青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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No.32 集結

 

 

 三次選考1stノルマ、VS《世界選抜》。

 スコア、1‐4。

 死に物狂いで取り返した始まりの1点。全員がただ一つ、1点をとるという目標に同調(シンクロ)し、同じ目標に夢中(トリップ)となり、そうして少しの壁を乗り越えた連鎖によって奪った、確かな1点。

 快哉を上げる宵越に、仲間たちが向かう。

「宵越!」

「宵越くん!」

 たった一つの成功を噛みしめる宵越に、氷織と雪宮が飛びついた。身長の高い2人が身長の高い宵越へタックル。結果として宵越がもみくちゃにされた。

「ぱぉっ」

 肺が押しつぶされて変な音が漏れた。立ち上がれない不倒である。

「……さすが、やってくれましたね」

「そうじゃねぇと、俺らを獲った意味がねぇんだよ」

 玲王と二子も、近づいてきた。

 落ち着いて、4人全員に引き起こされる。間抜けな格好だが、顔色だけは既に喜びから一流の眼に戻っていた。

「……まだ始まったばかりだぞ。あと4点だ」

 世界選抜相手に1点を獲れたからもう十分だ。そんな満足を覚える人間はこの場にはいない。

 5人が越えるべき頂を、再び睨んだ。

 その瞬間だった。殺気に等しい感覚が五人を襲ったのは。

 露骨すぎて、誰が放っているかは丸わかりだった。

『ルナ、何をやっているんですか。貴方ともあろう人が』

 《神童》ジュリアン・ロキ。冷めた目線は未だ宵越の熱を受け取らない。

 ルナは笑っていた。

『ごめんごめん。でも彼、本物だよ。糸師凛にも負けないくらいの』

『御託はいいですから。後は俺に任せてください。このゲーム、まだ決めてないの俺ですし』

 ロキは、ボールをセンターマークに送るついでに宵越たちに近づいてくる。

『紫くん、彼に伝えたいんだけど。宣戦布告の返答、いいかい』

『……ああ』

 頷く玲王。宵越が前へ。

『キミ、名前は?』

『宵越竜哉』

『君の武器はスピードだね?』

『……あくまでスピードは武器の一つだ。俺を形成する、経験総てが武器だ』

『そうか。つまらない言葉だね』

 宵越がロキを睨む。けれど、他の世界選抜と同じく、ロキは全く動じない。

 そして、言った。

 

『見せてあげるよ。神の力を』

 

 気に食わない言葉。ヴィハーンとはまるで異なる。

 会話は途切れ、それぞれが開始位置に着く。

 プレーが再開する。キッカーはルナ。ロキへ行く。

 この試合、始めての世界選抜のキックによるスタート。これが問題だった。ボールを奪わなければ始まらない。求められるのは先の1点奪取よりもさらに高度なプレー。

 それでも宵越たちは諦めない。どうにかして。

 ロキに立ちふさがる二子と氷織。1点前のプレーでロキのパスを宵越と共に殺した2人だった。例え《神速》であっても、再度止めて見せる。

 けれど。

『あれ、いいの?』

 けれど。相手は《神童》だった。

 

『俺の間合いで隙だらけなんだけど』

 

 ロキが全てを置き去りにした。誰もその速度に追いつける者はいなかった。

 宵越など比較にならない爆発的初速。いや、玲王は伍号棟時代、速度だけなら宵越をも上回るスピードスターを二人知っていた。

 その二人が鈍重だと勘違いするほどに(はや)かった。

 氷織と玲王を抜き、その後ろでカバーしていた玲王と雪宮を嘲笑った。

 宵越は、辛うじて速度ではなく直感と反応で食らいつこうとしていた。

 1‐4。少しのミスも許されない極限の状態。酸素が切れ、視界にモヤがかかる。汗が噴き出る灼熱の世界の中で、宵越はファウル覚悟でロキを止めようとする。

 それでも足りない。

 敗因はただ一つ、遅かった。それだけ。

 宵越を()()で突き放し、わざと振り向く。

『越えるっていうなら、この速度についてきてくださいね』

 そしてゴールネットを揺らす。それすら神風のようだった。

『遅い奴から死んでいく、これ自然の摂理ですから』

 ロジックも何もない、思考すら置き去りにする。暴力的なまでの物理的才能。

 最後の最後に、何もさせてもらえずに終わる。勝利までの残り4点に奮起していた。膝の力は消えて、その場に座り込んでしまう。

 汗だくで、視界はぼやけて、ただ、悔しさが残る。

 フィールドを離れていく世界選抜たち。

 ルナが振り返り、顔だけを視れば清々しい笑顔で言った。

『いい試合だったよ、才能の原石君たち。次は本物の戦場で逢おう』

 他は誰も、何も言わなかった。

 

 青い監獄(ブルーロック)三次選考。

 1stノルマ VS.世界選抜

 1-5。敗北。

 

 

────

 

 

 世界選抜戦の後、宵越たちは2ndノルマと称して5人部屋でひたすら語学学習をさせられていた。

 悔しさがあり、得に宵越は「練習だけさせろやクソ眼鏡」とカメラの向こうの絵心に憤慨していたのだが、チームメイト4人の決死の守備もあり暴れまわれず、泣く泣く学業に励むこととなった。

 なお、成績ドベの宵越はもう呪文のように英語か何かもわからない言葉を吐き続けるのみだったが。

 それが数日続いたころ、モニターから女性の声が。

 

『只今を持ちまして二次選考を終了、三次選考の先へ進出するメンバーが出そろいました』

『突破者はビブス・ユニフォームを着用し、指定時間に中央ジョイントルームに集合してください』

 

「お、やっと終わりやね」

「あー、やっと玲王くんと雪宮くんは家庭教師から解放されますね」

「ああ……疲れた」

 雪宮は机に突っ伏して、玲王は天を仰いだ。

「本当だぜ……このバカ、どうやって高校入学できたんだ?」

「うっせぇよお前ら」

 口々に文句を垂れる。雪宮は嘆息した。

 久しぶりの()に、5人はみるみる間に闘志を宿らせていく。

 

『なお突破者は全7チーム35名となり、クリア順に入場していただくこととなります』

 

 宵越たちは準備を終えた。目的の場所へ通じる通路を歩く。

 頭は冷静に。心は灼熱に身を置いて。

 自分たちを含めた35人の、新たなライバルを見届けるために。

 

『それではまず、1stクリアチーム、入場してください』

 

 ──三次選考 ジョイントルーム。

 例によってサッカーボールにもみられる五角形の形の部屋。モニターはただ一つ、扉は変の総てに存在する、つまり5つだ。

 そのうち、一つの扉から最初に三次選考に進んだ者たちが入る。

 

 糸師(いとし) (りん)

 蟻生(ありゅう) 十兵衛(じゅうべい)

 時光(ときみつ) 青志(あおし)

 蜂楽(ばちら) (めぐる)

 (いさぎ) 世一(よいち)

 

「なんか、ちょっとドキドキするね……」

 恵まれた体格を持ち、けれど自身のない発言と態度、短髪の時光。

「とりあえず弱者だけは来ないことだけは確かだ」

 逆に女性と見紛う艶のあるロングヘアー、自分がイケていることを疑わない、長身の蟻生。

 そして、凛、潔、蜂楽。宵越とも4thステージで邂逅した、少なからず因縁のあるメンバーたち。

 それぞれの心持ちで、残る突破者たちを見定める。

 

『続いて2ndクリアチーム、入場してください』

 

 (なぎ) 誠士郎(せいしろう)

 馬狼(ばろう) 照英(しょうえい)

 千切(ちぎり) 豹馬(ひょうま)

 剣城(つるぎ) 斬鉄(ざんてつ)

 清羅(きよら) (じん)

 

「ちーっす」

 玲王と同じく、二次選考の始まりに宵越と言葉を交わした凪。

「来たぜ……ヘタクソ共が」

 宵越が下した馬狼。その後にも、この男は数々の絶望を追い、そして這い上がって来た。

「100万年振り」

 赤髪の美少年、千切。けれどその瞳は今、飢えた豹のように燃え盛っている。

 伍号棟時代、玲王と同じチームだった斬鉄。そして凛と同じチームだった清羅。漏れ出る覇気は、凛たちとまったく変わらない。

 1stクリアチーム、2ndクリアチーム。ほとんどのメンバーは、それぞれ因縁を持っていた。再会を喜び合い、そして互いを喰らい合い、強くなることに喜ぶのだ。

 そして。

 

『3rdクリアチーム、入場してください』

 

 宵越(よいごし) 竜哉(たつや)

 氷織(ひおり) (よう)

 雪宮(ゆきみや) 剣優(けんゆう)

 二子(にこ) 一輝(いっき)

 御影(みかげ) 玲王(れお)

 

 灼熱が広がる。

 宵越は、10人の突破者を見る。

「よう、お前ら。来てやったぜ」

「……ケッ」

 凛は、侮蔑するような眼をしていた。どこまでも相変わらず愛想のない男だ。

 それは置いて、宵越は気になっていた一人を見る。

 

「よう、潔。納得いく戦いはできたかよ」

 凛と蜂楽のいるチームに潔がいる。それで潔と凛の戦いの大枠を察した。

 だが、潔が選ばれた。それは潔が少なからず存在を示したということだ。

 潔は汗を滴らせながら笑っていた。

「……どうだろーな」

「いい返事じゃねーか」

 負けたことの悔しさも、ここまで進んできたことの自負も感じる。そんな返答。

 宵越が誰かに注意を向けるように、逆に宵越に注意を向ける者も。

「おい、ヘタクソ共。俺を無視すんじゃねぇ」

 宵越と潔。2人に馬狼が迫っていた。潔が少年らしく驚いた。

「うぉ、馬狼……なんだよ?」

「あー、そこの不倒にはしてやられたんだ。(お前)の前にな」

「え、そうなの?」

 宵越は笑った。

「そうらしいな。馬狼、アンタ……いっぺん死んでこれたかよ?」

「ああ。完膚なきまでにな。今は這い上がってる最中だ」

 馬狼は宵越の胸倉をつかんだ。だが、そこに暴力的な意思はない。それがわかっているから、宵越は状況を受け入れている

「楽しみにしてろよ。次はお前ら(宵越と潔)が死ぬ番だ」

「おう……やろうぜ」

 その一幕を見届けて、潔と千切は玲王に近づいていた。ここも同じ伍号棟出身か。

「なあ、玲王」

「なんだ、潔」

「お前がここにいるってことは……」

 宵越にはわからない因縁もある。

 先程とは打って変わって、不安そうな目をした潔、そして千切。

 無表情の玲王は言った。

「……すぐにわかる」

 

『続いて4thクリアチーム、入場してください』

 

 (からす) 旅人(たびと)

 乙夜(おとや) 影汰(えいた)

 日不見(ひみず) 愛基(あいき)

 (ゆず) 春彦(はるひこ)

 皿斑(さらまだら) 海琉(かいる)

 

 宵越たちだけでなく、潔たちにとっても知らない面子が多いらしい。あたりまえだ。戦っているのは自分たちだけではない。

 

『5thクリアチーム、入場してください』

 

 西岡(にしおか) (はじめ)

 七星(ななせ) 虹郎(にじろう)

 (ひいらぎ) 零次(れいじ)

 灰地(はいじ) (しずか)

 猿堂寺(えんどうじ) (あきら)

 

 西岡、そして七星がいた。伍号棟時代のチーム。今のところ、同じイレブンで出会ったのはこの2人だけ。

(確かにアイツらの実力を考えれば、全員が生き残るのは……)

 少しの寂しさもある。だが、ここは青い監獄(ブルーロック)だ。脱落は常に自分の隣にある。

 だから今はただ、2人の仲間がここに来た現実を喜ぶ。

「あっ……宵越さん!」

「久しぶりだ」

 お互いに笑みが零れ落ちた。

 

『6thクリアチーム、入場してください』

 

 雷市(らいち) 陣吾(じんご)

 我牙丸(ががまる) (ぎん)

 鰐間(わにま) 淳壱(じゅんいち)

 田中(たなか) 信玄(しんげん)

 志熊(しぐま) 恭平(きょうへい)

 

 続々と流れる選手たち。あっという間に最後の面子にまで進んでいく。

 最後の一人を決めるサバイバルだとしても、チームを組んで戦うのだから、仲間への情もある。ここにいるほとんどの人間は、かつて伍号棟で隣にいた誰かが最後のチームにいることを考える。

 1stチームにいる潔たちでさえも、それはいたらしい。

 

『それではラスト、7thクリアチーム、入場してください』

 

 士道(しどう) 龍聖(りゅうせい)

 五十嵐(いがらし) 栗夢(ぐりむ)

 黒名(くろな) 蘭世(らんぜ)

 石狩(いしかり) 幸雄(ゆきお)

 曽倉(そくら) (てつ)

 

 士道が囁いた。

おしまい(ザッツ・オール)

 やはり、生き残っていた。宵越たちとしのぎを削り合った現代の悪魔が。

 3rdステージに後退した3人は、あれから分かたれることなく勝ち上がってきたらしい。

「……クソが」

 宵越は悪態をついた。けれど、それは言葉だけ。自分は今どんな表情をしているのだろうか。

 300名から始まった青い監獄(ブルーロック)。入寮試験によって275人に、1次選考によって125人に、そして今、35人にまで絞られた。

 この35人で、再び頂点を争い合うのだ。

 

 

 






・結果:青い監獄(宵越チーム)VS.世界選抜
スコア:1‐5
勝者 :世界選抜
得点者:ブレイク、カバソス、シウバ、ルナ、宵越、ロキ


・三次選考クリアチーム(Lank)
1st:
・糸師凛(1)
・蟻生十兵衛(2)
・時光青志(3)
・蜂楽廻(16)
・潔世一(15)

2nd:
・凪誠士郎(7)
・馬狼照英(18)
・千切豹馬(44)
・剣城斬鉄(53)
・清羅刃(21)

3rd:
・宵越竜哉(6)
・氷織羊(27)
・雪宮剣優(23)
・二子一輝(63)
・御影玲王(10)

4th:
・烏旅人(69)
・乙夜影汰(33)
・日不見愛基(77)
・柚春彦(98)
・皿斑海琉(51)

5th:
・西岡初(29)
・七星虹郎(99)
・柊零次(22)
・灰地静(19)
・猿堂寺暁(59)

6th:
・雷市陣吾(95)
・我牙丸吟(88)
・鰐間淳壱(79)
・田中信玄(5)
・志熊恭平(55)

7th:
・士道 龍聖(111)
・五十嵐栗夢(108)
・黒名蘭世(4)
・石狩幸雄(13)
・曽倉哲(20)


Q14 ここまでのベストバウト(最高の試合)は?

  • 雪宮のチームX戦
  • 氷織のチームY戦
  • 凛率いるチームVとの頂上決戦
  • 馬狼たちとの3on3戦
  • 士道たちとの4on4戦
  • 世界選抜に一矢報いる決死の5on5戦
  • きっと《カット》されたチームW戦が凄い!
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