チームA、凛、士道、雪宮、蟻生、西岡。
チームC、宵越、凪、蜂楽、玲王、清羅。
適性試験第2試合が始まる。
凛によるキックオフ、それにより全10人の集中力が跳ね上がる。実力やプレー特性に差はあれど、誰もがストライカーとして我を示し続けてきた。油断する者はここにはいない。
ボールはこの試合、後方中央の蟻生へ回った。
「俺、始動」
蟻生の特徴は圧倒的な四肢の長さ、そして長身、ジャンプ力。到底油断できるものではない。身長、それだけで強力な武器になるというのはスポーツではよくある話だ。
「受け取れメッシ。俺からのパスだ」
ボールは後方右翼の西岡へ回る。西岡の前に清羅が迫った。一次選考で対峙したことのある二人。西岡は即座に凛に返した。
士道が前方左翼を陣取る一方、凛はその空間を避けて右翼にいる。凛‐蟻生‐西岡は3人でトライアングルを形成し、その技術力でチームCの防衛を突破しようと試みる。
「久しぶりだな、無視すんじゃねぇよ」
右翼前方、宵越が凛とマッチアップ。
「うるせぇよ宵越が」
「相変わらず語彙力ねぇな」
軽妙な言葉ながら、一瞬の攻防は一次選考の時以上の激しさがあった。二人とも成長し、けれど得意分野に変わりはない。周りが迂闊に侵入できない決闘を続ける。
偶然も関与して勝負が決するのが常。凛のドリブルを宵越が体で防ぎ、凛は蟻生へボールを返す。
逃がさない。そうして凛を追いかけようとする宵越の死角から忍び寄る影。
「俺は久しぶりでもないねぇたっつん♪」
士道が宵越にタックル。ファウルを喰らわない絶妙な力加減だ。
「このクソ悪魔っ」
自分も知能と語彙が残念だ、ということに気づかない宵越である。
士道に動きを邪魔され、凛がフリーになる。宵越は叫んだ。
「蜂楽! 凛、カバー!」
「あいさー!」
蜂楽が凛と向かい合う。さらに玲王も後方をカバーしに来た。
「今度は敵同士だね、凛ちゃん♪」
「やり合うぞ、No.1」
「脇役共が」
蟻生から受け取ったボールを、凛は振り向かずに受け取る。そこから蜂楽との対峙。蜂楽の武器は華麗なドリブル技術。しかし、今はボールを持っていない。故に、凛にとっては雑魚に他ならない。
「邪魔すんなオカッパ」
スピード、そして体幹による圧殺。蜂楽の動きを殺し、体を回転させて即座に抜き去る。No.1の矜持は健在。
さらに玲王との対峙。玲王の視界に幻視される無数の選択肢。右か左か。玲王は左をカバーした。だが、ボールは凛から遠く離れていた。
「さすがだ、凛」
ボールは西岡へ。玲王は思わず視線をそらした。その一瞬の死角を突いて、凛が突破する。
最終防衛ライン、凪は──むしろ蜂楽よりも簡単に突破された。
西岡のロングパス、それを凛はダイレクトでねじ込んだ。
スコア0‐1。チームを組んでものの数分とは思えない連携、圧倒の支配的傀儡サッカーだ。
その成り行きを、士道と相対しながら見ていた宵越は舌打ちする。
「くそっ」
「やられちゃったねぇ、たっつん」
「ざけんな。てめぇもゴールに絡んでねぇだろうが」
「いやぁ、強い奴らがいると感度が上がって満足満足♪」
「……」
寒気がした。
宵越はボールを持ち、センターマークで仲間たちと合流する。
「わかってはいたが、まっとうに手強いな」
宵越の言葉に、蜂楽はまだ笑顔でいる。
「だねぇ、さすが凛ちゃん。悪魔さんもやるじゃん」
清羅、玲王は無表情だった。ただ、それでも諦めではない。
全員が世界選抜との戦いを経験した。それに比べて
「凪っち。潔はいないけど、凛ちゃんにリベンジできるチャンスだね」
「うん、燃えてくるよね」
蜂楽がバスケットボールよろしく指先でボールを回した。そして軽いキックでセンターマークへ。
「まだ0‐1。踊り散らすよ」
プレーが再開する。蜂楽が蹴ったボールは凪へ。
ボールの行く末を見ながら、宵越は正面を見た。凛に相手をされないからか、士道はしつこいように狙いを定めている。
「クソ悪魔、邪魔だ──」
業を煮やした宵越は、連続《カット》で士道を抜き去る。何度か追いつかれもしたが、それでも不倒の走りは健在だ。
「いいじゃん、たっつん♪」
「るせぇ、世界一に比べりゃてめえなんて通過点だ」
凛との勝負を避けた左翼の凪が、後方中央の玲王にボールを回した。
「玲王!」
凪を見ていた玲王だが、弾かれたように右翼の宵越へボールを渡す。後方に士道がいる中でのリスキーな選択肢。
ボールを受けた後、宵越は士道を1度のカットで抜き去る。しかし士道は追いついてくる。だから宵越はすぐさま玲王に返した。
交差する二人の目線。意図を理解した玲王の背後から迫る雪宮。
玲王がカットをしかけた。雪宮を一瞬躱す。
「クソ、相変わらず器用な──!」
すぐさま宵越へボールパス。宵越はさらにカットで進み玲王へ。
宵越、玲王の二人による至近距離でのカットとパス交換。世界選抜戦で宵越と雪宮が見せた連携の発展版だ。
右翼からボールを前線へ押し上げて、一瞬の隙を見て前線左翼フリーの清羅へ。蟻生が立ちはだかる。
「俺、護る」
「がら空きだぜ、オシャナナフシ」
高身長の蟻生、比較的低身長の清羅。パスを受け取った清羅は、ボールを浮かせず地を這うように守る。もはやサッカーでありながら四肢を使う獣のようだ。
左右への選択肢を仕掛ける。蟻生の脚が開く──その瞬間に股抜き
「ブレイクダンス? なんてオシャな──」
その奇想天外なパスに気づいていたのは、同じチームだった凛。そして。
「ナイス、おチビさん」
「……あい」
清羅と二次選考で火花を散らした凪だった。正確に言えば、清羅は凛の前で実力の全てを見せたことはなかった。凛の実力が圧倒的だったから。故に、凪が一歩前に出てボールを受け取った。
左翼、凪の背後から迫る凛。横から迫る士道。さらに士道の後ろからフォローに回ろうとする宵越。
チームA・C、両翼によるマッチアップが始まる。
「やっぱさ、俺のことわかってるのは玲王だよね」
一度ドリブルをしたが、凪は凛と士道を嘲笑うように後方へボールを流した。そこにいたのは玲王だ。
凪は凛と士道の死角を縫う。荒いがオフ・ザ・ボールによる死角を突こうとする動きだ。その動きを、ボールを受け取った玲王はよくわかっていた。
だが。
(──道が、ない)
ゴール前、守備としても目を光らせる凛、そしてボールへの嗅覚が尋常でない士道。その近くにいる凪へのベストパスが通用するとは、とても思えなかった。
それでも逡巡する暇すら与えられない。一瞬の思考で膨れ上がる恐怖を抑え込み、玲王は迷いのままに凪へ返した。
そのベストパスに反応する士道。
「甘いぜぇカメレオン♪ 爆発しねぇパスだなぁ」
その士道の前から最加速で宵越がボールを奪い取った。
「火薬
思いもよらないインターセプト。玲王、凪、そして士道、それぞれに衝撃が走る。
凪と玲王の連携も、そこを刈り取る士道の嗅覚も、全て読んでいた。サッカーの神童は今、ここにいる。
「させるかよ、宵越」
だが、凛も宵越と同じ景色が見えている。宵越にシュートを撃たせない位置取り、冷静なポジション取り、趨勢は互角となる。
読み合いと読み合いの連続。宵越は驚かない。
「行くぞ凪」
「──うぃっす」
宵越、《回転》。ボールと凛の間に自分をねじ込ませる。そして凪に照準を合わせ──宵越は至近距離にいる凪へ向けてシュート級の威力のボールを放った。コースはゴールからやや外れる、故に士道も警戒がゆるむ。
その、普通ならまず弾くことしかできない宵越のスピードパワーパスを──凪は1タッチで殺し、自分の球とする。
「うぇ……クソ重っ」
凪は即座に反転、ボールをゴールへ捻じ込む。
宵越の黄金の脚による他を寄せ付けない超速供給、そして凪の武器は──どんなパスやシュートも
トップ3、そして凪の四人による攻防だからこそ生まれた超次元共演だった。
スコア、1-1。
チームA・Cのトップ。実力はあくまで互角だ。
駆け寄ってくる蜂楽や清羅。宵越と凪は適当にあしらいつつ、プレー再開に備える。
宵越が、一人突っ立っている玲王に気づいた。
「どうした?」
「……」
玲王は、別に喜んではいない。悲しんでもいない。ただただ無表情。
「……アイツはもう」
「アイツ? 凪のことか」
宵越と凪は、少ない時間だが互いのプレーを練習で確認し合った。宵越自身、凪の才能は自分や凛とは異なる希少なものだと理解することになったのだ。だからこそ生まれたスーパープレーだった。
玲王と宵越。二次選考の始まりにひと悶着あった者同士。
お互いのことや、鍵となる凪の実力も知った。だから感じるものは一緒だったはずだ。
それでも、玲王の口から出た言葉は、どこまでも追いつめられた苦しいものだった。
「アイツはもう、俺の知ってる
・現在の状況:適性試験第2試合(A対C)
チームA:凛、士道、雪宮、蟻生、西岡。
チームC:宵越、凪、蜂楽、玲王、清羅。
スコア:1-1
得点者:凛、凪
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