青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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今回、画像はAI生成「Nano Banana」を利用しています。


No.42 11傑

 

 

 三次選考、セントラルルーム。U-20代表戦のレギュラー発表はここで行われる。

 これまで生き残った35名のみならず、青い監獄(ブルーロック)そのものの運命を握ることとなる11人が明かされるまで、残り5分。

 宵越は、幾人かより早く到着し、壁に背を預けて待っていた。

 続々と集まるストライカーたち。そこには争ったトップ6の面々や、29名の敵味方がいる。

 知っている奴。知らない奴。ムカつく奴。気持ちのいい奴。

 宵越は、その一人一人を目に焼き付けていた。

 残り2分。糸師凛がやって来た。これで34名が集まった。

「うぇー、キンチョーするっぺ!」

「心臓飛び出たら食べたるわ」

 第1試合でチームメイトとなっていた七星と氷織が話し合っていた。生来穏やかな見かけの二人。相性もいいらしい。

「あれ……士道は?」

 五十嵐の声。雷市が答える。

「まだ仕置き室なんじゃね?」

 言葉だけだと、高校生が住む寮において物騒な単語が飛び出てきた。

 士道は凛と度々衝突を繰り返しており、ついには凜の顔面に膝蹴りを入れたことで対暴動用の電気ショックを喰らうことになった。自業自得である。

 そのまま絵心の指示に従って何人かの選手が仕置き室に運んだので、最終試合終了から今に至るまでの6時間、34人は誰も士道の行方を知らない。

 完全な自業自得である。

(あのバカは……)

 宵越は呆れ果てていた。「強い奴らが多いから満足だ」などと言っていたが、凛のスタンスとは決定的に合わなかった。確かに凛は宵越から見てもコミュ障の感があるが、対照的に自分が士道に──初対面時を除いては──暴力の一切を受けていないのが複雑だったりする。

 ともかく、レギュラー発表の瞬間にいないのは皮肉というかなんというか。

 

 残り0分。

 

 宵越は、他の全員と共に部屋の中央に集まった。

 セントラルルーム、その扉の一つが開いた。仰々しくスモークが広がるのは絵心の趣味なのだろうか。そういえば、JFUのテナントビルでも絵心の登場時には似たような演出があったような覚えがある。

「やぁやぁおつかれ、才能の原石共よ。こうやって直接会うのは2回目かな……?」

 まさにあの日を彷彿させるように、青い監獄(ブルーロック)総指揮である絵心甚八は、ループタイ、黒のシャツ、黒のスキニーフィットジーンズ、そして素足に黒のクロックスという妙に気合をそがれる出で立ちだった。

「うわ、本物……」

「生エゴ……」

 などという気の抜けた感想が聞こえてくる。

 だが、ここから行われるのは生ぬるさとは無縁の宣告。そして、目の前のイカれた男は平気でイカれた所業を為す人間だ。

 

「まずは再定義する。サッカーは点を獲るスポーツだ」

 

 絵心の啓示が始まった。

得点(ゴール)こそが、勝利にただ一つ必要なものだ」

 青い監獄(ブルーロック)青い監獄(ブルーロック)たる所以。日本サッカーをぶち壊し新たに想像するために、破壊者であり英雄であるたった一人のストライカーを生み出す実験場なればこそ告げられる信念。

 そして来るべき決戦は、その信念が日本サッカーの歴史に選ばれるかの試金石となる。

「だから俺は、三次選考で最も得点を生み出す形でチームを組むことにした」

 絵心は弄んでいたタブレットを落ち着かせ、画面を操作する。連動してセントラルルームの巨大スクリーンが光り出し、まるで未来社会のようなエフェクトできびきびと画面が動き出した。

 

「覚悟して聞け。これよりU-20日本代表戦に挑む11人を発表する」

 

 サッカーの交代枠には制限がある。ベンチ入り登録可能選手は、今回の試合においては23名。交代枠は3。スターティングメンバーとなる11人は、実質青い監獄(ブルーロック)の代表の全てと言ってよい。

「チームテーマは……『破壊に次ぐ破壊』。これを先頭で体現するチームの中心は──」

 絵心がタブレットの画面をタップした。

 

CF(センターフォワード)、糸師凛」

 

 沈黙。誰も何も語らない。どよめきはない。それは凛が選ばれることをわかっていたからではない。そんな諦めを覚えるストライカーはこの場にはいない。

「得点率、青い監獄(ブルーロック)No.1となる1試合平均2.5ゴール。このチームはお前を()()とした超攻撃特化型フォーメーションだ」

 主砲。そう、絵心は表現した。

「5点奪われたら6点奪って勝つチーム。青い監獄(ブルーロック)というストライカーだらけの人選で勝つための方法はこれしかない」

 青い監獄(ブルーロック)の特殊性。それは全員がストライカーであること。

 ストライカーは、糸師凛だけではない。

 

「もう一人──ST(セカンドトップ)、宵越竜哉」

 

 宵越の目尻がつり上がった。瞼が開かれた。瞳孔が広がった。

「得点率、No.3となる1試合平均1.6点。なによりも──他を得点者(ストライカー)たらしめる、()()()6()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実」

 スクリーン上で、凛がCFの左の位置に、そして宵越が凛のやや後ろ、1.5列目の右側にポップされた。

「STとして自身もゴールを奪い、糸師凛(左翼)を含めた《全員》に熱をくべる右翼の引鉄(トリガー)。それがお前だ、宵越竜哉」

 その絵心の評。宵越は笑わず、驕らず、面白がらず──内側に熱さを覚えた。

 宵越は自分の能力や実力を極めて現実的に客観視している。敵を評価し、味方を視ることに努め、勝利のために必要な要素を常に思考し、実践する。その思考力は、並みの指導者よりもずっと指導者らしい。

 だから、自分が前線に選ばれる評価に驚きはなかった。問題は、少なからず絵心のポリシーに矛盾する自分を、総指揮たる絵心がどう采配するのか、ということだった。

 絵心は示し、選んだ。宵越竜哉の能力と信念を。

 同時に、それは宵越が青い監獄(ブルーロック)の信念を少なからず受け入れ、選んだことの顕れでもあった。

 互いが互いを喰らい合っている。

 喜怒哀楽では絶対に表現できない、言い知れない快感と悪寒。それが宵越を包み込んでいた。

 

「そしてこれから発表する残りの9人は、この二軸の銃砲による破壊をエスカレートさせる者たち……」

 発表は続いている。

 

GK(ゴールキーパー)、我牙丸吟」

 

「おー……俺?」

 絵心を除いて初めて声にでた反応だが、それは我牙丸の印象に違わず間抜けなものだった。ストライカーとは対極、得点を生み出すのではなく抑える選手。だが、野生児の顔に困惑の色はない。

「突発的なボール反応と全身のバネ。身体能力のGK適正数値でトップを叩き出した。お前がこのチームの守護神だ」

「そーゆー基準ね。うっしゃ」

 選ばれるなら、ストライカーでなくてもいいという人間はいる。エゴイストの表出の方法は一つだけではないのだ。

 

「次は2枚のCB(センターバック)。蟻生十兵衛、二子一輝」

 

 身長差のある二人。またも声は出なかった。二子は長い前髪で瞳の色がうかがえない。対して蟻生は自信満々でいる。自分が選ばれたことより、髪質を気にして指先でいじり続けている。これもまた、エゴイストの極みだった。

「高さと手足のリーチで他を圧倒する右CBと、ボール奪取と空間読解に長けた頭脳を持つ左CB」

 サッカーが11人で行うスポーツである以上、どれだけ絵心の信念が正しくともDF陣を必要とすることは免れない。

 攻撃と守備。身体能力と技術。王道と邪道。スポーツは勝利のためにそれらが相対し、一方が他方を凌駕しながら、時に融合しながら進化していった。

 DFがサッカーにおいて重要であること。DFが攻撃を進化させてきたこと。これに疑いはない。

「そしてその両サイドをアップダウンする、速さ(スピード)技巧(テクニック)を持つドリブラー2枚……」

 スクリーンにDFが陣取られていく。鉄壁の牙城であり、アタッカーたちの成果を確かなものとする者たちだ。中心たる守護神の両翼にCB、そのさらに外側にSB(サイドバック)が。

 

RSB(ライトサイドバック)、千切豹馬」

「──はい!」

LSB(レフトサイドバック)、蜂楽廻」

「にゃるほどね♪」

 

 適性試験第1試合で烏・乙夜と組み、そのスピードによって己の実力を証明した赤髪の美少年。得点こそしなかったが、彼は確かに自分の能力を()()した。

 片や、蜂楽は現実に得点をしてみせた。得点者たるストライカーがSBに控える。これが青い監獄(ブルーロック)の本質に他ならない。

「まあ、どのポジションでもゴール狙うけど♪」

 蜂楽の言葉がこの場において妄言ではないことは、千切の張りつめた空気が証明していた。いや、ひょっとすれば二子と蟻生でさえも。

「そして次はDFラインから攻守を切り替え、破壊の精度を高める2DMF(ボランチ)

 DMF(守備的MF)が2枚。「超攻撃特化」を旨とするなら、臆したようにも聞こえるかもしれない。だが事の本質はそこにはなかった。蜂楽や千切がSBとして起用されることと同じ。このチームにおけるDMFは守備やカウンターそれのみが求められるわけではない。

 

「烏旅人、氷織羊」

 

「なんや……一緒なん烏?」

「そりゃこっちのセリフや非凡が」

 烏と氷織。関西の同じユースチームだった。だからこそ軽口が際立つ。

「ボールキープ力とゴールを見透かす分析力を持つ左のDMF。烏旅人、お前がチームの心臓だ」

「チッ。そうなる気がしとったわボケ」

「そして冷徹に戦況を捉え、その左脚で決定機を生み出す右のDMF。氷織羊、お前はこのチームの血管だ」

「いいで。温めたるから、凍らんように気をつけや」

 

 これで、9名。

 

「そして、ラスト2ピース。2トップ、そして2DMFを繋ぐ銃身となる存在」

 残るはOMF(攻撃的MF)

 凛に続いてSTを任命された宵越は、同じチームとして戦うことになる仲間たちを見定めていた。

 千切を除いては、どこかでぶつかり、あるいは共闘した面々。絵心の方針を超える気でいる宵越は、仲間たちと肩を並べるため、彼らを信用し信頼しようとしている。相手がどれだけ身勝手なエゴイストであってもそれは変わらない。

 同時に、誰が選ばれるのかを考えていた。士道を含め、35名は300名から生き残ったストライカーたちだ。トップ6のような万能さはなくとも、全員が一芸に秀で得点能力を持っている。

 トップ6のうち、まだ士道、乙夜、凪が呼ばれていない。その飽和状態に加え、宵越が予感していただけでも、雪宮、馬狼、玲王……実力者には事欠かない。

 絵心の方針があるにせよ、選ばれるのはそれだけ有能であり有力であるということの証明なのだ。

 だから。

(来いよ……強い奴)

 自分のように。エゴをむき出しにし、やがてはこの青い監獄(ブルーロック)すら呑み込んでしまうかもしれない時代の傑物を、宵越は待ち望んでいた。

 自分が選ばれることよりも、確かに喜びを感じていた。

 そんな高ぶりを胸に、宵越は耳を澄ませる。絵心が口を開いた。

 

「RMF、凪誠士郎」

 

「うっし」

 控えめなガッツポーズ。チームCのパートナーが選ばれた。

「そのボールタッチで常識を超えるゴールを重ね、チームC(宵越との連携)として右翼の銃身(バレル)を完成させる華麗な逸材」

 

 10名。

 

「そしてラスト、LMF。それは糸師凛が生み出す左翼の主砲を完成させるシャドウに他ならない」

 全員が、絵心の啓示を聞く。

「糸師凛のパフォーマンスを最大に発揮する役割。その相互関係の中で最も優秀な数値を叩き出した存在だ」

 純粋な得点能力を、例えば凛や宵越のように評価した物言いではなかった。やや長く聞こえる前口上は、宵越の思考の中でいくつかの選手の存在を脱落させた。

「『主張』と『共存』を繰り返し、なによりも──自らゴールも奪い取った『凌駕』する才能」

 それは絵心が適性試験(トライアウト)で29名に示したもの。例えトップ6に及ばずとも、お前は上に立つ者たちを超える存在であると伝えた言葉。

 それが意味する、最後の一人は。

 

「糸師凛最良のパートナー、最後の1枚はお前だ──潔世一」

 

「……はい!」

(潔……)

 宵越の予想にはなかった。少なくとも、能力の評価としては。

 だが、絵心の啓示によって潔の輪郭はおぼろげに浮かび上がり、その存在が告げられたことで、強烈なイメージを宵越に叩き込んだ。

(そうか……)

 最初の出会いは、青い監獄(ブルーロック)の始まり。吉良と共にいた。

 二度目は二次選考の3人組の時。三度目は4thステージで。

 出会う度に印象を変え、自分と同じ何かを感じた潔が今、自分と共に11人に選ばれた。

 プレーを見たのは適正試験の1試合のみ。能力はそれほど高くなかったが、頭脳には光るものがあった。何より、ゴールを奪って見せた。

 自分と似たような負けん気を持つストライカーだった。

 日本サッカーを生まれ変わらせるかもしれない、FW(バカ)という名のエゴイストだ。

 宵越は笑った。

 初対面で自分に対して恐縮していた潔。

(ここから先はライバルだぜ)

 凛や士道や、他のエゴイストたちと同じようにだ。

 今、宵越と潔の軌跡が交わった。

 

「これがU-20日本代表に挑む11傑──」

 

 絵心がスクリーンを示した。全容が明かされた。

 

【挿絵表示】

 

 CF:糸師凛

 ST:宵越竜哉

 LMF:潔世一

 RMF:凪誠士郎

 DMF:烏旅人/氷織羊

 LSB:蜂楽廻

 RSB:千切豹馬

 CB:二子一輝/蟻生十兵衛

 GK:我牙丸吟

 

 日本サッカーを破壊し、新たに創造する。青い監獄(ブルーロック)イレブンだ。

 

 

 






画像、「我牙丸」じゃなくて「臥牙丸」になってた。すまない守護神……


★「青い灼熱」BL11傑
【挿絵表示】

・LCF:糸師凛(FT)
・RCF:宵越竜哉(ST)
・LMF:潔世一
・RMF:凪誠士郎
・DMF:烏旅人(L)/氷織羊(R)
・SB:蜂楽廻(L)/千切豹馬(R)
・CB:二子一輝(L)/蟻生十兵衛(R)
・GK:我牙丸吟

★原作BL11傑
・CF:糸師凛
・OMF:凪誠士郎(L) /潔世一(R)
・LWG:雪宮剣優
・RWG:乙夜影汰
・DMF:烏旅人
・SB:蜂楽廻(L)/千切豹馬(R)
・CB:二子一輝(L)/蟻生十兵衛(R)
・GK:我牙丸吟


★色々検討していました。
①雪宮×宵越の猛進フォーメーション
【挿絵表示】
(原作とほとんど変わんなくてつまんねぇな……)


②宵越×凪×氷織の宵越マシマシフォーメーション
【挿絵表示】
(凪がLWGってのがちょっとしっくりこないな……)


③ダブルシャドウによる灼熱×魔王フォーメーション
【挿絵表示】
(ブルーロックの哲学にしちゃ代わり映えないな……)


④凛・宵越2トップ(潔の過労死フォーメーション)
【挿絵表示】
(あかん潔が死ぬ)


⑤3トップ混沌構成(潔過労死ver.2)
【挿絵表示】
(絵心もたぶんこんなカオス好まねぇよ。あと潔が死ぬ)



結論「我牙丸は守護神」

Q16 宵越のBL11傑としてのポジションはどこがいい?(あくまで参考として)

  • 他をしのぐ圧倒の1トップCF
  • 他者と共に2トップCF
  • 黄金の左脚でゴール量産するRWG
  • そのドリブルで左翼を支配するLWG
  • 過労死必至、心臓ポジのDMF
  • 不倒のドリブルを守備に活かすSB
  • 不倒ならぬ不動の1CB
  • 体格を生かした2CBの一翼
  • 守護神を超えるまさかのGK
  • ピンチ時に戦況を変える劇薬としての控え
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