新
訪れた待機部屋。既に複数の
一定数のチームが入るごとに流れるのだろう。宵越たちの後に数チームがその部屋に入った頃、例によってモニターから絵心の映像が流れ、説明が始まった。
『ここからは二次選考3rdステージ、3対3のチームバトルだ』
正式試合の90分ではない。GKには1stステージの
勝利したチームは、相手チームから1人を指名し、その選手を奪って4人のチームを作る。4thステージでも4対4で同様に5点先取とし、5人組を作り5thステージにたどり着いたチームが二次選考クリアとなる。
一方で、ここは
敗北者たちはステージを逆戻りしていく。4thステージで敗北したチームのうち選ばれなかった3人、3rdステージで敗北したチームのうち選ばれなかった2人というように。3rdステージの後ろには、1stステージとの間にある2ndステージが用意されている。ここは2対2だ。
『そして2対2の勝負に敗れてしまった時、最後まで選ばれなかった最後の1人が敗退脱落する』
これがライバルを奪い合う二次選考の全貌、
「相変わらず……エッグいルールやなぁ」
まだ止まらない汗を腕で拭って、氷織は乾いた笑みを浮かべた。
「だね。得点王ルールだったり、今回の敗者を奪うだったり……どうにも意地悪だよ、絵心さんは」
雪宮も同じような表情で呟いた。二人ともわかっているようだ。
負けても生き残れる可能性のある勝負。それは一次選考と同じく、自分のエゴに従った戦い方が許されている。ただしこれまでと違うのは、これまでの11対11と違って圧倒的に個々人が戦況にもたらす影響が大きいということだ。下手に周りに迷惑をかければ、いくら得点を奪っても選ばれない可能性が高い。シンプルに勝てばいいのはその通りだが、敗者にとってはエゴと周りとの連携を両立させる必要がある。
ただ単に仲間へ尽くしても、逆にエゴを貫くだけでも許されない。よりシビアな戦い。
証拠に、絵心も忠告していた。
『このステージが誰と共に戦うか、誰を奪うかがクリアの鍵となる。一次選考や1stステージで培った1を他者とぶつけ合い、混ぜ合い、高め合う。エゴとエゴの化学反応を制する者が、次の切符を掴むストライカーだ』
となれば。氷織が問いかける。
「重要なのは誰と戦うかやね。二人とも意見は?」
「決まってんだろ。凜のいるチームだ」
宵越が間髪入れずに返した。氷織のみならず、雪宮もあまりに迷いのない発言に目を点にした。
「宵越くん、正気かい?」
「誰がフザけるかよ」
「だって、凛くんだよ? そもそもこの部屋にいないから、もう別のチームと戦ってるだろうし」
「だとしたら4thステージでだな」
「もう決定事項やん……」
氷織がしょげた。
「お前らも凛には負けてんだろ?」
「だから二の足を踏んでるんだって。別に俺も負けるつもりはないけど」
「だからだよ。次は絶対勝つ。これは絶対だ」
「言葉が重なってるやん……それはともかく、宵越くん、ユッキー」
氷織が肩をすくめる。
「どっちみち、すぐに3rdステージで凜くんと戦うことはなさそうや。仮に4thステージでそうなるとして、どんな奴と戦って勝って、仲間にすべきやと思う?」
『強い奴』
「現実でハモるの初めて見た。ええやん、僕も同じ意見よ」
弱そうな、あるいは実際に自分より弱い選手と戦えば、苦労せず4thステージ、5thステージと進めるだろう。だがそうやって個性や能力のない5人チームが出来上がったとして、これから先同じ条件で戦うことになったら果たして勝てるか。凜に勝てるか。いや、勝てない。
宵越、雪宮、氷織。全員が一次選考で敗北を経験している。仲間に責任を擦り付けるつもりはないが、それでも仲間の重要さを軽視はしない。
どのチームと戦うかは自由とされていた。両チームが合意した場合のみ試合成立となる。
だからこそ、強い人間を選ぶ必要がある。自分たちがいた伍号棟に捕らわれずに。
凛や宵越たち以外にも、黒名や清羅、それに西岡。氷織や雪宮にも迫る選手たちはいるが、それでも、残酷に選ばなければならない。強い奴を。二次選考へ進出した125人の中から。
そうして3人は周囲を見渡す。宵越たちは新BLランキングとしては前半の組だ。1stステージのクリア順。とはいえ凛のように我を強くしてステージに進み、あの100ゴールを逸早くクリアした者という意味では、やはり同じような前半組の方が強い選手は多そうだが……。
と考えた時、宵越の耳に飛び込む声。
「──だってさ。どうする、キング? 誰と戦う?」
キング。王様。……魔王。ある種馴染み深い言葉に、宵越の注意は引かれた。
振り返る。跳ねた茶髪。
キングと、そう発した選手が見上げる選手は、立ち上げた長い黒髪を持っていた。左側頭部にある十字の剃り込みが、明らかに真面目や規範とは逸脱した我を表している。新BLランキング、No.18。
「誰でもいいだろ。俺以外はどいつもこいつもザコかヘタクソだ。誰を相手にしようが、仲間にしようが変わらねぇ」
宵越のこめかみがわずかに動く。別に、凛を筆頭としてここにはエゴイストが飽きるほどいる。別に他者を下げるような発言は珍しくない。それでも、ちょっと、いやかなりイライラするが、まあ珍しくない。
No.38のキング発言は宵越だからこそ注意を向けたが、続くNo.18の傲慢な発言ともなれば氷織や雪宮も注目してしまう。
チームは3人1組だ。No.18・No.38、そして3人目がいる。
その3人目の声は落ち着いていた。
「いずれにしても、強い人を仲間にする必要がありそうです。例えば──そこにいる不倒さんみたいに」
指で差されてしまえば反応しないわけにもいかない。宵越も、雪宮も、氷織も。全員が振り返った。
視線の先には、長い前髪で目がほとんど隠れている選手。新BLランキングNo.63。
「僕は
「……おぅ」
二子は右手を差し出してくる。それを宵越はひとまず握り返した。
「お前らの……チームは?」
「紹介します」
そして、二子は先程から喋っていたNo.38とNo.18を促した。
「俺は成早! よろしく」
茶髪の選手はそう言った。けれど、No.18はどこまでも我関せずだ。
「ヘタクソの耳に入るのが許されるような名前じゃねぇんだよ。俺は
「っ……て、てめぇ~~」
ヨイゴシの怒りゲージがさらに上がる。氷織と雪宮が割って入った。
「僕は氷織や」
「雪宮だ。よろしく」
「俺は成早。ごめんね、ウチのキングが」
「いやぁ。僕らの棟もエゴイストはたくさんおったし」
「ということは、不倒さんたちは全員同じ棟の?」
「そうそう。そっちは?」
「僕らもです。ちなみに彼の名前は──
二子の説明に、宵越たちの記憶が刺激された。
馬狼照英。覚えがあった。全国大会に出場したこともある選手だ。
それはつまり、少なからず強い選手であるということでもある。
馬狼はまだ、宵越たちに関して我関せずだ。それでも馬狼もまた、宵越のことを知っている。
同程度の身長にも関わらず、見下し、さげすむような眼。
「おい行くぞ、ヘタクソども。一度逃げた腑抜けなんざ興味もねぇ」
ヨイゴシ、決壊。
「上等だコラ。試合やろーぜ。本当に興味もねぇヘタクソどもかどうか、確かめてもらおうじゃねぇか」
試合外ではわずか十分もない接触ではあるけど、それでも宵越の性格を理解してきた氷織ももう、「アカン、止められんわ」と諦めた。
雪宮は、そんな宵越を見ても平然としている。
まだ、冷たい視線の馬狼。それでも、さすがにキングを自称するだけはある。宵越の次の言葉に、馬狼の視線は苛烈なものへ変わった。
「アンタ、全国優勝はしてないだろ? それで
「ああ?」
ぐっと、宵越のパーソナルスペースへ割り込む。不良が相手を威圧するようなガンを飛ばして、
「口を慎めよ、下民が──いや、
「だったら革命やって引きずり落してやる。それに……」
宵越も舐めた態度は許せない。けれど気に入らないのは、何よりも──
「王を名乗るんだったら、せめてそれに見合う“愛”を見せやがれってんだよ」
宵越は振り返った。
「いいな、お前ら」
雪宮、氷織は頷いた。明らかに協調性のかけらもなさそうな馬狼を獲るかどうかは別として、エゴイストたちがここまで見下されてやり返さないわけがない。
「ん、異議なしや」
「革命上等。僕としても王には思う所があるしね」
両チームを結果的に引き合わせることになった成早、二子も拒否はしない。
宵越、氷織、雪宮VS馬狼、成早、二子
3rdステージ、
3rdステージ:宵越、氷織、雪宮(赤)VS (白)馬狼、成早、二子
※西岡君は宵越に感化されて本来とは違う道を能動的に進みました。
にしても、しばらく私用で忙しく執筆していませんでしたが、その間にブルーロック原作は大きく物語が動きましたねぇ……
ぶっちゃけ宵越ってどのポジションが一番光ると思う?(OF編)
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圧倒的攻撃力を持つCF
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左右のWGで敵陣を翻弄
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OMFで味方も利用し《試合》に勝つ
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そんなことよりDFをやれ!