青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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二次選考~奪敵決戦(ライバルリーバトル)
No.13 得た《6》番


 

 

 一次選考を突破した第伍号棟チームZだったが、すぐさま二次選考に進むわけではなかった。

 そもそも、青い監獄(ブルーロック)はストライカーを“選出”する施設であり、同時に“養成”する施設でもある。一次選考はグループリーグ戦であり、明らかに選出の意図が強かった。

 「他の上位棟選手は最新トレーニングを行っている」という絵心の説明には引っ掛かるものもあったが、養成のための時間が与えられるのは渡りに船でもある。とはいえ、行われたのはボール使用一切禁止の地獄の身体機能(フィジカル)強化トレーニングだったが。

 その地獄も、1週間と少し。宵越は昔から体の使い方もうまく、フィジカルにも恵まれているうえスポーツ特有の苦しさに悦ぶ質でもあるので、それほど苦痛ではなかった。七星あたりは胃の中のものをぶちまけたりする場面もあったが。

 やがて、二次選考の始まりも告げられ、チームZは全員でその場所へ向かう。

 

 ──青い監獄(ブルーロック)計画、二次選考ジャンクションエリア。

 

 青い監獄(ブルーロック)の特徴である《五角形》。サッカーボールにもみられるその形は、支給品に始まり、そして部屋の形についても例外ではない。

 5つの棟から呼び寄せられたストライカーたち。ジャンクションエリア、つまり全員が集まる部屋であり、やはり五角形の扉、その5つの面からやってきたのだ。

 凛たちチームV、雪宮たち最多得点選手もいた。宵越は凛をわずかに睨んだが、凛はもう最終戦前の素知らぬ態度に戻っている。

『やぁやぁ、才能の原石どもよ。身体機能(フィジカル)強化トレーニングおつかれ』

 天井は高く、およそ二階層分。その上面のスピーカーからは、察する必要もなく絵心の声。

 お約束のごとく、大モニターに絵心のライブカメラ映像が映し出される。

『今ここにいるのは5棟25名ずつ。計125名の一次選考通過者たちだ』

 宵越が絵心と対面したのは、強化指定選手として招聘され、青い監獄(ブルーロック)の説明を受けた時のみ。その後は鬼ごっこ、グループリーグの逐次の説明など、常にライブカメラだった。選手全員がそうだろう。

 周りを見る。最初の頃は「《不倒》宵越がこの場にいる」ということで一々視線を浴びせられてきたが、ここまでくるともはや大した注目は集まらない。

 125名と、絵心は言った。それは宵越たちがいた伍号棟の二次選考進出者25名をそのまま5で乗算すればいい数字。

 それが意味するものは、つまり。

 

青い監獄(ブルーロック)には伍号棟しか存在しなかった』

 

 答え合わせの時間だ。

 他の扉から来た選手たちの方にもランキングやチームを表すアルファベットが表示されている。宵越たちのZ、凛たちのV。それだけではなく、WもYもXもいる。

 つまり、宵越たちの棟以外も、すべての選手が伍号棟に属していた。全員がVからZに分けられ、自分たちの上にはA~Uチーム、壱から肆号棟の強者たちがいると知らされ、最底辺であると絵心に常々発破をかけられながら戦ってきた。

 その事実に、いつかの吉良のように方々から文句の声が上がる。もはや罵声に近い。他の棟も、地獄のようなトレーニングの後なのだろう。

 だが宵越たちのチームZは……いや、宵越たちの伍号棟の面々25名は、さして驚きもしなかった。

 凛は最初から日本一レベルで有名だった。

 それに宵越も自身の経歴から邪推したが、七星をはじめとした他の選手たちは常気にしていた。《不倒》宵越が、なぜこんな最底辺にいるのか、と。

 絵心の(カラクリ)を知ってしまえば、驚くことも何もない。それでも、他の棟の面々からの叫声を前に、御高説は続いている。

「すべてはお前らのクソぬるい自信をブチ殺し、世界一になるための飢餓(ハングリー)精神を育てるためだ」

 そうして絵心は、1人のサッカー選手を例えに使う。

『例えばノエル・ノア』

 ノエル・ノア。2018年のヨーロッパ年間最優秀賞選手。名実共に、現在世界最高のストライカーと称される選手だ。

 当然、宵越も知っている。ドイツリーグの1チーム、バスタード・ミュンヘンのエース。

 だが……。

『彼は、フランスのスラム街で育った過去を持つ。貧困な毎日の中、彼にとって運命を変える術は、比喩でもなんでもなくサッカーだけだった』

 世界において、比較的平和な日本では……たとえスポーツで大成出来なくとも死ぬことのない日本では、()()は身に着けることのできない飢餓(ハングリー)精神。それを手に入れるのが青い監獄(ブルーロック)だという。

 理屈は、それなりに納得がいく。

 宵越にとっては、個人的には少し物足りなくもある。

 宵越の中では、サッカー最強の称号は、いつまでもただ一人。ファンタジスタの代名詞、ロベルト・バッジョだった。

 右膝に怪我を抱えながらも、巧みなドリブルで相手を躱す。優れたテクニック、相手の不意を突くパスやシュートの選択。それは、サッカーにおいても、そして半年間のカバディのプレーの中でも、間違いなく宵越の原型になっている。

(ま、それは俺の我がままか)

 

『さあ、これより二次選考の時間だ』

 

 ジャンクションエリアの文字通りの一角、そこには6つ目の扉があった。SECOND SELECTIONと書かれている。つまりは二次選考へと進む扉。

 次いで発せられる絵心の啓示。

『二次選考は1stから5thまでの5つのステージから成る。クリアした者のみが次のステージにすすむことができる』

『そして5thステージに到達し二次選考を突破した者は、俺が選抜した世界トッププレイヤーとの強化合宿に参加してもらう』

 そして。

『お前らがここまで戦った一次選考は、ストライカーとして《0》を《1》にする意味を知る戦い』

『ここからは最新鋭のトレーニングフィールドで、己の《1》を《100》に変える戦いだ』

 

 そんな言葉が出てきた。1を100に変える。それは宵越も語った言葉ではあるが、さらに突き詰めるということか。それが個としてか連携としてかは、気になるところではあるが。

『説明は以上だ。心の準備ができた者から1人でその(ゲート)を進め』

『1stステージは個の戦い。2ndステージに進まなければ、隣のライバルたちとの再会はない』

『では、健闘を祈る』

 そんな、思っているかもわからない激励を最後に、125人はジャンクションエリアに置き去りにされたのだった。

 多くが様子を伺う中、宵越たちの伍号棟の集団の中から、凛がなんの感傷もなく躍り出て、そうして扉に入っていった。黒名や清羅たちチームVの面々も呆れていた。

 仲間を省みないその姿に、宵越は思わず悪態をついてしまう。

「ったく、あんなのに『独りよがり』だの言われたのが悲しくなってくるぜ」

 自然、伺うのは周りよりも、共に一次選考を戦ったイレブンだった。

 凛を筆頭に、徐々に選手たちが扉へ入っていく中、チームで勝ち上がった面子は互いに話している者たちもいた。どこか、『青い監獄(ブルーロック)の先で逢おうぜ』と、そんな号令も聞こえてきた。

 自分たちも同じだ。自然、チームZの11人で円陣を組むことになる。

「宵越さん……! ほんっと、ありがとうございましたっ! あの1ゴールは、宵越さんの、いや、皆のおかげっす!」

「七星……ま、それをわかってるならなんも言うことはねぇよ」

「宵越。俺も負けない、次はきっと敵同士だ」

「……おう。やろうぜ、西岡」

 他にも、口々に宵越に声をかけてくるメンバー。宵越を介さずとも、話し合っているメンバー。

 たとえこの先戦うことになったとしても、確かにここまで、自分たちは仲間だった。

 かつて、合わせることもできずに孤立した時とは違う景色が、そこにはあった。

 だから、自然に出てきたのはその言葉だった。

 『世界一になるのは俺だ』でも、『青い監獄(ブルーロック)の先で逢おう』でもない。

 

「またな」

 

 たった一言、それだけでいい。

 

 

────

 

 

 二次選考1stステージは、絵心の言う通り一次選考とは打って変わった個の戦いだった。

 通された部屋は、全面高画質パネルに囲まれたトレーニングルーム。そこからランダムに発射されるボールがあり、ホログラムによって出現するGK、ゴールエリアやポスト、そして都度の設定によって動く守備を模した障害物に失敗範囲(デッドゾーン)

 それらをかいくぐり、ボールをゴールへと運ぶ──ドリブルを含めたシュート練習課題が1stステージの肝だった。

 もちろんそれは簡単なことではない。GKホログラム──人工知能ホログラムGK、BLUE(ブルー) LOCK(ロック) MAN(マン)は、並みの高校生GKをはるかに凌駕した身体能力を持っており、中学時代全国準決勝まで進んだチーム、そのエースだった宵越と言えども工夫なしのシュートは簡単に防がれた。

 選手全員に同等の質と難易度の課題を与えているのかはわからないが、少なくとも宵越にとっては、宵越にとって武器であるドリブル技術を活かす必要がある内容だった。

 カットにフェイント、それらを駆使し、思考を止めずに動き続ける。

 全100ゴール。その中で、宵越は確かに成長を求められた。

 1stステージをクリアした宵越。向かう先は、2ndステージだ。

「ふぅーっ……」

 息を吐ききる。チームV戦の最終盤ほどではないとはいえ、さすがに100ゴールは堪える。

 決して単調な練習ではなかったが、かなりの数の暴力だった。カバディでも、ひたすら同じことをつづける練習もしたことがある。

(タマ)拾い……あれを続けた根性がここで活きてくるとは思わなかったぜ」

 通路を歩く最中、アナウンスの女性の声が聞こえた。

『宵越竜哉、1stステージクリア。新BL(ブルーロック)ランキング、No.6です』

 そして、肩口に表示されるランキングの数字も、確かに《6》と描かれた。

 どうやら今度は嘘でもなんでもなく、1stステージをクリアした順番らしい。

 思わず笑ってしまった。

「ハッ……また6番か」

 能京高校カバディ部。宵越が在籍していた時、部員は全9名だった。

 3年生と2年生が2人ずつ、順に1~4。そして自分を勧誘した5の1年がいて、自分は6番目だった。

 自分は、能京高校6番《不倒》宵越竜哉だった。

「……忘れねぇよ」

 1年後も、5年後も、15年後も。「みんなを、あの日々を忘れることはなかった」と、自分は言い続けるのだろう。

 懐かしさを噛みしめて、宵越は歩き続ける。

 やって来た2ndステージジャンクションエリアは、やはり五角形の形をしていた。しかし最初の部屋よりは小規模で、天井も1階分と低い。

 人の数も少ない。自分の他には、アフロが目立つ男と──

「おっ……黒名(くろな)じゃねぇか」

「宵越か」

 壁にもたれかかっていたのは、黒名蘭世(らんぜ)。宵越にとっての、チームVの一人。凛と同じく負け越している以上、忘れることのできない存在ではある。

 が、凛よりはコミュニケーションがとりやすい。宵越は黒名に近づいた。

 黒名の肩口には《4》の数字があった。

「俺たちの伍号棟の面子はまだいないのか?」

「いや……俺が来た時、ちょうど前に3人いた。1人は凛だ」

「なに?」

「アレを見ろよ」

 促され、天井付近のモニターを見る。

 

『3人1組でチームを作って先へ進め』

 

 ただ、その文字だけがなんの変化もなく映されている。

「……で、凛は先に行ったと。てことは、他の2人は?」

「さぁ。たぶん、俺たちの棟じゃない。(アイツ)のことだし、チームとか関係なく適当に見繕ったんだろ」

「いや、お前らもバチバチやってんな……」

「さてな。試合に勝つためにアイツを立てただけだ。次は、俺が俺の手でゴールを決める」

 黒名の眼にも、焔が宿っている。宵越の眼には、不思議と悔しさと、そして頼もしさも感じる。

「そんじゃ、黒名。どうする? 誰と組むつもりだ?」

「それは考え中。宵越こそ、簡単に決めていいのか?」

 そう言われると、少し考え込んでしまう。

 3人1組。別に誰でもいい。黒名と組んでもいいだろう。

 けれど、チームZのイレブンのことが気になりもする。もちろん、この青い監獄(ブルーロック)において、心配は不要だろうが。

 だったら。

「……少し、様子を見ることにするぜ」

「俺もそうするつもりだった。どのみち、早く来る奴らがどんな面子なのかは、気になるしな」

 仲間に合わせると決めた、第2のサッカー人生でもある。

 せめて、誰かから希求されるなら。

 

 

 








あったらこわいな《灼熱ブルーロック》その1

本田貴一がネオエゴのイングランドあたりに紛れ込んでいる。

「ははは! (それ)、邪魔だろう」
「少年! ぶつからないで避けるとは良い判断だ!
 折 れ な く て 良 か っ た !」

※若干台詞は改変してますがマジでこれ言ってくる登場人物がいます。
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