奈落2 ifストーリー もしも彼の兄が失踪したら 作:アズカバー
エマの話を色々詳しく書いてたらめちゃくちゃ長くなったし…ごめんね次の投稿はなんとかして11月中にあげるから…ほんとにごめんなさい。
【エーベル視点】
「……えっと…どこまで話したっけ?」
「エーベルがエンリちゃんにセクハラした当たり」
「うぐっ……すみませんでした。」
せめて合意を得てからやるべきだったな…でも血まみれを放置ってもの憚れたし…
「(フルフル……?)」(あやまらなくていい……また機会があったらお願いしていい?)
「えっ……あ〜…まぁ……機会があればな」
あれ?嫌がられてない?
「オホン……で、これからどうするの?昇降機に乗るたびに下に向かっているし……本当に地上に戻れるの?」
「…それなんだが…エマ……ここに来た時お前に聞いたロベリアって言葉覚えてるか?」
「うん……確かエーベル君が探してるって言ってた……」
「どうやら…ここがそのロベリアの拠点らしい」
「え…!?」
……エマの過去にエンリや俺の魔人化についての共有を改めてした。
「……つまり、エーベルくんのお兄さんはオリバーくんたちに殺されてるかもしれなくて、せめて遺体だけでも見つけたい…てこと?」
「ああ…だが、最優先はあくまでお前を地上に返すことだ……兄貴のことはあくまで俺の私情だし…」
「……でもさ、どのみち地上に戻る方法知ってるのってオリバーくんだけでしょ?どのみち二人の目的に付き合うしか無事に出る方法もないし
…」
「すまん…」
「(ぺこり)」(ごめんね)
「いいよ…謝んなくて…!助けてもらってばかりなんだし」
「それにさ!エンリちゃんと同じようにエーベル君も変身ができるようになった…しかも自在にでしょ?…オリバー君って普通の人でしょ?なんとかなるって!」
「いや、俺の場合戦闘力の上昇はあまり無いようでな…せいぜい傷の治りが早いぐらいだ」
腕の肉が抉られても、数秒で完治するぐらいで……そういえば痛覚も鈍くなってたな…最悪盾役にはなれるかも
「(ギロリ)」(エーベル?)
「ヒェ…な、なんでもない…です」
殺気を感じた…
「……戦闘力も変わらないし、おまけに疲れやすくなるんでしょ?なる意味ないじゃない…エーベル君、変身禁止。」
「(コクコク)」(エマに同意)
「わかったって…この話終わり…」
クソッ…オリバーめ…なんで俺の魔人化だけエンリみたいな超パワーや他の化け物共みたいな無敵の力じゃなくて、地味な再生力なんだ…嫌がらせか?
そんなに俺が嫌いかあのクソ野郎!!
【オリバー視点】
「フフ…本当に彼は面白い…まさかDの特性を見抜き逃げ延びるとはね……S-001が異能まで使ったのに生き延びるとは…実に面白い」
彼の異能は間違いなく、あの魔人の力と同じものだろう…早く彼に槍の刃先を届けてあげないとね…
「楽しみだよエーベル君…君がどこまで進化するのか…!」
…だが、もしアレが出てきたら面倒になるな…
「先手を打っておくとするか……ん?」
上に何か登ってきているな……この反応は…
「なんだS-001か……彼らを追って来たか…あの食狂いめ…よほど彼の味が好みだったのか?……エーベルは余計なトラブルを引き寄せる天才だな」
まあ面白いからいいけど……余計なものといえば、彼らの中にもいるな……処理するか。
「S-001も持ち場から離れたことだし、ガラスの中のクズ共を使って遊ぶとしよう」
あの女が最も嫌うであろう処刑方法で惨たらしく死んでもらう…彼はどんな顔をするかな?
彼のもつ槍は次期に目を覚ます…だが、その為には贄が必要だ……彼の中にある甘さを完全に消し去らなければ魔人化には至ることはない。
まず、心を壊さないとね
「……実験動物諸君、喜びたまえ…君たちにチャンスをやろう…黒髪の女をできるだけ惨たらしく殺せ……出来たら地上に返してやる」
「「「……!!」」」
ガシャンッ!
「シャッターは開けた…君たちを襲わないようS-001やDたちには命令しておく…応援しているよ…フフフ…!!」
無論嘘だ。奴らにそんなことができれば放し飼いなんかにしていない。
だが、こういった犯罪者たちは我慢が出ない…特に安全が保証されると欲望のままに行動する…
下卑た笑みを浮かべた殺人鬼たちは解放され、彼らの後を追いかけて行った…
さて、こちらも準備をするとしようか
「予想を超えてくれよ?…エーベル君…君は」
【エーベル視点】
「!!!??(ブルブルブル)」
「エーベル君?」
な、なんだ?今背筋に冷たいものが……魔人化の副作用か?
「(サスサス)」(大丈夫?)
「あ、ああ…大丈夫だ…あと、そんな摩らなくて大丈夫だ」
「……(ニコッ)」(……さっきのお返し♪)
「そ…そですか」
なんて眩しい笑顔なんだ……カースト下位には余りにも眩しい…浄化される……浄化されるなら俺はゾンビとかそのへんになるわけだが…
「……」(ギュッ)
「!?……!?!?!…え、エマ!?何してんのお前!?」
エマが腕にしがみついてきた…!?お、折られる…訳ではなさそうだ…ほんとになんで?顔が見えないから何考えてるかわからん…
「……あれ見て…ほら、紙貼ってある」
「おひ、指で突くな……見へるから…」
エマに言われた方を見ると壁に紙が貼られている。
いつものメモのようだ。
1
2
「…?」
なんだこれ?……数字に鍵のマーク…そういえばこのエリア、俺たちが隠れた以外にもいくつか小部屋があったな…つまり紙はこのエリア全体を表してるのか。
……ロベリアの奴らよくこんな回りくどいというか、面倒なもの用意するな…これも実験のためなんですかね?
「……何かわかった?」
「…!!!」
鈴の音色のような声が耳元から聞こえ、耳に生暖かい息が掛かる…おまけに花のような匂いが漂ってくる…
顔が近い…
……やけに整った顔がこちらを見つめている
「……エマ、そろそろ離れてくれ…動きずらい」
「…………うん」
なんで嫌そうなんだよ…
……やっと離れてくれた…心臓を軽く掴まれている気分だった…ベタベタ異性に抱きつくなっての…不安なのも分かるけど、少しは俺に気を遣ってくれませんかね?
このエリアは俺たちがさっき隠れた部屋と同じ作りの部屋が16部屋あり、先ほどのメモはこの部屋を表していることがわかった。
道中、赤い石をいくつか発見したが、いまだに何に使うか分からない…これのせいで化け物になる…とかないよな?
鍵のマークの部屋には鍵穴がなく、自力でこじ開けることもできそうになかったため、俺たちは1と書かれた部屋に行くことにした。
「この紙によればここが…1番の部屋って書いてあるな……次の部屋が」
ビロンッと電子音が響き、聞き覚えのある男の声と共に部屋の隅で人一人分ほどのモニター機械が光出した。
『──ふふ…楽しそうだねエーベル君』
「なっオリバー!」
モニター全体に悪人ズラの男が姿を表す…モニターには不穏な数字とtime limitと言う文字が表示されている…数字は少しずつ減っていっており不安を募らせる。
「……覗き見なんて趣味悪いな…」
『悪く思わないでくれエーベル君…この建物にはあらゆる場所に監視カメラが設置していてね…どうやっても君らの動きが目に入るんだよ』
「…ならやっぱあの化け物共が向かってきたのもお前の仕業だな?」
『ん化け物?あ〜D-033の事かい?残念ながらオレは何もしてないよ…S-001には異能を使うよう指示は出したが、大したこと無かったろ?』
「ふざけんな!腕無くなりかけたっつのッ!!」
『いやいや…普通アイツが異能を使ったら骨も残らず食い尽くされるんだが、君は5体満足でアイツを凌いだ…もう立派な魔人だよ君は…オレも鼻が高い』
「お前知ってて言ってるだろ…オレの魔人化に戦闘力は無いってことを」
『当然だ…君の魔人は不完全でね…必要不可欠の刃先がないんだ…弱くて当然だ…だからこそ君には驚かされたがね…やはり君は飽きないな…』
「ヘラヘラしやがって…何企んでやがる」
「ねぇ…オリバー君…もうこんなことやめよ?ねっ!どうしてこんな酷いことするの!?私たち…友達でしょ?お願いだからもうやめようよ!」
『ああそうだエーベル君、君が持ってるその紙についてオレからヒントを教えてあげるよ…』
{エマは無視かよ…)
悲鳴にも似たエマの声をオリバーは何も無かったかのように無視をして話し始める…先ほどでの上機嫌な態度が嘘のように淡々と話し始めた。
「ねぇ!オリバー君!なんで無視するの!?お願いだから話を──「相変わらずうるさい女だ」…え?」
『無価値な奴には興味が無いんだよ。口を閉じてろ…エンリとエーベルの二人以外この町で興味をそそられるものは何一つとして無かった…精々魔人の肥やしになるくらいか…』
「お、オリバー君?」
『一年前、お前かわ誘ったエンリは魔人の斧に認められて魔人となり、我々は貴重なサンプルを失った…そういえもう一人いたな…アイツも不憫なことだ…お前が誘わなければ死ぬことはなかったろうにな…とんだ疫病神だよ…お前は」
「……っ!」
『ただね…君には一つだけ期待してるんだ…』
「…期待?」
『君が死ぬ時どんな叫び声をあげて死ぬか楽しみだ…役に立たない無能な君でも最後くらいは面白おかしく死んで──バコンッ!!!!
見覚えのある斧によってモニターが真っ二つになった
「───ッ!?……エンリ…ちゃん?」
「………!」(もう黙れ!)
「…ナイスだ…エンリ」
魔人化無しでもモニターを粉砕して壁に刺さるなんてな…エンリってひょっとして魔人化しなくてもめちゃくちゃ強いのでは?
「(……ぺこり)」(ごめん、つい手が)
「いいと思うぞ。俺はスカッとした……エマ、アイツの話だが、気にするなよ…オリバーの野郎は化け物と同じだ…何言っできても気にすることはない…」
「……うん…二人とも……ありがとう」
「おう」「(コクン)」(うん)
『待ちたまえよ…話が脱線したのは悪かったが何も壊すことはないだろ?』
「……このモニター、まだ付くのかよ」
『特別製だからね……さて、どこまで話したっけ?』
……半分に割れてるのにモニターはオリバーの顔を再び映し出した。
「……この紙のヒントを教えてくれるんだろ?教えてくれるなら教えてくれ」
『あぁ、ここまで頑張った君へのご褒美だ教えてあげよう……四角が12個、それは部屋の場所を示していてね、そして書かれている数字は順番、その数字通りに各部屋に行かなければならない』
「なるほどな…わかった」
コイツのことだ…どんな罠を仕掛けていることやら
『そして、最後に重要なことを教えよう…数字が書かれている各部屋に…1人残さないといけない…でなければ扉は解除されないようにしてある…勿論、その部屋から人が出ていけば扉は開かない…ざっと説明したけど理解できたかな?』
「要するに、各部屋の番号に人を待たせて鍵のマークの部屋に行かばいんだろ?」
『あぁ、それでいい…ところで「金の鍵」は持っているかね?』
「これだろ?」
『素晴らしい…!しっかり持っているようだね』
…そろそろ、聞くか
「なぁ…オリバー…そろそろ教えてくれよ…お前たちロベリアがこの王都で何を計画しているか…」
『エーベル君…何を言ってるんだい?我々ロベリアの目的は魔人を作り出すこと──「そこじゃ無い…」ほう?』
「お前、言っていたよな…時間がくるまで暇だしお互いのんびりしよう……って……時間ってのはそのモニターの事だろ?…何をしようとしてる?……その時間が来たら何が起こる?」
『……ククク…やはり、君との会話は退屈しない…お答えしよう…時間が来たとき君達は地上に上がることができる』
「……えっ」
「はっ?」
「………?」(えっ?)
「えっと、つまり時間が来たら私達を助けてくれるってこと?」
『ククク…』
「………いや、違う」
コイツに限ってそれはない…
『一つ言えるのは…このことに関してオレは何も嘘をついていない…全て事実だ.』
ニヤニヤと嘲笑う顔からは悪意が滲み出ている。
「わけがわからん…地上に上がれる…俺たち全員が……?時間が経てば……」
この男がやりそうなこと…いや、この施設を用意した理由…ロベリアの目的は魔人の作成…生物兵器とも言っていた…
「…………!…まさか…オリバー……」
「さぁエーベル君…解答は?」
「……時間が経てば俺たち全員地上に戻れる…同時に…この施設そのものが地上に浮上するってことだな……!!」
『ククク…ハハハ!大正解!!…やはり君の頭はよく回る!…他の二人のために簡潔に言っておこう……時間と共にこの国の中央に巨大なタワーが出現し、そこから40000を超える化け物と共にね♪…命名するなら…"奈落の浮上計画"とでも言っておくか』
「「……!?」」
「まて、40000だと!?蜘蛛の他にもまだ…」
勘弁しろよ…!なんだそのふざけた数は!
『蜘蛛はおまけだよ…本命はあくまでDたちだ……特に俺が作り上げた魔人D-029、肉塊の魔人は大型のDでね…知性は低いが大量の魔人もどきを孕んでいる……さらに別種のDも何体かいるが、最も被害を出すのはD-029だ…何せ孕む化け物の数は、33000〜34000匹…王都は1日も立たずに地図から消えることになるだろう』
「ロベリア……!」
『そう怒るなよ…安心しなよ君だけは殺さない……地上が化け物によって蹂躙され地獄となる光景を君に見せて上げるよ……殺すのはその後だ…死ぬ時くらいは日の下がいいだろう?……わざわざ時間をずらしたんだ…最後まで楽しんでくれたまえ…君を待ってるよ」
プツン…と糸が切れるようにモニターの画面は消えてしまった。
「…………」
プツン…と糸が切れるような音がなりモニターは消えた。
「「「…………」」」
沈黙が痛い…まぁあんな話聞かされたら誰だって困惑するよな
……現実に向き合いたくない…どんな地獄が待ってるのか…想像もできない……俺はただ兄貴を探していただけのはずだったのにな
「悪日、凶日、厄日……どの言葉を使えば満点なんですかね」
「…それ、全部同じ意味でしょ?」
「意外に冷静だな…」
もう少し取り乱すと思っていたが
「動揺したって何も解決しないし…それに、二人の顔見たらなんとなくわかるけど……どうせ行くんでしょ?オリバー君のところ」
「(……コクン)」(……うん……止めないと)
「えっ?……あぁ…まぁ…そうだよな…いや、でも止めるったってどうする気だよ…」
「……!!」(全部、私が倒す!!)
「…ぜ、全部?……」
「……エンリちゃんなんて?」
「…Dもオリバーも全部どうにかするってさ…」
正直、勝算は薄いが……
「エンリが行くって言うなら…俺も行くよ…そういえば俺、あのやろうに一発入れてやりたかったし…足掻くだけ足掻いてやろうじゃねーか」
「……」(ありがとう、エーベル)
……最低でも、あの野郎だけでも道連れにする…つもりで行こう。
「……エーベル君って追い込まれるとかっこいいこと言うよね」
「そうか?」
「うん……その胆力は少し羨ましいかも…私も二人に付き合うことにする…死にたく無いし…それに…」
「……?」
「……?」(エマ?)
何か溜めてる…
「私、やられっぱなしって嫌いなのよね…あの緑に一言くらいは言い返してやらないと…腹の虫が治らないわ!」
えっ怖っ。
「……」(な、なるほど)
「だから、最後まで二人に私はついてくから…あんまり役に立たないかもだけど」
「まぁなんだ…とりあえず決まりだな…なら先に進むか」
なら、次は誰が残るかになるわけだが……
「確か…さっきの話だと…鍵、取りに行くんだよね?」
「ああ…そうなるな……エマ?」
エマの様子を見ると肩が震えていた…手にもやけに力が入っていて何がを必死に言い出そうとしているような…何かを必死に抑えているような……手洗いか?
「ふぅ‥‥よし!」
エマは一呼吸おき、信じられたいことを言った。
「その鍵、私が取りに行くからエーベルくんはここで待ってて」
「……は?」
「……!?」(えっ!?)
【エマ視点】
「鍵は私が取りに行くから二人はここで休んでて」
自分の言葉にここまで驚いたのは生まれて初めてだった…それにしても二人ともなんて顔してるのよ…そんなに驚かなくても
「……お前、ほんとに変なものでも食ったのか?」
「……?」(エマ、大丈夫?)
「アンタらはっ倒すわよ?……二人は主戦力なんだから休んでてって話だし…!特にエーベル君は燃費がゴミなんだから温存しないと」
「ゴミってお前…」
「……?」(二人が残って私が行くのは?)
「……確かにそれが1番なのはわかるけど…でも!……わたしはホワイト家だから……舐められっぱなしじゃいられないの…そんなんじゃ、わたしのプライドが許してくれない」
「……エマ、悪いがそのプライドは」
「無理よ……無価値なんて言われて黙っていられない…!…それにほら!オリバー君は二人に用があるみたいだし、鍵の部屋で何かしてもらわないと二人は彼と会うことがない…それって向こうも困ると思うんだ…つまり…鍵の部屋まで行く方が待っているよりも安全!…って思うんだけど……どうかな?」
まぁ彼の言葉を信じるなら……だけどね…部屋に罠があるかも…とか考えると怖くて震えてくる…でも震えてるだけじゃ何も変わらない…
「……だが、アイツの話が本当かは」
「それでも…今動かないよりは全然マシよ…なけなしの勇気を出してるんだから…止めないで」
じゃないとあなたに甘えたくなる……助けてって言いたくなる…でももう、馬鹿のままいるのは嫌…私は変わりたい…
…だからお願い…私の…なけなしの勇気を振り絞ったんだから…早く、動いて!私の身体!心が折れる前に…
もう私に私を嫌わせないで!
パチンっと一室に顔を叩く音が響く…自分の顔を自分の両手で叩いて自身に喝を入れる……小説の主人公の真似だが、予想よりも効果がありそうだ。
「お前何してんの?」
「……」(気合いを入れたんだね)
「うん…!」
「そ、そうか(なんか通じ合ってる…)」
「よし!…初めは…エーベルくんが、この部屋に残って…その次はエンリちゃんね…」
「(コクン)」(わかった)
「あ、あぁ…うん…了解…危なくなったらエンリのある部屋に飛び込めよ」
「それは…うん…そうするね」
まぁそうだよね…"何かあったらすぐ呼べよ?"なんて言い出したら多分偽物エーベルだし…
「…エマ」
「……何?」
「……気遣ってくれて感謝してる…ありがとう……」
「…え…エーベルがデレた…!?」
「……?」(エーベルは元から素直だよ?)
「私にこんな素直なのは初めてだよ!」
行動は優しいけど言葉は冷たかったし!なんなら罵倒の方が多かったし!……いや、それは私に問題があったからか…
「……デレてねぇし…つかさっさといけ!ほら、鍵…気をつけてな」
「……うんっ!」
彼が少し顔を染めて手を振る姿に胸の辺りが温まるのを感じた。
「ここだね…」
「(コクン)」
エンリと共に次の部屋に何事もなく着くことはできたが…
「「………」」
……気まずい……いや原因は私なんだけど…かなり私酷いことしたし…なんか随分簡単に許してくれたけど…きっとそれだけではダメだ
…エンリとちゃんと話そう…彼女を知ろうとしないと、私は彼女に許してもらう資格はない。
「……?」(エマ?)
「あっえっと……ううん、なんでもない」
私の馬鹿!!でも待ってほしい…そもそもエンリちゃんが喋ってくれたらこっちも少しは歩み寄りやすいと思う…!
…でもきっと…喋れない理由があるんだろうし…やっぱりちゃんと向き合わないと…
…まずは行動で示さなきゃ!
「じ、じゃあ行ってくるね…また後で」
……まずは私情よりも謎解きをしないと…目的はブレちゃダメってパパも言ってたし…これは、逃げてない…はず!
「(ちょんちょん)」
「な、なに?……その手は?」
「……(グッ!)」
“頑張って!"…ってことかな…腕を前に突き出して顔もなんだか優しいし…で何か訴えかけてきてるし…
「あ、ありがとう…うん…頑張るね…そうだ!ねぇエンリちゃん!……鉈、貸してもらっていい?一応御信用に」
「(コクン)」
「……!ありがとう…必ず返すから!じゃあ─「────」…え?」
「(ニコッ)」
ほんの一瞬…小鳥のような可愛らしい、けど少し弱々しい音が聞こえた…
“いってらっしゃい”…と
「……!うん…いってくるね」
心にあった恐怖心に彼女の素直な優しさが染みる…もっと早く、彼女に歩みやっておけばよかった…
そんなことを考えてしまった。
鍵の部屋につき、扉を開ける。
「あっ……ほんとに空いてる」
扉は難なく開き、地下に続くハシゴのみと殺風景な場所だった。
「怪しい…ワイヤートラップとか…また落とし穴とかないわよね?」
やっぱり怖い…鉈からだけどよく考えたらこれで何ができるか…人相手ならともかく、ここにいるのはほとんどが化け物だ…
「……大丈夫、最悪叫べば二人とも来てくれるはず…二人が揃えばなんとかなるはず…」
……適材適所と割り切ることにしよう。
ハシゴの下はおりるとランプが赤く光っている機械が置かれていた。ちょうど鍵が入りそうな穴があることから金の鍵はこの装置に使うらしい。
何も起きませんように…!…
カチッという音が鳴りランプが青色に変わる…他に変化を感じないが、これで本当に合ってるのだろうか?
「……何も起きないと…それはそれで困るんだけど…でも金の鍵はハズレなくなったし…まぁいいか…二人に合流しよう…」
鍵の部屋から出ると、ピピッという電子音の後に何度も聞いた男の声が聞こえてきた。
『エマ…まさか君が自分から危険な役目を名乗り出るなんて…らしくないじゃないか』
「……びっくりしたほんとどっからでも聞いてるのね…趣味悪」
『はははっ…君少し彼に似てきたかい?…まぁいいか …エマ、君の先ほどの推理は悪くなかった…部屋で待つより鍵を開けに行く方が安全…だが、この考えを思いついたとしても君に実行する勇気はないと思っていたよ…君は保身の塊だからね』
それは私も思った…だけど、
「驚いたかしら?なら勇気を出して正解だったかもね…」
『…無駄話がすぎたな…ほら仕事だ…邪魔者の処刑という重要な任務だ…丁寧に頼む』
「ひひひ……勿論ですよボス!」
下品な笑い声と共に一人の男がナイフを持って現れた。
『おや?他のお仲間は?』
「後々ですね…1番手はオレに譲ってくれましたよ」
『そうか…まぁいいか…好きに遊んでいいが、きちんと殺せよ?』
「へへへ…勿論ですよ」
「……あ、貴方さっきの…!麻薬密売の犯罪者の!」
「そう…お前んとこのホワイト家に捕まってここに連れてこられたんだよ!…」
「……そう」
「…?なんだ…自分の家族がロベリアに手を貸してるって知ってたのか?…やっぱりこの国の上の奴らはクズばかりか!こんな組織に手を貸しておいて自分らは豊かに暮らしやがってよぉ!」
…犯罪者にだけは言われたくない…けど….その通りだ…去年の一年前、パパに“忘れろ”って言われた時点で気づくべきだった。
……本当に、頭の足りない自分に腹が立つ。
「……だから、私が変えていくのよ」
「は?」
「……こんな、悪意と陰謀だらけの国でもわたしが今日まで過ごしてきた大切な国なの…!わたしのことを守ってくれたら人が家族と…お兄さんと一緒に過ごした思い出が詰まった国なのよ…!わたしの家族と友達との思い出の詰まった国なのよ!」
「アンタらなんかに、これ以上好き勝手されてたまるもんですか!……だいたい人のこと、クズだの!腹黒だの…役立たずだの……!!」
「うるっさいのよこの犯罪者共!!アンタらだけには言われたくないっつーの!!」
それを言って許されるのは、被害者の人たちだけだ…わたしに石を投がていいのは…巻き込んでしまったルーカス君やエンリちゃん、そしてその人たちの家族だ……私が人生を壊してしまった善人たちだけだ!
「私はエマ・S・ホワイト!この国が腐っているっていうのなら、私が全部変えて見せる!……覚悟しなさい!アンタら悪の組織はこの王都から一人残らず叩き出してやるんだから!!」
「…威勢だけはいいがな小娘…お前はここで死ぬんだよ」
そう言って男はナイフを振り抜く。
「まずはその服ひん剥いてから少しずつ、少しずつ体を切り刻んでやる!…死体をバラすのは得意なんでなぁ!!」
「……!」
相手の大振りの一振りは私の体を僅かにかすめた。
「…っ!」
「なんだ?避けてばかりか?助けを呼ばなくていいのか!?ほら悲鳴を上げろ!助けてくれって言いやがれよ!」
「ほら!ほら!ほら!!」
少しずつ攻撃の当たる数が増えてくる…だが、まだだ…相手が完全に油断した瞬間を…
「ほーら!!まずはその、綺麗な顔から!」
「……そこっ!!」
ザンッ!!
顔に向かってきた攻撃を鉈でいなし、そのまま勢いを利用して男の二の腕を切りつける…!
「ぎゃああ!!!いっ、いてぇ!!」
傷口を押さえつけ、悲鳴が上がる…男は涙を浮かべた顔でこちらを睨む…
「相手を殺す覚悟はあっても、やられる覚悟は無かったみたいね」
「こ、このガキ……ッヒッ!!」
彼女から借りた鉈を刺客に向ける……胸が熱い…心臓が煩い…でも、頭はどこまでも冷めている…
「私を舐めんな」
「く、クソガキが!!」
ナイフを持った男がまたこちらに突っ込んでくるのを、足を引き体を斜めにそらし、攻撃をいなして、体制を崩す…勢いを殺しきれずに体制を崩す…あとは、手首を持ってナイフごと捻り、顎を地面に押さえ込む。
無力化完了。
「……動かないで…バラすわよ?」
「ひっ!?」
鉈を首に当て脅すが、困ったことにこの後のことは考えていない…
「他にお仲間はいないの?」
「い、言わなっ」
「アナタ命は惜しくないの?」
優しく微笑んでやってるのに、男はひどく怯えた様子を見せ慌てはじめる。
「ふっふふふ二人!二人います!自分は斥候で隙を作るように上のエリアから送られました!自分が10分立っても戻って来なかったら次の奴が来る算段になっています!」
…エーベル君が言ってた通りだ…保身のためなら仲間も情報も平然と話す…こう言うのは家臣に選ばない方がいいわね。
「そう…ならこのまま私に着いてきてもらうわよ?…意味あるか知らないけど人質ってことで…ついでにオリバーの場所まで案内して」
「もっもちろんです!」(くそっ!ふざけんなよオリバー!!何が"貴族の娘だ殺すのなんてわけないだろ"…だ!全然強いじゃねーか!オレの復讐が……)
「早く二人と合流しないと……何ぼさっとしてんの?アンタが先頭!早く歩け!道案内するんでしょ?あんたのお仲間きたら面倒なんだから!」
「へ、へい」(このガキ…!後で地獄を見せてやる…!だが今はなんとかして隙を作って逃げ出さないと…こ、このまましゃオリバーに殺される…あんな化け物相手にやってられるか!…あれ、そういえばアイツら来るの遅くねぇか?)
流石に対人慣れしてる犯罪者相手には場が悪い…私、実技はそんな得意じゃないし……勢いで引き受けたのちょっと後悔してきた
お気に入りの服もボロボロになっちゃったし…
──ポタ──ポタ──ポタ……と液体が滴る音が聞こえてきた…
「………!」
寒気がする…この犯罪者とは別格の殺気と悪意の気配……自然と鉈を握る手に力が入る……
本能が逃げろと叫んでいる!
「何ぼさっとしてるの!?にげるわよ!」
「へ?何が」「フフフフフフフフフフッ……あ゛ぁ゛」
がぷり…!と言う音が背後で聞こえ、噴水のような音が後ろから聞こえ、何が起きたのかが簡単に想像できる……恐らく…男の仲間もアイツに殺されたと思う…だって、このエリアには少なからず血がある場所なんてなかったから
「え、エーベル君!!!エンリちゃん!助けてぇ!!!!」
彼女の元に走り扉を叩くとばんっ!と扉が吹き飛ぶ音と共にエンリちゃんが駆けつけてくれた。
「………!」(エマ、無事!)
「ごめん…今死ぬかと思った…もう…鬼気迫る顔で斧を持って魔人化の姿で出てこないでよ!怖いよ!…」
「……」(あ、ごめん…焦っちゃって)
そして、その後すぐにこちらに走ってくる影が見える
「な、何があった!?…怪我は…!?エマお前!」
「今は後にして!逃げよう!あ、あのさっきの蜘蛛じゃない方の化け物がまだ生きてたの!」
「マジで!?…エンリの一撃喰らって生きてたのか…!奴はどこに」
「……」(さっきのなら、逃げたみたい…気配がしない)
「…あの化け物なら不意打ちを仕掛けてくるかもしれない…とにかくここを離れよう……お前の手当もその後だ…」
「……うん」
……エーベル君、私にもそんな顔してくれるんだ……そんな優しい顔、エンリちゃんにしかしないと思ってたなぉ
少し、頑張ってよかったかも。
でも、こんな体験は2度と嫌だな。
というわけで、第九話です。
ほんとならエーベルのここ半年の過去編とかやりたかったしウィル君についても今どうなってるかやりたかったけど、次の機会にしておきます。
……五割くらいオリジナル要素に使ってしまったのは反省してます。