奈落2  ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら   作:アズカバー

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※注意
今回、オリジナル要素が出てきます。苦手な方は注意してください。

因みに…オリバーって誰?という奈落初見の人に解説
彼は奈落、奈落リメイクにて、唯一エンリのことを心配したり、気遣ったりするいい奴として登場してました。
エンリ視点で見るとマジでいいやつに見えてたんです。エマは最低だし、ルーカスも割と最低の中、オリバーは心配して、その挙げ句エンリを逃すために犠牲となった…というのがエンリ視点です。

つまり、オリバーはいい奴と思わせた鬼畜緑ってことです。善人モードのオリバーが見たい奈落未プレイ勢はぜひ《奈落》を遊んで見てください…その後に奈落2も遊んでみてください!
温度差で風邪引きます。








第六話:未完成の魔人

 

 

 

 

 

 

【エーベル視点】

 

 

 

 

恩人の知り合い…らしい男…オリバー・G・ロベリア…この男はそう名乗った。

 

「……お前が…ロベリア…!?というか何で俺の名前を…!?」

 

「ああ、言い忘れていたね…一年前まで君が通っていた学園十王学園に通っていた…そこで全校生徒の個人情報から特技性格…プライベートまで調べ上げた…それだけのことだ」

 

 こいつの見た目は俺とタメくらいに見える…少なからず十代後半なのは間違いない……そんな奴がここに一人だけいるのは…罠としか、思えない…いや、コイツがそれだけ優秀…ということか?

 

……そんなことあるか?

 

「よくD-033から逃げ切れたね……どうやって生き残った?…まぁ監視カメラで一部始終見ていたのだが…まさかエンリと偶然君が居合わせるなんて…面白い…見ていて飽きないよ君たちは…」

 

ずっと見ていたのか…というか監視カメラってどこにあったよ…

 

「…いや…今はどうでもいいな…聞きたいことがいくつかある…」

 

「いいよ…お互いまだ時間はある…何でも聞くといいよエーベル君」

 

 

「…最初に一つ、ここにもう一人女の子が来たはずだ…その子はどこに行った?」

 

オリバーはつまらなそうに、

 

「ああ、アイツならうるさいから下に落としたよ…次は?」

 

「お前…最低か!?………フゥ……よし…次の質問だ…この下には何がある?アイツは無事か?」

 

頭を常に冷静に…人は感情的になった時、視野と思考が狭くなる…

 

「酷いな全く…最低はあの女の方だろ?…安心しろ、下は巨大な蜘蛛の巣になっている。潰れたトマトになることはない…ただ下にいるのは品種改良した蜘蛛でね…餌を巣に持ち帰ってからゆっくり時間をかけて食べる…完食まで3時間くらいかな?食い始めるとなると2時間前後くらいか……まだ生きてるぞ?よかったな」

 

「察してはいたが、予想以上にイかれてるな…クソ野郎が!」

 

「ちなみに数時間前にスラムにも蜘蛛を放った…下にいるのとは別種でね、獲物をその場で捕食する交戦的な種だ…エンリ、君がここにくるまで倒した奴らがそれに当たる。」

 

「……!」(あの蜘蛛たちが…!)

 

「一体何のために…」

 

「裏切り者を処分するためさ……最近までサンプルとして置いていたんだが、奴は我々を裏切り、未完成の《魔人の槍》を盗んで行ってね…回収のついでに奴を廃棄したんだ……三ヶ月前に君が出会った無差別殺人鬼…よく覚えてるだろ?何せ君が捕まえたんだから…ね?」

 

 

「……ッブルッ!」

 

「……?」(エーベルが捕まえた?)

 

「…俺は何もしていない」

 

俺はあいつから逃げるので手一杯だった……軽々と建物の壁を削るナイフ、どこに行っても回り込んでくる機動性…人を殺すことに躊躇わない狂気…殺意以外読み取れなかった歪んだ笑み…目の前で呆気なく首を跳ね飛ばされた騎士団員…狩られた魔獣……魔獣用の催眠矢でようやく倒れた化け物…そして……奴一人の影響で作り上げた血まみれの路地裏…!

 

あの光景は今でも夢に見る…

 

「顔色が悪いね…嫌なことでも思いましたかい?」

 

「……?」(エーベル?)

 

「…お前、最悪かよ…よくアイツのこと最低なんてほざけたな……人のトラウマ思い出させやがって……つか、あの事件は騎士団によって隠蔽されたはずだ…何でお前が知っている…!?」

 

心を乱すな…集中しろ…フゥゥゥ……よし…相手の仕草、言葉から感情を読み取れ……心を探れ…

 

「言っただろ?全ての学生の個人情報を手に入れたと…無論、君が我々を追っていたことも…騎士団、学園、スラムを嗅ぎ回っていたことも…君のことはずっと見ていたよ…エーベル・アルフィー君」

 

「…驚いた…俺みたいな庶民にもストーカーっているだな」

 

……全部、知られた上で泳がされていたのか。

 

「まあ予想よりも奴がしぶといせいでスラムの地下施設の蜘蛛やD-015まで動かすことになったが…《魔人の槍》が戻ってきただけよしとしよう。」

 

「…魔人の槍?」

「気にしなくていい…こちらの話だ」

 

「…次の質問だ…今までの魔獣被害も、お前の仕業か?」

 

「ああ…そうだ」

 

「……人が死ぬことに…なにも感じないのか!?無関係の人間がいくら死のうが構わないってのか!?」

 

「別に構わないだろ?」

 

「狂ってるな…お前……なら次…死体を集めて何をする気だ?」

 

「随分と悠長だな?…そんなこと君にとってはどうでもいいんじゃないのか?……君が一番聞きたいことはあの死体の中にお兄さんがいるかどうかじゃ」「うるせぇ!!!頭かち割られたくなければ…質問に答えろ!」

 

 …少し赤黒いサビが目立つ鉄パイプ切れだが、ひと一人殺すには十分な重さだ…不思議と…さっきから力が沸いてくる。

 

「!?」(……えっ!?)

 

「驚いたな…本当に君は面白い……さっきの質問だが、君ならここと王都の噂はすでに関連付けできているな?ならば、死体の出どころは省こう…簡単にいうとここの死体は全て実験の為に処理された後の犯罪者どもだ」

 

「……実験?…どんな実験だ?」

 

「…さぁ…何だと思う?お得意の観察眼で見抜いてみなよ♪」

 

「……それも…把握してんのか…」

 

……正直、このことまで知られてるなんてな…学校どころか他人に教えたことも話したこともないのに……だが、今更だ

 

…異国の天才曰く…深淵を覗くとき深淵もまたこちらを見ている…だったか…?…俺が向こうを調べているのなら、向こうも俺を調べていても可笑しくない…

 

「………」

「……ニヤ」

「……?……!」

 

「……?」(エーベルとオリバーが見つめあっている……動かない?)

 

……コイツ…仕草、表情、声、何もかもドス黒い悪意しか感じねぇ…なにを考えているのか全くわからん…この男には悪意以外の感情はないのか!?

 

 何よりよりも…アイツから感じる違和感は…なんだ?…まるで人間じゃないみたいな…ひどく、不気味で…体全体が竦むような…

 

「質問を変える…Dってのは…何だ?」

 

「…デーモニック…つまり、魔人だ」

 

「…あんなものが魔人?…魔獣の間違いだろ…」

 

 記述や物語なんかでも魔人は人型とかがメジャーなはずだ…少なからず、俺はあんなのが魔人だなんて信じたくない

 

「あ〜実はアレ、失敗作でね…人間性が完全になくなってしまった…だが、その分戦闘能力は非常に高い…チタン合金よりも遥かに固い皮膚と肉体を持つ…例えるなら柔軟性の高いダイヤモンドと言ったところかな?」

 

…人間性ってことは元は人間なんだな…アレ…何がどうなったら、人間からあんなのになるんだよ…こえーよ

 

「エンリ、君の腕力は確かにすごいが…それが折れるくらいだ…奴はある意味無敵だ。」

 

「…あれを作ったのはお前なのか?」

 

「まさか…俺は所詮一幹部でしかない…あれを作ったのはもっと上の連中だ」

 

 …この規模の施設でもまだ氷山の一角に過ぎないのか…コイツより上は何人いる?…

 

「……ロベリアとは結局何だ?」

「正式名称は…【D&M】生物兵器製造会社…ここまで言えばわかるだろう?…我々の目的が」

 

「……ああ…よくわかったよ…お前らはつまり、化け物を…いや、魔人を造る組織ってことがな…だが、何のために?」

 

「何のため?……答えた通り我々の目的は完全な魔人を造り出すこと…それだけだ…それ以外に目的などない……それも後少しで完成する…俺と君たちの手によって…ね」

 

「…意味がわからない」

 

君と俺たち?…気味悪いにやけ顔しやがって…作ってそれで終わりなんてこと、有るわけが無い……クソッ!何で分からない!?…観察力だけは自信があったんだが…自信無くすな

 

「オリバー…アイツは…エマは本当に無事なんだろうな?」

 

「…!?」

「あ〜あ、言っちゃったねぇ〜エーベル君……せっかく人が名前を伏せてやったのに…いくら心情ががわからないからって人の気遣いを無碍にするなんて…感心しないなぁ〜」

 

「は?…待て、何の話だ…!?」

 

なんだ?エンリの様子が…ひどく動揺している…?クソッこっちの情報が少なすぎる!…思考がこんがらがってくる…!

 

「………」(あの人、生きてたんだ…)

 

ちょっとエンリさん!?

 

「さて、エンリ……君はどうする?エーベルが助けたいと言った女はエマだったわけだが……あの女は君にとって死んでもいい人間だろ?…君を利用して、そのせいで殺されかけて…挙句、あいつは今日までのうのうと生きている…腹が立つだろう?…」

 

「それにエーベル君…様子を見ればわかる……アイツは一年前のことを打ち明けずに…君のこともまた良いように使った……相変わらず自己保身に長けた女だ…つくづく、つまらない。」

 

「…ッ!…いいからあいつを返せ!」

「下の蜘蛛の餌場にいるよ…あんなの相手に無駄な心理戦をする必要ない…ほら、謎を解きたければとっとと次の質問をするといい」

 

……もう、探るだけ無駄だな……

 

「……なら、これが最後の質問だ…」

 

「何なりと♪」

 

「言葉を選んで答えろよ…ウィル・アルフィーはどこにいる?…生きてるならばどこにいるか…教えろ…殺していたのなら…遺体を返せ!……そしたら…半殺しで済ませてやる…!」

 

「?……クックック……君はまだ知らないのか……!アッハッハッハ!!…これは傑作だ……!」

 

「何笑ってやがる…!!いいから答えろ!ロベリア!」」

 

赤黒い鉄パイプを槍のようにして構える。教科書にすら載っている基本の構え。柄の部分を短く持つ至近距離での戦闘を想定したものだ。

 

エンリの斧を構え、いつでも動けるようにしてくれている…

 

「失礼…君のお兄さんについて…だったね?……いや、待て……ククッ…!…今は内緒にしておこう…あっさり明かしてはつまらないからね♪」

 

そう、ヘラヘラと笑っている。

 

 

 

 

なら死ね

 

…いやらしく、悪意に満ちた笑みを受かべる様を見るにどうやら…知ってはいるが、話す気はない……よほど人をコケにするのが楽しくて仕方ないらしい。

 

「……?……!!」

 

ドス黒い感情が溢れ出てくる…不思議なことに体が軽く、気分がいい

 

…力が溢れる

 

「喰らえ!ロベリア!!!」

 

オリバーに駆け寄り、全力でふるった鉄パイプは

 

「惜しいね♪」

 

軽々と避けられ空を切り、

 

……ヒョイと

 

「うおっ!?」

 

オリバーによって足をかけられバランスを大きく崩し、

 

「…それじゃ、生きていたらまた後で♪」

 

ガバっ!と地面が抜け、

 

「……は!?お…オリバーぁぁぁぁぁぁ!!」

 

地下深くへと落とされてしまった。

 

この間、約20秒の出来事である。

 

 

【エンリ視点】

 

 

 

 

「…人は感情的になると周りが見えなくなる…彼も例外ではなかったな…おや?…エンリ、そんな怖い顔をしてどうしたんだ?」

 

「…!」(許さない!)

 

間に合わなかった…彼の姿に気を取られてしまった…-

 

「助けが間に合わなかったね、エンリちゃん♪…よほど、彼の魔人化に驚いたようだね?」

 

オリバーの元まで距離を詰め、斧を首元に近づける…

 

「…エンリ、どうするつもりだい?俺を落とすか…それとも、自慢の腕力で首を刎ねるか?」

 

「……」

 

一年前の彼とは似てもつかない…別人だ…優しかった彼は…この様子からして、演技だったのだろう。

 

なら彼はもう敵だ。

 

「君のやりたいようにしてみるといい…どちらにせよ、無意味だ」

 

「………」

 

薄気味悪い笑みを浮かべこちらを見る…彼のこの様子は…一体…どうして、攻撃する構えも…警戒する様子もない……

 

「……近くで見れば見るほど君は完全な魔人だ…本当に憎たらしい存在だよ…君が殺した殺人鬼は後少しで魔人になれたというのに……我々の悲願を妨害し、斧を盗んだ君が真の魔人に至る…本当に、憎たらしい…」

 

「………」

 

勝手なことを…ベラベラと…だけど…私がこの力を手に入れたことでロベリアの計画を一つ潰せたのなら……また何度でも潰してみせる…!

 

「……だが、()()()()()()()()()も手に入れたんだ…水に流そう…何せあと少しで完全な魔人に至る男が自ら我々の元にやってきたんだ…後は槍を完成させ、条件を満たせば……間違いなく完全な魔人となる…」

 

「……?」

 

完全な……?彼はまだなっていない?

 

「…彼の魔人化は長くは持たない…槍も未完成で本来の力も引き出せていないし、本人に一切の自覚が無い……だから自覚させるんだ……彼が人ではないことを…君と同じであることを…ね」

 

「………!」

…そんなこと…絶対にさせない!許さない!彼の人生まで狂わせるのなら……貴方を絶対に許さない!…貴方たちのくだらない計画にエーベルを苦しませなんかさせない!

 

「……君がどうしようが無駄なことだ…で、俺を落とすか?それとも殺すか?…どうする?…せっかくなら一発受けてやろうか?…どちらにせよやるなら手短にしてくれ……やるべき事がたくさんあるのでね….」

 

「………」

 

…この男を殺さないと、エーベルに危険が迫る…だが…何かある…この男にはなにか……得体の知れない悪意が……あッ!

 

「……!?」

 

咄嗟にエーベルが落とされた穴に飛び降りる…危ないところだった…感情的に任せて殴っていたら…こちら側が殺されていた…! 

 

「フフ…流石は魔人と言ったところか…感が鋭いな…エンリ、君の行動は何一つとして間違いはない…」

 

 

 

「精々、彼の成長の贄となってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

【エーベル視点】

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおお!!??」

 

ズチャッ!と妙な音が地面からなった。どうやら生きているらしい。

 

「クソッ…油断した…今日は厄日だな…落ちてばっかりだ…」

 

 ここはどこだ?妙に地面は柔らかいし…ベタつくし…あたり一面…真っ白…あっ

 

「…………!」

 

今、黒いのが動いたな…なら、アイツの言っていた通りみたいだ

 

「…………」

 

不味いなぁ…動いたらこれ、こっちくるよな?…頼む…何も来るな…!

 

「………」

 

…エマもここに落ちたんだよな?つまりこのフロアのどこかにいるわけだ…アイツ、大丈夫か?ショック死とかしてないよな?

 

オリバーのいうことを信じれば無傷で巣まで運ぶらしいし、2時間弱の猶予がある…だが、大量の蜘蛛に運ばれるのは…先に精神が死ぬ……

 

「………!?」

 

そういえば俺、ここにくる時声をあげて落ちてきたよな?…ってことは……

 

お願いです神様!本日二度目の救いを下さい!何でもしますから!

 

どうか!

 

      カサカサカサ

   カサカサ    カサカサ

 カサカサ        カサカサ

カサカサ   エーベル   カサカサ

 カサカサ        カサカサ

   カサカサ    カサカサ

      カサカサカサ

 

「はい…死んだ…」

 

 鉄パイプじゃどれだけ反撃しても無理だなこれ…さっきみたいに力が湧いてくる感じもしない…怒ったり興奮したりするとアドレナリンが出るらしいし、さっきのはきっとそれだったんだろう。

 

今は頭が冷め切ってある……本の通り、一時的なものだったな……効果も短いのは当然か…あ〜あ…せめて最後に、恋人くらい欲しかったなぁ…

 

ズチャ!

 

「………」(間に合った……あっ、エーベル元に戻ってる…)

 

「あっ…エンリ…?どうして降りてきて…いや、そうじゃねぇ!危ない!逃げろ…!」

 

バンッ!という破裂音とともに赤いオーラを纏ったエンリがそこにはいた…だか、いくら強くてもこの数相手じゃ!

 

「……ギロッ!」(消えて)

 

ビクッ!………カサカサカサ………!!!!

 

「……」(よしっ)

「え?」

 

蜘蛛が逃げてった…?えっ、何でぇ…?

 

「………?」(怪我はない?)

「……えっと…」

「…….?」(どこか痛い?)

「……あぁいや、大丈夫だ…」

「……」(なら、良かった…)

 

そう、ホッとしたように小さく笑っている。

 

「………(キョロキョロキョロ)」

「???」

……エンリが俺の周りをくるくる回って体全体を見てくる…?なぜ?

 

「……(グッ!)」(問題なし!)

 

「そ…そうか…うん」

 

……どうやら満足したようだな

 

 

「……その、ずっと聞き忘れてたけど…いや、聞いていいのか…わからなかったけど……その姿は?」

 

「……(……エーベルは本当に気づいてないんだ)」(えっと…斧があると成れる魔人化って姿…)

 

「………」《エーベル思考中》

 

えっと……斧?…で…魔人化……そしてエンリの赤いオーラ……オリバーは確か魔人がどうこう言っていたな…そして、蜘蛛がビビるくらいだから…なるほどフィジカルが強いのは魔人化の影響というわけか…

 

「………」(流石に…伝わるのは無理かな?)

「……あの男が言っていた…魔人って奴…なのか?それでとても強くなっていると…」

「…(コクン)」(すごい、伝わった……一年前、色々あって…)

 

一年前…?……ああ思い出した……そういうことか

 

エマの噂、失踪した生徒はルーカス、オリバー……そして、エンリ…エマのことを知ってる時点で気づくべきだったな…つまり、奈落とかいう施設で、エンリはこの力を手に入れたってことか…

 

「…一年前の奈落…そっか…エンリ、被害者だったんだな…詮索して悪かった…」

「……(フルフル)」(気にしなくていい)

 

 あの施設…封鎖されて外からしか見れなかったが、エンリが死体を見た時、慣れていると言っていた理由を考えると…ひょっとして中で同じくらいの死体を見たのか…?…いや、散策は止そう……彼女を傷つけるだけだな。

 

「……本当に…聞いて悪かった」

「(ふるふる)…?」(大丈夫……すごく、思い詰めた顔をしてるけど…大丈夫?)

 

「……エンリ、君は、こんな俺を何度も救ってくれた……そんな君に…図々しいのを承知で頼みがある…エマを助けるのに…力を貸して下さい…俺一人じゃ蜘蛛の餌が増えるだけだろうし…俺じゃ何もできない…」

 

 エマとエンリの間に何があったか…俺にはわからない…だが、オリバーの言うことから考えると、エマはエンリに酷いことをした…ということなのだろう…

 

ならば、断られても仕方がない…

 

「(コクン)」(いいよ)

 

「…そうか。やっぱり無理……え?…いいのか?」

 

「(コクン)」(うん)

 

「……ありがとう…エンリ…この恩は、必ず返すよ…俺にできることがあったら何でも言ってくれ!」

 

「(汗)」

 

困った顔をしたエンリは首を横に振ろうとしたが……真っ直ぐこちらを見つめてきた。どうやら何をして欲しいか決めたらしい…その表者は何かを訴えているように見える。

 

「……死なないで…で合ってるか?」

「(こくん)」

「…俺だって死にたくはないからな…勿論だ」

「…!」(約束!)ピッ!

 

小指をこちらに向けている…

 

「…おう…約束だ…」

 

彼女の小指と自身の小指を絡め、結ぶ。今日は我ながららしくない事の繰り返しだな……なんだか…妙な気分だ…でも…悪い気はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エーベル・アルフィー《未完成の魔人》

本来の武器の使用者であるS-005が裏切り未完成の魔人の槍を持ち出したことでただの鉄の棒としての機能しかなく、S-005もまた魔人化の条件を満たしていないためDにも変化することはなかった。
そのため、本作の主人公であるエーベルによって【鉄パイプ】として回収…主人公のメインウェポンとなった。

なお、主人公が魔人化できた理由としてはエンリとだいたい同じである。


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