アンケートQ15、本日をもって締め切りとなります。
結果はあとがきに記載。
ご協力ありがとうございました!
適性試験第3試合。
試合は進めば進むほど熱を帯びていく。
超常的な一撃を決めた凪は、次のプレーにおいても他を寄せ付けることなくシュートを決めて見せた。スコア4‐2と、宵越たちは5点先取のこの試合で王手をかけて見せた。
凪の無自覚な熱が発揮されたのだ。それは味方として、日本サッカーに身を置く人間としては頼もしいし……そして、宵越にとっては少し悔しいものだ。
「負けてられないよな。俺も」
最後となる可能性のあるプレーが始まった。
後がない烏と乙夜だが、プレーの精彩さは衰えない。ボールを雷市や我牙丸にも繋げ、パスが回る空間を左翼側にコントロールする。そうして宵越が烏に完全に張り付く前に、乙夜と烏が再び連携しだす。二子・斬鉄・黒名を抜いた。
ボールは宵越たちにとっての自陣、シュートレンジの少し手前まで来てしまう。そこで宵越・凪は辛うじて烏・乙夜に立ちはだかった。
「そろそろ飽きてきたで、パワハラ《不倒》が」
「嬉しいぜ? 厄介に思ってくれてよ」
「つーか不倒、高1やろ。年上敬わんかい。高3やぞ」
「そっちがパワハラじゃねーか」
烏が持つボール、それを宵越が奪いにかかる。フェイント技術はどちらも高い。全体的な能力は宵越が上回るが、それで常に宵越が烏からボールを奪える、というものでもない。マッチアップから7秒。ボールは未だ烏が持ったまま。
どのようにしてボールを奪い、そして烏たちを抜いてゴールへと繋げるか。宵越の脳細胞が火花を散らしていく。快と不快、両極端の感覚が全身を駆け巡る。
結果、宵越は無理矢理にボールを奪うことを選択した。ファウルとなってしまうことを警戒しつつも烏の動きを抑える力任せの一撃。それはまだこの試合で見せていないパワープレイ。
「お望みならパワハラしてやんよっ!」
「労基訴えるっちゅーねんっ!」
烏の身体がわずかに崩れる。突然の力技にはさすがのフェイント使いも堪えられなかったようだ。宵越がボール奪取。だが無理矢理なので宵越の姿勢がわずかに崩れ、それは敵にとってのチャンスとなる。
「倒れそうじゃねぇか不倒さんよぉ!」
烏と入れ替わりに雷市が襲い掛かる。宵越は辛うじてボールを二子に繋げた。二子は斬鉄へ。斬鉄は凪へ。
そのまま雷市とぶつかり合う宵越は、後ろを振り向きつつ叫んだ。
「凪! 来い!」
「りょーかい、No.3」
左翼敵陣の凪から、右翼中央寄りの宵越へのやや荒いパス。
「取らせるかっ!」
雷市がさらにぶつかってきた。宵越は雷市を避けつつ《回転》する。伸ばした右脚がボールへ向かう。それは敵全員に、先の凪と同じ
だが、宵越の脳裏に浮かぶのは異なる映像だ。
回転しながらの足技。シュートではなく、敵に接触するためのカバディの《ロールキック》。
それは宵越も得意とする技だが、他にもこれを扱える強敵がいた。
世界組2番、
身長203cm。どのスポーツにおいても強者たれる身長を持つ。しかし80kgという体重制限のあるカバディは、彼に汗さえかけない脱水状態が当たり前となる地獄を課した。
筋肉を身につけながら体重を絞る。矛盾する日々の中で神畑が会得したのは、少ないエネルギーを大きく燃やす力。
そして極限の状態において研ぎ澄まされる五感は、究極のボディコントロールを体現した。
すなわち、つま先を掠めるという難易度の高いロールキックにおいて、さらに一瞬足を畳んで触れる距離感をコントロールするという荒業。
その体験を、宵越はサッカーに回帰させる。
凪の荒いパスをシュートモーションから足を畳んでジャストミートを防ぎ、ボールの横面を掠める。宵越は知らないが、凪が放った
そのボールに反応したのは──宵越が凪へ叫んだ瞬間、同時に強力な眼力で捉えた黒名蘭世。
「突、凸!」
右翼サイドラインの際から駆け上がる。一気にP・Aと同じ深度へと。
「この、バケモンどもがっ!」
悪態を付きながら烏が守備へと回る。それほどまでに、宵越のプレーは神憑っていた。
混乱する敵陣の中、黒名がセンタリング。中央凪へ。凪もまた乙夜に勝てぬとも負けない動きで前に進んでいた。
「ちぇ」
それでも舌打ち。今は自分ではゴールに繋げられない。ゴールを描いたのは、宵越だから。
「もってけ、エゴイスト」
凪の胸パスが駆け上がる宵越へと回る。
乙夜を防ぎ、烏を出し抜いた。完全なフリーでのシュートモーション。
「もらった──」
最後の一撃は──シュートとはならない。
「──喰わせるかよ。下民が」
馬狼照英が、宵越から球を奪い返したから。
「なっ、馬狼!?」
驚くのは宵越だけではない。
「そこにいたのかよ、キング」
「ちっ、そー来るかい」
凪も、烏も。敵味方関係なく混乱する。
試合の前半、烏が宵越に勝つための死に役に甘んじたのも。
中盤、烏と乙夜が順当に点を重ねても、堕ちた支配者じみたボール奪取へと走らず、ただ一人の攻撃力として囮役になっていたのは。
ただいたずらに腹を空かせ、宵越が烏や乙夜を出し抜き、最良の状況でゴールへと進む──その瞬間にボールを奪うために。
すべては、殺された宵越から王座を奪い返す、そのために
「この、キング……!」
意識を切り替えた宵越が、すぐさま馬狼を追いかける。馬狼は後ろを向かない。
「おら、走れ下民共!」
馬狼が雷市へロングパス。油断したわけではない、けれど後方にいた二子と斬鉄は馬狼が初めて見せた質のプレーに対応できなかった。
「はっ、最初のお団子サッカーとは違うじゃねぇか
雷市が馬狼に適応する。そして我牙丸も持ち前の瞬発力と全身のバネを活かして食らいつく。
馬狼・雷市・我牙丸による
カウンターによる超速攻。宵越が辛うじて
「よぉ、どんな気持ちだ? 革命返しの瞬間ってのは!!」
泥にまみれ、汗臭く。馬狼は己の持ち味である27mの超レンジからシュートを放つ。黒い稲妻を幻視するようなキックは、ゴールポストで爆発した。
スコア、4‐3。まだ試合は終わらない。
ゴールに絡んだ雷市と我牙丸は互いに喜び、馬狼は孤独を貫く。烏も乙夜も無言でいる。いや、憎々し気に笑っていた。
宵越と凪へ、馬狼が近づいた。
「
「敵味方関係なく、自分のために奪うか……嫌いじゃないぜ、そういう我が儘の王様は」
いや、嫌いかもしれない。でも今の感情は、間違いなく『面白いから嫌いになれない』だった。少なくとも、この
3on3の時は、力の発揮できない独りよがりの王様だった。今は違う。同じ独りで、なんなら悪役である。でもそれは敵味方問わず周りに疎まれることなく、歓迎されている。
周りから見放されたら、以前の宵越と同じ末路を辿っただろう。そうはならなかったし、カバディでスポーツの楽しさを思い出した宵越のような復活でもない。
ある意味、
魅力的な魔王そのものだ。
敵味方関係なく、自分のために利用し合い、喰い合う。けれど誰一人それに絶望しない。面白がる。
絵心が宵越に告げ、入寮を決心させた灼熱の世界だ。
宵越は天井へ向けて息を吐いた。
(だったら……この傲慢さこそが
「俺も、奪い返してやるよ、キング・馬狼」
凛相手に《バック》を出し、士道を相手に
もっともっと、進化してやる。
「言ってろ、下民が」
馬狼は吐き捨てて次のプレーへ向かう。
そこにはもう、剣呑な雰囲気ではない──いや、剣呑だが、だれもがそれを面白がる空気があった。
「お前ら」
宵越は振り返った。仲間たちがいる。
「次のプレーで、ラストにすっぞ」
返事はない。でも、それでよかった。
プレーが始まる。
それぞれ、チームの連携は極まっていた。チームCの5人全員での連携も、チームBの烏と乙夜を起点とする連携も。もちろん、先と同じように馬狼は虎視眈々と狙っている。
二子の指示で、一人異端な動きを続ける馬狼に対し、斬鉄が迫った。そうして、馬狼の動きをできる限り制限していく。
その中で、宵越が主体となり凪・黒名の3人でボールを押し上げていく。これまでと同様、凪には乙夜が付いてきた。宵越には烏が、黒名には雷市が。
ボールは奪われ取返しを繰り返していく。
全員の汗が滴る。試合も最終盤、苛烈を極める。
そんな中、宵越と凪を囮に黒名が前へ出た。ボールを持つ黒名に反応したのは、持ち前の反射神経を活かした我牙丸だった。スライディングでボールを奪う。そのまま上体を起こし、瞬間的に
「カウンター……!」
だが、我牙丸は伏兵の存在を忘れていた。目敏い観察眼を持つ二子がいた。
「わかりますよ、野生児さん。そうくると思いました」
雷市へ向かうはずだったボールをインターセプト。そこからカウンター返しを試みる。今、フィールドは乱戦に次ぐ乱戦状態だ。二子の視界にいくつもの黒い光が生じていた。
「そこですね」
選ばれたのは、右翼中央、何度目かの宵越。だが宵越は満足にボールを持てなかった。足元にボールが来た瞬間には、既に烏が目の前に立ちふさがっていたからだ。それも、烏にとって最良の状態で。
「させるかいボケェ。二次選考の映像は全部観とった。お前らがフルカウンター決めたのも知っとるわ」
ずいぶんと真面目じゃねぇか。宵越は思った。
「じゃあ、殺し屋さんよ」
ボールを持ったまま、宵越は自分から烏にぶつかりに行った。
「この動きは、どうみるよ?」
だが、肩からぶつかりにいくプレスではない。烏と同じように、まるで鏡写しのように。宵越は己の手を烏に向け伸ばしていた。
その、殺気とも冷徹とも言えない妙な気配。烏は攻めあぐねる。
その動きは、烏が宵越にしてみせた動きとまるで同じだ。そして淀みない。経験していなければまずできないような動きを、宵越は烏のそれと近いレベルで行っていた。
(この非凡が……! 学習しとる!!)
さすがの烏も、宵越がサッカー界から消えた半年間のことは知らない。
カバディ選手ならわかる髪の毛一本の間合い。宵越はサッカーではなく、カバディの目線も持っていた。
両者の
「純粋な接触プレイは確かにちょいと下手だがよ。手の重要性は、嫌になるほど知ってんだ!」
烏を手で静止させる。敵が体ごと加速して来れば、磁石のように同じ間合いを維持することで近づかせない。その上で、ボールは自分の足元に置き続ける。
カバディと烏、それぞれのハンドワークの融合。そして宵越の脳裏に閃く磁石を思わせる守備。何よりも不倒のフィジカルとクソ度胸、そして黄金の脚によってなせる──全てを無に帰す
動的なドリブルだけではない、静のドリブル。敵に近づかれても簡単には倒れない。《不倒》の渾名をさらに完璧にするための進化だ。
「そりゃ1対1の話だろうがっ!」
後ろから馬狼が迫ってきた。そう、2対1では磁力は吸引と反発を保てない。拮抗は簡単に矛盾する。この状況でもできるほど、まだ宵越は自分の能力を高めていない。
だが──0は1となることで真価を発揮する。
「今度は、俺の勝ちだ!」
それは0から1を可能とする、フェイントによる動き。
「ありがとうよ」
二人を抜き去り、宵越は感謝した。
「強い奴らでいてくれて、歯向かって来てくれて。おかげで……俺も強くなれる!!」
宵越の黄金の左脚が戦場を穿った。灼熱の放物線がゴールネットを焼き尽くす。
『
『結果は──チームCの勝利!』
快哉を上げるチームC。チームBは揃って悔し気だ。勝ったのに悔しそうなやつらとか、負けたのに楽しそうな奴らとか。そういう異端児がいないという意味では至極真っ当な反応ではあった。
「ちっ……次は勝ったるで、不倒」
「俺もね。リベンジ果たすよ不倒ちゃん」
「……おう、またやろうぜ」
それぞれの感情はあれど、今はあくまで
「やられちゃったね、馬狼。ねえ、どんな気持ち? 宵越に結局してやられて」
「うっせぇよ
馬狼と凪がメンチを切り合っている。
ここに、チームBとチームCの雌雄が決したのだった。
────
その後も、これまでと同じように一定時間の休憩を挟みつつ残る試合も終了した。
第4試合はA対B。スコアは5‐2でAチームの勝利。
そして第5試合はA対C。スコアは5‐4でAチームの勝利。
つまり、宵越はまた凛と士道に負けた。もはやヨイゴシの復讐心はアホのように膨れ上がっていった。
とはいえ、真面目な方の宵越の精神はバカにかまけてはいられない。
『これより6時間後、U-20日本代表に挑むレギュラーを発表する』
・結果:トライアウト第3試合
:B+馬狼、雷市、我牙丸 VS. C+二子、黒名、斬鉄
スコア:チームC(5)-(3)チームB
得点者:宵越、乙夜、烏、斬鉄、凪、凪、馬狼、宵越
・適性試験、全結果
第1試合:A+潔、氷織、七星 VS B+千切、志熊、皿斑
→5‐4:士道、烏、乙夜、凛、乙夜、烏、士道、凛、潔
第2試合:A+雪宮、蟻生、西岡 VS C+蜂楽、玲王、清羅
→5‐4:凛、凪、雪宮、士道、玲王、宵越、蜂楽、凛、士道
第3試合: B+馬狼、我牙丸、雷市 VS C+二子、斬鉄、黒名
→3‐5:宵越、乙夜、烏、斬鉄、凪、凪、馬狼、宵越
第4試合: A+五十嵐、時光、柊 VS B+曽倉、日不見、石狩
→5‐2:凛、士道、凛、烏、凛、乙夜、士道
第5試合: A+猿堂寺、柚、田中 VS C+雪宮、鰐間、灰地
→5‐4:士道、宵越、凛、凪、宵越、士道、雪宮、凛、凛
・アンケートQ15 締め切り!!
ご協力ありがとうございました!
全投票、377票。
宵越はBL11傑 :205票(約53%)
宵越と士道がU-20:93票(約24%)
宵越のみがU-20 :89票(約23%)
ということで、「宵越はBL11傑として戦う」に決定しました!
いやー、当初からこの意見が爆走していましたね。とはいえ、他の選択肢二つもそれなりにあってちょっと嬉しかったりしています。
さあ、宵越はBL11傑として戦う……当然、そこで気になるのはポジションなわけで。
おおよそのポジションや動きは決めているのですが、ちょっと参考程度にアンケートを取ろうかと思います。今回は結果でポジションを決めることはないので、あくまで気楽に……だけど、誰が犠牲となるかについては重いなぁ……
次回、「No.42 11傑」です!
※ちなみにU-20に参加していたら「No.42 天才たち」となる予定でした。
Q16 宵越のBL11傑としてのポジションはどこがいい?(あくまで参考として)
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他をしのぐ圧倒の1トップCF
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他者と共に2トップCF
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黄金の左脚でゴール量産するRWG
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そのドリブルで左翼を支配するLWG
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過労死必至、心臓ポジのDMF
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不倒のドリブルを守備に活かすSB
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不倒ならぬ不動の1CB
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体格を生かした2CBの一翼
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守護神を超えるまさかのGK
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ピンチ時に戦況を変える劇薬としての控え