ジルとアリス──海岸で出会った銀髪の美少女に、剣士の少年は恋をする。   作:ぱふすた

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第21話 決勝 ジル vs キャンディ 2

 ジルが小さく木剣を、キャンディは大きくペロペロキャンディを横から振りかぶる。

 

 ジルは大きく振りかぶる訳にはいかない。

 キャンディが準決勝で見せた多種多様で予測不能のお菓子攻撃に対応するため、常に隙を少なくしなければならないからだ。

 

 ジルは振りかぶりつつ素早くしゃがんで巨大ペロペロキャンディの幅が狭い面の横殴りを躱し、左脚のすねを狙った斬撃。

 だがキャンディのすねから板チョコの盾が凄まじい速度で数枚発生。防がれる。 

 ピクッとキャンディの右のすねの皮膚が動いた。ジルは瞬時に横に転がる。

 

 フェルディナンドのみぞおちを突き刺したお菓子が右のすねから突き出てジルの体を掠める。

 ジルはすぐに起き上がり、隙を作らないジャブのような小刻みな斬撃。キャンディは巨大ペロペロキャンディの飴部分で体をカバーして防ぎつつ、左手の平を向けてソフトクリームやプリンを生成して飛ばしてくる。

 準決勝でケーキの魔族が見せた、目を狙った攻撃だ。

 

 この攻撃は準決勝のこともあり想定内だった。

 キャンディ達の言う強化により動体視力が上がっているジルは顔を逸らすだけで回避する。

 ジルは小刻みな攻撃を続ける。足を狙った軽い刺突がようやくキャンディの茶色い靴の形を歪ませた。

 

「うざっ……」

 

 イラっとしたキャンディは大技を使う。

 

 キャンディはバッと巨大ペロペロキャンディを団扇のように振るい、ジルは後ろに避ける。

 その後、キャンディはなぜかそのまま動かない。

 嫌な予感しかしなかったジルは攻撃を狙わず大きく後ろに跳ぶ。

 

 するとキャンディの手足全体から、突如として液体状の生チョコが洪水のようにドバッと流れ出る。

 

「!?」

 

 生チョコはキャンディの体から流れ出続け、すぐにリング上を茶色に覆い尽くした。ジルは足首の上の方まで熱い生チョコに浸かる。

 なぜかリング外には一滴も流れ出ていないようだった。リングの外周にあたる部分だけ硬化させて壁にしているのだろう。

 

(まずい……っ)

 

 そう思ったのも手遅れ、既にジルの足元のチョコは硬化していた。

 生チョコの床は当然キャンディの足は邪魔せず、ジルを仕留めるべくダッシュして向かってくる。

 

 ジルは咄嗟に木剣を下に突き刺す。

 足元を覆う硬化したチョコの床にヒビが入り、なんとか足を動かせるようになった。

 

 キャンディは巨大武器を両手で振りかぶる。

 

 ジルはチョコが再び硬化する前に全力で片足を上げた。パキパキッとチョコが割れる音がする。その片足を勢いよく踏み込んでもう片方の足もチョコの床から脱出させ、再び大きく後ろに跳んだ。

 

 回避行動に手間取り、なんとか直撃は避けたものの三色の飴の先端が僅かにジルの体を捉え、それだけでジルは吹き飛ばされた。

 

「つっっ!!」

 

 ジルは背中から生チョコ溜まりの地面に激突。すぐさま起き上がったため、倒れたままの体が硬化したチョコによって地面に固定される最悪の事態は避けたが再び足首までチョコに固定され、さらに貸し出しの服に染み付いた生チョコが異常に重い。

 

 ジルがチラッと後ろを見るとそこはリング外。もう後ろには跳べない。

 

「さ、大人しくやられなさい。大丈夫、多分骨折れるだけだから」 

「……ふーっ……」 

 

 ジルはキャンディを見据えたまま深呼吸をする。その目はまったく諦めていなかった。

 ジルは木剣を下に何度も突き刺しチョコの床を割り続け、足の固定を許さない。

 キャンディはジルを今度こそ仕留めるべく突進した。

 

(ここが勝負所だ)

 

 ジルは足を動かさず床のチョコを割り続ける。そうしている間にもキャンディは接近。

 まもなく巨大ペロペロキャンディの射程圏内。 

 キャンディは再び両手で武器を振りかぶった。

 

(ここだ!)

 

 ジルはチョコを割るのを止め、突如右手で木剣を投擲。

 キャンディの顔面狙い。 

 だがその攻撃は決まらず、キャンディは顔から瞬時に発生させた2枚の板チョコの盾で防御。

 

 それはジルの狙い通りの対応だった。

 

 木剣を防いだ盾により視界が塞がったキャンディは数瞬ジルを視界に捉えられない。

 キャンディはすぐに板チョコの盾を吸収する。

 

 だがそのまま武器を振り下ろそうとするも、そこにジルがいない。

 次の瞬間にはキャンディは気づく。

 

 素手のジルが姿勢を低くして懐に入っていた。

 

「なっ……」

 

 ジルはそのままキャンディに素早く接近。

 ダッシュしながら大きく武器を振りかぶっていたキャンディは対応できず、胴体にくっつかれて持ち上げられた。

 

「は!? ちょ、離っ」

「離さないっ……!」

 

 目の前にジルの頭が見える状態のキャンディ。

 予想外すぎる攻撃に対応に困り、とりあえず武器を手放してじたばたする。しかしガッシリと背中まで両手を回されて振り解けない。

 ふと、太ももからお菓子を出そうと考えたがその前にジルが動く。

 

 

 ジルはキャンディを持ち上げたままリング外に全力で跳んだ。

 

 

 ウオオオと大歓声が客席から上がる。

 今日一番の盛り上がりであった。

 

 

 ドシャッと音がする。

 

 審判が足首を生チョコで汚しながら駆け寄ると、そこには地面に背中をつけるキャンディと、その体の上にジルがいた。

 

 審判は一瞬迷う素振りを見せる。 

 微妙な判定だったが、体が上の位置なことと作戦で相手を上回っていたことを考慮し、その宣言は為された。

 

「キャンディ選手リング外! 勝者! ジル選手!!」

 

 

 ワアアと再び客席から大歓声が上がった。

 

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