パグ崎メモ、先生とのコミニケーションが増えた。そしてそれを聴いていたとある盗聴マニアのせいで新たな疑惑も色々生まれているらしい。
とある日、
「その話はしないでください!」
「だけど、七神君。君は本当にこのままでいいのかい?」
いつもの冷静な瞳に鋭さを乗せ俺を睨む七神君。俺と七神君はこの話では常に平行線だ。
「貴方は生徒会長を見捨てろとそうおっしゃるのですか!」
「そうじゃない、捜索は続けるべきだ。だけど…これ以上連邦生徒会の生徒会長の座を空座にすることは問題だと言っているんだ」
連邦生徒会生徒会長、このキヴォトスにおいて最高権力者。だがあの超人がキヴォトスを守るために失踪してから長い間その席は空席だった。今まではその業務を連邦生徒会が分担し処理を行っていたが、少しずつ歪みが出来始めた。
「SRTだってこのままでは閉校の可能性だってある、もしそうなってしまえば連邦生徒会の自治に干渉をしてくる存在だって出てくるかもしれない」
今1番の問題はSRT特殊学園だ、俺は閉校反対派として動いているが結果は思わしくない。やっかいなのはやはりカヤ君だろう。彼女は原作通りSRTを潰し手駒にするつもりだろうし。
「それでも生徒会長が戻れば全て解決するのです、無駄な話に時間を割くのは終わりです」
そう言って立ち去ろうとする七神君。
「本当にそれでいいのかい、あの娘は前に進む娘だった。今の君を見たらあの娘はなんて言うんだろうね」
「…」
七神君は俺の問いに答えず部屋を出て行った。
「分かっています、でも…それでも私は」
※※※
「ねぇ太郎君、ちょっといいかな?」
「なんですか先生?」
最近先生は何かあると俺に声をかけてくるようになった、多分エデン条約であれこれやったことが原因なんだろうけど。とは言えこれは悪いことではない、先生は生徒思いだが思いが先行しがちなのだ。思い立ったらすぐ行動、それで生徒の信頼を得てるとも言えるけどシャーレという組織の長として失格だ。アロナは確かに優秀だろうけど情報収集や精査は複数でやって見えてくる物だってあるのだ。そういう指示をほっぽり出してたのが今までの先生だったわけだ。
「SRT特殊学園について知っていることはないかい?」
「SRTですか」
先生からSRTの言葉が出てきたという事はRabbit小隊と関わりを持ったんだろうな。何だけど、
「先生が聞きたいのは一般的な知識じゃなくコネとかの話なんでしょうが、すいませんSRTの娘達には私は恨まれてると思うんです」
「恨まれてる。太郎君が?」
そう俺はSRTの娘達に恨まれていると思う。何故なら、
「私はSRT特殊学園の廃校に反対の立場でした。何故ならサンクトゥムタワーが連邦生徒会の権力の象徴なら、SRT特殊学園は力の象徴だからです」
「いや、そんな学園をそんな表現するのは」
「いえ、それが真実なんです。彼女たちSRTがいてくれるから企業やブラックマーケットは大胆な行動に移せないんです。力ない正義は食い物にされる、これはそういう話なんです」
「それは…」
先生は理解は出来ても納得はできないようだ。ただSRTの廃校は色々おかしい部分が多い、確かにカヤ君がクーデターを起こすのにSRTが問題になるのは分かるが閉校までするだろうか?学園存続を餌に自分の生徒会長就任を後押しさせた方がもっと建設的だ。多分カイザーの入れ知恵なんだろう、不確定要素が少しでもあるならSRTを閉校にしてそれを消せ。足りない分は我々が埋める、そんな提案でもしたんだろうな。
そして成功すれば自分達の目の上のたんこぶは消え連邦生徒会の中枢に潜り込める、全く忌々しい奴らだ。
「私はSRTが存続するためには考えた案は3つでした、1つは新たな連邦生徒会長が擁立すること。私は七神君に出馬も兼ねて提案しましたが断られました」
これが1番の解決方法だと思う、だけど唯一の適格者が反対するのだ。
「2つ目がSRTが権限と予算を削る代わりに生徒会から独立する事です、生徒会をたて自治を持って任務を行う。これはSRTの娘達に拒否されました」
彼女達の行動にはかなりの予算が必要だ、この案だと学園の規模の縮小も必要なのが反対された理由だろうね。
「そして3つ目がSRTを変革するでした、捜査権を得る代わりに各学園を跨る事件鎮圧を請け負う。今までは連邦生徒会紐付きなのを各学園全体に変える案ですね。これは連邦生徒会から反対があって立ち消えしました。」
SRTを残す妥協案だったんだけど連邦生徒会から権限が無くなることに反対意見が出た。多分旗振りはカヤ君だったんだろうね。
「そんな訳で全ての案を否決されて結局SRTを廃校から救うことが出来なかった、なので彼女達に恨まれてる訳なんです」
「いやそれは太郎君が悪いわけじゃ」
「確かにそうかもしれませんが、彼女達にとっては同じ。いや関わりが多かった分恨みやすいんだと思うんですよ」
廃校が決定した会議、俺は議決権はなかった。外部顧問でしかない俺はオブザーバーの席しかなかった。そして関わった以上俺はその決定をSRT特殊学園の娘たちに伝えに行った。それが責任だと思ったから、そして受け取ったのは悲しみと怒りの感情。罵声を浴びせられた訳じゃない、ただその瞳に籠った感情はしっかり俺に伝わった。
「そうか、でもそれなら私にも話をしてくれてもよかったのに」
まぁ先生はそう言うよね、でも先生が絡むと拗れるんだよ。
「先生、シャーレはSRTにとって突然現れた商売仇なんですよ。権限が被ってるんです、SRTの娘達の中にはシャーレができたから廃校になったと考えてる可能性だってあるんです」
「えっそうなの…」
俺だって連邦生徒会外部顧問と言う役職がなければ話し合いにもならなかったと思う、それくらいSRTとシャーレは微妙な関係なのだ。
「SRTの廃校が決まりその手続きは始まっています、厳密には完全に無くなったと訳ではありませんが…それも時間の問題といったところです」
原作でカヤ君が生徒としての情報を保持した、これは結局書類上はまだSRTがまだ廃校していなかったからできたことだ。そしてそれを餌にFOX小隊を手駒にしているんだろう。
「そうかありがとう太郎君、彼女達が納得できる道がないか頑張って探してみるよ」
俺はどう頑張っても少しの時間を引き延ばすことしかできない、Rabbit小隊の信頼を勝ち取るには先生が頑張るしかないんだよな。…まぁ相手があのニート達だしお任せでいいか。
※※※
「まさか彼女から連絡が来るとは」
俺はとある生徒から連絡がありある場所までやってきた。そこは人がまばらで商店も閉めている所が多い寂しい場所だった。
「パグ崎さんこっちです」
俺を呼ぶ声、そちらを向くと。
「久しぶりだね、ニコ君。君から連絡が貰えるなんてちょっとびっくりしたよ」
「まぁ、それはあんなお別れでしたからね」
俺の挨拶に少し困り顔で頬を掻くニコ君、そう俺を呼び出したのはFOX小隊副小隊長ニコ君なのだ。彼女とはSRT特殊学園廃校問題で出会い何度も議論を交わした間柄だ、そして最後に俺に涙を流しながら「どうして!」と一言俺に言葉を発した唯一の生徒だ。
「もう会って貰えないかもと思っていたんだけどね。はい、こっちは頼まれ物のガリね」
「あの時は気持ちの整理ができてませんでしたから、ありがとうございます。どうしてもこのガリの味は出せないですよね」
ニコ君は俺を呼び出した、ガリを分けて欲しいという要件と共にお話しませんか?とこれが罠かもしれないが俺は断る事はしなかった。
「さて、色々話したい事はあるけど。先生はどうだったかい?」
「!?見られていました?」
見てはいない原作を知ってるだけ、そして彼女達が何を成そうとしているのかも。
「先生は君たちの後輩を救おうと動いていてね、後輩思いのニコ君が気にならない訳ないと思ってね」
「お見通しって事ですか、廃校になったとは言え後輩ですから。怪しい大人が近づいていれば気にもなります」
怪しいか、それは否定は出来ない所もあるかな。原作でも風呂覗いてるし。
「気になるなら手助けすればいいんじゃないかな?」
「こちらにも事情がありますから」
さてどうしようか、このまましらばっくれて原作通りに進ませるのが賢い選択なんだろう。でも彼女達の結末を考えると…
「ここに居ることは雇い主的にもかなりグレーゾーンって所なのかな?」
「!?…何を言ってるんですかパグ崎さん?」
俺の危険より彼女達の未来だ、これくらい身体を張れなくて残りのヤバい案件に乗り出せられるか!
「君たちFOX小隊はヴァルキューレに移籍せず姿を眩ました。君たちほどの小隊だ、何か目的が合って行動したはず。そしてその答えも決まってる学園の再興だ、そしてそれを為せる相手も限られてる、最有力は」
「黙ってください!」
俺に銃を構えるニコ君、これは警告だろうけど踏み込み度合いを間違えれば彼女は間違いなく撃つだろう。
「君たちは本当にそれでSRTが復活できると思っているのかい?」
「それ以外どんな方法があると言うのですか、連邦生徒会の思惑だけで学園が廃校にされた。私たちはあの日決めたんです、どんな手段を使おうと学園を復活させると」
原作の彼女はここまで追い込まれていなかった、ニコ君を追い込んでしまったのは俺の責任だろう。可能性を希望を示してしまったから。だから俺は彼女から逃げる事はできない。
「連邦生徒会の思惑で学園は廃校になったのに、なんで彼女の思惑で学園が復活できると思えるんだい」
「止まって!」
俺が一歩踏み出すと俺の足元に銃弾が撃ち込まれる。
「君たちは自分の正義を信じ正義を成すSRT特殊学園の生徒だ、それを失って復活した学園に何の意味があるんだ」
「それでも私たちは!」
「くっ!」
ニコ君の銃弾が跳弾し俺の足を掠める、だけどこんな掠り傷で止まれやしない。
「あの時と違い私だけじゃない、先生だって味方になってくれるはずだ。君は薄々気づいてるはずだ、どこか踏み間違えてることを」
「それでも、それでも仲間を見捨てることなんてできない。私は私は…」
後少し、後少しでニコを止めることができる。
「こ、来ないで!!」
「!?」
追い詰めすぎたのか、ニコ君が構えた銃口は俺の顔に向いており。
パン!チッ!
銃弾は俺の耳を掠め耳先の端を抉った、痛い。でもそんなこと言ってられない。何故なら、
「あっ、わ、私」
俺が追い詰めてしまった女の子がいるんだ。ここで痩せ我慢できずに何が転生人生だ、ハッピーエンドを見るために頑張ってきたんだぞ。
俺は耳先から流れる血も気にせず進み、ニコ君の手を銃ごと両手が包む。
「大丈夫だよニコ君、ただの掠り傷だ。慌てさせてごめんね」
「でも、わ私が」
「大丈夫、落ちついて。でも聞いて欲しいんだ、私は君たちの行動を全て間違いとは思っていないんだ」
「へっ?」
彼女達の怒り憤りは仕方のないことだ、連邦生徒会は人の感情を甘く見ている。ヴァルキューレに何故転校しないそう苦言を呈する子もいるが当たり前だ、人は感情を持つ生き物なんだ。自分たちが愛する学園を潰した相手の言うことを素直に聞くだろうか?
そしてニコ君達は行動に移した、学園を復活させるために。後輩達のために。その行動に嘘はないだろう、それを責める事は誰にもできない。彼女達の感情は誰が見ても正しいのだから。
「君たちのSRT復活の気持ちはよく分かる、だからこそちゃんと考えて欲しいんだ」
「でも私は、仲間をみんなを。ユキノは走り出したから…」
「仲間を否定しなくていい、それだけ大事な子なんだよね。だけど前だけ見て走り続けたら見過ごすこともある。だから止まって確認することも大事なんだそれを気づかせてあげられるのはニコ君、君なんだ」
ニコ君の手の震えが治っていく、彼女は俺なんかよりずっと賢い娘だ。気づかせてあげれば俺よりもっといい未来を切り拓いてくれるはず。
「本当に正しい答えなんて誰も選べはしない、必ず後で取り残しがあってああすればなんて思うのが常なんだ。だから後悔だけはして欲しくないんだ、例え100点満点の答えじゃなくても。自分が選んだ答えに悔いはない、そんな選択をニコ君に選んで欲しいんだ」
「パグ崎さん…」
ニコ君は銃から手を離すと俺をそのまま抱きしめる。
「私にそんな選択ができるでしょうか?」
微かに震える身体と声、不安だろう怖いだろう。だけど、
「出来る、ニコ君なら。FOX小隊ならできる、君たちはどんな苦難も乗り越えてきたSRT最高の小隊なんだから。私が太鼓判を…って私の太鼓判は信用はないか」
「ふふふ、そうですね。あれだけ私たちに希望を持たせて失敗しちゃったパグ崎さんですからね」
いやーそれを言われると何も言い返せない。
「でもパグ崎さんは逃げなかった、言い訳をしなかった、最後まで私たちのために戦ってくれた。それはとても嬉しくて、だから私達は希望を持てた。そうですね、私は忘れてはいけない気持ちにも蓋をしてしまったのかもしれません」
ニコ君は俺から離れ、俺をまっすぐ見つめ。
「私頑張ってみます、最後まで後悔しないように」
その目は真っ直ぐで真剣な眼差しだった。だから俺もその眼差しに応えるように、
「私も頑張るよ、後悔しないように。そしてFOX小隊のみんなと一緒にお稲荷とガリを食べて笑い合える様にね」
俺がそう言うと。
「ふふふ、そうですね。その時は全力で美味しいお稲荷さん作りますね」
こうして俺はニコくんと約束を交わし別れた。ニコ君がユキノ君を説得し行動を変えさせるのは難しいかもしれない。でもあんな彼女達の正義を歪ませてしまうような行動を起こさせてはいけないんだ。そのためにも、
「あっ扇喜君、ちょっと怪しい情報があってね。ヴァルキューレ装備変更の案件なんだけどね…」
原作が進めば動くことになる案件だけど、先に内偵が入れば更に情報が出るかもしれない。
「君の気持ちは分からなくはないけど、カヤ君。君の行動は妨害させて貰うよ」
…あっカンナ君のフォローどうしよう。