青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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No.38 新たな怪物

 

 

適性試験第2試合、チームA対チームC。

スコア、3‐3。点数は互角。状況はチームCが盛り返した分だけ勢いが乗っている──とはならない。ここは青い監獄(ブルーロック)であり、いつでも自分が勝者になることを信じて疑わないからだ。

 そんな状況を宵越は喜んでいる。初対面・初試合の選手もいるが、点を取った凛、士道、雪宮、凪、玲王。まるでこれまでの戦いの総決算のようだ。

 そんな中──蜂楽(ばちら)(めぐる)は楽しそうに笑っていた。

 

「いいね、トップ2も3も。みんな、それぞれが怪物だ」

 

 宵越にとって、蜂楽は自分を知らない面白い奴。それだけではない。蜂楽は二次選考を凛と共に勝ち上がってきたのだ。弱いわけがない。

 

「じゃあ、新生蜂楽廻が──みんなまとめて食べちゃうよ!」

 

 プレーが再開する。凛キック、西岡と蟻生によるトライアングルは継続。先の1プレーは宵越がそれを食い散らかしたが、それでも強力な三者融合(トライセッション)を形成しているのは間違いない。

 それを再度崩すのは宵越、いや蜂楽。

 いや──士道。

「どっかぁん!!」

 凛のパスを士道が奪った。凛の死角からだ。

「このクソ悪魔っ」

 憎々し気に吐き捨てたのは他でもない凛だ。二人は前の試合でも争い合っているし、凛は馬狼をはじめとした選手がチームでボールを奪い合う喰い合う連動(アンチ・コンボ)を良く見ている。

 とはいえ3‐3までの6点、この青い監獄(ブルーロック)にしてはまともなゲームメイクが続いている。故の慢心でもあったかもしれない、凛が士道からボールを奪われたのは。

「さーて、行っちゃうぜぇ!」

 ドリブル。10人の中では上位、だが宵越や雪宮には劣るボール運び。まだボールはセンターラインを割ったところだった。

 凛・西岡・蟻生(トライアングル)だろうが雪宮だろうが、ボールが渡れば士道のゴール奪取率は大幅に下がる。だからこその孤軍奮闘。

 孤軍奮闘は続かない。士道の死角から蜂楽がボールを奪い取った。速度こそないが、殺気を殺した一点刺突の蜂撃(ビーショット)だった。

「ボール奪取の巻き!」

「およ?」

()ジオ体操するから()()()奪われんだぜ♪」

「むしろ遺伝子を広げることを望むんだぜ♪」

「お前ら何の会話してんだっ!」

 突き進む蜂楽に、宵越が後方から追いつきながら叫んだ。

 蜂楽がボールを自陣へ運ぶ。曲芸のようで読みどころがない。

 トリックスター。それが蜂楽廻。

「返してもらうぞオカッパ」

「返さないよ凛ちゃん」

 蜂楽VS.凛。一瞬の膠着。蜂楽は宵越を見ず、けれど不倒に向けて指人差し指を示す。

 蜂楽が自分との連携を求めている。宵越は瞬時に凛を抜くための位置取りをする。

「チッ」

 蜂楽が凛を抜き、宵越へボールを渡した。しかしそのパスに主従の意志はない。あくまで蜂楽が自分で決めるための布石。そのために宵越を利用するという意志を感じる。

「どいつもこいつも、極Sなことでっ!」

 立ちふさがる西岡を宵越は二連()()()で抜き去った。ワンテンポ遅れて雪宮が襲い掛かってくる。

「さすがにきついかっ……!」

 ボールを玲王へ。玲王は蜂楽へ。即席のトライアングルだ。

 自然、雪宮・凛・西岡もトライアングルで対抗してくる。そうあれば凛と宵越が三度対峙するのも必然だ。そして一次選考の時のように、宵越が凛を止めることで開ける景色があるのだ。

「アイアムエゴイストなりぃ♪」

 蜂楽の眼に熱が──いや、狂気(狂喜)が宿る。

「蜂楽。そのドリブル、が止める」

 立ちはだかる蟻生十兵衛。二人は二次選考、その後半にチームで戦っていた。

「いい守備だよオシャさん。でも──」

 蜂楽はボールに足を乗せた。ルーレット。その上で体ごと蟻生にぶつかりに行く。如何に蟻生の四肢が長いといっても、背面からぶつかられてはボールを奪えない。

「その選択はノットオシャ。凛も士道も来るぞ」

「うんにゃ、もう俺の勝ちだよ」

 蜂楽は保持したボールを、両脚で挟んだ。さらに回転、蟻生と正対する。

 そこからの背面飛越踵打(エアヒールリフト)。自分の身体を死角にして蟻生の頭上を飛び越えていくボール。

 さらに、意識がボールへそれた蟻生の足元を這うように、蜂楽が蟻生の背後を取る。完全なフリーだ。

 もう、蜂楽の独壇場だった。遮る者は何もなく、蜂楽は曲芸のようにシュートを決める。

 スコア、4‐3。

 それを見届けた宵越も笑うしかない。

「どこまで強心臓してんだよ、お前」

「俺はね、怪物なんだよ」

「あん? エゴイストじゃなくてか」

「それもいいけど、怪物が好きだ」

 蜂楽は宵越に中指を突き立ててくる。

「トップ6だろうが、それ以外だろうが。エゴ散らかして、食い散らかすからね」

「はっ、やってみろよ」

 宵越が笑う。

 本当に、どいつもこいつもイカれた奴らばかりだ。

 ここには本当に、日本サッカーを変えてしまうような劇薬ばかりが揃っている。

 宵越もたまたま一次選考・二次選考で()()()()()トップ1・2と戦っただけだ。他の奴らが化けてくる可能性はいくらでもある。

 新たなエゴイストが、新たな怪物たちがいるのだ。

 プレーは白熱を極める。どんな試合であっても負けることを許さない宵越と凛がいる。敵味方問わず、強者であればあるほど狂喜乱舞する士道がいる。これまでの戦いを経て、「負けたくない」という熱を生み出してきた凪がいる。

 この4人がいて、適性試験が消化試合になるわけがないのだ。

 仕合も終盤に近づいている。誰もが熱を滾らせる中、プレーが再開される。

 宵越を筆頭に、5人全員が協力してゴールを狙うチームC。凛に蟻生と西岡が付き、さらには伏兵として士道と雪宮が一撃を狙うチームA。

 宵越や蜂楽にしてやられた凛は、負けじとその二人と相対する。西岡と蟻生の限界を引き出しつつ、そこから攻め気がちな性格の雪宮の動きすら計算に入れて、最終的に自分がボールキーパーとなった。自陣でボールを持てばもうブルーロックマンなど相手ではない。美しいまでの縦直下回転蹴弾(バーチカル・スピンシュート)が放たれ、8点目は凛のものとなった。スコア、4‐4。

 そして、ラストプレー。

 宵越が蹴ったボールが玲王へ回った。玲王はロングパスを選択し、ボールは前線左翼の凪へ行く。

「そのパスはもうバレバレだっ!」

 西岡がインターセプト。すぐさま清羅と蜂楽が青森のメッシを囲む。小刻みな動きで翻弄しようと試みるが、ダブルプレスによってボールはあらぬ方向へ向かった。宵越がすぐさまボールキープしたが、後ろに控えていた凛がカットした。今度こそ、ボールは左翼前線にいた凪に回ってきた。

 激戦を前に、味方は誰しも余裕がない。凪はドリブルを選択する。立ちふさがった蟻生が純粋に技術でボールを奪い、雪宮へボールを繋げた。

 左翼敵陣から雪宮が戦場を切り裂く。サングラスの奥の眼光は鋭い。玲王を抜き去り、清羅を置き去りに。

 そして3人目。

「伏兵登場グラサン退場ぉ!」

「このっ、バカ野郎がっ!」

 士道が雪宮からボールを奪った。敵からはむしろ隙だらけの保持者変更。前線だがまだP・Aには程遠い。

「味方同士で馬鹿やってんじゃねぇよ!」

 宵越が士道に立ちふさがった。肩からぶつかる両者。一瞬の間が生まれる。士道も味方から奪ったのが悪かった。連携のない不十分な体勢は宵越一人でも妨害できた。

「ちっ、ひでぇじゃんたっつん……!」

 ルーズボールを玲王が奪う。玲王はボールを凪ではなく士道の裏を取った宵越へ。

 0から1へ、黄金の両脚が加速する。自陣中央から正面突破のドリブル。凛は食らいつく。

 カット、自陣右翼から即座に中央右翼へ。読んでいた凛は果敢に宵越のボールを奪いにかかる。

 ボールは弾かれ、宵越たちにとっての自陣中央へ。

 群がる、10人のストライカーたち。

 清羅がボールへ触れる。即座に遠く(ファー)へのクリアを試みる。低身長による低高度からの縦曲弾。それは蟻生による決死のジャンピングヘッドで防がれた。

 ボールはまだ自陣右翼。西岡がボールを持った。角度があり自分ではシュートできない。凛を探す。

 凛に食らいつく宵越。西岡にプレスする蜂楽。

 凛ではなく、中央で待つ雪宮へのセンタリング。それを辛うじて蜂楽のつま先が掠めた。

 ブレる軌道。全力と全力がぶつかって生まれる運の激震地。

 その天運(LUCK)に反応する凛と宵越だが、互いが互いを相殺した。ボールは二人の頭上をスルーしていく。

 自陣左翼、凪と士道のマッチアップした場所に落ち──

 

「俺の……球だぁぁ!!」

 

 士道が凪に競り勝った。

 信念や勝利ではなく、まるで生命が持つ最も強い欲求。それに従い、士道は凪を打ち倒した。

 結果、士道はP・Aでのボール奪取を果たし、そのボールは士道の脚によって命を吹き込まれ、ゴールネットを食らいつくす。

 

試合終了(ゲームセット)! スコア5‐4!』

『チームAの勝利』

 

 悦ぶのは士道のみ。

 凛は沈黙し、雪宮は悔し気だ。蟻生にしても西岡にしても、満足はしていない。

 チームCも顕著で、宵越は顔をゆがめる。面白そうにしているのは蜂楽くらいだ。

 二次選考で宵越に対して負けたからだろう、士道が楽しそうに突っかかり、それを宵越が割と本気で殺意を現わしていた。

 その姿を見つつ、けれど玲王は全力を尽くしてへたり込んでしまった。

 また勝てなかった。けれど、自分の意志で、自分の力でゴールを奪い取ってみせた。偶然じゃなく、その理屈を説明できる──再現性のある形で。

 複写(コピー)能力。まだ発展途上だが、ここにはたくさんの強い奴らがいる。周りが強ければ強いだけ自分も強くなれる。

 

 ──オレの進むべき、進化の道は確かに見えた──

 

「負けちゃったね、玲王」

 振り返る。凪がいた。

「でもナイスゴールだった」

 凪誠士郎。共に進むパートナーだった。けれど玲王を突き放し、トップ6にまで成り上がった天才。

 玲王の宝物。

複写(コピー)。器用なお前らしくて面白いよ」

「……」

 ()()()

 それは、今玲王が求める答えではない。

「でもまだ足りねぇんだろ? お前の求めるサッカーには」

「……うん」

「ハッ、だったら構うな。見下して待ってろ」

 玲王は笑って見せた。

「わかった」

 凪はそれだけ言って離れていった。

 御影玲王。宵越竜哉に熱を当てられた人間。

 だから覚醒したわけではない。玲王には元々の()()といえるものがあったのは事実だ。

 それでも、七色の熱は鮮やかに燻っていく。

 簡単には手に入らない、唯一無二のものを手に入れるために。

 

 

 







・結果:トライアウト第2試合
   :A+雪宮、蟻生、西岡 VS C+蜂楽、玲王、清羅
スコア:チームA(5)‐(4)チームC
勝者 :チームA
得点者:凛、凪、雪宮、士道、玲王、宵越、蜂楽、凛、士道




なんか玲王が第2の主人公感醸し出し始めてる……

Q15 U-20 VS BL11について、貴方の読みたい展開は?

  • 宵越にBL11傑として戦ってほしい!
  • 宵越と士道でU-20代表で戦ってほしい!
  • 士道はBL側で宵越のみU-20代表入り!
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