嬉しさのあまりまたまた投下。
パグ崎君メモ、交友関係は広く浅くだが1人親友とも言える犬友がいるらしい。
見直しもしているのですが、誤字報告ありがとうございます。
「全く一言連絡入れてくれればいいものを」
俺は車を走らせながら愚痴る、その相手は現在アビドス高で奮闘中の先生である。あの先生、よりにもよって何も連絡なしにアビドス高校にシッテムの箱だけ持って行きやがったのだ。そう、折角渡した充電器も置いて。運の悪いことに先生が出発した日は俺が終日連邦生徒会の仕事に掛かりっきりだったのだ。そのため俺が気づいたのは出発して二日後、急いで先生に電話した時には充電が切れているのか不通状態だった。
大慌てでノノミ君に連絡をとり捜索をお願いし、色々準備を終えさぁ出発と思った時に先生発見の連絡。その場で崩れ落ちた俺を誰も責めることは出来ないだろう。
まぁそんな訳で、無事原作で言うところの第一章が始まったわけだが。ゲームやアニメではアビドスに掛かりっきりの先生だが現実はそうもいかない。先生の代わりに当番の生徒や俺が仕事をするわけだが先生じゃないと出来ない仕事がある。そしてそれは大抵セキュリティの問題で紙の書類なのだ。
そういう理由とノノミ君からの強いプッシュもあってアビドス高へ向かうことになったのだが、俺はあまり乗り気ではなかった。理由は便利屋68の存在だ、彼女たちと俺は面識がある。たまにご飯を奢ったりしてるんだけど。もし俺が介入して原作の流れが変わってしまったらどうなるか分からない。最後のカイザーとの戦闘で便利屋68の協力が得られなかったら下手したら犠牲が出るかもしれない。
「さっさと先生に書類を渡して、…アイツの顔でも見て帰るかな」
そう呟く、そしてこの判断が悲劇を招くことになろうとは思いもよらなかった。
※※※
「ふんふ〜ん」
「おやノノミ君ご機嫌だね、何か良いことでもあったのかい?」
先生に言われ自分が目に見えて機嫌がいいことに気づく。でもそれはしょうがないことですよね。
「あ〜今からパグのおじさんが来るみたいだからね〜」
私の代わりにホシノ先輩が先生に答えてくれる。そうおじさまがもうすぐここにやってくるのだ。
「パグのおじさん?」
「えっと、なんて説明すればいいか…アビドス高の支援者かな?」
「パグのおじさまは長い間定期的に寄付を続けて頂いている支援者さんなんです」
「へ〜そんな人がいるんだ」
セリカちゃんとアヤネちゃんが先生に説明してくれます、そう私たちにとっておじさまは掛け替えのない恩人なのです。
「それに連邦生徒会に掛け合ってアビドスに支援してくれた人」
「あの人のお陰で利息は減ったし、過払金の分で返済も少しできたからね。」
「へ〜あれ?連邦生徒会にパグ?」
シロコちゃんの言う通りおじさまのお陰で借金の返済が大きく前進したんです。是非先生にも紹介を…って!
「あは!」
私は部屋から飛び出します。
「ノノミ君!?」
「あ〜しょうがないよ先生、ノノミちゃんはああなったら止まらないから」
何か後ろで皆さんが話しているみたいですが関係ありません。
「おじさま〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
※※※
走っていったノノミ君を追いかけ校門まで来たんだけど…
「おじさま、おじさま、おじさま〜〜〜〜〜」
「ノ、ノノミくーーーん。落ちついて、足がーーーそれに中身でちゃうーーーー」
ご機嫌なノノミ君と、ノノミ君に抱きしめられて振り回されてるとしか思えない自分の同僚の太郎くんの姿。
あーやっぱり皆の言ってたパグのおじさんと言うのは太郎君のことだったのか。でも太郎君はどうしてアビドスまで来たんだ?確か今日は3週間ぶりの休みだったはずなんだけど。
話しかけたいところなんだけど、声を掛けずらい状況に困っていると。
「ほらほらノノミちゃんそのくらいで、そろそろ止めてあげないとパグのおじさんが皮と中身に分離しちゃうかもよ」
察してくれたホシノ君がノノミ君を止めてくれる。
「はっ!だ、大丈夫ですかおじさま!!」
「う、うん大丈夫。これからはもう少し加減して貰えると助かるかな」
四つん這いになって荒い息の太郎君、これで話が出来るかな。
「お疲れのところすまないが太郎君、どうしてアビドスに?」
「はぁはぁはぁーー、どうしてもこうしてもないよ。先生にやって貰わないといけない仕事があるから来たんです!」
えっ?そう言えばアヤネ君からの連絡が来て直ぐにアビドスに来てそのままだから…
「出来る分はこっちで片付けたから、後は頑張ってくださいね」
「は、はい」
ヘルメット団や便利屋は退けても仕事からは逃れられないのね。
※※※
おじさまが持って来た先生の仕事も終わり、帰ろうとするおじさまをちょっと駄々をこねて引き止め私たちはみんなで学校にお泊まりすることにしました。
今はおじさまが持って来てくれたお茶菓子とおじさまのハーブティでゆったりの時間を過ごしています。
「それにしてもノノミ君は太郎君をどうして慕っているんだい?」
先生がそう私に聞いてきました。私がおじさまを慕う理由、膝の上にいるおじさまを軽く抱きしめ。
「ん〜そうですね」
私はおじさまと初めて会ったあの日のことを思い出します。
あの頃の私は自分の罪と無力さで一杯でした。ネフティスがアビドスからの撤退を決めたあの日からただ流されていくだけの自分が嫌でアビドス高へと足を運んだ。そこは全く人がいないくて、それでも思いはたくさんあって、まだ頑張っている人がいた。
その人は私に罵詈雑言を怒りをぶつけてもいい人なのに、それをしなかった。私はどうしたらいいか分からなくなった、言葉の一つ拳の一つでもあれば。お前たちのせいでと憎んでくれればまだ諦めがついたかもしれないのに。
私は1人答えも出ず公園のブランコに座っていた、そしてその人は私に声をかけてくれた。
「どうしたんだい?こんな寒いのに風邪をひくよ(なんでノノミ君がここに!?)」
私の前にいたのはパグ崎のおじさまだった、でもあの時の私はそんなおじさまの手を素直に握り返すことはできず。
「ほっといてください」
そう返してしまったのです。でもおじさまは、
「そっか(スルーした方がいいのか、それとも…あーどうすればーーー)」
そう言って隣のブランコに座りました。ただ会話もせず2人で座っていました。
そして、
「くしゅん」
私は寒さでくしゃみをしてしまいました。暖かい格好をしてるとはいえまだ寒い時期、女の子には冷えは大敵なのです。もう帰ろうそう思った時、
「はいこれ、暖かいよ」
いつの間にか目の前にいたおじさまは私に紙コップを差し出していた。その紙コップには湯気がたっていてとても暖かそうだった。
普通なら知らない人が差し出した飲み物なんて受け取る訳ないのだけれど、寒さと目の前で自分用にハーブティーを注ぎふーふーする姿に毒気が抜けたのか飲んでしまった。
「ふぁ〜」
そのハーブティーは家にある物の様な上質な物ではなかったけれど、とても優しい香りで飲む人のことを考えた物だった。
その香りに思わず頬が緩んでしまった。
「君はネフティスの生徒さんかい?」
「ええ、はい」
「そうか、あそこももうすぐ廃校になるんだったね。寂しくなる」
解れた心がまた冷たくなっていく、また非難されてしまう。自分の罪をまた認識してしまう。そう思ったのに。
「ありがとうね、アビドスを好きでいてくれて」
「えっ?」
おじさまが掛けてくれた言葉は全く正反対の言葉でした。
「ど、どうして?」
「いやだって、好きだったから廃校まで残っていてくれていたんだろ?廃校が決まった時、かなりの生徒さんが転校していったからね」
私はおじさまの言葉に目を丸くした、そんなこと考えたこともなかった。ただ親が経営する会社がアビドスを離れ学校が廃校になることが悲しくて。何もできない無力な自分が悔しくて、親に反抗するように最後まで転校せずに廃校までを迎えた自分が馬鹿みたいで。
なのに初めて会ったおじさまは私がアビドスを好きでいてくれてありがとうと言ってくれた。
「ひっく、んぅ」
それが嬉しくて、悲しくて私はもう涙が抑えられなかった。
「う、うわーーーーん」
「えっ、ちょっと!?」
私は小さい子供の様に泣きじゃくりました。おじさまは私を慰めようとしてくれましたが、背が小さく膝をポムポムして慰めてくれました。
恥ずかしいくらい泣いてしまった私は、ぽつりぽつりとおじさまに今までのことを話しました。
「そうか、大変だったね。でもそれは君が責任を感じなくてもいいんだよ」
「でも私はネフティスの経営者の子供で」
「うん、そう子供なんだよ」
「えっ?」
そう言っておじさまは私の前に移動し。
「君は子供なんだ、例えヘイローがあって凄い力があってもそれは変わらない」
そういうおじさまはとても小さいのにとても大きく見えて。
「それにネフティスは悪いことをして失敗した訳じゃない。結果がそうなってしまっただけさ」
その言葉一つ一つが私を癒してくれて。
「それにまだ終わった訳じゃない、私だって頑張るし私の友人にはラーメンでアビドスを盛り上げて見せるって頑張ってる奴もいる。まだアビドスを愛してる人はたくさんいるんだ。だから大丈夫、そしてこれからも君がアビドスを好きでいてくればもっと嬉しいかな」
そして思い出させてくれた、私がアビドスのことが大好きだということに。
私は空を見上げた、そこには満点の星空が広がっている。例え小さな光だったとしてもたくさん集まればこんなに綺麗な星空になるんだ。
例えも私が小さくちっぽけな存在でも、おじさまやホシノ先輩。他にも頑張ってる人たちと力を合わせればアビドスを昔の様に出来るかもしれない。
私はこの星空をずっと覚えていると思う。頑張ろうと思った気持ちを、そして小さいけれどとても頼もしい素敵なおじさまに出会えたことを。
※※※
「おじさまは私を助けてくれたんです、でも詳しいことは内緒です」
「えー教えてくれてもいいじゃないですかー」
「だーめ」
俺はノノミくんの膝に固定されながら安堵の息を吐く。ノノミ君と初めて会った時のことはある意味黒歴史だ。アイツのラーメンを食べた後のんびり散歩していた時目に映ったのがとても暗そうにしていたノノミ君の姿。
出来るだけ原作キャラに会わない様に気をつけていたけれど、あの時はユメ先輩が原作通りの結末を迎えたことを知って意気消沈していたのだ。そしてもしかして悪い方向に進んでるのではと思い思わず声を掛けてしまったのだ。
その後も必死にノノミ君を慰め元気を取り戻せたのは良いものの、くさいセリフを吐いた羞恥で家に帰って転がり悶えてしまったことは今でも思いだしたくないことだ。
まぁ俺の黒歴史を1つ生まれた代償に原作通り進行したのは良かった訳なんだけど、その代わり。
「ところでおじさま、聞きたいことがあるんですがいいですか?」
「なんだいノノミ君?」
あれホシノ君にシロコ君なんで席を立つの?
「おじさまの車にですね」
セリカ君にアヤネ君もなんで顔をそんなに青くして、えっなんで先生を立たせようとしているの?
「髪質の違う黒髪が長いのが3本に短いのが2本、それに白と青い髪が落ちていたんですけど」
さて俺もお暇を…って回された腕の力が強くて膝から降りれない!?
「これは一体誰の髪なんでしょうか?ノノミとっても興味あるんです?」
いやそれにはちょっと訳があって。
「大丈夫、夜はまだ長いですから。ゆ〜っくりお話ししましょうね〜」
アビドスの長い夜は俺にとっては眠れない夜になってしまったとさ。