とんでも動力もって異世界行こうぜ!   作:サイリウム(夕宙リウム)

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1:死んだねぇ!

 

「死んだら異世界って、、21世紀のアニメじゃないんだから。」

 

 

そう突っ込んでしまっても、まぁ仕方のないことだと言いたい。……まぁ私文化方面そこまで詳しくないから、そもそもこういう状況が、21世紀のアニメであってるのかどうかも怪しいんだけど。

 

 

「エネルギー切れの心配がなさそうなのはいいけど……、どうしよ。」

 

 

死んだと思ったらなんか異世界にいる。

 

まぁそんな摩訶不思議な状態の前に、私の説明を軽くしておこう。

 

名は永野 志麻江、ナガノ シマエって読む。24世紀生まれの人間にしてはまぁ古臭い名前だが、両親から贈られた名前でもあるので文句はない。性別は女ね、今時そういうのも珍しいけど。

 

私の一族は研究者・開発者・技術者として有名な一族だった。祖母の代から始まって、親族全員人類文明をことごとく底上げしてきたバケモノばかり。私はそんな人たちの孫世代、一族を興したお婆ちゃんから見ての孫で、その孫の中で一番最初に生まれた存在だ。つまりお姉ちゃんってわけ。

 

両親は優しかったし、お婆ちゃんも初孫ってことでかわいがってくれた。親族たちも何かと面倒見てくれる環境で、とても過ごしやすかったことを覚えている。少しすれば妹たちが生まれて来たので私だけ特別、ってことでは無くなったけど……、まぁ姉としての自覚も芽生えて、頑張らないとなぁ~とは思っていた。

 

 

(妹可愛かったし。)

 

 

でも、結局。頑張ってどうにかなるレベルじゃなかったんだよね。うん。ウチの一族頭おかしいもん。

 

 

(お婆ちゃんが縮退炉作っちゃった人で、うちの両親も外宇宙探検用の宇宙船開発とか、コールドスリープとか、ワープ航法とかの発明をしちゃった人だ。とりあえず一族全員クソ天才ってわけ。……私にもその血は、“一応”流れてた。)

 

 

ある程度優秀だった私は、速攻で学校どころか同世代の頂点に立てた。まぁ親族全員が歴代一位ってのは聞いてたから、そこまで嬉しくはなかったんだけど……。お婆ちゃんがすごく褒めてくれたから、とても嬉しかったことを覚えている。

 

でも、我が世の春はそこで終わり。

 

私は“まぁまぁ”優秀だったんだけど、妹たちが色々ヤバくて、私よりも飛びぬけて優秀だった。幼稚園児でフェルマー理解してたとか、小学生で大学院卒業したとか……。まぁ上げればきりがない話ばっかり。マジで頭の出来が違うってレベル。

 

こっちが『ロボットアニメとか見ながらぐ~たらしよ~』って思ってた時に、妹たちが全力で下からたたき上げて来たのだ。たまった物じゃない。

 

 

(しかも全員悪気無く、ただ興味のゆくままにしてたってのが恐ろしいよなぁ。)

 

 

私も姉、一族の長女としてのプライドがあったし、周囲からの視線も痛かった。ただでさえ技術者として有名過ぎる家系の人間だ。妹たちが結果を残している間に、私は何をしてたのか、って聞かれればもう何も答えられない。泣きながら『アニメ見てました』なんて言ったら即集団リンチだ。

 

親族はそんなことしないけど、それ以外は別。あいつらなら、やるときはやるだろう。

 

そんな感じで知らず知らずのうちに、落ちこぼれの烙印を勝手に押された私は、姉としての威厳を取り返すために努力を重ねるしかなかった。

 

 

(家族はそういう成績とか全く気にせず、『好きにしていいよ~』って感じだったのが余計になぁ……。)

 

 

こんな一族だから金はある、お婆ちゃんが積み上げた財と両親の財を合わせれば一生を何百回遊んで暮らせるかわかんないレベルの額だ、沢山いる妹たちと分割して相続しあっても確実に遊んで暮らせるだけのお金。

 

だから私としてはもっとアニメとかゲームとか色々娯楽にまみれた生活で、年齢相応に頑張ってたらいいや、って思ってたんだけど……。そうなったらもう遊んでる場合じゃない。死に物狂いで勉強してだんけど……、結果は悲惨。妹たち以外に負けなかったが、妹たちとの戦績はお察しだ。

 

試験とか成績とかは基本負けか、満点で引き分けぱっか。一度だって妹たちに勝てたことない。親族の中で一番下の子に同じ問題でぼろ負けしたときはもうどうしたらいいかわかんなかった。しかもあの子たちそういうの全然気にしてないしさぁ……。お前らより馬鹿な奴を姉って呼ぶなよ……。

 

 

(そして地獄の学生生活が終わったと思えば、今度はもっと地獄の研究者生活だ。)

 

 

飛び級で大学卒業して、成人したと思ったら……。今度は妹たちどころか両親や叔母たち、親族全員とのレースが始まった。私以外の一族全員が、比較対象なのだ。これまでのクソレースがさらに過酷化するのである。

 

ほんとなんなんだろうねあの人たち、普通にテラフォーミング実施して成功したとか、異星人発見してその言語解読したとか、ハイパーレーン設立したとか、ワープ航法理論最適化したとか……。規格外が過ぎる。お婆ちゃんが若いころは太陽系が限界だったみたいだけど、うちの一族のおかげで後押しされまくった地球は、驚異的な速度で活動圏を広げている。

 

もちろん宇宙方面だけでもなく、人の生活もどんどん豊かになった。VRだっけ? アレがすでに遺物に成っちゃって、ARですら研究が完了した過去の技術だ。最近はまだ試用段階らしいけど、情報から物体を生成するって技術を妹の一人が作ってしまっている。どういう名になるかはわからないが、また一つ時代が進んだ感じだ。

 

 

(無からの創造とか……、ほんとになんだよもぉ!)

 

 

そんな相手たちと比較される私も、一族の人間ってだけでそれ相応の結果が求められるわけで……。

 

これまでただ妹たちに追いつく、負けないようにするってことだけが目的だった私には、何かしたいことも、目指したいものも見つけられなかった。それほど擦り減っていたとも言う。

 

けどまぁ孫世代の長女ということでやることはやらないといけない。優秀過ぎる妹たちみたいに、時間はない。私に自分探しの旅とか、テーマ探しの旅とか、休息期間なんてものは最初から存在していなかったのだ。一刻も早く動き始めないといけなかったわけね。

 

んで私が選んだテーマは、縮退炉を超えるエネルギー炉の発明だった。お婆ちゃんがたびたび改良してるからアレ一個で小型の宇宙船を簡単に動かせるんだけど……。最近はちょっと出力不足が懸念されてた。

 

 

(他の技術が進み過ぎちゃったっていうのもあって、エネルギー不足になってたんだよね。……縮退炉でエネルギー不足って意味わからんけど。)

 

 

まぁテーマとしてはちょうどいい。なにせ祖母の作った物を超えるっていう長女としてはこれ以上ないお題目だった。需要を先取りしたようなものだから、みんなが求めてる発明でもあった。何もせずピーチクパーチク騒いでる奴も黙らすことが可能。

 

つまりこれ一つさえ完成できれば、後は何もしなくてもいいだろうっていう思惑もあったわけ。

 

そう考えてみれば出ないやる気も湧いてくる、ここで最後まで走り抜けて結果を出せば、幼少期から溜め込んでる色んな娯楽に手を出せる。丸一日寝転がってても何も言われない。妹たちと無駄に比べられることもなくなるだろうし、私も彼女たちと自身を変に比べてしまうってのもなくなるはずだ。解放されてて、自由で、好き勝手にぐーたら生活できるとなれば、やるっきゃないでしょ。

 

んでまぁそれを目標に私なりにやってみてたんだけど……。想定以上に妹たちの成果を上げるスピードが早すぎてね?

 

 

(うん、病みました!)

 

 

周囲からの声がうるさいのなんの……。お前らウチらの一族の発明で甘い汁吸ってるだけだろうが! そんな奴らがいっちょ前に批判とかしてるんじゃねぇよクソが! なぁにが出がらしじゃボケェ! ぶっ殺すぞ! 特にゴシップぅ! 

 

んでまぁそんな状態で研究進めて、徹夜しながら頑張ってた結果……。

 

 

 

「死んじゃったんだよねぇ。」

 

 

こうなるんだったら口うるさいクズ共ことゴシップ記者どもを出版社ごと吹き飛ばしておけば良かった、なんて言ってももう遅い。死んじゃったらねぇ……。

 

その証拠に、腕輪型のデバイスからディスプレイを空間に表示し確認してみると、昨夜に過労とストレスによる心肺停止。シマエちゃん安らかに永眠っていう項目が表示されている。でもなんか復活して正常な肉体に戻ってるせいか、デバイスのAI君が『自分壊れてるかもしれないっす、メンテナンスした方がいいかも?』って報告してくれているが……。まぁ無視だ。キミは壊れてない。

 

というかね? 普通こうなったときの為に、危篤時は病院に転送してくれるプログラムとかデバイスに入ってたはずなんだけど……。

 

 

「いつか忘れたけど、最後に寝る前に病み過ぎてそういうの全部解除したんだっけ? どうせ私死んでも悲しむ奴おらんやろ、みたいな。正直酒も入ってたから全然覚えてないわ。」

 

 

ほら、あるでしょ? 精神死んでるときにやみくもになって色々破壊しちゃうやつ。そん時にやっちゃったみたいなんだよね♡ その直前も何徹したか解らないぐらいだったし……、まぁ死ぬ理由には事欠きませんな。……取り合えず忘れないうちに全部そういうのオンにしておこ。

 

 

「んでまぁ死んだわけだけど……、なぜか直前に完成しちゃってるんだよなぁ、コレ。もう意味ないのに。」

 

 

ディスプレイを閉じ、白衣のポケットに入っていたキューブを取り出す。中央にきらめくのは、鮮やかな緑色の光。さっき縮退炉に代わる新たな動力源を発明しようと頑張ってた、っていう話してたでしょ? その結果。

 

私が文字通り命を架して作り上げた最強のエネルギー炉、『ディメンションキューブ』。

 

……ネーミングセンスはとりあえず置いておいてね?

 

 

「二次元、三次元、四次元と、まぁ次元を移動する時に発生するエネルギーを延々と生み出し続けるキューブ。この中にさっき上げた三つの次元が螺旋を描きながら安定しているって言っても……、まぁ信じるか。ウチの一族なら。」

 

 

正直なんで安定してるかわかんない所もあるのだが……。とある理論で、次元を移動する際に莫大なエネルギーが生じる、というデータがあった。けれどそもそも次元を移動するのにもエネルギーが必要で、ここから何か力を得るには割に無いんじゃないかっていう結論。

 

その理論が発表された当時も今も、まだ次元間移動は理論段階。まだ技術が追いついていない上に何があるか解らない次元間を移動するより、まだ完全に探索し終わったとは呼べない自分たちの宇宙を調査すべきだという意見であんまり予算が降りてこない分野だった

 

これに目を付けた私は、『次元を移動する時に必要なエネルギーを、移動したときに発生するエネルギーで補えばいいんじゃね?』と思いついたのだ。まぁ早い話、お湯沸かすときに必要な熱エネルギーを、今沸かしてるお湯から汲み取ろうぜ! っていう馬鹿な話。

 

普通はこんなのできないんだけど……、二次元と三次元と四次元。この三つで同時に同じことをすれば、余剰分を汲み取ってエネルギー炉に出来るんじゃね? と思ったの。

 

 

「それでなんかうにゃうにゃしてたら、出来ちゃったんだよね……。」

 

 

んで完成したときの安堵で? 気が緩み過ぎてぽっくり死んだ、と。

 

ちなこのキューブだけど、一応データとかもとってるから再現性はある。けどなぜこの状態で安定してるのか解らないし、どれだけのエネルギーを発してるのかもわからない、お婆ちゃんの最新型小型縮退炉よりは出力がいいと思うんだけど、そういうの全部検査する前に死んじゃったからね☆

 

 

「理論通りなら天文学的数値に成っちゃった太陽系の消費電力をこれ一個で補えるはずなんだけど……。実際どうなんだろ。わかんね。」

 

 

実験しようにも、もうどうしようもない。だって死んじゃったし、ここがどこかも解らないんだもの。お家に帰れないどころか、お家が存在しない世界に来ちゃったかもだし。

 

 

「この私の腕輪ちゃん。現在位置の表示とか、通信とかも色々出来るはずなんだけど……。ことごとく反応がないんだよなぁ。この子一個で完結するのは普通に動いてくれるんだけど。」

 

 

一応これでも“一族”の子だ。ある程度の分析はできる。

 

デバイスの性能的に、地球の勢力圏に存在していれば文字通りどこからでも、太陽系外からでもノーラグで通信を届けることができる。そんな素敵存在がどこにも繋がらない上に、軽く電波やらなんやらを調べたが、それらしいものはこの星では飛んでいない。もう古代の遺物と化したWi-Fiですら存在してないのだ。

 

 

(それだけでもうこの身が未開宙域のどこかに存在することが解る。しかも電波による通信以前の文明しかない場所だ。)

 

 

今日びワープ事故なんて起こらないし、そもそもそのワープ関連技術はウチの叔母が汲み上げたものだ。安全性に問題はない。つまりなんかのワープ事故でミスってよくわからん場所に飛ばされた、って可能性は限りなく0に近い。そもそも私の死亡ログ残ってるし。

 

んで今いる場所の大気を軽く調べてみたんだけど……、私たちの知らない元素が存在してるっぽい。しかもかなり軽い元素だ。新発見の元素があるのは素晴らしいことだが、これが今まで発見できてなかったとなるとウチの科学者全員打ち首になるレベルの失態。そもそもの“ルール”が違う気がするのよね。

 

 

「まぁ異世界転生ってやつでしょうなぁ。ちょうどここに『ディメンションキューブ』っていう次元間移動できそうな代物もありますし。死んだのになぜか持ってたこの腕輪型デバイスと、資料まとめた研究用パネルデバイス。後キューブの三つ。後は普段着と白衣とサンダルで異世界とか……、終わってんねぇ。」

 

 

そんなことを考えながら近くにあった倒木に腰かけ、周囲を見渡す。

 

面白いぐらいに何もない、森。いや見たことのない植物ばっかだから、そっち方面に専門を持つウチの一族の人間なら涎だらだらだろうけど、私専門じゃないしねぇ。デバイス君が教えてくれる『これ新種っすねぇ。』と『これ食べれませんねぇ。』というコメントにしか興味がない。

 

 

「……とりあえず一息つくか。うん。」

 

 

そういいながらもう一度腕輪型のデバイスを起動する。

 

さっき言ってた“妹”の発明品。ほらデータから物質を生成するっていうの覚えてる? 電力というかエネルギーを消費して、無から有を生み出すっていう。あの子が言うにはまだ試作段階で一般公開はしていないようだが……、『便利だから姉ちゃんにもあげる』ってことで勝手にデバイスにぶち込まれたはずだ。

 

 

「正直どういう風に組まれてるのか皆目見当もつかんけど……。こんな場所で一服できるのはありがたいよね。」

 

 

電力を消費してハンバーガーを得る。早い話、そういう事らしいけど……。さっぱりちゃんだ。確かに普通の作り方でも電力は消費するけど、料理番組とかで『こちら材料になります』って言いながら項目に『電力』だけ書かれてたら色々とおかしいでしょ。いやそれを実現しちゃったのがウチの妹なんだけどさ……。

 

デバイスを操作し、キューブとつなげエネルギーを供給させる。後はあらかじめ登録されているレシピを選んでボタンを押せば。私がすることはこれで終わり。後は待つだけ。空中に映し出されるディスプレイ、そこにデフォルメされた料理中の画面が表示され、小気味いいポンという効果音と共に構成される品々たち。

 

 

「簡単にコーヒーとバターサンドの完成ってやつだ。……昔見た3Dプリンターみたいな感じなのかね? 専門外過ぎてわからん。けどま、異世界まで来て元の食生活送れるのは助かるよ。」

 

 

レシピそんな数ないから、これだけじゃ確実に飽きるだろうけど。……一応研究用のパネル持ってきてるから、プログラムさえ解読できれば私にも新しいレシピを作れないことではないと思う。けどあいつのコード、スパゲッティ通り越してゴルディオスだからな……。あの子の母親、叔母さんのはクソキレイで読みやすいんだけど。

 

 

「読みにくても、結果はしっかり出してる。……両方とも美味いなぁ、オイ。」

 

 

まぁとにかく、食料不足や水分不足でもっかい死ぬことはなさそうだ。ちょっと使ってみたがキューブには何の影響もなし。この程度の消費なら何の問題もないことが解る。設計通りなら構造的に軽く300年は起動し続けるだろうし……。死ぬまで持つな。まぁもう一度、死んだけどな!

 

 

「あはー、おもしろ。……死にたくなることはあったし、死にたいとか言ってた記憶もあるけど。ガチで死にたいわけではなかったからなぁ。」

 

 

さてはて、異世界で何しましょうかねぇ。

 

……とりあえず、人里でも探してみますか。水場探せば近くにあるでしょ。

 

 

 

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