魔法少女リリカルなのは~性転換吸血鬼~《瞬間凍結》 作:ビレッジイ
忍side
どうも、吸血鬼の忍野忍です。
リニスを拾って一緒に暮らすようになってから一ヶ月がたった。
その間にあったことを話そうと思う。
高町さんが目を覚ました。
俺が治療を施してから三日後のことだ。俺の見込みでは一週間ほどかかると思っていたが、さすが高町さんの生命力だ。ぱないのぉ。
ちなみにこのことは桃子さんがわざわざ俺達の住む廃墟まで来て教えてくれたことだ。
桃子さんは泣きながら俺とメメに高町さんが目を覚ましたことを話していた。
その際、俺達に高町さんと会ってほしいと言われたが、一ヶ月後には退院するそうなのでその時に伺うことにした。
桃子さんは少し残念そうにしていたが、絶対に来てくださいね、とだけ言ってその日は帰った。
そして今日、ちょうどその約束の日ということだ。
目的地は高町家が経営する喫茶店''翠屋,,だ。
そこで高町さんの退院祝いをするらしい。
寝泊まりに使っている教室で、出かける準備をしていた俺は日陰でだらけている人間状態のリニスを見る。
椅子に座り机の上に上半身全体を乗せて腕をダラ〜と下げている。休み時間、机にダウンしている学生のようだ。
ぱっと見だらしなく見えるがリニスも好きでだらけているわけではない。
吸血鬼の弱点である日光が原因だ。
灰にようなことはないが日を浴びると怠くなるらしい。
怠くなるといってもそこまで酷いものではない。せいぜい低血圧の朝くらいのものだ。
俺と違って吸血鬼の弱点を完全に無効化できなかったのだ。吸血鬼化させた本人としては少し申し訳なく思うが、思ったほどの副作用が出なくて安心もしている。
そんな理由で今ではすっかり夜行性となっているリニス。
基本的に昼間はこんな風にだらけているか寝ているかのどちらかだ。
「俺とメメはこれから高町家に行くけど、リニスはどうする?」
「あぁー、私がお邪魔してもいいんでしょうかぁ? 私はその高町家との面識はありませんよぉ?」
リニスが間伸びした声で答える。顔をこちらに向けるだけで上体は起こさない。
俺の問いに答えるのも億劫らしい。
ちなみにリニスは桃子さんが廃墟に来たとき眠っていたので面識がない。
「猫の姿で行けば問題ないだろう。それに行けばこの街一番のスイーツが食えるかもしれないぞ?」
「私も行きます!」
即答だった。
いつの間にか猫状態となったリニスが俺の頭の上に乗っていた。
今では俺の頭の上はリニスの指定席になっている。
どうやら俺の髪はとても触り心地がいいらしい。まるで極上のシルクのようらしい。
切り分けして売れば高く売れるだろうか?
俺の髪って切っても再生能力ですぐに元の長さまで伸びてしまうし。
ロリコン狩りとどっちが儲かるかな?
そんなことを考えていたら頭の上からペチペチと額を叩かれる。
「何をしているんですか、早く行きましょう! スイーツが、スイーツが私達を待っていますよ!」
やはりリニスも女の子ということか、美味しいスイーツが食べられると聞いた途端にこの豹変。
というか目的がすり替わっているぞリニス。
「分かった、分かったから叩くな。別にスイーツは逃げないぞ。あと人前では人語を喋るなよ?この星には人語で喋る猫はいないんだからな。たぶん」
この世界は俺のいた地球とは違うので、もしかしたら人語を喋る猫くらいいるかもしれないけどな。
「それくらい分かっています。にゃー」
「んじゃ行きますか。おーいメメ、そろそろ行くぞ!」
俺は教室から頭を出し、隣の教室にいるメメに声をかける。
するとすぐに教室からいつものアロハスタイルのメメが出てくる。俺はメメがアロハ以外の服を着ているところを一度も見たことがない。ポリシーかなにかか?
「はっはー、元気がいいねぇ忍ちゃん。何かいいことでもあったのかい?」
「そりゃあるだろう。退院祝いなんだからな」
まあ俺ではなく高町家にとってのいいことなんだけどな。
俺は、他人の不幸は蜜の味なんて言うような人種ではないので、高町家が幸せであるならば俺も治療したかいがあったと思える。俺にとってはそれで十分にいいことがあったと言える。
「それもそうだね。さて僕の方も準備出来た、と言っても特に準備するようなこともないけどね。すぐにでも行けるよ」
「では早く行きましょう。スイーツが私を呼んでいます!」
相変わらずスイーツ一直線なリニスに若干呆れつつも、俺達は翠屋へ向かった。
◇◇◇◇◇◇移動中◇◇◇◇◇◇
はい、着きました翠屋。
場所はメメが知っているので迷わずに辿り着くことができた。
俺達は今、その翠屋から数メートル離れたところにたっている。
「ほら忍ちゃん。ここが高町くんと桃子ちゃんが経営してる翠屋だよ」
「へぇー。ここが翠屋か」
翠屋は、まあ綺麗な店だった。大きさ自体はそれ程でもないがオシャレな雰囲気の喫茶店だ。
店自体はまだ再業していないので客はいない。
店のなかに見える数人の人影は高町家とその友人の人達だろう。
と、店の前で立っていたら中から人が出てきた。
「桃子ちゃんだね」
「桃子さんだな」
翠屋から出てきたのは桃子さんだ。
「いらっしゃい、忍野さん、と忍ちゃん?」
笑顔で俺達を出迎えてくれる桃子さん。
うんうん、やっぱり桃子さんは笑顔が一番だな。
それと桃子さん、なぜ俺は疑問形?
「忍ちゃん、フード脱ぎなよ。今の君、身長差の問題で顔が全く見えないよ」
ああ、そうだった。
今の俺はTシャツとジーンズ、上にパーカーを羽織ってフードを深く被っている状態だ。
なぜこんな格好をしているのかというと、俺の容姿が問題だ。
正確には俺の金髪がだ。
俺の金髪は目立つ、とにかく目立つ。
街を歩いているだけで多くの視線を集めてしまう。
前世で一般人だった俺には耐え難い拷問だ。
こんな理由で昼間出かける時はこの格好をするようにしている。
俺はフードを脱いでパーカーの中から金髪を掻き出す。
「う、まぶっ・・・にゃ〜」
フードの中から金髪と一緒にリニスの姿も現れる。
フードを被っているのはリニスを日光から遮る役割もある。
というかリニス、今少し喋りかけたよね? あと普通の猫はそんな器用に前足で日差しを遮らないからね?
幸い桃子さんには気づいていないようだけど。ヒヤヒヤさせるなよ!
「わぁー。綺麗な髪の毛なの。あと猫ちゃん?」
「・・・・確かに綺麗ね」
「?」
俺がリニスのことで内心ヒヤヒヤしていたところで不意に聞き覚えのない声が聞こえた。
俺は視線を桃子さんから声の聞こえた方に移す。
するとそこにいたのは桃子さんと同じ栗色の髪をツインテールにした女の子と綺麗な黒髪を腰まで伸ばした女の子がいた。
二人とも歳は俺より幾つか下といったところか。
二人の第一印象は真逆で、ツインテールっ娘は天真爛漫で黒髪っ娘はお淑やかといった感じだ。
ツインテールっ娘は俺の頭部を見て大きな瞳をキラキラさせている。
黒髪っ娘は無表情だ。まるで戦場ヶ原ひたぎを幼くしたような娘だな。
誰ぞえ?
読んでいただきありがとうございました。