転生したらパグって酷くないですか?   作:雪見沼

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評価、感想、誤字報告いつもありがとうございます。
今回は前回は賛否あったこともあり、息抜きなifの話。
もしトリニティにパグ崎君が生まれ落ちたら?トリニティの紅茶に危機が迫る!?
思いつきの投げっぱなし話、かる〜い気持ちでお読みください。


転生した場所がトリニティでした。でもパグだし関係ないよね?

「それでこの様に」

「かしこまりました」

 

桐藤ナギサはサインした書類を手渡す。ここはトリニティを取り仕切る、ティーパーティーの執務室。現ホストであるナギサは激務であれど、常に油断なく隙を見せず職務を遂行していた。

そうここは、陰謀策謀が渦巻くトリニティの中心。例えそれが同じ派閥であっても隙を見せれば引き摺り下ろされ、そしてこちら側も相手の隙を常に伺う。競争相手の苦渋の顔で笑みを浮かべ、足元から聞こえる怨嗟を聞きながら紅茶を嗜む。

それがトリニティ、それが桐藤ナギサの日常であった。

 

そうであった筈なのだが、

 

「…そろそろ時間の様ですね、それでは皆さんよろしくお願いしますね」

 

ナギサは仕事を切り上げ執務室を出る。

ナギサは…いやティーパーティーのホストは緊急の要件がない限り、指示や連絡が必要な仕事以外は別の場所に移動して行う。

通称密談の部屋、いつから言われ始めたかは分からないが。前ティーパーティーの時代に作られたと言われるその部屋は、ホストと選ばれた生徒のみが入室を許される特別の部屋。その部屋に入室を許された者は羨望と嫉妬を身に受け、中であったことはどんな事があろうと他言せず、そしてその部屋に入る時は常に真剣な顔付きであった、

どんな話をされているのか?どんな策謀が練られているのか?分からないからこそ、羨望と恐怖は1人歩きしていく謎の部屋。そこにナギサは足を踏み入れた。

 

『桐藤ナギサ、本人と確認』

 

厳重なセキュリティ、それを全てパスしたナギサは開いた扉を通る。そこに在ったのは障子と並んで置いてある複数の靴。そして奥から聞こえる賑やかな声。

ナギサはため息を軽く吐き、慣れた手つきで靴を脱ぎ整える。そして、

 

「ミカさん、声が大きいですよ。ここが管理されているとはいえ油断し過ぎです!」

 

障子を開け、そこで寛いでいたミカにそう声をかける。それに対し、

 

「あ、ナギちゃんもやっと来たんだ。もうここでは堅苦しいのはなしなし、ほら座って座って」

 

ミカはナギサの小言も気に求めず、座っている畳を軽く叩く。

畳?そう大きな違和感がある、トリニティは西洋の文化である。なのに、畳?いやその前に障子?ナギサはミカの隣に座布団を引いて座ったこともあり、今の状況を詳しく説明しよう。

 

部屋は一部が障子で後は壁で囲まれた約十畳の広さ、そこの中心に掘りのある長机。それとこたつ布団、つまりは掘り炬燵。その上にはみかんが置いてある。

…ここって本当にトリニティ?そんな一室になっていた。

 

「彼も奥でナギサの分を準備している、今日は君の好きなほうじ茶だ。焙煎もいい出来だよ」

 

向かいに座っているセイアはほうじ茶を啜りナギサに話す。ナギサはほうじ茶と聞き顔を綻ばせる。

 

「お待たせ」

 

奥の障子が開き現れたのは小柄の犬タイプの大人、そうパグ崎太郎がおぼんを持って入室してくる。おぼんの上には先ほど話したほうじ茶と茶請けの漬物。パグ崎は笑顔のまま、それをナギサの前に置き。

 

「いつもご苦労様、粗茶ですがどうぞ」

 

そう言ってナギサを労う。それに対しナギサも。

 

「いえ、こうして穏やかでいられる場所を提供して頂き私も助かっています。それでは頂きます」

 

ナギサは微笑み、ほうじ茶に口をつける。そして、一口。

 

「はぁ〜〜〜〜〜癒されますわ〜〜〜〜」

 

もし側近がその顔を見れば驚き顔を引き攣らせるほどの緩んだ顔をするナギサ。

そして、そんな顔をしたナギサを見てもいつものことと受け止めるミカとセイア。

そんなあり得ない空間がここには在った、そうこれはパグ崎がトリニティに生まれ落ちた事で大きく狂いながらも原作を凌駕してしまった奇跡の物語である。

 

※※※

 

〜8年前〜

 

俺の我慢も限界に達しようとしていた。俺の名前はパグ崎太郎、なんの因果か普通に過ごしていたはずがブルーアーカイブの世界に転生した男だ。いきなり転生とか色々文句を言いたい所だが、1番言いたいのは体がパグだってことと、生まれた場所がトリニティだってことだ。

そうトリニティ、一見お嬢様が通う学園と見せかけて、中では陰湿ないじめや陰謀策謀が渦巻く通称トリカスの巣窟である。

勿論いい人もいるし、大半はそんなの関係ない極々普通(ペロキチは除く)の住人なのだが、問題のある奴は一定の割合で居てその影響力は無視できないのがトリニティなのである。

 

「全くあの野郎、無理ないちゃもんつけやがって」

 

例に漏れず、俺の周りにもそんな輩が何人かいた。勿論自慢する事ではないが人生2回目の転生者だ、年下の戯言といなしてきたのだがどうもそれが悪かったらしい。

目をつけられた俺は日々いちゃもんや嫌がらせを受けた、最初は子供の悪戯程度だったので笑って許していたがそれが段々とエスカレートした。流石に俺も対抗し、証拠などを集めそれを元に奴らにお灸を据えたのだが…まさか就職した後まで嫌がらせをするとは。

 

仕事関係で嫌がらせを受けた俺は、会社でも干され始めていた。はぁ〜こんな事なら高い初任給の誘惑に負けず他の自治区に就職するべきだった。

そんな後悔をしながら俺は公園で弁当を食べながら転職サイトを見ていた。そんな時、

 

「…ぐすっ」

 

隣から聞こえる悲しそうな声。隣を見るとまだ小学生くらいの女の子が悲しそうな顔をして俯き座っていた。俺はそれを見て天を仰ぐ。

多分この娘も嫌な事があって此処に逃げてきたんだろうな、この公園はあまり人気のない。近くに大きな庭園ができ皆そっちに行ったらしい。そんな公園で1人俯く少女、俺はどうすればいいだろうか?転生前の世界なら、知らない子に話かければ1発で不審者扱いだ。このキヴォトスではそこまでじゃないが、あまり推奨される行為ではない。だけど…

 

「よし、どうせ引越すつもりだし。いいか!」

 

不本意ながらもキヴォトスで始まった2回目の人生なのだ、少しは恰好つけてもいいだろう。俺は弁当を片付けるととある物を片手に隣のベンチに座る女の子の前に移動する。

 

「君どうしたんだい?何か悲しい事でもあったのかな?もし良かったら、これでも食べながら私に愚痴でも聞かせてくれない?」

 

俺は個包装にした茎わかめ漬物(お手製)を見せ女に話かける。

 

「………不審者ですか?」

 

数秒見つめ合ったのち、女の子の口からでた言葉はそれだった。まぁ予想はしていたけど、流石に不審者は傷つく。

 

「いや、そのつもりはないかな。もしこれが怪しいと思うなら私が先に食べてもいいけど」

「…」

 

あーこれは余計なお世話だったかな〜、そう思った時。

 

「…怪しい行動したら引きますから」

 

そう言って防犯ブザーを見せる女の子、いや〜これはしっかりした子だ。

俺は女の子に少し距離をとってベンチに座る、そして茎わかめを開け口に放り込む。

 

「うん、いい味」

 

そう言って、女の子の横に袋を横に置く。女の子は袋と俺を交互に何度か見た後に、少し考えた後袋から茎わかめを取り出し少しだけそれを見つめ。

 

「…あっ美味しい」

 

警戒なのか小さく齧った後に出た言葉に俺は思わず小さくガッツポーズをする。この体になって細かい作業が苦手になった反面、嗅覚や味覚が鋭くなった様でお茶を淹れたり漬物を漬けるのには少し自信があったりするのだ。

 

漬物で第一印象を少し払拭できたみたいで、女の子はポツリポツリと話始めた。要点を纏めると、友達と喧嘩をしたそうだ。その女の子はとても明るくてお姫様の様な子らしい、その反面自由な性格のせいでよく振り回せれたり、迷惑をかけさせられたりしてたそうだ。そして、今日遂に我慢が出来ず爆発したそうだ。そして起こった喧嘩、勿論相手を怪我させたりはしていないみたいだけど、最後はそのまま喧嘩別れをしたみたいで。そして最後にその子に「嫌い」と言われたらしい。

 

「そっか、君とってその子は大切な友達だったんだね」

 

大切な友達でも喧嘩くらいはする、そしてその子から喧嘩したとしても嫌いと言われたら悲しいものだ。勿論まだ小学生の喧嘩だ、少し時間を置けばまた仲直りは出来るんだろうけど。この子はどうも他の子より大人びていたんだろう。だからその言葉に傷つき、相手を傷つけてしまったことにショックを受けたんだろうな。

 

「私はなんて酷いことを…」

 

んー本人にはそうなのかもしれないけれど、

 

「本当にそうなのかな?」

「へ?でも」

 

小さい子の感情はどの世界でも変わらない、嫌いな相手には近寄らないし話もしないのだ。もう少し大きくなれば違うけど、これくらい子なら変わらない。

 

「多分、その子も喧嘩したことを後悔してると思うよ」

「そ、そうなのでしょうか…」

「君の友達は、相手を傷つけて平気な子なのかな?」

「そんな訳ありません!ミカさんは空気は読めませんが、とても優しい子です!」

 

うん、それが答えなんだと思う。

 

「それならさ、多分どっちも後悔して傷つけちゃったんだしお相こでいいんじゃないかな?」

「でも…その話を…仲直りできるでしょうか」

 

ん〜それなら。

 

「これを使ってみるのはどうかな?」

 

俺は茎わかめを指さす、

 

「これを使う?」

「そう、仲直りにはプレゼントは定番でしょ。それにこれを見せたらえっ?って思うし、食べたら更に驚かないかな。さっきの君みたいに」

 

女の子は少し考え、

 

「それは…いいかもしれませんね。これを頂いてもよろしいでしょうか?」

「うん、構わないよ。仲直りできるといいね」

「はい、ありがとうございます」

 

とまぁ、パーフェクトと言わないけどベターなコミニケーションで終えたと思ったんだけど。

 

「あっそう言えば自己紹介していませんでしたね、私桐藤ナギサと言います」

「そうだったね、私はパグ崎太郎。どこでもいるただの会社い…ん?」

 

えっ、今この子桐藤ナギサって言わなかった?桐藤ナギサって髪が長くて背中に白い羽があって…なんか目の前の子がゲームで見たナギサ君を小さくした様に見えて。

 

「それではパグ崎様、本当にありがとうございました。お礼はいつか必ず」

「あっ…うん…」

 

俺は考えが纏まらず、そのまま手を振りナギサ君を見送った。

えっ…俺原作キャラと関係を持っちゃった?

 

 

そんな出会いがあって1週間、最初は混乱した俺だったが。あの年代の子だ、日々の生活に夢中になり忘れるよなと思っていたんだけど。

 

「あっいました!」

「おじさんがあの犬のおじさん?あの緑のやつ頂戴!」

「ミカさん!?」

 

ナギサ君はこの年代にしてはしっかりしていた様で、原作の厄いお友達を連れしばしばこの公園にやってくる様になり。それどころか、

 

「おじさんがあの漬物を…是非私にも分けて貰えないだろか?」

 

幼すぎてセクシーになれてない狐耳の子が追加され、仕舞いには。

 

「えっパグ崎のおじさま引越しされるのですか?」

「うん、今の会社は肌が合わなくてね。転職も兼ねて」

「えー犬のおじさんがいなくなったら、あの緑の食べれないじゃん!」

「ミカ、その言い草は。だが、太郎さんが居なくなるのは問題だな」

 

晴れて会社を辞め(まだ転職先は内々定)トリニティから脱出する準備が整い、彼女達に別れを告げるはずだったのだが。

 

「申し訳ありませんパグ崎のおじさま、少し急用が出来たので明日またお時間頂けますか?」

「えっナギちゃん?」

「確かに、これは協力するべきだろうね」

 

何だか分からないけど、明日また会うことを約束して別れたんだけど。俺はこの時致命的なミスを犯してしまった。この日に家を引き払い、すぐに転職先と契約を結ぶべきだった。いや、それ以上に彼女達に話すのをもっと後にするべきだったのだ。

何故なら、

 

「こちらの物件になります」

 

次の日ナギサ君たちに連れて来られたのは一件の店舗兼住居。

 

「えっとこれは…」

「パグ崎さんのお店です」

「えっいや、俺は転職…」

 

その時掛かってくる電話、俺は一言断りそれにでると。

 

「えっ内定取り消し!?そんな急に言われても」

 

転職先から内定を取り消す連絡、勿論抗議するも全く取り合って貰えず電話を切られてしまう。あまりのことに呆けてしまう俺だったが。

 

「太郎さん、この物件は私の家が所有している物でね。両親は太郎さんの漬物を高く評価していて、格安で貸してもいいと言ってくれている」

「我が家でも評価は上々で、販売されるのなら贈り物として取り扱ってもいいと了承を得ていますわ」

「なんか、ナギちゃん達に言われて話したんだけど。販路?は整えているって言ってたよ」

 

俺はその時気づいてしまった、この子達俺をトリニティから逃さないためにやりやがったな!

 

「ナギサ君、君謀ったね?」

 

それに対しナギサ君はそれはとてもいい笑顔で。

 

「さて何のことやら、ですが私パグ崎のおじさまのおかげで少し我儘を覚えましたの。その責任は…勿論おじさまが私たちのことを何とも思っていないのであれば…無下にしても構いませんが」

 

そう言って作った様に悲しい顔をするナギサ君。

 

「あーおじさんひどーい、ナギちゃんを泣かせたー」

「これは酷い大人だ、これは責任を取らないといけないね」

 

囃し立ててくる2人。

どうする、住んでる家はもう解約手続きに入っている。貯金もそこまで潤沢じゃない、ていうかこれを蹴っても絶対諦めてくれないよね?

俺は肩を落とし、

 

「分かりました、頑張らせて頂きます…」

 

俺は3人の小悪魔に屈し漬物店をオープンすることになった。勿論、3人が言ったことは本当でかなりのバックアップを受け、トリニティにパグ崎漬物店は生まれることになった。

ただ1つ問題があって。

 

「これは…また違った味わいがありますね」

「おじさんー甘い漬物ってないのー」

「漬物とお茶…これで私は後10年は戦える!」

 

3人娘の溜まり場になってしまったんだよね。

 

※※※

 

綺麗な動作で漬物と茶請けにお茶を飲むナギサ君、その姿を見て出会った頃のことを思い出す。そういえばあの時一緒に食べたのも、今日出している茎わかめだったな。

 

「おじさまどうかされましたか?」

「いや、ナギサ君は茎わかめが好きだなーと思ってね」

 

俺に言葉にナギサ君は自然な笑みを浮かべ、

 

「それは美味しいのもありますが、これは大切な思い出の味ですから」

 

そう言ってくれると苦労が報われる。なんせ、漬物店の経営に四苦八苦し何とか店員を指導し余裕が出来たと思ったら。

 

「おじさま、秘密の隠れ家って心惹かれませんか?」

 

そんなことを言って連れて来られてたのは、トリニティ学園の最奥に作られた一室。そこは純和風で異彩な部屋だった。ナギサ君はティーパーティーに就任すると、仕事で忙しく俺の店に来れないことを補うためにこの秘密の部屋を作ってしまったのだ。それにはミカ君やセイア君も積極的に協力し、それどころか。

 

「何故、仲良くしたいだけなのに分かって貰えないのでしょうか。…パグ崎様渋い緑茶を一杯お願いします」

 

秘密の部屋を作るのに協力する代わりに秘密の地下通路を要求した、シスターフッドのトップである歌住サクラコ君が入室早々俺に渋い緑茶をリクエストする。

更に、

 

「私は番茶を」

「キャハハハ、喉を潤す温い煎茶を」

 

無駄に高い身体能力を活かし裏口から入ってくる救護騎士団の蒼森ミネ君に、正義実行委員会の剣先ツルギ君。彼女達も原作前に出会い、何故かこの秘密の部屋に積極的に絡んできた2人だ。

それと、

 

「熱い湯気を全身で浴びると言うのも…乙な物ですね」

 

台所で何故か水着姿でお湯を沸かす、変人もといパグ崎漬物店のアルバイト浦和ハナコ。我ながらなんて言う人選しているんだよ、と思ってしまう繋がりを持ってしまった第二の人生。本当は先生が来るまで色々頑張って、原作を応援しようと思っていたのに気づけば絡めら取られトリニティの中枢に深く関わってしまった。

逃げ出したくても、深く関わってしまって彼女達を放っておくことなんてできない。まぁすでに有力組織のトップたちが茶をしばいている訳で、原作よりマシなブレイクかましてるんだからどうしようもないよね。

後は、先生が着任するのを待ってアリウスの問題さえ片付ければ、彼女達も先生に夢中になり晴れて俺は知り合いの犬のおじさんになる。そう考えてたんだけど、

 

「あっそうそうナギちゃん、アリウスから留学生を受け入れたいんだけどさ」

「「「「えっ?」」」」

 

自由気ままなお姫様の一言で状況が一変する、あれ?もしかして先生なしのアリウス事変開始だったりします?

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