少し間が空きました、トリニティ騒動の決着編です。
パグ崎君メモ、パグ崎君のお漬物。何件か住所不明で送られる謎の顧客が居たりする。
先生がトリニティに呼ばれたのでご一緒させて貰ったのだけれど、
「まだ何か隠しているのでは無いのですか!」
「落ち着いてください、そのような性急に物事を」
「…」
何か発言がある度に論争を始めるミネ君サクラコ君、そして押され気味のナギサ君。彼女達が良い子なのは原作で知っているけれどトリニティで特に上で生きると言うことはこういうことなのかと思い知らされる光景だ。一見協力して物事を進めてるようで、相手よりも優位に立つ様に策謀する。外部にはトリカスなんて揶揄されてるけど外部の人間を前にしてもコレだとそう言われても仕方ないのかもしれない。
そして彼女達を止めるべき先生も場の空気に押され何もできないでいる。俺は心でため息をつき腹に力を入れる。
「はい、そこまで!君たちは私たちにそんなことを見せるために呼んだのかい?」
「「「!?」」」
「…」
俺の言葉に固まり気まずい表情を見せる3人に黙って俺を見つめる先生。先生には悪いけど黙って静観していたのだから俺なりに進ませて貰うとしよう。
「君たちトリニティにとって論戦は日常なんだろうけど、外部の人間を呼んでその姿勢のままなのは感心しないよ」
「申し訳ありませんパグ崎外部顧問」
俺に頭を下げるナギサ君、だけどここまで踏み込んだのだ。言わないといけないことは言ってしまおう。
「謝る必要はないさ、ただ君たちに1つだけ言いたいことがあるんだ」
「「「?」」」
全員の視線が俺に集中する、
「君たちは先の騒動で何を学んだんだ?」
「「「!?」」」
俺の言葉に3人は表情を強張る。
「サクラコ君、君は決断したはずだ傍観者ではなく当事者としてことに当たることを」
「ミネ君、救護が。ただ救うだけではいけないことを」
「そしてナギサ君、信じたいと思うならそれを言葉として伝えないとならないことを」
「「「…」」」
3人は俺の言葉に視線を落とす。
「先の騒動はアリウスと言う原因があっただろうけど、1番の問題は言葉を思いを伝えられなかったことだ。環境がタイミングが色々あるだろうけど伝え方なんて方法は色々あるはずだ。出来ないこと、話せないこと、色々あるだろう。でもそれを伝えなければ人との距離は離れていってしまう、それを君たちは身に染みて分かったはずじゃないのか?」
俺の言葉を黙って聞く3人。
「信じることは難しいことだし怖いことだ、それでも信じたいなら一歩を踏み出し伝えないといけないんだ」
俺が言い終わると、誰も発言がなくただ鎮まり返った。そして、
「そうですね…確かに伝えなければ分かり合えませんね。すみませんサクラコさんミネ団長、私の失態をお許しください」
ナギサ君がそう言って2人に頭を下げる。
「頭を上げてくださいナギサ様、私も焦り過ぎていたのかもしれません」
「ですね、お互いまだ分からないことだらけです。それを加味して進めていくべきなのでしょう」
サクラコ君もミネ君も納得し自分達の非を認めた、これで原作より少しはマシになれば良いんだけどね。
※※※
あの後、少しヒートアップしそうにもなったけれどうまく仲裁もできて話は進んだ。内容は原作と一緒でミカ君の話だ、そしてこの話が出たと言うことは今晩に話が大きく進むと言うことでもある。
「すまなかったね太郎君」
「え?」
突然先生に謝られる、その意図が全く分からないんだけど。
「私の代わりに悪役をやらせてしまった、本当は先生の私がしないといけなかったのに」
なんだそんな事か、俺は気にしていないがここは先生もフォローしておこう。
「そんなの気にする必要はないですよ」
「だけど!」
「誰かがやらないといけないことでも先生と私じゃスタンスが違うんだししょうがないと思いますよ」
先生は生徒至上主義だ、それが全て良いわけじゃないけどそのおかげで生徒から信頼を得ているのも確かだ。それに引き換え俺の立場はシャーレであり連邦生徒会の人間でもあるのだ。生徒の味方でもあるが、時には厳しいことを言わないといけない立場だ。
「それに少しドキドキしてたんですよ、先生に止められるんじゃないかって」
「それはないさ、太郎君は彼女達を思って言ってるのは分かっていたからね」
「ならそれで良いじゃないですか、基本的に私は裏方だし先生はいつも通りに生徒のために爆進すればいいんですよ」
そういうと先生は苦笑し、
「それじゃ私が生徒のことしか考えない無鉄砲みたいじゃないか」
「いや、そうでしょう。先生が生徒のことになると自分を顧みずに行動するから、せめて自分の安全の確保と連絡くらいは入れてくださいね」
俺がそう言うと、
「…あーうん、努力はするよ」
いやちゃんと連絡しろよ、特に今晩は絶対に!
※※※
先生の行動をイマイチ信用出来ない俺はトリニティを車で徘徊することにした。先生と一緒にいることも考えたが原作をなるべく変えたくないので却下した。しかし原作を知っていても細かい情報がないのは毎回困る、サオリ君が先生に接触するのは背景がスラムみたいところ以外情報はないし、ヒヨリ君に至ってヒントはなしだ。唯一描写があるのはミサキ君くらいか、それでも水深がある橋ってことだけ
「!?」
目に何か影が映り込んだ瞬間俺はブレーキを踏みハンドルを切った。
キィィィィーーー
車が悲鳴の様な音を立てながら横滑りする、運よくそこまでスピードを出してなかったためか何にもぶつからず止まる車。俺は大きく息を吐く、心臓の鼓動が鳴り響く。だけどそれが落ち着くのを待つ訳にはいかない、俺はすぐに車から降り飛び出してきた影へと向かう。
「また死ねなかった…」
座りそう呟いている少女、アリウススクワッドの1人戒野ミサキ君がそこ居た。そしてそれを理解した俺は頭を抱えたくなる。原作が変わってるじゃないか、原作ではサオリ君の説得で自殺を思いとどまるはずなのになんで俺の前に現れるんだよ。もしこのままスルーして先生と合流しなかったら…あーーもうなんでこうなるんだ。
「君はアリウスの生徒だよね?」
「…」
話しかける俺を感情のない瞳で見つめるミサキ君。原作で知っていたが彼女は人生に絶望しかかっている。それを唯一繋ぎ止めているのが家族の存在、本当に俺でなんとかできるのか?
「私の車に飛び込んできた、何か理由でもあったのかい?」
「…また死ねなかった、どうせもう終わりだし早く解放されたい」
ミサキ君はそう言って立ち上がり何処かへ行こうとする。ダメだ、彼女をこのまま行かせる訳には行かない。俺は思わずミサキ君の手を取る。
「何、私早くこの苦痛から解放されたいんだけど」
曖昧な言葉じゃダメだ、強引にいかないとミサキくんを止めることは出来ない。
「君がどうしてそう思っているのか知らない、だけどその前に私の憂さ晴らしに付き合って貰うよ。タイヤ交換したばかりなんだからね!」
「へっ?」
俺は返事を聞かないままミサキの手を引っ張り車へと向かう。
「ちょ、ちょっと」
「苦情は受け付けません、ほら車に乗って。話はそれから」
「ちょっとほんとなんなの…」
絶対先生と合流させてやるからな。
そんな訳で会話が弾まないドライブを開始したんだけど、
「先ずは自己紹介かな、私はパグ崎太郎。君たちが狙っていた先生の同僚だよ」
「!?」
ミサキ君は目を見開き警戒を強めるが、それも一瞬で目を瞑って力を抜く。
「それで私をどうするつもり、拷問しても無駄だよ」
「拷問ねぇ…」
やるつもりはないし、原作を知ってるから聞く必要もあまりないんだけど。その態度が気に食わないのでアレをやってみるか。俺は車を路肩に止めると、後ろの席から荷物を取り出す。そして、
「はい、まずはこれを食べて」
「食べる?ってこれおにぎり?」
そう今日は長丁場になりそうだから多めに作ってきた夜食だ。その1つをミサキ君に渡したのだ。
「何、毒でも入ってるの?なんか形が歪だし」
「自分用なのに入れる訳ないでしょ、それと形が歪なのはこんな手なんだから仕方ないの!」
どうしても人間だった頃の感覚が抜けないのか不器用になってしまう、俺がおかゆと漬物以外まともに作れないのはそれが理由の1つだ。
「私も食べるから分けてあげるだけさ」
そう言って俺は大きめの弁当を開けおにぎりを頬張る、うん形は歪だけど海苔の代わりに巻いた高菜漬けがいい仕事をしているな。
そんな俺を見てミサキ君は警戒しながら小さい弁当を開ける、そして恐る恐るおにぎりを食べると目を見開き咀嚼し始める。どうやら気にいったみたいだ、これなら夜のお裾分けも問題ないかもね。
そして、俺がもう1つおにぎりを食べようとすると。
「…」
俺を見つめるミサキ君、手元にある弁当箱は既に空だ。
「何かな?」
「…何にも」
そうそれなら、俺は構わずにおにぎりを頬張ると。
「あっ…」
横から小さく声が漏れる。ふふふ、これこそ○○君、拷問の時間です。パグ崎バージョンだ。ハルナ君を筆頭に食いしん坊な生徒達には絶大な効果がある拷問(笑)なのだ。どうやらミサキ君にも効果があった見たいで。
「さて腹ごしらえは十分かな」
俺がまだ入っている弁当の蓋を閉めると。
「そ、それ。ど、どうするの」
気にする素振りを隠しながらそう聞いてくるミサキ君。
「私の夜食かな、でも作り過ぎたし最悪は廃棄する可能性も」
「廃棄!そんなもったいない…あっ」
どうやら魚は餌に食らいついた様だ。
「気にいったのかい、おにぎり?」
「べ、別に。ただ勿体ないと思っただけで…」
どうやらまだ抵抗するみたいだ。なら、
「んー確かにそうだね、でも置いておくと傷んでしまうしね。誰かが食べたいなら別なんだけど」
元々夜食用で保冷BOXに入れてるから痛む心配はないんだけどね。さてどう出るかな?
ミサキは何か葛藤をした後、俺に手を差し出し。
「捨てるなら貰う、勿体ないし」
「…食べたいの?」
「くっぅぅ、早く寄越せ!」
弁当箱を奪われてしまった、少し揶揄い過ぎたかな。
ミサキ君がおにぎりに夢中になっている間に俺は先生に連絡をとる、すると先生はサオリ君の願いを聞き入れヒヨリ君と合流したところだった。俺がミサキ君を保護したことに驚いていたが都合が良いと合流することになった。
「さて、ミサキ君。君には仕事をして貰うよ」
「何を急に、勝手に決めないで貰える」
平静を取り繕っているけど、手に持ったおにぎりで台無しだからね。
「働かざる者食うべからずって言葉がある、君には対価を払う義務があるんだ」
「…これだから大人は」
「ああ、悪い大人に騙されてしまったね。だから諦めて着いてきて貰うよ」
後のことは先生とサオリ君にお任せと言うことで。
「分かった、姫を助けるそれでいい?」
サオリ君の説得で決断するミサキ君、だけどなんで俺を見て言うのかな?
「私はこの悪い大人に騙されて利用されてるから、判断を仰いだだけ」
「…どういう事かな太郎君!」
クソこんな反撃をするなんて、先生が俺を問い詰めてくるが俺の答えは。
「何をしたって…餌付け?」
「「「はぁ!?」
「…そんな訳ないし…ないし」
※※※
先生たちに車に積んであった、弁当に救急パックなんかの物資を渡し俺はトリニティ総合学園へと向かった。理由は援軍を要請し原作よりも早く行動させるためだ。そのためにイチカ君に連絡して事情を話したんだけど、既にミカ君の脱獄もあって騒動になってるらしい。あー本当ここら辺のタイムスケジュールはどうなってるんだよ、少しは言葉を選んでくれよトリニティ!
考えろ、俺。まずやらないといけないことは。
俺は1人の生徒に連絡を入れる。
「パグ崎さんどうされました、人には言えない衝動が溢れてきたのですか?」
「ごめん、それ今度。先生がアリウス自治区に向かったんだ」
連絡を入れたのはハナコ君、そして俺の言葉で察したのか。
「それで私は何をすれば?」
「カタコンベの地図を探してほしい、古書館になら手がかりがあると思うんだ」
「…なるほど、分かりました探してみます。後、成功のご褒美期待してますね」
そう言って電話を切られる…後のことは後で考えよう!
残った問題はセイア君がいつ復帰するかだ、クズノハがいつ動くなんて分からないしな。
結局考えは纏まらないまま学園まで着いた、その時俺のスマホに連絡がきた。それは非通知、しかもこのタイミングで?俺は怪しみながらもそれに出た。
「ふむ、踏み込む覚悟はあるようじゃの」
聞き覚えのない声、だけどなんとなくこの人物に見当がつく。
「クズノハ君かな?」
「ほう、妾を知っておるか。何故知っているかは今は聞かないでおこう」
ブルアカの世界でも謎が多い人物。そんな彼女がなんで俺に?
「色々あるじゃろうが、そちらも急いでおるだろうから要件を言う。色彩に侵されたこの娘をどうするか、選ばせてやろうと思ってな」
なっ!?こんな話原作にないぞ、クズノハはセイア君が代償を払うことで救うはずじゃないのか。
「救ってやるのは構わんのだが、誰かの思惑通りなのは面白くない。そこで取引じゃ」
「取引…」
どうする、相手は謎の多い人物だ。どんな無理難題を。
「百鬼夜行で話題になっているそちの作りし漬物。それを一年分でどうじゃ」
「………は?」
「いや、一年は言い過ぎか。せめて半年、いや3ヶ月分でもいいから」
いや待てなんで俺の漬物目当てなんだよ、ブルアカで1番の謎人物だよね君?
「いや、半年分なら私の権限で用意はできるけど」
「おおーそうか、そうか。なら話が早い、送り先は後で伝える故。成功報酬故すぐに取り掛かる。おーーついに彼奴が自慢した一品がーーーー」
…なんか1番の問題が解決したっぽい。
※※※
どうしてこうなってしまったのか。ミカさんのクーデター、エデン条約そして今回の騒動。理想や思いがあったなのに進んで行くうちにそれは形骸化し望んでいない方向へと進んでしまった。
ティーパーティーのホストとして権力を持ったはずなのに、大事な親友を救うこともできない。救いたいのに権力がそれを邪魔をする。
「私はどうすれば…」
「自分の心に素直になればいいんじゃないかな」
私の呟きに返事があった、その声の方向に居たのは。
「パグ崎外部顧問…」
そこに居たのはパグ崎さんでした。彼は先生とはまた違った不思議な大人だった。先生の様に生徒を信じ共に行動するのではなく、間違っていることがあればそれを正し最後まで側で支えてくれるそんな人。
「大人になると間違っていると分かっていても行動できない事が多くなる」
パグ崎さんはカートに置いてあったティーポットにお湯を注ぎながら話だす。
「生活、立場、契約。色んな柵が増えて手で掬った砂の様に少しずつ大事な物を零してしまうんだ」
大事な物、私の脳裏にミカさんやセイアさん。ヒフミさんなど大切な人たちの顔が浮かんできた。
「大人になると取捨選択してしまう、どれが自分にとって大切なのか。順位をつけてしまう、そうしないと心が保たないから」
選ぶ、それはとても残酷な事だろう。だってどれも大切な物なのだから。
「だけど君たちは違う」
「えっ?」
「君達は我儘になっていいんだ、子供は大切な物を沢山作るべきなんだ。選ばなくていい大切な物を大事にしないといけないんだ」
我儘になっていい?私は選ばなくていいのですか?
「確かに君たちは間違ったのかもしれない、でもまだやり直せる。ティーパーティーのホストではできない事でも、桐藤ナギサ個人なら踏み出せるんじゃないかな?」
私個人でなら、またミカさんと笑ってお茶を楽しむ事もできる。いえ、私はミカさんと笑って過ごしたいのだ。
「…ありがとうございますパグ崎さん、決心がつきました」
「そうか。なら進むといい、私も微力だけど協力するよ」
ああ、誰かが信じてくれる。なんと心強い事なんでしょうか、そしてどうしてこんな大切なことを忘れていたのでしょうか。
ミカさん待っていてください、必ず間に合わせて見せます。貴方とまた笑顔で過ごすために。
「その話私も混ぜて貰えないかな?」
「え?…セイアさん!?」
そこに居たのは倒れてたと聞いていたセイアさんの姿。
「私も顧みるととても馬鹿だったと気づいたよ、素直になるそんな事もできなくなっていたとは。だから私も協力させて欲しい、大切な物を無くさないために」
そんな時紅茶の香りが漂ってきた。
「ならお茶を飲んで始めようか、どんな時も心にゆとりを。これは私からの教訓だよ」
確かに、それはとてもトリニティらしい教訓ですね。大切な物をトリニティの柵で失いそうになった私ですが、それをトリニティらしく取り戻すのも一興なのかもしれませんね。
※※※
その後は面白いほどに順調に進んだ、ナギサ君とセイア君が自分の地位すらも担保に協力を要請した。そしてシスターフッドや救護騎士団、正義実行委員会はその覚悟を受け止め全面的に協力を申し出てくれた。
上が纏まったトリニティは凄いとしか言いようがない、俺がハナコ君に協力を仰いだカタコンベの地図とアズサ君の記憶を頼りに組織だった人海戦術でアリウス自治区への道を確保したのだ。そして急いだ甲斐もありミカ君と先生の保護も間に合ったのだ。
アリウス自治区の問題はこれからだけど、ナギサ君とミカ君。そしてセイア君の友情が取り戻せたことは大きな第一歩になるだろう。彼女達は過ちを犯してしまったが、それはまだ致命的な物ではない。彼女達はまだ子供やり直せるのだ、他人がとやかく言うかもしれないがそれは俺たち大人がフォローすればいいのだ。
彼女達はこれでなんとかなる、後は。
「パグ崎さん、こんな場所に何があるんだ?」
俺はアズサ君を車に乗せ人気のない山道を進んでいる。トリニティは目処がついたならもう1つ。
「あれは!?」
アズサ君も気づいたみたいだ、俺は車を止める。
「みんな!」
アズサ君は車から飛び出し、そこに居た3人に駆け寄る。
「「「アズサ!?」」」
アズサ君がアリウススクワッドの3人に抱きつく、どうやらサオリ君は間に合わなかったみたいだけど他の家族との再会はできたみたいだ。
俺は後ろに積んである荷物を持ってゆっくりと近寄る。4人は静かに、それでもとても嬉しそうに再会を喜んでいる。
「パグ崎さんありがとう、みんなと家族に会わせてくれて」
「お礼を言われるほどじゃないさ、それにサオリ君には間に合わなかったみたいだしね」
アズサ君が礼を言うが俺にも目的があったし、完全な家族の再会ではないしね。
「そんなことない、みんなからも聞いた。色々助けてくれたって」
「はい、あのお弁当美味しかったです。最初は最後の晩餐かと思いましたけど」
「ヒヨリ!でもこれでアンタの貸し借りは無しだからね」
サオリ君は別にしても彼女達もこれから逃亡生活が始まる。アリウスの残党は時間が経てばトリニティがなんとかするかもしれないけれど、追われる立場はこの先も変わらない。なので、
「これは私からの餞別」
「「「「?」」」」
俺が差し出した紙袋に首を傾げる4人。うん、この姿はやっぱり家族だね。
「スマホ?」
「おおーーお弁当です!」
「クレジット?」
「パグ崎さんこれは?」
そう俺が渡したのは、弁当とスマホにクレジット(口座)だ。
「スマホは契約を済ませてあるし先生と私の番号も登録してあるから何かあったら連絡して欲しい。クレジットは作るのが大変だしね、私の会社が保証人になって作ったから後少しだけど資金もあるから無駄遣いはしないでね」
キヴォトスでは生徒でない事はとても大変なことだ。口座は作れないし、そのせいで企業や大人に騙される元生徒も多いのだ。ミサキ君達は大丈夫だと思うけど、原作のサオリ君の状況を見ると用意しておいた方がいいと思ったのだ。
「何これ?私たちに恩を着せてまた仕事をさせるつもり?」
ミサキ君が警戒した目でそう言うので。
「んーそんなつもりはないだけど、仕方ないミサキ君の弁当だけは持って帰るよ」
「なんでよ!…あっ」
俺の言葉に即座に反応するミサキ君。その反応にアツコ君は薄ら笑い、アズサ君は驚いたのか目を見開き。そして、
「ミサキちゃんは犬のおじさんのお弁当気に入っていたみたいですからね、残ってたお弁当も食べはぅ!?」
「ヒヨリうるさい!」
ヒヨリ君の頬を引っ張り話すのを妨害するミサキ君。いやーまさかミサキ君がここまで食いしん坊キャラだったとは。まぁそれなら話は早い。
「受け取ってくれるなら定期的にはお弁当を供給しても構わないよ」
「…別に、姫やヒヨリが欲しいなら構わないけど」
チラチラこちらを見ながらそう答えるミサキ君。アツコ君がしょうがないなーと言った顔で頷くので了承したと思っておこう。
こうして俺はアリウススクワッドの3人と繋がりを持つことになった。彼女たちとどうやって距離を詰めて行くかは未知数だったが、別れて数時間後に。
「お弁当美味しかった」
「また、楽しみにしてます」
「次は高菜巻き希望…それと…ありがとう」
お弁当を食べる3人の写真と共に送られてきたメッセージに心が軽くなる俺であった。