ジルとアリス──海岸で出会った銀髪の美少女に、剣士の少年は恋をする。   作:ぱふすた

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第36話 東端の町ノルアン

 一夜明けて昼前にフラーシア王国の東端の町ノルアンに到着したジル達4人。

 ノルアンはリルノールと違いそこそこの規模がある町で、冒険者ギルドもある。

 ここでお金稼ぎと休養を済ませたら、いよいよベスターメルン帝国に入国となる。

 

 なおパスポートのようなものは無く、そもそもフラーシアとベスターメルンの国境線は長大で厳密な入出国管理は難しい為、城壁で囲まれた町以外はほぼ出入りし放題である。

 

 ジル達はとりあえず酒場で昼食を食べていた。

 キャンディは相変わらずデザートしか頼んでいないが。

 

「ざっと見た感じオレトと同じぐらいの規模の町だね。とりあえずこの後は宿取ってこようか?」

「少し分かれましょう。ジルとアリス様は宿を取るのと買い物やアリス様のご家族の件の聞き込み。私は町に来る途中見かけた川で洗濯。キャンディ様は……遊んでますか?」

「は!? ナメないで!! ギルドでおいしい仕事の目星つけて来るわ!」

「ふふっ。ではまた16時にこの酒場の前に集合ということで」

 

(相変わらず仲良いな……)

 

 挑発的な笑みのケーキの言葉に、あっさりと思い通りにされてしまうキャンディ。

 しかしそれでもケーキからはキャンディを馬鹿にするような意図や感情はまるで感じられず、キャンディを愛しく想っていることだけが感じられた。

 ジルは前から思っていたが、どうもケーキは人間的な感情が強い魔族のようだ。

 

 僕とアリスも、将来はこの二人みたいな関係に……暖かい家族になれるだろうか。

 ジルはぼんやりとそんな事を考える。

 

「では出ましょうか。すいません、お会計を」

 

 いつの間にかパーティーのまとめ役のようになっているケーキ。

 実際、見た目的にも一番大人である。

 

 こうして酒場を出た4人は一旦解散した。

 

 ◆

 

 同時刻。

 

「リルノールって町まで二日か。野宿嫌なんだけどな〜」

 

 オレンジ色の髪をしている勇者ミカエルがボヤく。

 

 フラーシア王国全体の冒険者ギルドを仕切るベルトランから直接言い渡されたキャンディを暗殺する任務の為、勇者パーティー3人が王都から東に移動していた。

 キャンディやケーキの位置は、その右腕に嵌められている黒い腕輪により筒抜けである。

 

 

 水色の長い髪をハーフアップにした魔法使いの女性、セリーヌが魔法の地図を開く。

 

 その地図には二つの赤い点が光っていて、キャンディとケーキの腕輪の位置が表示されている。指で操作して拡大縮小することもできる。

 言うまでもなく今回の任務の為に手渡された物だ。

 

「標的は現在ノルアンにいるようです。標的がノルアンで休息を取ると仮定するとあと三日、勇者様1人で急げば今日中に追い付きますね」

「いや、急ぐ必要は無え。仕掛けるのはベスターメルンに入ってからって言われてるしな」

「きゃは! 王国民に今回のことを知られるのを避ける為だろうね〜! ほんと陰湿〜! アイツらキラ〜い!」

「ティア。全ては王国の為です。いい加減学びなさい」

「セリーヌのそういうとこもキラ〜い!」

 

 トマトティアラはセリーヌを指差してケタケタと笑い、その緑と赤のふんわりセミロングと赤いドレスが僅かに揺れる。

 

「……リルノールも」

 

 ふとミカエルが呟く。

 

「海に近いし、最近現れる魔族やら魔物やらに子供を攫われたり焼かれたりするかもしれないよなぁ?」

「……ダメですよ勇者様」

 

 セリーヌがため息をつく。

 

 

 

「一泊した後にしてくださいね」

 

 

 

 非道そのものはまったく止めないセリーヌのその言葉に、ミカエルはニヤっと笑みを浮かべた。

 

「分かってるよセリーヌ。今日も抱いてやるからな」

「! はい、勇者様……♡」

「……このパーティーほんとやだ〜。配置換えしてほしい〜」

 

 トマトティアラがげっそりと吐きそうな表情で呟いた。

 

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