転生したらパグって酷くないですか?   作:雪見沼

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お待たせしました、仕事が忙しかったのとロマンシングにかまけておりました。
遂に、最終編のラストになります。パグ崎君というイレギュラーを孕んだ最終編はどの様なラストを迎えるのか?

今日のパグ崎君メモ:プレ先生時空の太郎君はアビドスにかなり積極的に関わっており、ユメともかなり親しくなっていた。ただ、ユメを救うことは叶わず絶望した時間が長かったこともありノノミを始めとした一部の生徒とのフラグが消失してたりする。


○月&日 アトラ・ハシース、室内なれど何故か局地的に湿度高し

激しい衝撃が起こってから少し時間が経った。あの衝撃は間違いなく先生たちがアトラ・ハシースに突っ込んだことによるものだろうから、今は次元エンジンを制圧しているところだろうか?

チートな力も頭脳もない俺では何もすることが出来ないのは分かっているけれど、原作的にもここからは裏で支える才媛達でもかなり綱渡なことが満載だ。

 

「んっ…次元エンジンを制圧されたみたいだね」

 

シロコ君の言葉が確かなら第四ブロックに囚われている、こちらのシロコ君を救出できたはずだ。…あれ?確か原作だとそのまま船に戻って自爆コードを送信するはずだったよな。

ってことは…あーーー俺がここに居るから船に戻らずこっちに直進コースじゃないか!?

 

やばい、やばいぞ。ハッキングを止める為には3つに分かれないといけないのに。あーーお願いだからみんな来ないで、いや来て貰わないと困るけどちょっと待ってーーー

 

「おじさん?」

「…(太郎君?)」

 

頭を抱え転がる俺を不思議そうに見るシロコ君とプレ先生がそこにいた。

 

※※※

 

一方その頃先生達は。

 

 

みんなと力を合わせ4つの次元エンジンを掌握し、シロコを救出することに成功した。ホシノの言う通り、シロコとあのシロコは別人の様だがまだ多くが謎のままだ。後は太郎くんを救出してここを破壊して逃げるだけなんだけど。

 

「ふふふ、おじさま待っていてくださいね〜すぐに邪魔者に鉛玉ぶち込んであげますから」

 

ノノミはシロコが別人と判明してから、躊躇を捨て去ってしまったみたいだし。

 

「パグ崎さんを救出した後、部屋に閉じ込めて爆発の瞬間まで後悔させるの如何でしょうか?」

「いや、あいつら空間移動もできるから手足も縛らないと駄目だね」

「それもいいですが、何故この様な暴挙に出たのか知るためにごうも…尋問をするべきでしょう」

「それならいいごう…尋問の道具があるわ。生きてる事を後悔させながら話させるべきね」

 

船ではハナコにカヨコ、リンちゃんにリオが物騒な話をし始め周りをドン引きさせている。いやあの子もシロコであるのは間違いない様だし手荒な真似はやめて欲しいのだけど…仕方ない、これは太郎君が原因だし彼に説得して貰おう。

 

こんな風に希望が見えたことで空気が緩んでいたが、そこは各学園の優秀な生徒達。最初に異変に気づいたのはリオだった。

 

「待ってちょうだい、何かおかしいわ!」

「リオ?」

「ヒマリ、すぐにウトナピシュティムの中枢システムを確認してちょうだい」

「?」

 

ヒマリはリオの言葉に疑問を思ったが、言われた通り確認した。そして、

 

「これは!?」

 

ヒマリが驚愕する。

 

「…ハッキングされているわ、ウトナピシュティムの本船が!」

 

そして、唐突に鳴り響く警戒音。それに驚くみんなだったが、それ以上に。

 

『自爆シーケンスを実行します』

「「「「「「!?」」」」」

 

システム音声で通知されたメッセージに全員が驚く。まだ太郎君も救出していないのに何故、そんな考えも纏まらないうちに。

 

「伏せて!」

 

何かに気づいたカヨコの言葉に全員が身を伏せる、そして。

 

ドドン!

 

激しい衝撃と音ともに爆発するメインルーム。爆発が小規模だったのが幸いしブリッジメンバーに怪我はなかったが。

 

「ヒマリ部長、一体何が?」

「やられました」

「へ?」

 

ユウカの質問に表情を歪めヒマリは返す。

 

「今ウトナピシュティムの本船は、ハッキングされ所有権が敵に奪われています」

 

敵にウトナピシュティムの本船を乗っ取られてしまった、それはつまり相手のシステムが回復したことであり。

 

「空が…」

 

またキヴォトスの空は、赤く染まったのである。

このままではまた虚妄のサンクトゥムが出現してしまう、その為にはハッキングを止めウトナピシュティムのシステムを取り戻す必要がある。

それには、

 

「ハッキング位置は…アトラ・ハシースの箱舟第4エリアの中央部です」

 

知らされた場所は、私とシロコがいる位置からそれほど離れて居ない場所。そして、多分勘だけどそこには太郎君もいるはず。

 

「シロコ!」

「うん」

 

私たちは走り出す。

 

「みんな諦めるのはまだ早いよ、私とシロコでハッキングを止めて見せる。だから、後のことは任せたよ」

 

私とシロコは数分走ったのち、目的地へと到着する。緊張感か唾を飲み込み心を落ち着かせ、シロコに合図をして扉を開ける。

そしてそこに居たのは、

 

「敵、発見。…アイツは私を拉致した奴」

「…」

 

もう1人のシロコを追って一度目にしたプレナパレス、そして。

 

「せ、先生!」

 

何故か後方で小さな檻に入れられている太郎君の姿。無事なのはいいのだけど、その姿は完全に犬小屋に入れられた犬の様で何だか力が抜ける。

 

※※※

 

犬小屋を心地よく感じてしまうのは犬としての性なのでしょうか?

そんな訳で転生してから初めて犬の本能を実感してる訳だけど、最終編はクライマックスに突入した様です。

何かに気づいたシロコ君がプレ先生と何か話した後、

 

「おじさん、そこに入って」

 

そう指を指した方向にあるのは檻。なんで急に?と思ったけれど、

 

「先生がくる」

 

その言葉でここが戦場になる事を理解した。それによく見ると檻の周辺が歪んで見えてるし、多分技術を無駄遣いした安全対策なんだと思う。

まぁ立場的にも断れないし、大人しく入ったんだけど。

 

「入っておいてよかった…」

 

俺の目の前ではシロコ君達のガチバトルが行われている、どちらも先生のサポートが入っているのでその動きは激しく、何度か流れ弾が飛んできたけど檻に届く前に弾かれあらぬ方向に飛んでいった。

最初は先生達も俺を気にしていたけれど、弾が弾かれるのを見て意識をプレ先生達に集中したのはいいんだか悪いんだか。

そして戦闘はプレ先生達が有利に進めている、流石に経験の差が大きいんだろうね。でも先生も今ここで勝てなくても、他のみんながアトラ・ハシースの制御権を奪って有利になる事で勝利を掴むのを意識してるはず。

 

「みんな、頑張ってくれよ」

 

〜その頃リン達は〜

 

「シャル・カリ・シャッリ回廊だ、それを破壊すれば箱舟との接続を解除できるはず」

 

リオの機転で一時的に自爆を免れた彼女達だが、それは時間稼ぎでしかなく根本的な解決には箱舟の最下層にある端末を破壊しなければならなかった。

しかもその場所は現在地から1200mも降った場所にあり、そのセキュリティを破るには箱舟の最東端と最西端にある解除装置を同時に破壊しなければならないのである。

 

その中でも1番の課題は、どうやって1200m下の最下層まで行くかだが。

 

「ふふふ、ついにやって参りましたわね。フウカさん」

 

ハルナはとてもいい笑顔でフウカの肩に手を置く。

 

「はっ?何が…って、もしかして」

 

フウカは何か思い当たったらしく、顔が歪む。

 

「ええ、その通りです。ついに、フウカさんの才能を解放する時が来ました」

「…」

 

フウカの表情が死んでいく。

 

「私は知っております、フウカさんの才能を。そしてそれを日々努力し、精進しているのを」

「そう、その努力がついに花開く時がやってきたのです!」

 

ハルナの勢いは止まらない、さらに。

 

「運転のお時間ですね〜」

「給食部の部長が1番得意なやつだね!」

「そうね、それに折角かいぞングググ」

 

他の美食研のメンバーもそれに賛同…何かジュンコが言いかけたが、ハルナが口を塞いで中断された。

 

そんな状況に半分抵抗を諦めたフウカだったが、自分たちがやらなければならないのも理解してるので行くことに同意した。

そして、2つの解除装置は対策委員会とゲーム開発部が担当することになった。

 

そして、出発の時。フウカはいつも以上に力を込めてハンドルを握る。

 

「な、なんでこんなことに」

「心配する必要はありませんよフウカさん、敵の対処や破壊は私達が対応しますから。フウカさんはいつも通りの運転を心がければいいのです。それにもし、何かあれば…」

「何よ、その思わせぶりは?言いたいことがあるなら、全部言って!」

 

ハルナはそれは素敵な笑顔で、

 

「もし、どうしようもないピンチの時はこう叫ぶのです。アス○ーダー!と」

「アンタ、この車に何をしたのよ!」

 

フウカは自分の愛車に一抹の不安を抱きながらもアクセルを踏み込むのであった。

 

〜その頃地上では〜

 

トキはアビ・エシュフに乗り孤軍奮闘していた。異変をいち早く察知したトキは現場に急行するも、そこにはすでに数多くの敵が出現しており、トキはキヴォトスを守るため敵を食い止める事を選択した。

そして、その選択によりサンクトゥムの出現を僅かに遅らせることに成功し、その事でヒマリとリオはトキに気づくことができた。

だが、

 

「はぁ、はぁ…」

 

敵の数は多く、アビ・エシュフを纏ったトキでも敗退寸前だった。

 

〜同時刻〜

 

「あーー美食研まだ着かないの?」

 

ハルナ達は苦戦していた、敵の数が多く攻撃しても振り切ることが出来なかったのである。

 

「仕方ありませんわ、フウカさんアレを使う時が来ました!」

「て言うか、アレってなんなのよ!いきなり変な動作されたら事故るじゃない!」

「ご心配なく、後は完全なストレートコース。さぁ勇気を出して!」

 

このままではみんな無事に帰ることができない、フウカはもう自棄になり大声で叫んだ。

 

「ア…アス○ーダーーーーーーー!!!!!!」

 

フウカが叫ぶと同時に前面のエンジン部分から謎のポットが突出し、そして。

 

「ワワワワワ!!!!」

「この加速力、流石おじさまから頂いた資金の半分を注ぎ込んだ代物ですわ!」

「すごいね、敵をあっという間に引き離したよ」

「…ところでこれ、どうやって止まるの?」

 

敵を振り切り、一気に目的地まで辿りつく。

そしてジュンコが心配した停止も、加速そのものは1分程度だったので目的地到着前には普通の速度に戻り無事に停止した。

 

「次の課題は加速の継続時間ですわね」

「いい加減にして!それより到着したわよ!」

 

フウカの通信に、対策委員会とゲーム開発部は解除装置を破壊する。そしてセキュリティを解除された端末に向かい。

 

「ドッカ〜ン!」

 

アカリが放った1発は、端末に当たり。

 

ドーーーーーン

 

爆発を起こし、端末を完全に破壊する。

そして、それと同時に妨害されていた連結を。

 

「連結解除!」

 

ピン!

 

「連結解除、承認!」

 

作戦は成功した、残り時間は1秒。まさに紙一重の勝利だった。

 

〜そして地上は〜

 

「トキ、作戦は成功したわ。撤退して!」

 

リオはトキにそう指示する。だが、

 

「申し訳ありません、リオ様、それは難しそうです」

 

孤軍奮闘していたアビ・エシュフはすでにボロボロで、敵も未だ多く存在。絶望的状態であった。

そして、救援を呼ぼうにもこの場所はミレニアムからかなり離れており、かなりの時間が必要になる。

そんな中、トキは、

 

「リオ様、アビ・エシュフの自爆コードを教えてください」

 

色んな心残りがあるが、その身を犠牲にしてキヴォトスを守ろうとするトキ。

そして、リオはそれに対し。

 

「…そんなものは存在しないわ。だから…」

 

前のリオなら決断しただろう選択を…リオは捨てた。それは、伸ばした手を掴んでくれた人が居たから。あの人に恥じぬ様、最後まで諦めたくないから。

そして、それは報われた。

 

「ターゲットロック、狙い撃つ!」

 

目の前の敵が弾け飛ぶ、そしてトキの前に現れたのは。

 

「せ、先輩方…?」

 

C&Cのメンバー達、そのメンバーがトキに声をかけてくる。

そして、そのリーダーであるネルは。

 

「おい、新人。そんな舐めた言葉、二度と言うんじゃねーぞ」

 

そう言葉をかけられるトキだったが、それ以上に混乱した。何故彼女達がここにいるのか?

 

「何とか間に合いましたね」

 

それに応えるのは、セミナーの一員であるノアと。

 

「私が望んだんだ」

 

ティーパーティーの一角であるセイアだった。

彼女がノアに直談判し、それをノアが信じた。勿論それ以外にも、

 

「とっても勘のいい後輩がいますし、それに」

「私も進言した、おじさんが言ってた。機械は効率ばかりでつまらないって、だからこちらが戦力を集中できない場所に何かしてくると思った」

 

カリンが無表情なドヤ顔でそう言った。

こうして、C&Cはトキのピンチに駆けつけることができた。後は、

 

「お掃除を始めましょうか!」

「早く済ませて、おじさんを迎える準備をしないと」

「おら、行くぞ!」

「イッツショータイム!」

 

ピンチを乗り越え、ついに反撃は最終局面を迎えるのだった。

 

※※※

 

空気が変わった、見ているだけの俺でも分かるくらいプレ先生たちの動きが変わった。特にA.R.O.N.A君の動きが忙しなくなっている。多分リンくん達が連結解除に成功したのだろう。

つまり、

 

「…なら最初に先生を始末すればいい、そうすれば全てが崩れる」

 

あちらのシロコくんの言葉に空間が変換する、これはあちらもシッテムの箱を戦闘にリソースを全振りしてきた証拠だ。

そしてもう一つ、

 

「…」

 

先生が懐に手を入れる。

 

「…そうだね、先生にはソレがあったね。…でも、忘れてない?貴方の前にいるプレナパテスが誰なのか?」

 

プレ先生も懐に手を入れ、黒ずんだカードを取り出す。

 

大人のカードと大人のカード、比べるのも馬鹿らしいが勝負はどれだけ生徒との絆を深めたか。俺という異物はあちらにも存在した、なら条件は同じ。俺は檻を掴む手に更なる力を込めて両陣営の戦いを見つめる。

 

刻一刻と変わる戦場、入れ替わり現れる生徒に対策委員会が使っていた武器の応酬。はっきり言って普通じゃない、大人のカード。代償を払うことで奇跡を起こせるカード、それを使った者同士の戦い。現実だと分かっているのに、CGなのでは思ってしまう数々。

そして、その激戦は。

 

「…そっか」

 

倒れるあちら側のシロコ君。こちら側の先生の勝利だった。

 

「どうして…」

 

倒れふしたシロコ君に先生が近づく。

 

「教えてほしい、シロコ。一体何があったの?」

 

先生はやはり先生なんだな、俺はその情景を見て思う。あの人にとってあちら側のシロコ君も生徒なんだ。その生徒がこの様な行動を起こした、生徒を信じている。いや信じ続けている先生にとって、聞かなければ始まらないのかもしれない。

 

そんな中、対策委員会の生徒達が到着する。

 

「先生!」

「おじさま!」

 

彼女達が来たことで…シロコ君が抑えていた壁が一気に崩壊する。

 

「うっ…う…うっああああぁああああーーーー!!!」

 

地面に顔をつけ慟哭の様な叫びをあげ泣き崩れるシロコ君。

その姿に先生も対策委員会のみんなも何も言えず、その姿を見つめている。

 

「わ、私のせい。私がいるから…滅亡した。望んでない…殺したくなかった!ごめんなさい…ごめんなさい」

 

その声に駆け寄りたいのに、檻はまだ開かず俺は歯軋りする。

その間にも

 

「わたし、わたしさえいなければ!…わたしがあそこに留まったから…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

困惑する対策委員会のみんな。シロコ君に簡単な説明を受け更に驚く、そしてその中でホシノ君がポツリとこぼす。

 

「そっか、あのシロコちゃんの眼差しは…私と同じだったんだ」

 

その言葉に俺は歯を食いしばる。アレは俺にとっても傷なのだ、でもそれに苦しむことすら俺には許されない。

俺は昔の後悔を思い出しながら、それでもシロコ君の言葉に耳を傾ける。

ホシノ君と俺が亡くなったこと、セリカ君が行方不明になったこと、アヤネ君が生命維持装置を外したこと、ノノミ君がアドビスを去り、そうなったこと。そして先生も…

言葉にしただけでもその絶望感は半端ない、そして最後に残ったシロコ君は死ぬことも許されず色彩に侵された。なんて生き地獄なんだろう、その上最後には最後の力を振り絞った先生が自分の身代わりになってしまったのだ。

 

そして、そんな絶望の中でもあっても。

 

「「「「!?」」」」

 

プレ先生が立ち上がった、それを見て全員が驚く。もうボロボロなのに、プレ先生貴方は。

プレ先生の周りにエネルギーが集中する、それと同時に。

 

パリン!

 

俺を閉じ込めていた檻が崩壊する、檻を維持していたエネルギーが消失したのだろう。俺は慌てて先生の元へと駆け寄る。

 

「太郎君!」

「おじさま!」

「むぎゅ」

 

駆け寄った俺はノノミ君に抱きしめられる。流石に心配をかけ過ぎたのか、かなりの力で抱きしめられかなり苦しい。どうにか抜け出そうと踠いていると。

 

「「「「「先生!!」」」」」

 

ゲーム開発部や美食研のみんなも到着する。

そして、遂に自爆シーケンスが起動したことが知らされ、全員に脱出するよう連絡が届いた。

 

「太郎君、君は「私は最後まで残ります!」…」

 

脱出を促す先生の言葉を遮る、俺は今ここで逃げる訳にはいかないんだ。

俺の言葉に先生も諦めてくれたらしく、

 

「絶対に私の後ろから離れないでね、行くよみんな!」

 

生徒達がプレ先生に銃撃を開始する、それと同時に爆発があちらこちらで始まり出す。

体に伝わる爆発の熱、そんな中でもプレ先生は倒れずシロコ君の前から動かない。

 

『先生、主砲の準備が整いました」

 

リンの通信が入る、これで終わるのか?俺はその時を待つ。

 

『発射!』

 

ウトナピシュティムからの砲撃がプレ先生に直撃する、その衝撃は凄まじく視界が晴れた時にはプレ先生は膝をついた状態になっていた。そんな状態になってもプレ先生はシロコ君を庇っている、プレ先生は貴方は…

 

爆発は更に激しくなり、

 

『先生達も避難してください』

 

リン君も脱出し、ここにいる生徒もどんどん脱出し始める。

 

「「おじさま」」

 

ノノミ君とハルナ君は脱出の時こちらを見つめてくるので。

 

「大丈夫、ちゃんと先生と一緒に脱出するから!」

 

そして、残ったのは先生と俺の2人。

そして、プレ先生が最後の力を振り絞り立ち上がり、シロコに近寄る。

 

「シロコ、君のせいじゃないよ」

「…先生」

 

その声はとても小さく、爆発が続くこの状況で聞こえるはずがないのに何故かはっきりと聞こえる。

 

「自分を責めないで…苦しむために生まれたなんて、思わないで…」

 

プレ先生は語りかける、シロコ君を救うためその身を削り侵されながらもここまでやってきた。

 

「…責任は私が持っていくから」

 

貴方は最後まで抱えていくんですね。もうそれしかできないと分かっていても、俺はそれがとても悔しくたまらなかった。子供に責任を押し付けてはならない、でもそれを先生1人が代わりに被るのは間違っている。本当は、大勢の大人が、社会がそれを分担して負わなければならない。

この世界は…キヴォトスはなんて残酷な世界なんだ。

 

そして、

 

「…生徒のことを…よろしくお願いします」

 

その言葉に先生は頷き、

 

「太郎君…「いいからやってください、先生がどうするかなんて分かりきってますから」…ありがとう」

 

先生がシッテムの箱を使い、

 

「…えっ!?」

 

シロコ君を脱出させる。ここまでは原作通り、

 

「太郎君、君も…」

「その前にやりたいことがあるんです」

 

俺はプレ先生へ歩み寄る、プレ先生は懐から大人のカードを俺へと差し出す。

 

「太郎君、それは!?」

 

俺はそれを優しく受け取ると、それを持ち静かに願う。

頼む、一度でいい。奇跡よ起きてくれ。

 

何も反応がない。

 

「太郎君…」

 

ダメだ、これじゃプレ先生が救えない。なんで俺はこの世界へ転生してきたんだ、何もチートも持たず、それでも少しでも世界がよくなる様に頑張ってきたのに。たった1人の生徒のために、こんなに頑張ってきた先生に何もしてあげられないのか。俺だって大人なんだ、この人の荷物を少しでも背負わせてくれ、いや背負わせろ!

 

“そうだな、本当その通りだ“

 

不意に声が聞こえた、それは聞いたことがあるはずなのにいつもと違う声。

その声は先生達にも聞こえたらしく、

 

“世界を超えても先生は変わらないみたいだ、なら勝手に荷物を奪うしかないよな。失敗した俺だけど、モブだって死ぬ気でやれば一度くらいは奇跡を起こして見せるさ“

 

誰かが俺の背中に手を当ててくれる、そして俺の手の中のカードが光を放つ。

それはとても小さな光だったけど、確かにハッキリと光った。そして、それは確かに小さな奇跡を起こした。

 

『先生!脱出シーケンスが急にアップデートをされて、範囲が個人から小規模ですが範囲に拡大してます!』

 

先生が何かを聞いたのか、目を見開き驚く。

 

「これが太郎君が起こした奇跡…アロナ、それで私たちを脱出させることはできるかい?」

『少しお待ちを…強引なアップデートでリソースが…いえ何か手があるはず……!そうだ、手伝ってください!』

 

少し経ち、

 

『先生、脱出の準備整いました』

『まさか、私を転送して手伝わすなんて』

 

「さすがスーパーアロナ、太郎君脱出の用意ができた。脱出を…」

 

俺はプレ先生を見つめる…

 

「先生…「いや、何も言わなくていい。2人でみんなに怒られようか」…ありがとうございます」

「アロナお願い」

 

俺たちは光に包まれた。

 

※※※

 

俺と先生、そしてプレ先生は小高い丘の上に立っていた。そしてそこに居たのは、

 

「せ、先生!」

 

あちらのシロコ君が駆け寄りプレ先生を抱き止める。プレ先生をここへ連れてきたけれど、その体はボロボロで。

 

「先生、病院に行こう。今から延命治療をすれば」

 

シロコ君がそう語りかけるが、プレ先生はもう自分に時間がないことを分かっている。

最後の時間をシロコ君と共にさせたい、俺に出来るのはそれくらいだったのだ。これがモブな俺の限界だ。…だったのだけど。

 

“先生、これは俺の最後の我儘です。彼女達を送り出してあげてください“

 

その声と同時に俺が持っていたカードが光る。そして、それは先ほどよりも強い光で。一瞬辺りが見えなくなる、そして俺が見たものは!?

 

「…太郎君…君ってやつは…」

 

崩れたプレナパレスの中から、俺が知っている姿よりも痩せてボロボロだけど。目の前にいるのは確かに先生の姿で。

 

「先生…先生!!」

 

シロコ君は目を見開き、そして涙を流しプレ先生に抱きつく。

 

「シロコ、辛い思いをさせてしまったね」

「そんなことない、先生が…先生が居てくれれば」

 

本物の奇跡が起こった、俺は呆然とその光景を見つめている。だけど、

 

「ごめんね、シロコ。多分こうして居られるのもちょっとだけなんだ。これはお節介な彼が起こしてくれた奇跡な時間なんだ」

「…そんな、いや、いやだよ。先生…」

 

起こった奇跡は全てを解決するわけじゃなかった、だけどプレ先生は。

 

「シロコよく聞いて欲しい、君はこれからこの世界で生きていく。それは辛いことを思い出したり、大変なことが起こるかもしれない。でも心配はいらない、此処にはこの世界の私がいる、対策委員会のみんながいる…それにお節介な太郎君もいる」

「いや、だって…だって、先生がいないと…」

 

プレ先生はシロコを優しく撫でる。

 

「この世に永遠はない、いつか別れは必ずやってくる。それはとっても寂しいことかもしれない、でもねシロコ。それを怖がって立ち止まっていてはいけない、私たちは限りある時間を一生懸命生きて、楽しいことや辛いことを経験して幸せになって行くんだ。先に行く者は最後にそれを教えるんだ」

「…」

 

シロコ君は涙を流しながらプレ先生の言葉聞いている。

 

「だからね、シロコ。私は君が幸せになることを願っています。私は…君と…君たちと過ごせた時間はとても幸せでした。君はどうだったかな?」

「…グスッ…とっても…幸せだった…」

「そうか、よかった。だからね、シロコ。これからの君はその幸せを周りにも広げてほしい、そうしたら必ず君も幸せになれる」

「…出来るのかな…こんな私に…」

「出来るさ、君は私の自慢の生徒なんだから」

 

シロコ君はただ涙を流しながら頷いている。俺はその光景に涙を流す、俺は俺達の今までは無駄じゃなかったんだ。ちっぽけかもしれない、でもこの奇跡はとても代え難いものなんだ。

そして、この小さな奇跡にはもう少し続きがあって。

 

「えっ?」

 

先生の声が後ろから聞こえる。振り向くとシッテムの箱が光っている。流石にそれには俺も驚いたが、次の瞬間さらに驚いた。

 

「え?」

「これは…」

 

目の前にA.R.O.N.A君が立っていた。俺は自分の頬を摘む、皮が伸びるが痛い。これは現実だ。そしてそれにプレ先生は少し苦笑し。

 

「最後だからって大盤振る舞いだね」

 

そう言い、A.R.O.N.A君に手招きをする。A.R.O.N.A君は少し戸惑いながらも、近寄ると先生はA.R.O.N.A君とシロコ君を優しく抱き止める。

 

「A.R.O.N.A、シロコ。本当にありがとう。今までこんな私を支えてくれて」

「…グスッ」

「先生、それは当たり前のことで…」

「そんなことはない、君たちが居たから。君たちが居てくれたから私はここまでやってこれた、本当にありがとう」

「…」

 

なんだろう、見間違いだろうか。プレ先生の体から光が漏れ出している。

 

「先生?」

「どうやらもう時間のようだ」

「!?」

「そんな、やだ。先生…いやだ行かないで!」

 

先生は2人をさらに強く抱きしめ。

 

「この世界の私、それに太郎君。2人のこと、よろしくお願いします」

「ああ、必ず」

「絶対に不幸になんてさせません」

 

俺達は答える。

 

「2人とも顔を見せて欲しい」

「「先生…」」

 

2人は涙を流しがら、それでもこれが最後なんだとなんとか笑顔を作る。

 

「ああ、もう思い残すことはない。2人とも幸せに…ね…」

「「せ、せんせい!!!!!」」

 

プレ先生は笑ってその生涯を終えた。

その後俺たちを捜索していたリン君たちと合流し、

 

「リン君、悪いんだけど。この一角にお墓を建ててもいいかな?」

 

俺はリン君にそう願いでた。ここはとても静かなところでキヴォトスをかなり遠くまで見渡すことができる。プレ先生には静かに生徒達をここで見守っていて欲しかったのだ。

リン君は少し戸惑ったが、プレ先生の正体を知ってることもあり最後には了承してくれた。

 

こうしてキヴォトスを揺るがす事件は幕を閉じたのだった。

 

※※※

 

と綺麗に終われれば良かったのだけど、

 

「ところでパグ崎さん、今回の首謀者に食事を振る舞っていたと聞きましたが。その釈明を聞かせて貰えますか?」

 

リン君がそれは綺麗なお顔で俺に質問を投げかける。

 

「そうですおじさま、私とても心配したんですよ。そうだ、今度ショッピングモールに新しいお店が出来るんです。ご褒美に一緒に行きますよね?」

「パグ崎のおじさま、宇宙で漬物を食べたと聞きました。ならば新たな味を発見したのでしょう。ええ分かっております、それには資金と施設が必要でしょう。ええ未知の美食のためこの黒舘ハルナ協力は惜しみませんわ」

 

俺に詰め寄るノノミ君にハルナ君。

それ以外にも、

 

ピコンピコンピコンピコンピコン

 

怒涛のように着信を知らせる俺のスマホ。

あれ?俺原作でも最高難易度のピンチを乗り越えたはずなのに、なんでそれ以上のピンチが一気に押し寄せてくるの?

 

「パグ崎さん?」

「おじさま?」

「パグ崎のおじさま?」

ピコンピコンピコンピコン

 

「奇跡よ、もう一度起こってくれーーーーー」

 

俺は今日も青く澄み渡った空に、そう叫ぶのだった。

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