ジルとアリス──海岸で出会った銀髪の美少女に、剣士の少年は恋をする。   作:ぱふすた

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第55話  修羅場決定

 「……で、結局帝国軍の護衛付きで再調査ってことか」

「はい。どうもそうなるらしいです」

「もう冒険者の出る幕じゃないね」

「もしかしたらベスターメルンの勇者も出てくるかもな」

「ま、あれだけ死人出たらねぇ! アタシはお金貰えたからいいけど!」

 

 魔族達の戦いを生き残り、冒険者ギルドに戻って一通りの報告を終えて解散となったジル達五人がギルド内の酒場で話す。

 ヴォルフ達は毒を食らったこともあり、これから宿で少し静養するようだった。

 

 クエストの報酬は支払われ、戦闘跡の調査に関しては複数の魔族が出現したこと等もあり軍隊が出てくるようであった。

 そしてその軍隊付きの調査団の仕事には、魔族達の襲撃により亡くなった調査員や冒険者の遺体の回収も含まれる。

 

 ジルは沈んだ声で呟く。

 

「……死人……あんなに沢山の人が……」

「ジルくんのせいじゃないよ。むしろジルくんのおかげで私達は助かったんだよ、ありがとう」

「ジル、冒険者やってたら人が死ぬとこなんて普通に見るんだよぉ? 最初はしんどいかもだけど」

 

 トマトティアラは極悪非道のミカエル達と行動を共にしていたこともあり、人の死は良くも悪くも普通の冒険者以上に見慣れてしまっていた。

 ふと彼女はミカエルのパーティーに配属された当初の頃を思い出す。

 

 

 焼け焦げた一軒家の前。

 

(助けてっ、お母さん助けてっ!)

(ははっ! 叫んだって誰も来ねえよ!)

(ふふっ、この子以外はもう黒こげですしね)

 

(…………ごめん)

 

 頭に浮かぶ、ミカエルやセリーヌに捕まり泣き叫ぶ子供の姿。

 

 炎剣の勇者やその側近への反目は自身の死を意味する。トマトティアラは誰にも聞こえないぐらいに小さく呟いて謝ることしかできない。

 彼女は魔族なのもあり、どちらかと言えば人の命に対して頓着の無い方ではあったが、今にも殺されようとしている子供が泣き叫ぶのを間近で見て何も感じない程では無かったし、ミカエルの所業はやり過ぎだと感じていた。

 

 (? ティア、どうかしましたか?)

 (……ううん! 何でもない〜!)

 

 彼女は勇者パーティーに居る時の、思っていることと違う表情や言葉を出す自分が大嫌いだった。

 

 

「……アタシも最初はキツかったな〜」

「……そっか。ティアもいろいろあったんだね」

 

 ジルはトマトティアラの声色から過去にいろいろあったことを察する。

 

 (ティアに多分嫌なこと思い出させてるし、それに宿で沈んだ顔なんかアリス達に見せられないな。切り替えよう)

 

 深呼吸して切り替えるジル。 

 そうして話していると、外の空がオレンジ色に変わり始めていることに気づく。

 

「ん、もう夕暮れの時間か。まあ帰りは徒歩で時間かかったしな」

「だね。そろそろ解散しよっか」

「ヴォルフさん達はこれからどうするんですか?」

「ああ、俺達は毒も食らったし少し宿で静養だな」

「お大事にしてくださいね」

「ジルくんはどうするの?」

「宿で仲間が待ってるので戻ります」

「そっか。また帝都の闘技祭で会おうね!」

「はい。楽しみにしてます」

 

 こうしてクリスティーナ、ヴォルフ、フォルカーの3人とギルド前で手を振って別れるジルとトマトティアラ。

 やがて三人の姿が町中に消えた所でジルが口を開く。

 

「そういえばティア、仲間の人なかなか来ないね」

「あ、それもう大丈夫になった! 国からアタシ一人だけ任務中止って手紙が来たんだよねぇ!」

「えっそうなの?」

「あっこれ言っちゃいけなかったかも! 口滑ったの秘密だよ〜! きゃははっ!」

「ふふっ。うん、分かった」

 

 軽く笑い合う二人。

 綺麗な夕日が若い二人を照らしていた。

 小さな間。

 その後にジルがぽつりと漏らす。

 

「……新しい友達ができて嬉しい。お別れするの寂しいな」

「! それじゃあさ、今からジルの宿遊びに行っていい?! アタシも寂しいし、実は少し休暇くださいって手紙出したし!」

「えっ。……仲間も居るけどそれでも良かったら!」

「もちろん!」

 

(……うん、びっくりさせちゃうかもだけどティアの性格ならきっとアリスやキャンディとすぐ仲良くなれるよね。ケーキさんは微妙だけど……) 

 

 一度殺し合った関係であるケーキとトマトティアラは、実際は微妙どころの話では無いのだが。

 

 (アリスも友達増えたら喜ぶだろうなぁ)

 

 そして、まだ誰も知らないがアリスとトマトティアラは恋敵である。

 

 

 こうして、ジル達の泊まる宿の一室は修羅場になることが決定したのだった。

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