかしっくりくるし♪…ふふっ♪…ノイン・ゼロツー…私の名前…嬉しいなぁ♪」

 

思わずスキップしたくなるくらい…私の名前かぁ….ふふっ♪

「……」(すごく嬉しそう)

「うん…ニコニコしてる」

「触手も嬉しそうに揺れたら……まぁいいや気に入ってもらえて…」

 

今日は本当にいい日だなぁ

 

 

 

 

〈エーベル視点〉

 

 

 

 

「でもさ、これからどうしようか」

 

そうエマが切り出した…ノインが味方と分かった今、彼女が被害を出すことはまず無いが、問題はこの施設にいる大量の蜘蛛と、不特定多数のDやSたちだ。

 

「…ねぇまだ君から直接名前を教えてもらってない」

「あれ、そうだっけ…ちょくちょく名前を呼ばれてた気がするが…まぁいいか…俺は、エーベル…エーベル・アルフィーだ」

 

「私はノイン・ゼロツー…これからよろしくね…」

 

なるほど、自己紹介したかったのか…

「次、隣のエマ」

「…え、私も?…えと、私はエマ・S・ホワイト…改めてよろしくね、ノインちゃん」

「うん♪….次エンリ!」

 

「……!」(私はエンリ・ルーブル…これからよろしくね)

「うん、よろしくね♪…3人は私の…初めてのお友達、で良いのかな?」

「(コクン)」(うん!)

「…魔人の友達ができるのは流石に初めてね」

 

三者三様の反応をして和んでいるな…だが、俺はどうも動揺を隠せない…何せ友達いない歴=年齢の俺にはこんな体験は初めてだからだ。

 

「お、おう…(ぼっちの俺にもついに友達が…!?)」

「"ぼっちの俺にもついに友達がー"♪」

「おいやめろ…人の心情を声に出すな」

 

あと、頭差し出してももうやらないからな…なんだかこっちが恥ずかしくなる。

 

「……」(彼女に確認したいことがあるんだけど)

「あっ…そうだな……オリバーが言っていたことなんだが…」

 

そうして俺たちは彼女にオリバーから聞いたD-029の性能と計画について聞いた。

 

「三万の子?それはダミーモンスターのことだと思うよ」

「ダミーモンスターって?」

 

「万能細胞で私そっくりの肉団子をたくさん作ったの…本体の私を見つけにくくするために…うまく言ってたみたいだね」

 

「それは、動くのか?」

「動くよ…ただ私の命令じゃ無いと肉団子のままだけど…オリバーはこのことに気づいてないと思うよ…バレないように慎重にやったから♪」

 

流石としか言えないな…

 

「なら、問題は蜘蛛や他のDたちだな…あとオリバーもか…まだまだ問題は多いな」

「(コクン)」(うん…私たちだけじゃどうしても足りない)

 

奈落の浮上を止めるには少なからずオリバーを倒す必要が出てくる…だが、

「……ねぇ、3人はここから外に出て行くつもりなんでしょ?…奈落の浮上を阻止して」

 

「まぁ、そうなるな…」

「そうなると、私はまた…一人になっちゃう…」

 

表情に影がかかった…先ほどまでの浮かれ具合が嘘のように…“寂しい”、“怖い”、“もっとみんなとお話ししたい”そんな心情が伝わってくる。

 

 ……彼女がここで何年過ごしたかわからないが…オリバーに監視される中、バレないように自分を守り、死体から記憶を取り込み続ける生活。

 

 俺だったらストレスで死ぬな。

 

「え?…ノインちゃん一緒に来ないの?」

 

そう、エマが切り出した。

「…え?」

「……?」(ここに残るの?)

「あ、あれ?」

「……さっき言ったろ?ここでたらなんか買ってやるって…ほら、先に進むぞ」

ノインの顔に困惑の感情が浮かんでいた…まるで『思ってもいなかったことを言われた』とでも言いたげな顔だ。

だが、こちらとしてもそんな顔されては放ってもおかない…助けてもらいっぱなしの恩人を放置するのも気が引ける。

 

「えっと…ノインちゃん?」

「……?」(どうかした?)

 

固まったまま動かなくなっている…嫌な予感がした。

 

「なぁ…ノイン…君はこの肉の中から出れるのか?」

「…え?うん…出れるよ」

「……そ、そうか」

 

杞憂だったわ…心配して損した。

 

「なら…これは興味本位なんだが…地上に出たら何をしたい?」

「…………空を、見てみたい…あと、公園で遊んだり、学校にも行ってみたい…みんなが見てる当たり前の景色を、私自身で記録したい…もっと色々経験したい」 

 

……俺たちにとっては当たり前の日常風景に過ぎないことが彼女にとって想像もできない風景なんだろう。

 

「…それだけやりたいことがあるなら、ここに留まる理由はないな…ならとっととこんなところから出るとしよう…学校が楽しいから知らんが、公園で青空の下ぼーっとするのもいいもんだぞ」

 

そうして、彼女に小指を差し出す。

 

「ゆび?」

「ああ、ゆびきりって言ってな。小指と小指を結ぶ…東洋に伝わるまじないだ…まぁあれだ…絶対守るって誓った時にやる儀式だ」

 

「…こう?なんか、照れるね…」

 

はにかむように微笑む彼女に、不覚にも見惚れてしまった。

 

「(ジトー)」

「……」(そういえば私もしたっけ、ゆびきり)

 

なんだか背後からの視線が痛いな…振り返るのが怖い。

 

「エンリとエマも私ともやろー!」

「(ニコッ)」(うん)

「…いいよ」

 

エマに睨まれていた気がするが…まぁ気のせいだよな?

 

「……♪」

ニコニコと明るい笑顔を見せるノインにに自然と頬が緩んでしまう…頑張らないとな…3人のためにも

 

「あ、でも外出る時どうしよっか…流石に全裸の女の子を連れ回すと…エーベル君が独房に送られることになると思うし…」

 

「おいっ!なんで俺だけが捕まる想定なんだよ!?いや、確かに夜道を歩いていると高確率で騎士団の人に事情聴取受けたりしたが!」

 

「……?」(それただ補導されてるだけじゃ無い?学生でしょ?)

 

あっ…それもそうか…よくよく考えれば俺が彷徨いてた場所いつもスラム街とか、裏路地とかだわ…そりゃ声かけられるわ。

 

なるほど……だからいつも俺に声をかける騎士団の人たちって顔怖かったのか…帰ったら菓子折り持って謝りに行こう。

 

「ねぇエマ、エーベルってバカなの?」

「たまにね…頭はいいけど素でアホなことするのよ、ここにくるまでやたらと無駄な道行ったり、変な道行ったり…おかげ様で、無駄に疲れたし迷いまくったんだから」

 

「へぇー………エーベル、ここからの案内は私がやるね」

 

おかしい、気づいたら信用がどんどんなくなっていっている!?俺だって方向音痴の自覚はある…だが必要な回り道だったろ!?

 

よく分からない石しか拾えてなかったが!俺は悪くない…いや俺しか悪くないなこれ……

 

「……?」(エーベルは確かに方向音痴だとは思う…けどバカではないと思うよ…多分?)

 

「エンリ、それはまるでフォローになってないぞ…あと俺は決してバカじゃ無い…それに寄り道は良くないというが、遠回りこそ最短の道というありがたい格言も──「それじゃこれからよろしくね…エーベル、エンリ、エマ…」……ああ、はい」

 

「こちらこそ、よろしくね、ノインちゃん」

「(ニコッ)」(頑張ろうね、ノイン!)

 

……こうして、魔人ノイン・ゼロツーが仲間になった。

 

俺を含め3人の魔人に一人の人間という無敵のパーティーでのロベリアとの第二戦目が始まろうとしていた。

 

ただ、俺の扱いが雑なのは納得いかん……!

自業自得?それはそうだな。

 

 

 

 

 





次回はD-013らへんとクモの駆除の話を書きます。

補足…もとい原作とのキャラの強さ比較
エーベル…レベル1→魔人化時は5→完成体→??
エマ……レベル1
エンリ…レベル1→魔人化時は8
ノイン……レベル12
オリバー・G・ロベリア→予想レベル30くらい

黒い蜘蛛のレベルが2から3くらいと予想してます。
…原作でもエーベルが鉄パイプで怯ませることができてるし、これくらいじゃね?と
アマリアさんのレベルは1らしいですよ…あんなバグじみた頭脳と射撃技術持っといてレベル1とか詐欺でしょマジで……

オリバーのレベルは奈落Xで出てきたキリーさんの発言から互角が少し下くらいのレベルと予想して30くらいだと考えてます。
感想、質問、誤字報告、どれも励みになっています。
奈落2の本編をなぞったらエーベル君たちの学園生活(妄想)を想定して投稿していこうと考えてます。

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