青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

43 / 52
No.43 革命前夜

 

 

 青い監獄(ブルーロック)イレブン。選ばれた11人ストライカーたち。

 だが、ここには選ばれなかった24名がいる。

 11人のほとんどが自分が代表となったことを当然のように受け入れる一方で、戸惑いや悲しさや悔しさや──怒りという感情は膨れ上がっていた。

(わかってるよ……)

 後ろから放たれる圧。11人の中でも特別、潔と宵越(自分)に向けられる殺気。

(……部長も、こんな気持ちだったんだろうな)

 そう考える。

 能京高校カバディ部部長、王城正人。宵越がカバディにおいて目標だった攻撃手。宵越も、自分が殺気に近い圧で彼を視ていたことを覚えている。

 だから、宵越は馬狼()()が放つ圧を、精神的には受け入れた。

(いいぜ、全部懸けて来いよ。それが……青い監獄(ブルーロック)なんだろ?)

 雪宮が手を挙げた。

「絵心さん、質問。なんで士道くんがメンバーに入っていないんですか?」

 雪宮自身、少なくとも11人には選ばれなかった。相応の感情はあるだろう、決して平穏な声色ではない。

 ただ、落胆も絶望もしていないのは事実だった。先の適性試験(トライアウト)で自分の立ち位置を聞いたように、あくまで次につなげるため、絵心の真意を知るための行動だった。

 絵心は若干の間を作って答えた。

「士道龍聖は1試合平均2ゴールをあげ、No.3(宵越竜哉)に勝りNo.1(糸師凛)に次ぐストライカーとしての能力を示した」

 つまり、この3人は事前の評としても結果としても順位の通りの活躍をしたことになる。

 プレー以外の素行はともかく、個人能力値としてはある意味糸師凛以上に高いスコアを他叩きだしているのも事実だった。

「しかしコイツのゴールは全て、個人技で奪ったものだ。それが何を意味するかわかるか?」

 11傑のチームテーマは『破壊に次ぐ破壊』。そしてそのトップに控えるのは主砲(糸師凛)引鉄(宵越竜哉)。あえて表現するならば、士道龍聖は爆薬そのもの。

 

「つまり士道龍聖は適正試験(トライアウト)の中で、糸師凛との連携(化学反応)を一度も起こせなかったということだ」

 

 得点率最高値の糸師凛を起用しつつ、周囲に熱をくべる宵越と、凛のシャドウである潔を起用していることからも、このチームにおいて士道の重要度が低いことを物語っている。

 何よりも、士道が度々暴力騒ぎを引き起こしているのは論外だった。あれが試合中に起きたら確実にレッドカードで不利に陥る。

「以上の理由から、糸師凛と士道龍聖を同じピッチに立たせるべきではないと判断した」

 ある意味、当然の判断だった。

「だからって、俺が(コイツ)の隣なのも癪に障るけどな」

「うっせぇよ雑魚が」

「黙ってろコミュ障」

 絵心は2トップの罵り合いを無視した。

「そして何より、お前らじゃ士道龍聖というエゴイストを扱いきれない」

 士道龍聖のゴールはすべて個人技によるもの。誰かからのパスを受けるというサッカーの必然はあっても、それは絵心が求める化学反応ではない。あくまで士道が士道だからできる連携であって、連動ではない。

 士道龍聖という悪魔の思考を理解し、プレーレベルを引き上げ合う人間が、青い監獄(ブルーロック)には存在しない。

 二次選考で士道と同チームの五十嵐が呟いた。

「いや、あんなん扱える奴日本中探してもいねーだろ」

 五十嵐を、絵心は冷めた眼で見た。

 世界一のストライカーを生み出す青い監獄(ブルーロック)でこの結果なら、五十嵐の発言は最もだ──とはならない。

 絵心の中で、一つだけ検証できていない可能性があったから。

 糸師凛と士道龍聖のコンビに可能性を求めたが故に、組むことのなかったコンビ。

 だが、それももはや過ぎた妄想だ。賽は投げられた。

 雪宮は反論した。

「でも、彼の能力を使わないのはもったいないですよ」

「その通り。だから士道龍聖はこのチームが窮地に陥った時、糸師凛に代わる《ジョーカー》。フィールドの流れを一変させる劇薬として、緊急時に糸師凛と交代で投入する」

 理に適った判断。雪宮を含め、全員が理解した。

 ところが。絵心は付け足した。

「……そのつもりだった」

「……あ?」

 宵越が口を開いた。どういうことだと。

「俺がこのメンバーを決めた直後、1本の電話が入った」

 絵心が言うには、相手はJFU会長の不乱蔦(ぶらつた)。内容は『糸師冴がU-20日本代表のFWに不満を持っている』というモノだった。

 殺気。選ばれなかった面々ではなく、選ばれた、しかももっとも華々しい位置に立つ男から。

 絵心は続ける。

「糸師冴のいう条件を飲まなければ集客の見込めないこの試合は中止となり、そのまま青い監獄(ブルーロック)も自然消滅になると脅してきた」

 その条件はただ一つ。

 

 青い監獄(ブルーロック)から一人、糸師冴の望む人間をU-20日本代表に加えること。

 

 この単なる事実を、絵心がエゴイストたちにとって最も屈辱的なカタチに装飾していく。

 

「糸師冴は、ここにいるお前らではなく、士道龍聖を選んだ」

 

 士道はU-20日本代表として自分たちと戦うことになる。

 青い監獄(ブルーロック)事実上のNo.2の反逆。そして士道は、手加減など絶対にしない。一瞬の爆発のために、必ず青い監獄(ブルーロック)を壊しにかかるだろう。

 士道以外の11傑を采配した絵心。士道龍聖を選択した糸師冴。そのどちらが正しいのかは、15日後、日本中の面前で暴かれることになる。

「そして、ベンチ入り登録可能選手は23名。スターティングメンバー以外の12名はまだ決まっていない。今回落選した人間はアピールしてその座を掴め」

 レギュラー発表は終わった。士道龍聖というイレギュラーはあっても、方針は変わりない。

 負ければ青い監獄(ブルーロック)の消滅とともに、ここにいる全員の未来が潰える全生存か全敗北か(オール・オア・ナッシング)の一戦。

「全てを賭けて挑め、才能の原石共よ。ここから先、失敗は許されない」

 絵心の真に迫った言葉。武者震いをする者たちがいた。

 だが、選ばれた11人に震えはなかった。

「ぬりぃぞクソメガネ」

 CF、糸師凛。

「こんな試合、俺にとっちゃ世界一までの通過点だ」

「だね。こちとら、人生なんてここ入った時から全賭け(オールベット)してらぁ♪」

 LSB、蜂楽廻。

「ほんま、今更こんなんでビビる凡ちゃうで」

 DMF、烏旅人。

「うん、早く戦いたい」

 RMF、凪誠士郎。

「言っただろ。俺は確かめるためにここへ来た」

 そして、ST。宵越竜哉。

「失敗が許されないのはお前だ、絵心。招待してくれよ、お前が作り上げた灼熱の世界に」

 そう、今ここが到達点ではない。青い監獄(ブルーロック)が目指すべき目標はただひとつ。世界一。

 宵越も、絵心も、他のストライカーたちも関係ない。今、全員の見定めるものが重なった。

 絵心は(わら)った。

「そのエゴだ、青い監獄(ブルーロック)イレブン」

 

 

────

 

 

 時間は流れる。

 革命のその瞬間までの15日間、青い監獄(ブルーロック)はU-20日本代表を粉砕する戦闘集団となるため、最終合宿を始めた。

 純粋なフィジカルトレーニング、プレーを想定した連携の確認、それぞれが能力と可能性の全てを発揮させるためのミーティング。

 青い監獄(ブルーロック)は、着実に進化していった。

 一方で敵──U-20日本代表や、世間もにわかに忙しくなり始める。

 日本サッカー界の希望であるU-20日本代表。季節が巡る前、一人のJFU女性職員が記者会見の場で宣言し、狂気の沙汰だと騒がれた青い監獄(ブルーロック)プロジェクトの尖兵(ストライカー)たち。彼らが日本代表の座を賭けて衝突する。

 それだけではない。日本人にして新世代世界11傑(ワールドイレブン)に選ばれた天才MF、糸師冴が代表に初招集される。

 このビッグニュースはサッカーファンならず、ミーハーな世間にも波及していき、テレビやネットは連日《運命の日》を待ち望むようになった。

 U-20日本代表もまた、座して敵を迎え入れるわけではない。

 JFU会長とも懇意にする法一(ほういち)保守(やすもり)が監督を務めるU-20日本代表は、糸師冴、そして冴が望んだ士道龍聖を組み込み始動し始める。

 冴は弟の凛に負けず劣らずのエゴイストだった。純粋なストライカーではなくMFではあるが、能力の全てが、明らかにチームメイトのFW陣を凌駕している。

 言動も他者と交わる気はなく、士道も含め合流初日からトラブルを巻き起こした。それでもU-20日本代表内の優秀な主将を中心にそのトラブルを諫めた。

 U-20日本代表は軟弱者の集まりではない。この日本において、サッカーというスポーツで(しのぎ)を削り、選ばれてきた面々だ。絵心をして「革命は起きない」と言わせたU-20日本代表だが、強者であることは間違いない。

 その彼らが、天才と悪魔を携えて青い監獄(ブルーロック)と相対する。

 時間は流れる。残り1週間。残り5日。残り1日。

 そして。

 青い監獄(ブルーロック)VS.U-20日本代表まで。

 

 あと、15分。

 

 








2026年3月11日時点のブルーロック原作最新話、339話を読んだ方へ。

拙作前話あとがきで⑤潔世一過労死構成案をお出ししましたが、それ以上のぶっ壊れフォーメーションが原作でお出しされて吹いてしまいました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。