だが、ここには選ばれなかった24名がいる。
11人のほとんどが自分が代表となったことを当然のように受け入れる一方で、戸惑いや悲しさや悔しさや──怒りという感情は膨れ上がっていた。
(わかってるよ……)
後ろから放たれる圧。11人の中でも特別、潔と
(……部長も、こんな気持ちだったんだろうな)
そう考える。
能京高校カバディ部部長、王城正人。宵越がカバディにおいて目標だった攻撃手。宵越も、自分が殺気に近い圧で彼を視ていたことを覚えている。
だから、宵越は馬狼
(いいぜ、全部懸けて来いよ。それが……
雪宮が手を挙げた。
「絵心さん、質問。なんで士道くんがメンバーに入っていないんですか?」
雪宮自身、少なくとも11人には選ばれなかった。相応の感情はあるだろう、決して平穏な声色ではない。
ただ、落胆も絶望もしていないのは事実だった。先の
絵心は若干の間を作って答えた。
「士道龍聖は1試合平均2ゴールをあげ、
つまり、この3人は事前の評としても結果としても順位の通りの活躍をしたことになる。
プレー以外の素行はともかく、個人能力値としてはある意味糸師凛以上に高いスコアを他叩きだしているのも事実だった。
「しかしコイツのゴールは全て、個人技で奪ったものだ。それが何を意味するかわかるか?」
11傑のチームテーマは『破壊に次ぐ破壊』。そしてそのトップに控えるのは
「つまり士道龍聖は
得点率最高値の糸師凛を起用しつつ、周囲に熱をくべる宵越と、凛のシャドウである潔を起用していることからも、このチームにおいて士道の重要度が低いことを物語っている。
何よりも、士道が度々暴力騒ぎを引き起こしているのは論外だった。あれが試合中に起きたら確実にレッドカードで不利に陥る。
「以上の理由から、糸師凛と士道龍聖を同じピッチに立たせるべきではないと判断した」
ある意味、当然の判断だった。
「だからって、俺が
「うっせぇよ雑魚が」
「黙ってろコミュ障」
絵心は2トップの罵り合いを無視した。
「そして何より、お前らじゃ士道龍聖というエゴイストを扱いきれない」
士道龍聖のゴールはすべて個人技によるもの。誰かからのパスを受けるというサッカーの必然はあっても、それは絵心が求める化学反応ではない。あくまで士道が士道だからできる連携であって、連動ではない。
士道龍聖という悪魔の思考を理解し、プレーレベルを引き上げ合う人間が、
二次選考で士道と同チームの五十嵐が呟いた。
「いや、あんなん扱える奴日本中探してもいねーだろ」
五十嵐を、絵心は冷めた眼で見た。
世界一のストライカーを生み出す
絵心の中で、一つだけ検証できていない可能性があったから。
糸師凛と士道龍聖のコンビに可能性を求めたが故に、組むことのなかったコンビ。
だが、それももはや過ぎた妄想だ。賽は投げられた。
雪宮は反論した。
「でも、彼の能力を使わないのはもったいないですよ」
「その通り。だから士道龍聖はこのチームが窮地に陥った時、糸師凛に代わる《ジョーカー》。フィールドの流れを一変させる劇薬として、緊急時に糸師凛と交代で投入する」
理に適った判断。雪宮を含め、全員が理解した。
ところが。絵心は付け足した。
「……そのつもりだった」
「……あ?」
宵越が口を開いた。どういうことだと。
「俺がこのメンバーを決めた直後、1本の電話が入った」
絵心が言うには、相手はJFU会長の
殺気。選ばれなかった面々ではなく、選ばれた、しかももっとも華々しい位置に立つ男から。
絵心は続ける。
「糸師冴のいう条件を飲まなければ集客の見込めないこの試合は中止となり、そのまま
その条件はただ一つ。
この単なる事実を、絵心がエゴイストたちにとって最も屈辱的なカタチに装飾していく。
「糸師冴は、ここにいるお前らではなく、士道龍聖を選んだ」
士道はU-20日本代表として自分たちと戦うことになる。
士道以外の11傑を采配した絵心。士道龍聖を選択した糸師冴。そのどちらが正しいのかは、15日後、日本中の面前で暴かれることになる。
「そして、ベンチ入り登録可能選手は23名。スターティングメンバー以外の12名はまだ決まっていない。今回落選した人間はアピールしてその座を掴め」
レギュラー発表は終わった。士道龍聖というイレギュラーはあっても、方針は変わりない。
負ければ
「全てを賭けて挑め、才能の原石共よ。ここから先、失敗は許されない」
絵心の真に迫った言葉。武者震いをする者たちがいた。
だが、選ばれた11人に震えはなかった。
「ぬりぃぞクソメガネ」
CF、糸師凛。
「こんな試合、俺にとっちゃ世界一までの通過点だ」
「だね。こちとら、人生なんてここ入った時から
LSB、蜂楽廻。
「ほんま、今更こんなんでビビる凡ちゃうで」
DMF、烏旅人。
「うん、早く戦いたい」
RMF、凪誠士郎。
「言っただろ。俺は確かめるためにここへ来た」
そして、ST。宵越竜哉。
「失敗が許されないのはお前だ、絵心。招待してくれよ、お前が作り上げた灼熱の世界に」
そう、今ここが到達点ではない。
宵越も、絵心も、他のストライカーたちも関係ない。今、全員の見定めるものが重なった。
絵心は
「そのエゴだ、
────
時間は流れる。
革命のその瞬間までの15日間、
純粋なフィジカルトレーニング、プレーを想定した連携の確認、それぞれが能力と可能性の全てを発揮させるためのミーティング。
一方で敵──U-20日本代表や、世間もにわかに忙しくなり始める。
日本サッカー界の希望であるU-20日本代表。季節が巡る前、一人のJFU女性職員が記者会見の場で宣言し、狂気の沙汰だと騒がれた
それだけではない。日本人にして新世代
このビッグニュースはサッカーファンならず、ミーハーな世間にも波及していき、テレビやネットは連日《運命の日》を待ち望むようになった。
U-20日本代表もまた、座して敵を迎え入れるわけではない。
JFU会長とも懇意にする
冴は弟の凛に負けず劣らずのエゴイストだった。純粋なストライカーではなくMFではあるが、能力の全てが、明らかにチームメイトのFW陣を凌駕している。
言動も他者と交わる気はなく、士道も含め合流初日からトラブルを巻き起こした。それでもU-20日本代表内の優秀な主将を中心にそのトラブルを諫めた。
U-20日本代表は軟弱者の集まりではない。この日本において、サッカーというスポーツで
その彼らが、天才と悪魔を携えて
時間は流れる。残り1週間。残り5日。残り1日。
そして。
あと、15分。
2026年3月11日時点のブルーロック原作最新話、339話を読んだ方へ。
拙作前話あとがきで⑤潔世一過労死構成案をお出ししましたが、それ以上のぶっ壊れフォーメーションが原作でお出しされて吹いてしまいました。