衛宮イリヤの日常   作:ハト

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衛宮士郎の女体化が見たかった。誰か他に書いてくれねぇかな
誤字、脱字注意 キャラの喋りに違和感あるかもです。
pixivからペーストしたので変なところあるかも


ミレニアム&アビドス
ミレニアム編 ━序━


ミレニアムサイエンススクール:実習センター

 

「先生、わざわざ来てもらってありがとう」

「“気にしないで私も最近これてなかったし”」

 

私は実習センターに来ていた。

周りには思い思いに機械を組み立てる生徒達がいる。

ここに来た理由はもちろん、エンジニア部のメンバーのウタハに呼ばれたからだ。

 

「”それでどうして私は呼ばれたの?”」

「それは私が答えましょう!」

 

前を歩くウタハに質問したがウタハが答えるよりも早く飛びだしてきたコトリが今回の呼ばれた理由を簡単に説明してくれた。

 

「”次元移動の実験?”」

「そうです!」

「ほら、この前の事件でウトナピシュティムの本船の巨大量子コンピューターを見たからそれを元に次元移動を可能とする機械を作っていたんだ」

「次元移動は正しくロマン! もしこれを再現でき次元移動が実現した暁にはキヴォトス中が大興奮間違いなしです!」

「今回はそのテストをするから先生の意見も欲しかったんだ」

 

目を輝かせながら興奮した様子のコトリ、コトリよりは落ち着いた様子だがキラキラとエフェクトが見えてきそうな顔のウタハ、視線をそのでかでかと中心に置かれている輪っか状の機械に移す。いたる所から見えている管や基盤がなんだか異質な感じを醸し出している。

 

「”でも私そういうのわからないから力になれるかな?”」

「大丈夫だよ先生。先生にはあくまでも実験の感想を聞きたいんだ。どう感じたかとかを教えて欲しいんだ」

「”そういうことなら”」

 

生徒達の力になれるのかはわからないが感想くらいなら言える。ウタハはそのまま実験を開始するようで私になにかあったら危ないからとミレニアム製防火面と耳栓を着けてくれた。

 

「ヒビキ、さっそく実験開始だ」

「うん、実験開始…」

 

ヒビキはそのままレバーを引く。

まるで爆発音のような重い音が響く、それだけで終わりではなく輪っか状の機械の中心に集まる光の帯、それが回転し加速していきまるでなにかを形作っているようだ。

機械から白い煙が噴き出してきた、地響きのような揺れが起こる。流石に何かまずいものを感じ取ったのかヒビキが止めようとレバーを操作するがもう遅い暴走した機械はそのまま止まる事は無く、光がまるで人の形を作った時、周りを吹き飛ばす爆発が起こった。

 

────────────────────────

 

「先生、起きてくれ」

 

ゆっくりと目を開ける。ウタハが心配そうにこちらを見ていた。

 

「すまない先生、怪我は無いかな?」

「”大丈夫だよ、私より他の子達は?”」

「怪我人はいないと思うが…」

 

何かを言い淀むウタハ、辺りを見渡せば壊れた機械の破片が散らばっており窓ガラスもほとんどが割れてしまっている。

 

「当分は活動できそうにないかな…」

「”そうだね”」

 

これは片付けるのも一苦労だし、きっとセミナー、特にユウカにはこっぴどく叱られるだろう。

もしかしたら部費も削られるかもしれない、流石に今回の事は擁護できないので甘んじて受けてもらおう。

 

「ウタハ先輩!先生!」

 

ヒビキが私達を呼ぶ声が聞こえた。ヒビキに視線を移せば、どうやら誰かを背負ってるようで。

まさか生徒の誰かが巻き込まれたかと思い、ウタハと共にヒビキに駆け寄る。

 

「怪我人かい?」

「血は流したりしてはないですがこの子、機械の中心にいたんです!」

 

コトリがせわしなく動きながら説明してくれた。ヒビキが背負っている少女を見る。まるで雪を彷彿とさせるような白い髪と肌。その身にはボロボロの赤い布を纏っている。傷は無いみたいだが、気絶しているようでヘイローが消えている。

 

「”とりあえず、保健室に行こう!”」

 

ヒビキに背負ってもらいながら私達は保健室まで急いだ。

 

とりあえず白い少女をベッドで寝かせている。

どうやらこの少女ミレニアムの生徒ではないみたいでミレニアムのデータベースにも少女の情報が載っていない。ミレニアムの生徒の事はだいたい記憶しているが私もこの子は見たことがない。

ならあそこにいた理由は一つだろう。

 

「まさか、実験が成功したのかな?」

「その可能性は高いですが、他の学園の生徒が巻き込まれただけかもしれません!」

「まあまずはあの子が起きてからだね」

「”そうだね”」

 

謎の少女はいまだに眠ったままだ。

 

──────────────────────

 

目が覚める。

白い天井が見えた。なんだか随分前にもこんな光景を見た気がする。

どこだ、ここは? 私の最後の記憶では確か紛争終わりにテントの中で睡眠を取っていたはずだが?

 

体全体がだるい感じがしてなんだか掛かっている布団も重く感じる、まるで自分の体が小さくなったような気がする。

掛けられている布団を剝がそうとした時、自分の手が見えた。

それはいつも見ているゴツゴツとした浅黒い肌の手では無く、

細く白い華奢な手だった。

 

「は?」

 

素っ頓狂な声が出た。

一旦見なかったことにして、遠くを見つめたあともう一度自分の手を見る。

そこには変わらず細く白い華奢な手があった。

見覚えのある手だ。もう随分と昔に感じるような、まるで白い陶器のような綺麗な手。

確認せずにはいられなく。ベッドから身を起こし、ヨタヨタと千鳥足になりながらも立てかけの鏡に自分を写す。

そこにはかつての妹のような(イリヤ)の姿があった。

 

「なんでさぁぁぁああああ!!!!」

 

響く声、きっとどんな傷を負った時よりも声が出た瞬間だった。

 

「どういうことだ・・・?」

 

鏡に映る、自分の姿は正しくイリヤだ。

白のシャツ、水色のネクタイと藍色のミニスカートを着ていて、驚きの表情で固まっているイリヤの姿がそこにある。

疑問が尽きない。ここはどこなのか、なんでイリヤの姿になっているのか、なんでこんな服装になっているのか、全くもって理解できない。しかも頭の上にはまるで天使の輪のような物があり。まさか私は死んだのか?死後の世界とはこんな感じなのかと変な思考にはまってしまう。

そのまま鏡の前でわなわなと震えながら思考を巡らせていると、部屋の扉が開く。

自分自身の事で頭がいっぱいすぎて部屋に入ってくる人の気配を感じ取れなかった。

突然鳴った扉の開く音に驚きすぐさま視線を向ければ、紫髪の少女と死んだ目をした成人男性が入ってくる。

 

「大きい声がしたと思ったらやっぱり、気分はどうだい?一応外傷の確認はしているがどこか痛みは無いかい?」

 

紫髪の少女が話かけてくる。それに「ああ」なんて安易な返事をすれば「そうか、ならよかったよ」と少女はちいさく微笑んだ。

 

「そうだな、まずは自己紹介から。私の名前は白石ウタハ。ミレニアムサイエンススクール三年生、エンジニア部部長。そしてこちらは先生。君の名前は?」

 

少女の言葉に少し冷静に戻る。ミレニアムサイエンススクール?

言葉の意味そのままであれば学校なのだが、私が元いた場所には学校なんてものは無く。ここまで綺麗な施設も無い。

もしかしたら敵側の新たな作戦なのではと思ったが、こんな事する意味が無いし、なにより少女が嘘を言っているようには見えなかった。

 

まずは情報収集と自分の中で無理矢理折り合いをつける。本来ならもっと警戒する所だが今回はあまりにも不明点が多すぎるので情報共有の為にも洗いざらい話すことにした。

 

「士郎だ。衛宮士郎」

「よろしく。シロウ」

「“よろしくね。シロウ“」

 

二人から差し伸ばされた手を握る。

握手も済んだ所でウタハと先生に私自身の事を話すことにした。

 

────────────────────────

 

「次元移動は成功していたか!」

 

私が別の世界から来た事を明かせばウタハは大きく声を上げて喜んでいる。

ウタハが言った次元移動と言う言葉に唖然としていると先生がいきさつを説明してくれた。

 

「なるほど、私はその次元移動の実験に巻き込まれたのか」

 

私の世界では第二魔法と呼ばれるもの。元の世界の魔術師どもが聞いたら腰を抜かすだろうなと乾いた笑みが出てしまう。

 

「少し興奮してしまったが君がこっちに来てしまったのはこちらの落ち度だ。すまない」

 

興奮状態から帰ってきたウタハは一度深呼吸をしてからこちらに頭を下げて謝る。

もう起きてしまったことは仕方ないので水に流すとして問題は私が無事に元の世界に帰れるのかだ。

 

「事故みたいなものだ仕方ない。それより帰る手段はないのか。その装置をもう一度起動するとか」

「そうしてあげたいが装置は完全に壊れてしまってね。それに作るのに部費の半年間分を前借りしてもらったものなんだ」

 

ならば最低でも一年近くはここにいなくてはならないのかと考える。私にとって一年はあまりにも長過ぎる、こうしているうちにも元の世界では争いが起こっているのではないかと考えるとどうにか別の方法を模索したほうがよさそうだ。

 

「“流石にエンジニア部の部費半年分は私でもきついかな“」

「先生に払わせることはしないよ、私からセミナーに話をしてみよう」

「“大丈夫かなエリドゥの件とかキヴォトスの復旧作業に相当持っていかれたってユウカが言ってたけど“」

「まあ時期が時期だからね」

 

彼女たちの話を聞いているとこちらでもいろいろと大変なことが起こったようだ。

セミナーという所から資金を貰うのも難しいみたいで結局三人で腕を組んで頭をひねってしまう。

そんな手詰まり状態の私たちにお告げでも知らせてくれるのか違う少女たちが入って来た。

 

「ようやく見つけました!新たなクエスト発生です!」

「ようやく見つけたー!」

「お邪魔します先生、ウタハ先輩」

 

床まで伸びた青い髪で大きな武器?を背負った少女と双子だろう顔が似ている、桃色と緑色の少女。

先生が「“どうしたの“」と彼女たちに質問すれば青髪の少女は「勧誘です!」と元気よく答えた。

 

「勧誘?」

「はい!新たなパーティーメンバーを探し中なんです!」

「そしたら丁度変な生徒が来たとか話題になってたから来たんだ!」

 

彼女たちが言うには私が来たことはそれなりに知れ渡っているらしく、実習センターが壊れているのもその子が壊したとか変な話になっているらしい。

 

「えっと彼女たちは?」

「“ゲーム開発部のメンバーだよ“」

「天童アリスです。よろしくお願いしますね」

「才羽モモイだよ!よろしく!」

「妹のミドリです。すいませんいきなり押し掛けちゃって」

 

ミドリにそれについては問題ないと返す、それより彼女たちの目的だ。勧誘と言ったがそもそも私はこの世界の住民ではないので入ることはできないと伝えるとアリスたちは残念そうにする。そんなやり取りをしていると先生が一つの提案をしてくる。

 

「“シロウ、とりあえずミレニアムに一時的に入るのはどうかな“」

「どうゆうことだ先生?」

 

先生の突然の申し出に頭を傾げてしまう。いくら見た目が幼い子供だからと言ってこんな得体のしれない奴をいきなり引き込むのは考えが無さすぎるだろ。

 

「“この学園の生徒になるってこと! そうすれば生活に支障はなくなるしそれに私からの支援もしやすいしね“」

「いや流石にいきなりすぎるだろ、それに学園側がいきなりはいそうですかと納得しないと思うのだが……」

 

先生の周りのみなもうんうんと頷いているがいきなりそんな事可能なのか?

私の疑問に答えるようにモモイが

 

「大丈夫だよ! アリスの時にも学校のデータベースを改ざんしたし!」

 

と得意げに言っているがそれ普通に犯罪行為なのではと思うもそんな些細な事ここでは気にしないのかモモイとアリスに「ヴェリタス行くついでに案内するよ!」と強引に手を引かれる。

 

「じゃあ早速ヴェリタスに行こー!」

「クエスト開始です!」

「ちょっとおねーちゃん!」

 

そのちいさな身体のどこにそんな力があるのか引きずられながら部屋を飛び出した。

残った部屋では先生が

 

「“じゃあ私は一旦シャーレに帰ってシロウの書類を作ってくるね。あとのことよろしくねウタハ“」

「ああ、任せてくれ」

 

ウタハの言葉に安心したのかそのまま先生は保健室をあとにした。

 

「さて私もセミナーに伝えにいこうか」

 

その言葉とともにウタハもセミナーへと足を進めた。

 

──────────────────────

 

ミレニアムサイエンススクール:ミレニアムタワー内部

 

ゲーム開発部に連れられて少し経って。

 

「ここがミレニアムタワーだよ! 基本的にここで授業を受けるんだよ!」

「すごく高いな」

「ここはミレニアムの顔と言っても過言じゃありませんからね」

「はい!RPG風にいうならここが国のお城です!」

 

彼女たちの説明を聞きながらあながち間違ってないなと思ってしまう。ここに来る前にもほかの建物は見たが圧倒的な大きさだ。それに内部にはいたる所に高い技術力が見て取れる。

 

「じゃあ早速ヴェリタスの部室に行こー!」

「いや待ってくれ」

 

モモイが行こうとするのを制する。彼女たちは不思議そうにしているが、言えなかったが私にはある問題があったのだ。

 

「なにかありましたか?」

 

ミドリが心配そうに聞いてくる。それに対し私はちいさく返す

 

「そのな……」

「その?」

 

いい淀んでいる私を見てなにかを察したのかアリスは笑顔で代わりに答えてくれた。それはもうわかりやすく。

 

「もしかしてお手洗いですか!?」

 

デリカシーもかけらのない大きな声に近くにいた生徒が少し反応してしまう。視線が集まり少女の身になってしまったことで羞恥心があったのだがアリスにはわからなかったみたいだ。アリスの言葉に納得したのかモモイとミドリは気まずそうにしている。

 

「えっとごめんね、そういえばずっと連れまわしてたね」

「そこの通路の先です。あとアリスちゃんはもう少し静かにね」

「アリスなにかやってしまいました?」

 

きっと彼女にも悪気はないのだろう、アリスに「いいんだ」と伝えてからミドリに言われた方に向っていった。

 

──────────────────

 

「ちょっと恥ずかしかったのかな?」

「アリス、反省です……」

「大丈夫だよアリスちゃん次気を付ければ」

 

お手洗いにいったシロウを見送り、今はタワー内中心の椅子に座ってる。学園内は少し騒がしい、きっと実習センターのことだろう、ただでさえ今キヴォトスの復興作業やリオ会長の地下都市のことで忙しいのに実習センターまでガラスが全損したのだ。きっとセミナーのでか太ももは頭を痛めていることだろう、いい気味だ。そんなことを思っている所ちょうどその考えていた人が来た。

 

「やっと見つけたわよあんた達!!」

 

それもなんだか怒っているような気がする。

 

「あっ!」

「どうしたのミドリ?ただのユウカじゃん?」

 

ミドリはわなわなと震えだす。

 

「そういえば私たちユウカの敵キャラ作って遊んでた所をバレて逃げてきたんじゃ……」

「「あ」」

 

アリスと声が被る。そういえば私たちはユウカで遊んでるのがばれて逃げてる最中だった。ユウカに視線を向ければ明らかに頭のてっぺんに角が見える。

 

「逃げろー!!」

「撤退です!!」

「待ちなさーい!!あんたたち!!!」

 

──────────────────

 

「む?」

 

お手洗いから帰ってきてみればゲーム開発部がいない。一体どこに行ったのだろうか?とりあえず座って待つことにする。それにしても女子トイレというものはあんな感じなのか、なによりも自分自身があまり違和感がなかったのが怖い、身体が女性に変化したことによって魂が肉体に引っ張られ変質したのかもしれない。これから自分はどうなるのだろうか、元の世界ではどうなっているのだろうかと不安が尽きない。せめて凛がいればと思ってしまう。これはほぼ第二魔法と呼ばれるものだ。魔法どころか魔術ですら半人前の自分では自己解決など無理だろう。なにより科学技術で魔法の再現をやってしまうとはこちらの科学力は随分と進んでいるみたいだ。これからどうしたものか、別の世界で女性として学校生活を送ることになるとは、帰ってこんなことを話したら笑われるなと自虐てきに笑ってしまう。もちろんそんなことをしても状況はなにも変わらない。

 

「はぁ……」

 

これからのことを思うと先に思いやられるなとため息が出てしまう。これではだめだと思い立ち上がる。待っているといろいろと嫌な考えが湧き出てしまうので切り替える為に彼女たちを探そうとした時、感じるのは殺気にも近い感覚。後ろを振り抜けばそこには一人の少女がいた。

 

「誰だ?アンタ」

 

オレンジ髪の少女は明らかに敵意全開だ。なるほど彼女か、一目見ただけで理解できる。彼女がモモイの言っていた子か。

それは数分前のことモモイからある助言をくれたのだ。

 

『そうだシロウ気を付けてねこの学校には怖い先輩がいるんだよ』

『怖い先輩?』

『そう美甘ネル先輩って名前で革ジャンでメイド服の先輩なんだけど』

『革ジャンでメイド服?』

『そう! 見た目もちょっと変だしちいさいけど舐めちゃだめだよ! すっごく強くてこのミレニアムの勝利の象徴って言われるほどなんだから』

『それでなぜ心配するんだ?』

『聞いたのかわからないけどこのキヴォトスでとんでもないことがあったの! それのせいで今みんなピリピリしてるんだ』

『なるほど』

『だからきっとネル先輩も警戒してるから会わないように気を付けてね』

 

なるほどな彼女が

──────00(ダブルオー)勝利の象徴【美甘ネル】──────

「新しく入った生徒の一人だよ。名前は衛宮士郎だ」

「新しく入ったねぇ」

 

顔に少しの笑みを浮かべながら私の言葉を咀嚼する。表面上は柔らかな表情だがその奥にある敵意は隠しきれていない。

 

「実はさ、前にも似たようなことがあってよ。後輩に騙されたことがあったんだ」

 

嫌な予感がする。ちっとも彼女の敵意は緩んでいない。それどころかさらに警戒心を引き上げてしまったようでピリピリとした威圧感が一段と大きくなる。

 

「そん時は後輩だからよかったが次はそうはいかねぇと思ってよ。学校の生徒の名前と顔は頭に叩き込んだんだ。新しく入ってくる奴の資料にも目は通したがお前みたいな奴はいなかった。それによ、そんな猛禽類みたいな目。お前相当場数踏んでるだろ?」

「それに対しては否定はしないがこちらに敵意はない」

「言葉ならなんでも言えるよなぁ!!」

 

振り抜かれる短機関銃(サブマシンガン)、初速からのトップスピード。放たれる凶弾を横に飛び退き全力回避。しかし私が横に回避するのを読んでいたのか回避先にはすでに構えているネルがいた。

 

「オラァ!」

「くっ!」

 

腹を狙った強烈な蹴り。腕を構え防御していたがその上から剥がされ勢いを殺せず吹き飛ばされる。

ボールのように床にバウンドしながら吹き飛び壁に当たった所でようやく止まった。

 

「やるな……」

 

口の中から鉄の味がする。これは本気で対抗しないとこっちが死ぬな。

腕で口元の血を拭い右手に魔力を集め撃鉄を思い浮かべる。

 

投影開始(トレース・オン)

投影するのはいつもの弓。その大きさを持ちやすいように小さくしたもの。

壁に当たった衝撃でできた煙が晴れる。 獰猛な獣(ネル)は口を三日月のように歪めていた。

近距離戦では勝ち目は無いな。あの速さ、強化した私よりも速いだろう。

獣を見据える。

さて今の私にこの獣を狩ることができるだろうか?

 

「ゴミは掃除しなきゃなぁ!!!」

 

獣が荒々しく吼えた。

 

──────────────────

 

荒々しい行動に反してネルの頭は冷静だった。

弓?

ネルは何もない所から突然武器をだしたことに警戒する。

確かにあいつは無手だった。それにあんな身長ほどの弓を隠せるほどの場所などない。きっとあいつの神秘だろう今はそれしか判断材料が無い、もしかしたら別の場所からも武器を出せるのかもしれない警戒は最大限まで上げ速攻で決める。先ほどと同じ初速からのトップスピード、相手の武器が弓なら連射性も速度も銃には遠く及ばない

殺す。

ゆっくりとこちらに向けられた弓、しかしたったそれだけの行動でネルは背筋が凍る。

なんだこの感覚。まるですでに射貫かれたような得体のしれない恐怖が走る。前に走るからだを無理やり捻り反射的に回避行動を優先する。ほとんど本能から来る行動だったがその読みは正しかったようで身体の横を何かが掠めていく。

ほとんど見えなかったが一瞬捉えた。

矢?いや剣か?

背後を見れば矢のように変化した剣が壁を突き破っていた。

急激な方向転換に身体が追いつけず投げ出されるがすぐに体勢を立て直す。しかしその一瞬が命とりであった。目の前にあったのは先ほどと同じ矢で左肩に衝撃と鋭い痛みが走る。

 

「ちっ!」

 

衝撃の瞬間、左回転しそのまま勢いをスリッピングアウェーの要領で受け流す。

 

「野郎……!」

 

──────────────────

 

今のを避けるか、剣自体は普通のものでも威力はそれなりにしたつもりだ。なによりも今の自分が出せる本気の攻撃を避けられた。これはまずいなと表情には出さなくとも焦る。それになによりもこの身体だ。少女の身になった影響でいつもと感覚が違いすぎる。先ほどの時にもあったほんの少しの違和感が戦闘に置いてなによりも大きすぎる。しかしデメリットだけではない、この身体がイリヤのものなせいか魔力の流れがいつもよりも軽い、投影魔術も前の世界よりもコストが軽く感じる。そしてなによりも魔力量が桁違いだ。これならば少しの力押しもできるだろう。

再度剣を投影する。きっと彼女も先ほどのような隙は無いだろう。

互いに見据える。戦闘は始まったばかりだ。

 

先に仕掛けたのはシロウだった。弓とは言えないほどの速度で矢を連射しながらタワー内部を走る、先ほどよりも威力が抑えられたものだがその速さは弓のそれではない。ほとんど弾丸と同じ速度の矢がネルに襲い掛かるがその程度このキヴォトスでは日常だ。迫りくる矢を避けながら近づこうと追うも距離は縮まらない。ネルはシロウの射撃にやりずらさを感じていた。それは普通の銃弾とは違う所、一つ一つがまるで自分の回避先を読んでいるかのような動きで回避先にはすでに矢が放たれている。それを持ち前の身体能力でなんとか避けていくが長くは持たないその証拠にすでに何本かが肌に掠め切り傷を作っていく。

 

「くそっ!」

 

やりずらい! こんな射撃キヴォトスでは見たことがない。いつもと違い過ぎる戦闘に少しずつしかし着実に追い詰められていく。だが彼女は勝利の象徴。この程度でやられてはミレニアム最強は名乗れない。感じた違和感は射撃の間隔である。射撃の間隔内に少しの間がある。それは銃とは違う所。銃は一度狙えばトリガーを引くだけでいい、しかし弓には一発ずつに必ず弦を引く動作が入るのだ。その間はたとえシロウの超人的な連射力でも同じ。それゆえに絶対に銃とは違う間ができる。それがわかればあとは動くだけである。避けるリズムをずらす、シロウの弦を引く動作を利用してその瞬間に前に出る。シロウ側もネルの動きが変わったことに気づき対応するように射撃を変えるがそこで身体の違和感が邪魔をする。いつもならばほぼ間隔なく修正できるであろう時間よりもコンマ数秒遅れる。無論その時にはネルはその修正した動きに対応してくる。そのネルの戦闘センスに悪態をつくしかなかった。

 

「やるな」

 

さっきまで一定だった距離が着実に近づいてきている。彼女の武器は短機関銃(サブマシンガン)。近距離では彼女の方に分がある。近づかれたら負ける。なんとかそれ以上は近づけさせんとさらに射撃のギアを上げるが一度種が割れたらもう意味は無い。そんなの関係ないというようにネルもさらに速度を上げる。しかもここで場所の差が出る。野外ならばほぼ無限に後ろに下がれるが室内ならそうはいかない。

 

「壁っ!」

 

普段ならばしないミス。環境が変わったことによる油断、そのせいで壁端まで追い込まれてしまった。

まさかこれを狙っていたのか? 確認するすべは無いがそれが事実なら今の自分は追い込まれた鼠だ。すぐに移動しようとするも最強はそれを許さない。

 

「追い詰めたぞ!! チビっ!!」

 

ネルとの距離は五メートルほど、あがきと矢を一本放つが意味はない。矢は彼女の顔の横を掠めるだけだ。

 

「獲った!!」

 

銃を向ける。完全にアタシの距離だ。しかしトリガーを引く瞬間感じる違和感。

戦闘に置いて一番の隙はどこかそれは勝利を確信した瞬間である。なぜこいつはこの距離で矢を放ったのか、ネルは見る。シロウの口元が動いてなにかを発しているのが見えた。

まさか! 避けた矢は今だ自分の顔の横にある。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

矢が爆ぜる。爆炎の中に彼女が消える。

宝具ではないとはいえそれは一級品の神秘が詰まった剣だ。いくらネルとてただではすまないだろう。

ほんの一瞬気を緩めた時、見えたのは爆炎の中から飛び出すネルの姿。

 

「なにっ!!」

「オラッ!!!」

 

完全に無防備な状態に叩き込まれるネルの蹴り。その威力は初めのものとは数倍違う。なによりも最初は不格好とはいえ防御は出来ていたが今回は完全に隙を突かれた。

 

「ガハッ!!」

 

そのまま身体は吹き飛ばされ壁を破壊し外のグラウンドまで投げ出された。

地面に投影した剣を突き刺して無理やりに勢いを殺す。弓を支えにしながら起き上がる。

見据えるネルはボロボロの姿のままで獰猛な笑みを浮かべている。普段の身体であれば無視できるダメージもこの身体では致命的だ。このままでは負ける。

五秒、五秒だけ魔力を込めれたらいい。

投影開始(トレース・オン)

投影するのは一本の剣。それはまるでバラの棘のようで歪な形をしたものでそれを弓にかける。

ネルとの距離はだいたい100メートルほど、約10メートルの道場をセイバーの本気でも二歩掛かる。いくらネルが早くともあのセイバーよりは早くない。これだけの距離があれば魔力を込める時間はある。問題はその両手に持っている短機関銃(サブマシンガン)だ。有効射程は200メートルほど、この距離からバラまかれたら魔力を込めることができない。ならどうするか、彼女に撃たせなけばいい。

工程完了、全投影、待機(ロールアウト バレットクリア)

空中に浮かぶ無数の剣軍は全てネルに向けられている。全て私が狙いをつけているもの。先ほどの戦闘でネルは私の射撃力がわかっているはず。なら避けるのに集中しなければ当たるのもわかっているだろう。それに先ほどやった剣の爆発。いくらネルと言ってもそれなりのダメージのはず二度は食らいたくないだろう。どれが爆発するかもわからない剣軍を避けながらこちらに狙いをつけて撃つのは不可能だ。

さあどうする最強。

 

身体が痛てぇ。

爆発の瞬間一気に神秘で防御を高めたがそれでもあれは効いた。今目の前のチビはあらたな矢を構えている。そしてその周りには剣が浮いている。なにかドローンの類かと思考するが余計な考えを断ち切る。あの剣一本一本があいつが狙っているものなら牽制で撃つ暇はない。避けるのに専念しなければ当たるだろう。それにさっきの爆発もあるせいで無視して突っ込むこともできない。このままじゃあ負ける。この緊張感久しぶりだ、ツルギの時に感じた強者との対決。負けるかもしれないそれがどうした。

あたしはミレニアムの勝利の象徴だ。

 

「ごちゃごちゃ考えるのは無しだ」

 

突っ切ってあのチビを張り倒す。

 

「行くぞ! オラぁああああ!!!」

停止解凍、全工程連続層写(フリーズアウト ソードバレルフルオープン)

 

迫りくる剣軍。その一つ一つが必殺であり一撃でも受ければ負ける。だがその程度避けずしてなにが最強か。

一気に踏み込む。迫る剣の隙間を縫いながら進んでく。もしもの為の神秘防御もある。多少無理しても問題ない。

剣が掠め肌が切れる。それでもネルの足は止まらない。無数の切り傷を作りながらも剣軍を突破する。

その瞬間ネルを囲んでいた剣全てが爆発する。煙が立ち込めるが肝心のネルがいない。

 

「上か!」

 

そこには爆風を利用して高く飛ぶネルの姿があった。士郎は弓にかけていた剣を放つ。空中では避けることができないはずであった剣を左手に持った銃に神秘を込め思い切り投げる。それによって衝突した剣は軌道を逸れた。

 

「なに!」

「オラぁああああああ!!!!」

 

そのまま士郎に突っ込む。

突っ込んできたネルの蹴りを弓で無理矢理防ぐもネルの渾身の一撃はそのまま弓を破壊し、シロウに一撃を入れた。

仰向けで倒れるシロウ、それにネルは銃を向ける。

 

「アタシの勝ちだ」

「そうだな君の勝ちだ」

 

負けたシロウのどこか余裕のある態度にイラっとする。「お前なんだその態度」と言いかけた所でなにか嫌な感覚がした。

 

「一つ言っておくが後ろを見た方がいいぞ」

 

ネルは後ろを振り向く。すぐ目の前には先ほど逸らしたはずの剣があった。

 

「な!?」

「」

 

ネルの視界は青白い光に包まれた。

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