魔法少女リリカルなのは~性転換吸血鬼~《瞬間凍結》 作:ビレッジイ
忍side
俺とメメが病室でどうでもいいことを話していると、一人の女性が病室に入ってきた。
見たところ大学生くらいの年齢だろうか。
栗色の長い髪におっとりとした目。
服装はどちらも落ち着いた色のシャツとロングのスカート。
「あら?」
ナースさん、ではないな服装からして。
高町さんの知り合いか?
美人だな。
「桃子ちゃんじゃないか。久しぶり、お邪魔してるよ」
俺が女性に正体について思案していたらメメから女性に話しかけた。
どうやらメメはこの女性と知り合いのようだ。
「ああ、忍野さん。お久しぶりです。三ヶ月振りくらいですか?」
「たぶんそれくらいじゃないかな? あいにくうちには時計もカレンダーもないからはっきりとは分からないけど」
「忍野さんはまだあそこに? よろしければ家に来ますか? 部屋は空いていますし」
「いや、遠慮しておくよ。高町君も寝ている間に自分の部屋が使われていたら嫌だろうしね」
「あの人ならそんなこと気にしませんよ?」
・・・・・何の話だ?
話を聞いた感じだとこの人は高町家の人っぽいな。
高町さんの娘か?
いやでも高町家の子供で一番上は高1って言ってたよな。
この桃子さんって人、見たところ大学生っぽいから違うのか?
まあ分からないなら分かる奴に聞けばいいか。
「おいメメ。俺にもこの人のことを紹介しろよ。このままじゃ俺空気じゃねぇか」
「ああごめんごめん。えっと、この子は高町桃子ちゃん。そこの高町君の奥さんだよ」
メメがベッドで寝ている高町さんを指を指して言う。
「・・・・・・・は?」
人妻!
いや大学生で結婚している人なんていくらでもいるからそれはいいんだ。
でもその若々しさで三児の母ってあり得ないだろ!?
しかも高2の子供がいるってことは、やっぱりこの人最低でも30代後半ってことだよな?
外見詐欺にもほどがある。
流石はアニメデフォルト。
ぱねぇっす。
「どうしたの?」
おっと。
俺が急に黙り込んでしまったから桃子さんに心配をかけさせてしまったようだ。
「ははっ、君のその年齢に釣り合わない見た目に驚いているんだよ。そうだろう忍ちゃん?」
「あら、そうなの?」
桃子さんが首を傾げて俺に聞いてくる。
普通30過ぎたらあれな仕草もこの人全く違和感がない。
ましろ似合っている。
美人だっていうのもあるんだろうけど。
「ああ、はい。ちょっとびっくりしました」
「ふふっ、ありがとね。忍ちゃん? だったかしら。あなたは忍野さんのお知り合いかしら?」
そういえばまだ、俺の自己紹介をしていなかったな。
旦那の病室に知らない幼児、しかも金髪の、がいたら桃子さんもびっくりするだろう。
「忍野忍といいます。今日は叔父の付き添いできました」
「あら。叔父ってことは忍野さんの姪っ子ちゃん? 忍野さん、私初めて聞きましたよ? 忍野さんにこんな可愛い姪っ子がいたなんて」
「そうだっけ? まあ今紹介したからいいじゃないか。それに忍ちゃんが海鳴市に来たのはつい最近のことことだしね」
「そうなんですか。忍ちゃん、これからよろしくね」
「はいこちらこそ」
俺がメメの姪だという話を疑っている様子はない。
メメの知り合いには厳しい設定かと思っていたが案外大丈夫なようだ。
「それで桃子ちゃん、最近の調子はどうだい? 桃子ちゃん自身のこともだけど、子供達のこととかさ?」
あれ?
メメが子供のことを聞いたら、桃子さんの表情が曇った。
何か触れてはいけないタブーだったのか?
「あの子達ですか。恭也と美由希は毎日道場に篭りっきりです。特に恭也は長男だからって言って、今まで以上に無茶な特訓をしています。このままじゃいつか体を壊してしまいそうで」
恭也ってやつは随分と親不孝なやつだなあ。
たぶん家族を守るためとかだろうけど、それで家族に心配をかけるなんて本末転倒もいいところだ。
それで本人が体を壊したら尚更だ。
「私が何を言っても、大丈夫だって言ってやめてくれないんです。忍野さん、私はどうしたらいいんでしょうか?忍野さんならどうにかできますか?」
桃子さんが沈痛な面持ちでメメに問う。
桃子さんはだいぶ追い込まれているようだな。
でもメメにそういうことを相談しても意味がないと思う。
「さあね。それは桃子ちゃん達の問題だ。僕のじゃない。だから僕は何も言えないし、助けることも出来ない。だって人は一人で勝手に助かるものだからね」
まあメメならそんな風に応えると思っていた。
メメはどんな状況でも自分の信念は曲げない男だ。
「そうですか。そうですよね、忍野さんならそう言うと分かっていました。昔から忍野さんはそう言ってましたからね」
メメの返事を聞いて少し落ち込んでいるようだ。
でもメメがああいう返しをしてくることがわかっていたみたいで、そこまで落ち込んでいるわけでなないようだ。
「末っ子の、なのはちゃんだっけ? あの子はどんな感じなの?」
メメも流石に思うところがあったのか話題を変える。
そしてメメが「なのはちゃん」の名前を出すと、桃子さんの表情が少し柔らかくなる。
「あの子はとってもいい子ですよ。毎日笑顔で。一人でお留守番も出来ますし、わがままだって言いませんし。まあ親としては少しはわがままも言って欲しいですけど。今日は公園で友達と遊んでいるはずですよ」
「・・・・へぇ、本当にいい子だね」
ん?
なんだかメメの返しに違和感があった。
桃子さんは気が付いていないようだけど。
「桃子ちゃん。病院は高町君が後どれくらいで目が覚めるって言ってるんだい?」
高町さんの話になったとたん、また桃子さんの表情が沈んでしまった。
「病院の方はいて起きるかわからないと。それどころか今もまだ生きていることが奇跡的で、いつ心肺か止まっても、ひっく、おがしくないっで」
高町さんの容態を話していると、桃子さんが嗚咽を漏らし始める。
どうやら桃子さんにも限界が来ているみたいだ。
旦那さんがいつ死んでもおかしくないような状態が半年も続けばこれは仕方のないことだろう。
いやむしろ半年もよく耐えていたというべきか。
普通なら精神の一つや二つ病みそうなものだ。
それからしばらく桃子さんは泣き続けた。
俺とメメは黙って桃子さんが落ち着くのを待つ。
「・・・・すいません。お恥ずかしいところを見せてしまって」
「かまわないさ。それで、少しはすっきりしたかい?」
「はい」
なんか忍野が大人だ。
「忍ちゃんもごめんね。急に泣いたりして」
「いえ、大丈夫です。それに泣きたい時はちゃんと泣いた方がいいと俺は思いますし。あんまり我慢して溜め込んでいると、後で後悔することになりますから」
「ありがとね、忍ちゃん」
やっと桃子さんが少し笑顔になってくれた。
やっぱり桃子さんは笑顔の方が断然に綺麗だと思う。
でもまだその笑顔も弱々しい。
それでも少しはマシになっただろう。
あのまま溜め込んでいたら今度は桃子さんが倒れてしまっていただろうから。
そうなってしまったら、今度こそ高町家は終わってしまうだろう。
「それじゃあ僕達はそろそろ帰るとするよ。あんまり長い時間おいとましてもあれだしね」
「あら。まだいてくれても全然構わないのに。でも無理矢理引き留めるのもいけませんね。それじゃあ忍野さん忍ちゃん、またいつか来てくださいね」
俺とメメはまた来ますと言って俺達は高町さんの病室から出た。
病室を出る時、最後に桃子さんを見た。
桃子さんはベッドで眠る高町さんをじっと静かにみつめていた。
メメと共に廃墟へと帰る中、俺はある一つの決断をする。
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