青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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No.36 頂へ駆ける

 

 

 適性試験第2試合、チームA対チームC。

 スコア、1‐1。流れの手綱はまだどちらにも握られていない。

 たった今ゴールを奪ったのは、天才・凪誠士郎。

 その様子を──御影玲王は、ただ見ていた。

(今のゴールは──俺には生み出せない……!)

 宵越のパスカットと《回転》、そこからのシュート級パス。その一撃を自身の技術でトラップしてゴールへと繋げた凪。

 そのプレーにはたしかに協力の意志があるが、連携や位置取りといった現実的なものじゃない。それぞれのスーパープレーを100%でぶつけ合い、高め合った結果だ。

 玲王は自分の能力を穴のない高水準のオールラウンダーだと自覚している。それは確かに強力な武器だが、逆に言えば一点突破の強みを持たない器用貧乏だ。

 玲王は二次選考で凪に選ばれなかった。そして今、トップ6まで成り上がった凪の隣に立つためにチームCを選択した。

 そして凪との連携を宵越に奪われた。

 凪とまた繋がるためには、宵越や、凛や士道や──トップ6と渡り合う必要があった。

(このスペックで俺は、どうやって立ち向かえばいい──?)

 プレーが始まる。

 凛が蹴ったボールは西岡へ。西岡はドリブルを選択肢、清羅と相対した。

 流れが止まり、パス供給を選択する。可能性が高いのは凛、士道。一秒の思考の末、西岡は。

「このチームは、恵まれてるなっ」

 天才の弟でも悪魔でもない、雪宮へのパスを選択した。凛と士道が存在を主張する中で、雪宮は影から這い出た。守備的な後ろにいたから、宵越たちにとっても最重要警戒対象ではなかった。

 それでも西岡は理解していた。雪宮の武器を。

「助かる、メッシ」

 左翼後方からボールを受け取った雪宮は、士道の脇を通り抜けて加速する。悪魔を置き去りに、そしてチームCの面々をも抜き去る。他を圧倒するドリブル能力は、例えわかっていてもすぐに対応できるものではない。

 最後方からの前進だから死角もない。玲王が、蜂楽が、清羅が小刻みなドリブルに対応できなくなる。

 だが、雪宮に立ちはだかる人間はいた。

「再戦だな」

「今度は負けない。《不倒》」

 宵越と雪宮のマッチアップ。

 No.7という実力を持つ雪宮だが、宵越との実力差は明確だった。強みも同じドリブル。雪宮は確かに宵越の下にいる。

 それでも、今この時、試合や勝負に勝つことは不可能ではない。一点突破には自分に分がある。それを雪宮は、二次選考で敗北と勝利を重ねることで学んだ。

「行くぞっ!」

 雪宮は宵越と完全にぶつかる前に、数メートルの遠距離から宵越を突き放そうと試みる。だが当然宵越も付いてくる。ボールを持たない不倒は最強と同義。それは氷織・二子と共に知っている。

 けれど。

「俺は俺のゴールでストライカーになる」

「それがお前の答えか、雪宮!」

「ああ。そのための方法は自由だって……教えてくれたのは宵越だろ!」

 見事な足さばきでボールを奪おうとする宵越を嘲笑うように、雪宮は後ろ脚でボールを繋いだ。仲間へのパスだ。それがストライカーとして逃げではないと理解したから、雪宮はめげずに次へ意識を向ける。

 ボールを再度受け取った中央センターマーク付近の西岡。戦場を睥睨する。凪や玲王がコンビネーションで圧をかけてきている。雪宮と宵越の攻防は互角、士道・凛を蜂楽・清羅が必死に食い止めている。

 西岡からすれば、宵越・凪以外の玲王蜂楽清羅も十分に脅威だった。単に凛や士道にボールを繋げば勝てるというものでもない。

 だからこそ、チームの中で新たな選択肢であることを()()し、凛や士道とは異なるゲームメイカーとして()()しようとしている雪宮はチームAにとって希望に他ならない。

 故に見える、ゴールへの道筋。

 凪と玲王がさらに圧をかけてくる。

 玲王が感情の見えない、瞳孔の開いた瞳を携えている。

「お役御免だぜ、メッシ」

「それこそ……ゴメンだ──!」

 ステップで玲王を置き去りにし、続く凪に体からぶつかる。身長190cmの超人、小柄な西岡からすればそれだけで敗北に値するが──西岡は凪の力を受け止めて、すり抜けて、右翼の蟻生へボールを届ける。

「やるじゃん、メッシ」

 凪の無気力な賞賛。そんな言葉は藻屑となって消える。凪を含め、全員の意識は既にボールへあった。

 ボールは天高く。蟻生とマッチアップするはボールに反応した清羅。

「オシャダンサー、今度はの勝ちだ」

「ちっ」

 蟻生がヘディングパス。195cm、凪よりもなお高い、蟻生にしか許されない空中戦。ボールは士道へ。まだP・Aから遠いからか、士道は面白がってボールを回した。

 再度、雪宮がボールキープ。中央から前へ駆ける。

 当然、左翼から走る宵越が見逃さない。けれど不倒を転がしてやろうと、凛がぶつかっていた。

 No.1とNo.3の攻防。一方でNo.2とNo.6もまた、右翼において肩からぶつかり合っていた。

「こんにちは。ナンバー2さん」

「おー? ヒモ白ノッポ。引っ張っちゃうぜぇ!」

 マッチアップ。凪が負けた。それはぶつかり合った末、士道にフィジカルで負けた──工夫もないシンプルな結果だ。

 左右で繰り広げられるトップ6の攻防。その間をNo.7雪宮が駆け抜ける。立ちはだかるは。

「そのドリブル、いいね!」

 雪宮剣優VS.蜂楽廻。

 雪宮は汗を垂らし、けれど不敵に笑った。

「お前もドリブルが武器かよっ」

 ドラッグシザース。蜂楽がテクニカルなドリブルが武器なのは理解した。だからそんなことをさせず、シンプルにパワーとスピードで抜き去ることを選択した。

 自分を変えることも、自分を保つことも、どちらも恥じない。全ては自分のゴールでストライカーになるために。

 抜け出した雪宮が無揚力蹴弾(ジャイロシュート)を放つ。そもそも雪宮はNo.7。

 仮に宵越が絵心の誘いを断り、今のメンバーが生き残っていれば──雪宮はトップ6の器だったのだ。並みのストライカー以上であるのは間違いない。

 この試合3点目が決まった。スコア、1-2。

 宵越が悔し気に笑った。

「一皮むけたじゃねぇか、雪宮ぁ……!」

「おかげさまでね」

 そんな強者たちの戦いを。玲王は冷静に、悲観的に見ていた。

 W杯(ワールドカップ)優勝という、唯一無二の宝物を求める玲王。

 そんな玲王が出会った凪という天才。二次選考の3人組結成の際に凪から振られたことで、凪は玲王だけの宝物ではなくなった。いや、むしろ簡単には手に入らないという点で、W杯優勝とは別の宝物となったのかもしれない。

 そして玲王にとって恐ろしいことは。

(そんな凪ですら、一筋縄じゃない世界なんだ)

 糸師凛。名実共に青い監獄(ブルーロック)の頂点にいるNo.1。

 士道龍聖。二次選考で嫌となるほどその強さを思い知らされたNo.2。

 宵越竜哉。サッカー界にかつて君臨し、そして還ってきた不倒。玲王からすれば士道の上にいてもおかしくはないNo.3。

 それだけではない。雪宮、清羅、西岡、蟻生、蜂楽。全員、技術や膂力で劣るところがあっても、一芸に秀でて隙あらばゴールを狙う天才たち。ストライカーの資質を持つことは雪宮が証明したばかりだ。

 誰もが世界一を夢見て、信じて疑わない。そして、そんな異常な称号以外に何もいらない人間たち。

 玲王にとっては、そんな奴らは──眩しくてたまらない。

 プレーが再開する。

 次の得点者は士道だった。ボールを奪い合う熾烈な攻防の末、凛に対して宵越が付いた後、凪の裏から抜け出した士道が蟻生のパスを受け取って獰猛にゴールを決めた形だった。

 スコア、1‐3。

 眩しくてたまらない。

 凛、士道、宵越というとんでもないバカたちが。

 彼らを追いかける、やっぱりバカな奴らが。

 そして、こんな状況に置かれて変わろうとしている凪誠士郎が。

 だから。自分もまた変わりたいなら──

 玲王の脳裏に、二次選考の戦いがフラッシュバックしていく。

 3rdステージ。潔世一と戦った。あいつは、変わることを恐れないで自分を根本から変えていった。感化されるように凪が、馬狼が、千切豹馬が進化していった。

 2ndステージ。士道龍聖と戦い、変われなかった自分と國神錬介は地獄へと叩き落され、()()()()自分が生き残った。

 4thステージ。《不倒》宵越と士道が火花を散らし、結果として雪宮が、氷織が、二子が進化していった。

 そうだ。自分も前へ進みたいなら──

「──俺もバカになってやる……!」

 こだわりを捨てて。退屈を振りほどいて。

 何色にだって、変わっていけ。

 

 

 







・現在の状況:適性試験第2試合(A対C)
チームA:凛、士道、雪宮、蟻生、西岡。
チームC:宵越、凪、蜂楽、玲王、清羅。
スコア:1-3
得点者:凛、凪、雪宮、士道

Q15 U-20 VS BL11について、貴方の読みたい展開は?

  • 宵越にBL11傑として戦ってほしい!
  • 宵越と士道でU-20代表で戦ってほしい!
  • 士道はBL側で宵越のみU-20代表入り!
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