奈落2  ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら   作:アズカバー

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タイトルセンスが皆無な主です。
今回はオリジナル要素+奈落鬼畜モードを参照して物語が進みます。

苦手な方は注意してお読みください

それと原作よりも少しだけエーベルが酷い間に合います。
それではどうぞ。


第八話:蹂躙・逃走・和解

 

 

 

 

【????視点】

 

 

 

……観察対象…エーベル・アルフィー。

 

……未完成の魔人……例の計画とともに進行予定……

 

魔人製造における過程

 

成功体一号(エンリ)のデータを参照

 

"魔人制作に置いて必須とした2万人の人間を悪意を持って殺害する"

 

この項目を

 

"命の危機に陥れることで生存本能を活性化させる"

 

に変更

 

結果…一時的な覚醒に成功

 

現在、S-001の管轄エリアにてS-006(エーベル・アルフィー)が交戦中…

 

「ふむ…予想より脆いな……それに力もエンリと比べ半分程度とは……例の一部を使ったにしては期待はずれだな……だが、肉体の再生速度は…この施設内では類を見ない早さだ……これなら《魔人の槍》が完成すれば…上位クラスに到達するかもしれん」

 

エンリと同じようにS(サンプル)に追わせ、精神を追い詰めることによって彼は魔人の姿となったが……足りない。

 

まだ何か…見落としがあるな…

 

……エンリの時の状況を真似るだけではこれ以上の変化は望めそうにない…いや…待てよ?……まだ、試していないことがあったな…

 

「早速準備といこう……どちらが生き残るのか楽しみだ」

 

インカムに電源を付け、指示を飛ばす

 

『S-001…目の前の男を殺せ…異能の使用を許可する…確実に仕留めろ…』

 

『………あぁ…』

 

返事のつもりなのだろう……実験の結果、食欲と悪意のみが残った知能の足りない役立たずではあるが、戦闘力は悪くない…当て馬にはうってつけだ……精々、彼の糧になってもらうとしよう。

 

「…楽しみだね…エーベル君……君がその魔神の力をどこまで使いこなせるか♪」

 

とある森で入手した非常に貴重な特別品…それの実験物が《魔人の槍》だが……彼がどこまでアレの力を引き出せるか楽しみだ。

 

 

「ククク……!」

 

 

 

 

 

 

 

【エーベル視点】

 

 

 

 

「うぉぉぉお!!こっちくんなぁぁああ!!!」

 

拝啓、父ちゃん、母ちゃん…あと馬鹿兄貴…今自分は……

 

「フフフフフフ…………」

 

と、笑う()()する変質者に襲われています…ボタンがあと一つになった瞬間、増えやがった!

 

つうか!ここ同じような扉多すぎるんだよ!何でまた化け物に追われながらボタンを探さないといけないんだ!一気に八体に増えやがって!

 

あと一つなのに!後一つなのに!!

 

「しつこい!ボタン押させろ!!近づいてくんな!」

 

バゴンッ!

 

鈍い音と共に襲ってきた怪物はよろめいた

 

「あぁ……!?」

 

クソ!ただの鉄パイプじゃよろめかすのがやっとだ…せめて、エンリの斧ぐらいの質量が欲しい!

 

「「「「「「「「フフフフフフフ」」」」」」」

 

多い!多い!多いって!

 

「エーベル君…!大丈夫!?生きてる!?」

 

「死にそうだよコンチキショー!!変質者が八体に分身して追いかけ回してくる!危ないからじっとしてろよ!?」

 

「…………!!!」(開け!開け!この!!)

 

ガギン!!ガギン!とエンリたちのいる部屋から聞こえてくる……向こうも何とか扉を開けようとしてくれているらしい……

 

「エンリ!そこの扉は絶対開けるから!その後のことは頼む!」

 

……この分身歯茎怪人は肉体は硬いが痛覚はあるらしい……というか顔、口を開けた瞬間が弱点だ……

 

 何度か攻撃しているが、一番効いたのは口を開けたとき、喉奥を狙って鉄パイプで突く攻撃が効果的だ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……キツいな…!」

 

魔人の力をよくわからんうちに使えるようになったが…とても疲れる…高熱にかかった時の体調に似ている…体がだるい…

 

長時間この姿でいるのは厳しいな……エンリには悪いことをした…きちんとした詫びを考えないとな……

 

少し、よそ見をした…このよそ見によって……背後に近づいてくるS-001の姿に気づくのが数秒遅れてしまい……

 

「あぁ……!」

 

「!?しまっ…ぐぅ…!!?」

 

右腕に痛みが走った…

 

ガブッ!と腕に白い歯が食い込み、ぐちゃぐちゃぐちゃ…!と耳障りな音が、聞こえる…片腕を奴に噛まれ、腕の肉が抉られ骨が少し露出した…だか、不思議とそこまで痛く感じない。

 

それが余計に俺の心から平常心を奪っていく。

 

(う、腕が!!……)

 

「離せ!!!」

 

ガンッ!!!

 

と、金属音が響く……鉄パイプでどれだけ攻撃しようと、コイツらを怯ませるくらいが限界で決定打にはならない。

 

それも片腕での攻撃だ…対して聞くはずがない…

 

……せめてこれがハルバートとか…メイスとか……槍とか……その辺の武器ならワンチャンあったかもしれんが……

 

「あぁ……!」

 

先を見て、距離を取り扉の解除用のボタンを探す…赤文字でOFFと書かれものを押すことで扉の鍵が解除される仕組み……つまり、エマと一緒に逃げてたはじめのエリアと同じ仕掛けだ

 

「見……見つけた…!最後のボタン!!」

 

殴りつけるようにそのボタンを押すと…ピピッと音が鳴り、赤く点滅していたOFFの文字が緑色に変わる。

 

「……ハァ…ハァ…こっちだ化け物!!」

 

「あぁ……!」

 

体力が限界に近づいてきた…鉄パイプも…逃げに徹してから姿を消してしまったし…俺じゃもうこいつらの相手は出来ないな

 

…だが、問題ない…扉のロックは二つとも解除した……

 

「……あと頼んだ…エンリ」

 

ガシャン…!とエンリとエマが閉じ込められた部屋の扉が開き、笑みを浮かべたエンリが出てきた。

 

「………?」

 

「……(ニヤッ)」(選手…交代!)

 

「「「「「「「「………!?」」」」」」」」

 

バゴンッ!と斧というよりハンマーで殴ったような音と共に奴らは壁に叩きつけらた。

 

「…………!」(エーベル…その出血…!)

 

エンリが俺の方に視線を向けると…俺の右腕を見てひどく動揺しているようだ……手に血が滲むほど斧を握り締めている

 

……そういえばさっき腕噛まれてたな…しまった…隠すの忘れてた。

 

「いや、俺は大丈夫だ!それよりもそいつらはやたらと頑丈だ!口を開けたタイミングで攻撃をしたら一瞬怯む!…その先に昇降機に乗って次の階に逃げ(ズバッ!!)……へ?」

 

「……」(彼を傷つけたからには……容赦しない)

 

……S-001が下顎から上を分離され、地面に転がり…噴水のように血が溢れでて血の雨が降る……

 

そそくさとエンリたちがいた場所に避難した…ここには屋根がついているからな…

 

「……」(……確かに顔が脆い…口を開いた時に攻撃すれば簡単に…)

 

ズバンッ!!

 

グチャッとS-001だったものが目の前に飛び散った。

 

「……」(殺せる)

 

「え…エグい…エマ、絶対に目を開けるなよ…今地獄みたいな光景が広がってるから」

 

「怖い怖い怖いこわいこわいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

「うぐっ……頼むから…落ち着いてくれ…後、抱き付かないでくれ……苦しい…息が…うまく…出来ない……さっきまで走ってて…腹痛い…うぐっ…」

 

やめろ恥ずかしい柔らかい何か柔らかいのが当たってるいい匂い……コイツ本当に顔はいいな……じゃなくて……だ!

 

腰を抜かしたエマが縋り付くように抱きついてくる…今だけは本当に勘弁して欲しい…呼吸が上手くできない…

 

……全力ダッシュの後に抱きつかれるとどんな美少女相手でも全く嬉しくないんだな…

 

「ゴホッゴホッ……エンリ…めちゃくちゃ強ぇ…俺の魔人化と…全然違うな……」

 

……エンリに襲い掛かろうと口を開けた途端に両断…攻撃手段が口しかないみたいだし…相手が悪かったな…S-001…

 

 

【挿絵表示】

 

 

エンリは一分も掛からず分身体を殲滅した…蹂躙だったな。

 

「あ゛ぁ゛……!?」

 

……どうやら、激しく動揺しているらしい…耳につけていた機会を床に捨てて怒りをぶつけている……

 

アフレコするなら……『ちくしょう!あのクソ緑!何の役にもただねぇーじゃねーか!?』といったところだろうか….

 

「………」(……あなたで最後)

 

「……あ゛ぁ゛……!!」

 

本体が怒りにまかせてエンリに食らいつこうとすると、

 

下から上に振り上げた斧によってゴンッ!と鈍い音が鳴り、S-001の体が宙に浮き、

 

横薙ぎに振るわれた斧によって

 

バゴンッ!!!!

 

遥か彼方に飛んで行った

 

………バシャン…!

 

飛沫の音が聞こえてきたのでおそらく、血の池に落ちたようだ。

 

「……」(手応えが無い……仕留め損なったかも)

 

「いや…追い払ってくれただけでも……助かったよ…はぁ…ハァ…いやほんと…マジで助かった……エンリがいないと俺死ぬな…….」

 

脇腹痛い……でも、やっと落ち着いて呼吸できるようになってきた……体から熱も引いて先ほどよりも楽になる。

 

「……///」(…て、照れる…)

 

…エンリは謙虚だな……本当に女神みたいだ。

 

グイグイ

 

「あん?」

「エーベル君…大丈夫だった?怪我してない?…」

「……まぁ……何とか」

 

お前のせいで呼吸しづらかったけどな……いや、あの光景でビビるなって言うほうが無理があるから声には出さないが……

 

「……!…!」(服、ボロボロ…!怪我見せて!)

 

エンリが俺の体に触る…やつにつけられた擦り傷や咬み傷などはだいたい完治した。

 

「………!?」(出血が止まってる!?)

「袖が破けてるだけ…?あんなのに襲われたのに…エーベルくんって実は凄いの?」

 

「もとから運動は割とできるんだよ……それに何故か知らんがエンリと同じ魔人パワーが使えてな…この程度の鬼ごっこわけねぇよ」

 

嘘である……もう二度とやりたくない…

 

「ふ〜ん…なら、これからもエーベルくんに頼ろっと♪強くなったみたいだし…」

 

「勘弁してくれ…」

 

この女……エンリが魔人って知った時はビビってたくせに…いや、アレは過去になんかあったからなのか…?

 

「喉が渇いた……ハァ……おそらく今日が人生でもっとも走った日だな…あ〜…今なら陸上選手になれそうだ」

 

「もう…何バカなこと言ってるのよ…」

「うるせぇ…ほっとけ…」

 

(そういえば……俺、腕噛まれて骨見えてたよな……?痛みもないし、傷跡だってほとんど無い……どうなってんだマジで…)

 

自らの再生力に少しだけ引いてしまった……というか今更だが…何で俺、魔人になったんだ?

 

……エンリはともかく…D-033どころかS-001にすら劣っている俺は……本当に魔人なのか…?もしかして俺は魔人化に失敗していて……時間が経つにつれて段々Dに……赤い肉の怪物に成り果てるのではないだろうか……?

 

そうなった時……俺は…どうすればいい?

 

「……」(……エーベル)

 

とエンリが肩を叩いてきた。

 

「…!?……ど、どうかしたか?」

 

「………(ギュッ)」(あの姿には…もう…ならないで)

 

「ああ…そのつもりだ」

 

魔人になってみて初めて分かったが…体力の消耗が早い…そのくせ俺の魔人モードはエンリのような超パワーも探知も持ってないし……精々足が速くなって傷の治りが早くなったくらい。

 

……生存特化の性能だな…俺の魔人化って…何だか悲しくなってきた…まぁ地上に出る分には役には立つだろうが…

 

「……そういえばエンリ……ここにくるまでずっと魔人化しっぱなしだったよな?……大丈夫か?…疲れてないか?」

 

「(ふるふる)」(私は平気だから…)

 

「…すまなかった…エンリ…俺は君にかなり負担をかけていたんだな…魔人になった時、少しは君の役に立てると思ったんだが……あの様だ……本当に……すまない」

 

優しいエンリのことだ…同じくらい辛い中、俺たちのために無理をしていたのだろう…本当に……頭が上がらない。

 

「(フルフルフル!)」(謝ることなんてない!…エーベルの魔人化は私と違って…危険が伴うの!……だから…もうあの姿にはならないで……エーベルは…優しい人のままでいて…)

 

「……?よくわからないが…善処する…」

 

具体的な内容はわからないが……魔人化が危険らしい…魔人の力はできるだけ多様しないようにするべきか…

 

「……ねぇ…お話、終わった?終わったよね?ならとっとと先に行こう?…ここにいたら次の化け物がくるかもしれないしさ……」

 

腕を組み、眉間に皺を寄せたエマが「早くしろよ」と顔で訴えてきている……他の感情も見えるが……混ざりすぎてて上手く読み取れない。

 

「お…おう…そうだな……エマに賛成…たぶんあのシャッター昇降機だよな?…非常口のマークあるし……早く次に行こう…」

 

「(コクン)」(うん)

 

 

 

 

【エマ視点】

 

 

 

 

ムカつく…ほんっとにムカつく!何目の前でイチャイチャして!アイコンタクトでやりとりしてんじゃないわよ!

 

特に変態クソボケエーベル!!アンタ心読めるくせに何で乙女心は微塵も汲み取れないのよ!一度馬にでも蹴られて地獄に堕ちたらどう!?

 

私とデートすんの忘れてんじゃないでしょうね!?

 

「………ハァ〜……」

 

「……やっと落ち着ける……足痛い…」

 

ズルズルと壁に背をつけながら崩れ落ちるように彼は座った。

「……?」(ハンカチ使う?)

 

「貸してくれるのか?…助かるよ…エンリ」

 

「……」ニコッ

 

……綺麗な笑顔…さっきまで返り血まみれだったなんて思えない…

 

「…私のも使って」

「えっ…いやいい…一枚で十分だ…」

 

「えっ……な…なんでよ…受け取りなさいよ…」

 

何で私だけ断るの…?……どうしてエンリはよくて私はダメなの?

 

だってそれ高級ブランドの……戻ったら洗って返すわ」

「うん……私も貸してもらったハンカチ…洗って返すね」

「……貸したハンカチ返してくれたら洗い物する手間減るんだけ「嫌よ変態」…おい、何でそうなる!」

 

……だって私の手当てに使ったハンカチで…汗拭くんでしょ?…そんなの変態よ……

 

「……あれ?」

「どした?エマ」

「この昇降機、下に向かってない?」

 

この施設の昇降機は上ではなく、下に向かっている…ここにくる時もずっと…昇降機は下に向かっている…

 

ガシャンと…次の階層に着いた音がする…

 

「……出口って…どこにあるの?」

 

「……すまん…わからない…」

 

「……そっか…」

 

…まぁ…仕方ないよね…この施設に詳しい人なんてオリバー君ぐらいだらうし……彼敵だけど…

 

ガジャン!と昇降機の扉が閉じた。

 

「うぉ…!びっくりした…!急に閉まりやがった…さっきもそうだが…機械が自動で閉まることが増えてきたし…オリバーの野郎にはこちらの動きは筒抜けみたいだな…」

 

……常にこちらの動きが知られてる…そうなると明らかに不利なのはこちら側だ……さっきみたいにうまく行くとは思えない……

 

「……このまま下に降りるの…怖いんだけど」

 

「……引き返すかのは嫌だろ?」

 

「それは…そうだけど……」

 

彼はどこか気まずそうにこちらに目を向ける

 

「…俺個人としては…オリバーの野郎に返してもらわないといけないものがある……それにあの性格の悪い奴のことだ…まともな出口を用意しているとは思えない…だから…えっと…」

 

「……下に降りるしかない…嫌でも付き合え…でしょ?」

「………いや…その」

 

そこまで言ってない…と顔に書いてある。

 

…何だか不思議な気分だ…昨日まで特に何とも思ってなかった男のことを…今では表情で何を考えているかだいたいわかるぐらいには彼に詳しくなっている……

 

「…いいよ…どのみち私は一人で行動とかしたくないし…わがままいってられる状況じゃないしね…」

 

エーベルは口を開けて驚いている…エンリもだ…どうやら二人とも私の態度に驚いたらしい……私だっていつまでもわがまま貴族でいるつもりはない……

 

私だってこれだけ色濃い経験をすれば少しは成長するんだから、そんなに驚かなくてもいいのに…

 

「…少しだけ…お前のことを見直した」

 

「……」(エマ…ありがとう)ペコリ

 

二人がこちらを見て優しげに笑っている…なんだか少し照れくさい…

 

「…は、早く先に進みましょ!」

 

そうして次のエリアに探索しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【エーベル視点】

 

 

 

 

 

どこに行っても…血、血、血……うんざりする…赤い水平線が見えるくらいどこまでも血で満ちている…率先して見に行ったエマは目眩を起こし、エンリに肩を借りている…

 

「どこか…休める場所があればいいんだが」

 

 

 しばらく道なりに進み、赤外線センサーを起動させ、金属製の扉を起動させて来た道を閉じてしまった。

 

……ますます引き返せなくなったな…

 

「なぁ…エンリ、さっきからずっと魔人化しっぱなしだけど大丈夫か?」

「(コクン)」(平気…何が来てもいいようにしておかないと)

 

「…そうか…その、無理してないか?キツいなら解いていいからな?」

 

「(こくん)」(わかった)

 

……本当にわかってるのか?…会って数時間しかたってないが、エンリは他人のためにどこまでも無理をするタイプの人なのだろう…そして、自分のことを顧みない危うさまである……

 

……何故か…兄貴の顔がチラつく……お人よしで、おせっかいなところが特に…似てる…

 

……彼女の負担を何とかして和げたいな……ちょうどいいところに小部屋があるな…特に鍵が掛かってる訳でもなさそうだ…

 

「…二人ともあああぁぁぁぁぁ!!?」

 

今の音は?

 

「……え、エーベル君……今…聞こえた?」

「…はっきりとは聞こえなかったが…何が聞こえた?」

「さ…叫び声…聞き覚えのある奴……」

 

「叫び声……まさか……アイツか……!?」

 

ここに来てから叫び声をあげる化け物は一体しか見ていない

 

「……オリバーの言っていた…D-033…だよな…エンリ、アイツは対処可能か?」

 

「(ふるふるふる!)」(無理…!)

「だよな……早く…この階から離れないと…!」

「もう…嫌…怖い…怖いよ…!」

 

「…俺だって怖い…」

 

エマもアイツがトラウマなのだろう…完全に参ってる…早くアイツの対処法を考えないと…

 

 ひとまず…この先に非常口のマークを見つけた…だが、それでどうなる?次の階に行ったとして…アイツは撒けるのか?

 

「…エーベル君?どうした立ち止まってるの?…早く逃げないと!」

 

落ち着け…頭を冷やせ……人間は焦ると判断を間違える…

 

「すー…はー……」

「エーベル君?」

 

よし…落ち着いた…

 

「エンリ、エマ…作戦変更だ…」

 

「え?」

「……?」(え?)

 

「まずは隠れよう…あそこの部屋がちょうど良さそうだ」

 

頑丈な鉄扉で作られた一つの部屋を指さす

 

「か…隠れるって…大丈夫なの?」

 

「若干博打になるが…逃げ回って体力を消費するよりはマシだ」

 

……それに逃げ回る体力はもう俺にはない…俺が逃げ遅れるとエマはともかくエンリは足を止めてしまうだろう…そうなると全滅が確定する。

 

「あんまり時間もない…身を隠そう」

 

「う…うん」

「……」(エーベルを信じよう)

 

そうして目の前にあった部屋に身を隠した。

 

「………」

 

あの化け物…どこまでも追いかけてきやがる……そもそもどうやって俺たちを追いかけてきてるんだ…?

 

「ねぇ…本当に大丈夫なの?」 

「しっ…!静かに……」

 

……魔人になった時、五感が鋭くなってはいた……危機察知能力に…壁ごしからでも生体反応を感知することができた……だが、アイツはどうだ?エンリに会う前、奴と遭遇した時アイツは俺たちのことを簡単に見失った……追いかけてきたのもシャッターが開いたタイミングだ……そして扉の先には蜘蛛やオリバー…S-001といった奴らが多くいた

 

つまり…その気配に奴が釣られた……と考えられなくもない…少しこじつけが過ぎるが…

 

エンリが俺を助けた時、エンリは魔人の姿じゃなくなっていた…偶然にも魔人の斧が折れたため、探知できなくなったとしたら…どうだ?

 

 

……Dってのは魔人の失敗作……つまり、エンリや俺ができることは奴らもできておかしくない……エマがギリギリ聞き取れた奴の叫び声にエンリは気づいていた…そしてエンリはずっと魔人の力をオンにし続けていたのは……何かがこちらの跡を追いかけていた……それがD-033

 

……魔人は…Dの気配を察知できるとしたら…アイツのしつこさにも…説明がつく

 

「……魔人の力を消せば奴はこちらを見失う……エンリ!魔人モードOFFにしてくれ!!」

 

バンッ!と破裂音と同時に魔人化を解いた

 

「………?」(これでいい?)

 

「OKだ…あとは」

 

鉄パイプから手を話し、壁の方に転がしておく……魔人化するには鉄パイプを持っている必要があるため…手放しておくと変身する心配はない……はずだ……当たってくれよ…俺の勘…!

 

何せあまりにも情報が少なすぎて確証が持てることが何もない……頼む神様!

 

 

 

 

「「「………」」」

 

 

 

(来ないな…見失ったのか?)

ひょっとした……魔人とかかんけいなかったりするのか?なら少し用心しすぎたかもな……

 

「「「……!!」」」

 

 

地面が揺れている…!来た!……どうだ?…場所は…バレているのか…!?

 

 

 

アァアアアアアアアアアッ!!!

 

怪物の叫び声が聞こえる……まるで「どこに行った!?」と叫んでいるようだ……こちらに明確な敵意と殺意を持っているのが壁越しにでも伝わってくる……

 

アァアアアアアアアアアッ!!!

 

声が遠のいていく……

 

「「「………」」

 

そして、完全に奴の声が聞こえなくなった。

 

「何とか…やり過ごしたか…?」

 

「………」(確認する)

 

エンリは扉に近づいて、隙間から外を確認している。

 

「(ふるふる)」(いなくなったみたい)

 

「そうか…行ったか…ふぅ〜〜〜……心臓に悪い…と、ひとまず危険は去ったな…」

 

良かった…本当に良かった……どうやら今日は本当に神様が守ってくれているらしい……本当に運がいい。

 

「……ひとまず、ここは安全なわけだ…一旦休もう…ここまで来るのに落ちたり、襲われたり、走ったり……うんざりだ…」

 

「私も、休むのに賛成…」

 

「というわけで…色々と確認したいこと、聞きたいこと…今後、どう動くか…などなど…そんな感じの会議を開きたいんだが…どうだろう?」

 

「…うん」「……(コクン)」

 

「よし、じゃあ…色々と整理しようか……」

 

「最初に…だ…エマ…聞いてもいいか?」

 

「何を?」

 

「……一年前の事件について…二人の間で何があったのかを…何だが」

 

「ッ!!」

「その…何だ…さっきはああ言ったが…」

 

「……うん…いいよ……ここまで来て黙ってるのも…悪いし…」

 

「…そうか」

 

「……一年前、学校でこんな噂があったの…《奈落》と言う怪しい建物に仮面を被った巨人がいるって言う噂……」

 

…エマの体が震えている……顔色も悪くなっているな…本当に大丈夫か?

 

「おいエマ…無理はしなくていい…大丈夫か?」

…大丈夫…平気…………それで…わ、私……逃げたの……」

 

「逃げた、て と言うと…仮面を被った巨人からか?」

 

「…う……うん」

 

それは…普通のことだろう… 常軌を逸っした化け物から逃げるのは当たり前だ…それだけでここまで苦しむことはない……となると…

 

「…例の四人で噂の建物に入り、エマとエンリの二人だけが逃げ延びたということか?」

 

「………そ……それは……」

「……」(ちょっとだけ……気まずい…)

 

あ、やばい…なにか間違えたか…?

 

わ、わたし……こ、……怖くて…その…目の前で…ルーカス… 君…が……こ、殺されて……それで!……わたし一人で…逃げたの……皆を……置き去りにして……」

 

「……なるほどな」

 

しまった…もう少し配慮して質問すべきだったな。

 

「…そ…それで……えっと……エンリ…ちゃん……ご……ご……ごめんなさい……」

 

エマは小さな声で、だが確かな謝罪をした。

 

エンリの目を見て深く頭を下げて……彼女は謝罪した。

 

「………」(いいよ)

 

エンリはエマの肩に手を添えた

 

「……」(ほら、顔を上げて)

 

彼女もまたエマに目線を合わせる

 

「(こくん)」(私はあなたの事、恨んでない……生きててくれて安心したよ)

 

「…え、エンリちゃん?」

 

エマは困惑した様子で彼女を見つめる…

  

「"恨んでない…"だとさ…あと……"生きててくれて安心した"ってさ」

「…あ、うぅ……ごめんね…エンリちゃん……本当…に…ごめんなさい……私、貴方に酷いことして……それこそ…殺させたって文句言えないようなこと……本当に…ごめんなさい…!!」

 

エマはエンリの足元に泣き崩れてしまった

 

「(ふるふる)」(それでも…私は貴方を許すよ)

 

エマの手を取り、再び目線を合わせる。

 

「……それでも許すって…」

 

「本当に…?許してくれるの…?」

「(コクン)」(うん…許す!)

 

「ありがとう……エンリちゃん……本当に…ごめんなさい…」

 

「(コクン)!」(うん!)

 

二人は見つめ合い、互いに笑みを浮かべる。

 

「エンリは優しいな…で、エマ……お前はエンリに何したんだよ…」

 

「えっと…噂の建物の中に一人で確認に行かせた…」

「おい、エンリ何発か殴っとけ!俺が許す」

 

「(ブンブンブン)」(しないしないしない!)

 

「な、殴らないで…!?」

 

「……!!」(殴らないって!!)

 

エンリとエマが和解して、先ほどよりも空気が軽くなった…

 

「……なぁ…二人はオリバーは死んだって思ってたんだよな?」

「…うん」「……(コクン)」

 

「……エマとオリバーって学校に入学してから知り合ったんだよな?」

「そりゃあ…中学校は別だったし…」

 

「……アイツはいつからロベリアにいて……《奈落》という場所を隠そうとしなかった?…これだけの施設を作れるのなら噂くらい揉み消したり、隠蔽するのだって簡単な筈だ……そして、なぜ国は《奈落》を……ロベリアを放置している?」

 

「……私、《奈落》から逃げた後…王国の兵士や…お父様に頼んだのだけど……結局誰も動いてくれなかった……お父様には"忘れろ"って言われて……」

 

「お前、ホワイト家だろ?その立場を使っても誰も動いてくれなかったのか?」

 

「うん……その後…必死に…あの日のことを忘れようとした…学校を一ヶ月休んで……必死に…でも…忘れられなかった……」

 

「…貴族も王国もグルか……この国終わったな……となると…俺に協力的だった騎士団員に…先生のことも疑わないといけないのか…」

 

「先生?」

 

「騎士団の専属医で……俺の恩人だ…あの人のところ治療法と薬剤、医者としての心構えを教わった」

 

「ふ〜ん……でもさエーベル君なら嘘ついているかすぐ分かるでしょ?」

 

「……そうだといいんだがな…」

 

「……」(エーベルが信じた人ならきっといい人だよ)

「そうか…?…そうだといいんだがな…」

 

「……会った時から思ってたけど……その二人のアイコンタクト何なの?……エンリちゃんは話してないのにどうして会話が成立するの?」

 

「どうしても何も…人間観察が得意ならできると思うが…」

「……魔人とかの話してたよね?…魔人ってみんな同じことできるの?」

 

「(ふるふる)」(それは違う…エーベルが凄いだけ)

「そんなことはない」

 

「ハァ……アンタらそんなんだから……何でもない」

 

(二人とも友達いないんだよ?)と言いそうになったがグッと堪えることにしたエマであった…。

 

「……いや、何考えてるかわかるつっの……じゃ、次だ…エンリと俺の魔人化について……」

 

「それ気になってた…特にエーベルのほう」

「(コクン)」(私も)

 

「あ〜…… 悪い…知らない…何でなれるんだろうな…この鉄パイプなんて路地裏で拾ったってだけだしな……」

 

「……よくわかんない物で戦ってたの!?…エーベル君って……頭はいいけど…バカだよね」

「………(汗)」(私もよくわかってないこと黙っておこう…)

 

「……ほっとけ……エンリの魔人化の経緯は…聞いてもいいか?」

「(コクン)」(うん)

 

エンリは一呼吸おくと、何かのポーズをとった。

 

「……!」(まず、地下に落ちて…)

「……」

「……!!」(鍵とか集めて扉を開けて……縄を降りた先に、厳重に保管された斧を見つけた!!)

 

「……ん?斧を地下で……」

「……?(何この時間?……エンリちゃんは一体何をしてるの?…踊り?…いやあの必死な顔は……何かの儀式?)」

 

「………」(その後、斧を使って道を塞いでた障害物をどかして…昇降機に乗って地上に戻ったの……そしたら頭が痛くなって…気づいたら)

 

「……手元に斧が……なるほど」

「……ごめん、何の話?」

 

「俺の鉄パイプと同じだな」

「だから何の話?」

 

「……」(その後、先回りしてきた殺人鬼を魔人の斧を使って…頭を潰して殺した……その後、色々なことがあって…今はスラム街で暮らしてる……)

 

「なるほどな……まぁ…なんだ…それしか選択が無かったんだろ?…俺がエンリの立場だったとしても、同じことをする……大変だったな……本当に……頑張ったんだな…エンリ」

 

彼女の髪に付いた血をハンカチで拭う。

 

「─────」

 

彼女に目線を合わせ、血で汚れた彼女の髪をハンカチで拭う……今の俺はエンリにとって足枷なのだろう……なら、少しでも彼女のためになることをしてやりたい……

 

……あれ、エンリの心情が読めない…?

 

「〜〜〜ッ!!!!」(顔が……近い!!)

 

あれ……?エンリの目が泳ぎ出した…

 

 

【挿絵表示】

 

 

「エーベル君♪少し、エンリちゃんから離れよっか…?」

「あ…はい」

 

……鬼の形相のエマに睨まれてしまい、作業は中断せざる合えなくなった……だが、血はある程度取れたので、髪の毛が血で固まる…なんてことは起きないはずだ…

 

よし…少しは役に立てたかな。

 

 

 

 

 

 






補足
今作品のエーベルくんは様々な場所で経験を積んだことで人に触ることに大した抵抗を見せなくなってるよ!
そのせいで本編以上の朴念仁になってしまったけど…許してね

魔人の槍:覚醒条件

・悪意から逃げ続けること
・戦意を失わず、魔人らしく振る舞うこと
この二つを満たすことで初めて魔人の槍は答えてくれる。

逆に武器として使わない限り、魔人の槍は答えることはない……

魔神が人に手を貸す理由など復讐以外にありはしない。

槍が真に倒したいもの…それは、かつて自らを滅ぼした人間たち…そして最も憎むのが…赤の魔人たちである。

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