とんでも動力もって異世界行こうぜ!   作:サイリウム(夕宙リウム)

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3:第一村人だねぇ!

 

さて、あの巨大ザリガニを爆発四散させた後。ゆっくりと下流に向かって歩いているわけですが……。

 

 

「人の痕跡らしきものは全然ないな。」

 

 

まぁさっきの『ショックガン』だったけ? それを使っても未だ私の発明品、『ディメンションキューブ』に何の異常も発生していない。未だにこの立方体には鮮やかな緑の光が灯っている。さっき軽く腕輪型デバイスの方を見てみたんだけど、常にエネルギーが満タンの状態だった。

 

エネルギーの消費履歴を見ても、ずっと100%。『シールド』の起動や、『ショックガン』の起動をした履歴が残っているのに、常に満タン。普通の腕輪の保存エネルギー量ならすでに空っぽになっててもおかしくないというのに、不思議だねぇ。

 

 

「キューブからの供給量が多すぎてこうなってる感じかね?」

 

 

そう考えれば、かなりありがたいことだ。私への攻撃に対して自動で発動してくれる『シールド』に、出力さえ上げればあのバケモノを簡単に屠れる『ショックガン』。身を守るには不足ないプログラムが使い放題となれば、何かの弾みで死んでしまう可能性はぐんと減る。

 

 

(これで万全とは言えないだろうけど……、今はこれで十分そうかな?)

 

 

あ、そうそう。さっきのザリガニをちょっと腕輪ちゃんで分析してわかったんだけど……、その体に大量の謎の元素。私の世界、地球には存在しなかった元素が大量に含まれていることが理解できた。そしてそれ以外の構成が、地球にいたザリガニとほぼ同じだということも。

 

 

「気になって重力とか気候ももっかい調べなおしてみたんだけど……、大体地球と同じ。となるとあの“謎元素”以外の原因でザリガニが大きくなったとは考えられない。」

 

 

全くの未知の存在だし、これがどのような効果を発揮するのかは全くの不明。暫定効果としてはそのサイズの向上ってところだろうけど……。さっきこの横を歩いてる川の水調査してみたんだけどね?

 

 

「水にも“謎元素”が含まれていたけど、水自体には何の影響も及ぼしている様には見えなかった。」

 

 

生物だけに効果を及ぼす存在であれば、その詳細が理解できるまで私がこの地で入手した存在を口にするのは避けておいた方がいいはずなのだが……。さっき私が口にしたザリガニ肉。それを『可食チェッカー』で調べても何の問題がなかった。つまり人体には影響がない存在なのか?

 

 

「『可食チェッカー』が機能してない可能性もあるけど……、わかんね。」

 

 

死にたくはないけど、こういう何でもないミスで死ぬならまぁそれまでだ。あんまり頭を回すのは苦手だからねぇ。

 

とまぁそんな感じで川を下ってるわけだけど……、まーじで人いませんね。もしかしてこの一帯完全な未開地帯で知的生命体いない感じだったりするの? うへぇ、もう蟲型でも液状でもなんでもいいから知的生命体に保護してもらいたいよ。別に好き好んで死にたいわけではないからさぁ……。

 

 

「はぁ、とりあえずもっかい索敵でもしてみようか。」

 

 

そう言いながら腕輪を起動し、周囲を探ってみる。なんか気になる存在は……。うん? なんか動いてるのがいるな。またザリガニか? ……あ、そうだ。さっき可食チェッカーで調べた情報をそのままデバイスに叩き込んで、索敵したときに場所が解るようにしておこう。そしたら川の中にいるザリガニとか、今動いてるのがザリガニかってのもすぐにわかる……。いやコレザリガニじゃないな。

 

最初少しサイズが小さい、帰ってくる反応が小さいため幼体なのかなと思ったが、登録した情報。ザリガニの情報と食い違っている。というかこの反応的に私と似たような構成。人っぽい。

 

 

「おー、やっぱ川下って正解だったか。ふぅ、んじゃご挨拶にでも行ってみましょうかねぇ。」

 

 

そう言いながらさらに川を下っていく。

 

求めていた目標というか、第一村人らしき存在が見つけられたため最初はこの足が進む速度も速かったんだけど、やっぱり私は引きこもりのクソ女。まぁ体力がね、続きませんよね。何とか太めの枝を杖代わりにしながら、石だらけの道を下っていく。

 

そしてようやく見えてきたのが……。

 

 

(あ、いた。しかも完全にヒューマノイドタイプじゃん。良かったー、それならまだ意思疎通出来そう。……でも服装とか完全に布だよね。私たちの時代に合わせるとどれくらいなんだろ?)

 

 

私の視界に現れたのは、まだ子供と呼べるような背丈の少女。どうやら水を汲みに来ていたのだろうか。長い棒に桶みたいなのを繋げた品を持っている。うーむ、私じゃ持てなさそうだな。っと、んじゃコミュニケーションの時間と参りま……

 

私がそう考えた瞬間。彼女が覗き込んでいた川の奥底から、私の時と同様に巨大なザリガニが一気に顔を出す。そしてその鋭い鋏が狙う先は、その子の柔肌。

 

即座に腕輪を起動させ、彼女の元へと、“飛ぶ”。

 

 

「○●!」

 

「よっと! ふぃ~、短距離だけど転送も問題なく出来てよかったよぉ。叔母さんの発明だからミスって体の内側と外側がひっくり返る、みたいなアホなことにはならないだろうけどさぁ。……さて、大丈夫?」

 

「■■〇!」

 

「あー、やっぱ言語解んないか。ちょっと待ってね、解析するから。」

 

 

私が使用したのは、デバイスに登録されている機能の一つ。本来であれば消費エネルギーが多すぎるが故にそうそう使えないというか、腕輪でやるぐらいなら他の機器を使うだろってレベルのものだが、今の私には「キューブ」がある。案の定自身の体を転送しこの身が位置する場所を変更したというのに、全くその保有エネルギーに影響は出ていない。

 

そんなことを考えながらこの小さな女の子。金髪金眼のお人形さんみたいな子に話しかけるのだが、やっぱり言語が解らない。どうやら私を守るために起動した『シールド』に向かって攻撃し続けているザリガニに対して恐怖の声を上げているみたいだが、まーったく解んない。

 

ね、ねぇレディ? 今言語解析のプログラム稼働したからさ。もうちょっと他の言語喋ってくれない? ほら私に抱き着いて泣き叫ぶのはいいけどさ。情報が取れないじゃんか。このままだたプログラム君が『もしかして叫び声でコミュニケーションをとる言語?』って勘違いしちゃうよ? まぁそんなポンコツではないけどさ。

 

 

「う~ん、先にザリガニさん片づけた方が良いのかなぁ? あんまり余計な殺生はしたくないんだけど……。ごめんね?」

 

 

そう言いながら、先ほど同様『ショックガン』を起動する。それを見てさらに驚き謎言語を叫ぶ女の子。はいはい、もうちょっと待ってねー、今コレザリガニさんに向かって発射するから。えーと、威力はある程度落として、全身を吹き飛ばさない程度に確殺出来る威力……、これぐらいかな?

 

私の指の先から放たれる、電気の塊。それが直撃した瞬間、ザリガニの内部で何かが弾けるような音が聞こえ、真っ赤になりながらばたんと倒れてしまう。……うん! 上手く出来たんじゃない?

 

さーて、んじゃ怖いのもいなくなったし、レディ? お姉さんに言葉教えてくれないかな?

 

 

「はーい、もう怖くないからねー。大丈夫大丈夫。なーに、小さい子の扱いは妹で慣れてるんだ。まぁ全員に追いつかれたけど。あはぁ。」

 

「△▼◇〇?」

 

「あ、そうそう。新しい単語出て来たね。もうちょっと喋ってくれない? なんでもいいからさ。」

 

 

頭を撫でたり顔をぷにぷにしてやりながら幼子の気を落ち着かせ、同時にいろんなものを指差しながら、言語の情報を集めていく。んでそれを腕輪君と一緒に解析していくって感じだね。……にしても、数十単語といくつかの会話ぶち込むだけである程度言語解析が終わるプログラムってバケモノだよなぁ。

 

あー、っと。はいはい。どっちかというとこの語族に近い感じね。んで名詞が先に来てるのかな? えーっと? 大体の文法はこんな感じでいい筈だから、後はざっと予測された単語を頭に叩き込みまして……。

 

 

「◇▼◆〇?」

 

「はいはい、ちょっと待ってね。たぶん……、“こんな感じかな”?」

 

「お姉ちゃん、言葉!」

 

 

おー、ようやく伝わった。ごめんね、お姉ちゃん違う言語話者でさぁ。思い出すのに時間かかっちゃった。かなり久しぶりでね? ちょっと発音とか単語とかおかしい可能性あるからもし聞こえにくかったりしたら教えてね?

 

 

「う、うん……。そ、そうだお姉ちゃん! お姉ちゃん魔法使い様なの!? さっきの! さっきの凄かった!」

 

「あれねぇ。というか私魔法使い“様”ではないなぁ。どっちかというとゴミクズ?」

 

「ご、ごみくず?」

 

 

おっと。言葉間違えたかな? いや間違えてなかったとしても子供に聞かせるような単語じゃなかったな。いやごめんね? ちょっとおばさん自己肯定感バグって死んじゃった人なのよ。んで気が付いたらこの辺りにいた感じだから、絶賛迷子。キミの住んでいる町……、でいいのかな? ちょっと大人の人に色々話聞きたいから案内してくれない?

 

 

「うん! いいよ! ……でもなんでお姉ちゃん自分のこと“おばさん”って言ったの? お姉さんじゃないの?」

 

「あー、いや。キミぐらいの年齢からすれば年上とか全部おばさんおじさん扱いかなぁって。もう30手前だし……。」

 

「30? ママより年上?」

 

「おごッ! い、いや30じゃないからね? うん! お姉ちゃんでお願い!」

 

 

や、ヤバい。自分から地雷を踏んで死ぬところだった……! いやまぁそうだよね。まだこの子というかこの世界の文明レベルがどれぐらいか解ってないけどさ、わざわざこんなところに幼子が水を汲みに来ている時点である程度把握できる。そりゃ結婚年齢も出産年齢も若く成るよね……。

 

 

「それで、名前はなんて言うのかな? あぁ、私はシマエね。シマエ。」

 

「シマエ? 不思議なお名前! えっと、私はね、ラグっていうの!」

 

「ラグちゃんかー。んじゃこの桶私というか腕輪君が持つから、道案内お願いできる?」

 

 

そう言いながら持っていた腕輪を取り外し、空中に浮かせ自動追尾するように設定する。そしてそこに先ほどまで彼女が持っていた桶を繋ぎ、川の水でなくこちらで作り出した水を入れてあげれば、準備完了だ。

 

ほんとはこの子。ラグちゃんを抱き上げながらお家まで送ってあげたかったんだけど……。お、お姉ちゃん運動不足でね……。子供持ち上げることすらちょっと怪しいから……。

 

 

「すごい! 浮いてる! 水でた! すごい! 魔法だ!」

 

「でしょう? まぁ魔法じゃないんだけど……。さ、じゃあ出発するとしましょうか。」

 

 

 

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