ジルとアリス──海岸で出会った銀髪の美少女に、剣士の少年は恋をする。   作:ぱふすた

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第28話 お菓子パーティー

 あの後、他の店で別のお菓子も買ってジルとキャンディは宿に戻り、ロビーの机にケーキ屋で買ったロールケーキや苺ショートケーキを始めとした様々なお菓子が並んだ。

 

 ロビーの机を一つ専有しての小さなパーティーは、キャンディ達が何日も宿を借りていることもあり、宿からは問題なく許可されたようだ。

 もしかしたら魔族二人を相手にしてあまり強く言えないというのが本音かもしれないが。

 

 

「ジル、あなた苺なんていらないわよね! ショートケーキの苺、全部あたしとアリスによこしなさい!」

「ええ? まあどうしてもって言うなら……」

「もー。そんなわがまま駄目だよキャンディちゃん。苺に嫌われちゃうよ?」

「え、苺から嫌われるの?」

「…………(おいしい……)」

 

 キャンディがわがままを言い、ジルが困り、アリスがなぜかいつもと違いお姉ちゃんになり、ケーキが黙々とショートケーキを美味しく食べる。

 お菓子パーティーはそんな感じでなんだかんだ成功しつつあった。

 

「ふふっ、でも買い出し行ってからジルとキャンディちゃんどう見ても仲良くなったよねっ。嬉しいっ♡」

「ま、まあ仕方なくあたしの優しさを発揮してあげたわ」

「キャンディ様は意地っ張りなので大変だったでしょうね」

「ちょっとケーキ! 誰が意地っ張りって!?」

 

 くすくすとアリスが笑う。ジルも微笑ましくキャンディとケーキのやり取りを見ていた。

 

(仲良しだなぁこの二人)

 

 ジルがそんなことを思っていると、ふとキャンディから質問が飛んでくる。

 

「そういえばさぁ、ジルとアリスって何がどうなって出会って仲良くなったの? もっと早く聞けば良かったわね、幼馴染とか?」

「あ、そういえばだねっ。私が説明するね」

 

 

 アリスが一通り、出会いから説明を始める。

 いつもよく喋るキャンディもこの時ばかりは静かになり、興味深そうに話を聞いていた。いつの間にかケーキも食事を止めてアリスの話を聞いている。

 

 そして話は賭け試合の後まで進み、アリスはのろけのような話を始めてしまう。

 

「でねっ、絶対に元のご家族の所に帰すからねって! 私感動して少し泣いちゃったっ♡ しかもその後、優しく抱き締めてくれたのっ!」

「あの、アリス……そこまでは話さなくていいかも……」

「ふーーーん、キザなヤツ……」

「それで、そのアリス様のご家族を探す依頼について何か進展は?」

 

 ケーキが変な方向に逸れた話を元に戻す。この辺はさすが長生きといった所である。

 

「それが冒険者ギルドに度々問い合わせてはいるんですけど……未だに何も有力な情報はないみたいなんです」 

「ふむ。となるとフラーシア王国にはご家族の方は居ない可能性が高くなりますね。人探しの依頼は王都の冒険者ギルドにも伝書鳥を介して伝わる筈なので」

「そっか……確かにそうかもしれない」

 

 ケーキが冷静な考察をしてジルも考えていると、キャンディが話に割って入る。

 

 

 

「ていうかさぁ、ジルも冒険者なら各地を旅して探せばいいんじゃない?」

 

 

 

 ジルはハッとして顔を上げた。

 

「お金は各地の冒険者ギルドの依頼受ければいいし。話聞く限りじゃアリスの家族って、ここよりも元リルニア領に近い国、例えばベスターメルンとかに居るんじゃない? あるいはもっと東とか。アリスは危ないから家に居てもらって、ジルは行って探せばいいじゃない。アリスのこと話せば特定できるでしょ」

「確かに……そうだね、その手があったか」

「え、でもそれは……」

「いいの、アリスはあたし達と安全な所で待ってればいいわ」

 

 ジルは言われてみるとそれしかないという感じになった。

 

 少し前にダニエルから聞いた、ベスターメルン帝国にリルニアの難民が集まる町があるらしいという話を思い出す。

 もし今後フラーシア王国内で依頼に進展があったなら、それは旅する中でもベスターメルン帝都の冒険者ギルドに手紙を届けて貰う等すれば知ることが出来る。

 

「ん、アリスは家に居て。僕は冒険者だし魔刀もあるし大丈夫」

「お待ちを。さすがに一人で長旅は危険です。不測の事態や魔物への対応のため、どのような場合でも長旅の際には冒険者はパーティーを組みます。私やキャンディ様もフラーシア王国内を旅する中で魔物や賊と戦ってきました」

「なら、やっぱり私もジルと一緒に行くっ! 探す人は私の家族だもん!」

「それは駄目!! 危ないわ!」

 

 アリスが声をあげるが、すぐにキャンディがそれを止めようと大きな声を上げる。

 

「でも私も居た方がおばあちゃん達だって見つけやすいよ!!」

「アリスっ、女の子の旅がどれだけ危ないか分かってるの!? 腕輪付きのあたし達ですら襲ってくる馬鹿が何人もいたのよ!!」

「行くったら行くっ!! それにキャンディちゃん私に言ったよねっ、冒険者になりなさいって!」

「っ! それは……」

 

 アリスもキャンディも珍しく声を荒げる。

 キャンディはアリスをそんな危ない旅に出させる為に冒険者になれと言った訳では無いが、言った事自体は事実である為、言葉に詰まってしまう。

 

 だが、すぐにキャンディは決心したような声を上げた。

 

「……ならっっ!! あたし達も一緒に行く!!」

「えっ」

「! キャンディ様……」

「アリスが危ない旅に出るのに放っておけないわ!! ジルもケーキもいいわよね!」

「キャンディちゃん……! ありがとうっ……!」

「いいの! それにどうせ他の国でも食べ歩きしたいって思ってたもの! ちょうどいいわ!!」

 

 ケーキの胸に密かに、じんわりと暖かいものが広がる。

 彼女はキャンディがたまに見せる、頼りがいのある姿が大好きだった。

 

 

 こうして、ジル達4人がパーティーを組んでの旅が決まったのだった。

 

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