青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

45 / 52


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :0-0
得点者 :
試合進行:前半0分経過(開始直後)
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)




No.45 切り拓け

 

 

 特別壮行試合、青い監獄(ブルーロック) VS. U-20日本代表

 キックオフ。

 最初の攻撃は青い監獄(ブルーロック)11傑から。最強のストライカーを生み出す青い監獄(ブルーロック)、堅守速攻が売りのU-20代表。その矛と盾を競い合うにはおあつらえ向きの始まりだった。

 凛が蹴ったボールを潔が受け取る。すぐさま(OMF)若月(DMF)(DMF)が圧をかけてくる。

 この試合はエゴイストとしての発想はもちろん期待する。だが、絵心の哲学を基に多様な攻撃の発想(アイディア)を叩きこんでいた。

 潔はそれを忠実に再現していく。

(こっちの攻撃の形は、(LMF)(CF)、そして(RMF)──)

 この3人で組み立てる、左翼(敵右翼)側の三角形(トライアングル)を基盤とする。

 潔がダイレクトにパスを出し、(OMF)を避けた。ボールを受け取った(CF)狐里(RWG)とぶつかるも、青い監獄(ブルーロック)のNo.1として簡単にはボールを奪わせない。そして(RMF)はトラップによって閃堂(FW)を颯爽と躱し潔に戻す。

 青い監獄(ブルーロック)開始陣形(スタートフォーメーション)の基本は、凛・宵越を2トップとした4-2-2型。凛を主砲とし、宵越をST(セカンドトップ)とする在り方。

 だが。宵越を除く前衛の3人がパス回しを繰り広げる中、唐突に千切(RSB)蜂楽(LSB)が位置を上げた。

「しゃーないわ、働けボケ共」

 そして(DMF)が位置を下げる。そして氷織は右翼から中央へ。

 二子・蟻生・烏が3B(スリーバック)を形成し、3-5-2の前衛中盤極振りの陣形を形成する、超攻撃型システム。

 試合開始初っ端からの攻撃の気。青い監獄(ブルーロック)は全員がストライカー。守備の綻びを見逃さない。

 トライアングルの一角、潔が戦場を睥睨した。

(相手が対応するまでの一瞬を逃すな──)

 そして見つける。たった今前線に上がり、超速(スピードスター)が駆けた右翼に釣られて空いた逆サイドを。

 潔・蜂楽。この二人は伍号棟時代から良好な関係を築いていた。その連携力は乙夜と烏のそれに迫る。

 蜂楽が潔からのパス(信頼)を受け取る。

「発射ブーン♪」

 LSB、蜂楽廻。VS.──

「おっと、来るかい坊ちゃん?」

 DMF、颯波留。

「ようござんすか?」

 ダブルタッチフェイント、超速で展開するシザースフェイント。トップスピードのままボールに乗り──そして回転し颯を抜き去る。空中突進回転(エアラッシュターン)

 独力で颯を抜き去り、左翼前線へ駆けていく。

 蜂楽は独特な感性を持っていた。マイペースさや、サッカーに関する稀有な才能。ついてこれる同世代の友達はいなかった。

 故に、間違いなく無名。その無名選手が、U-20代表のDMFを確かに制した。それは、観客の誰もが驚くこと。

 蜂楽の前進に合わせ、戦場の20名(フィールドプレイヤー)の意識がU-20代表陣地へと向く。自然、青い監獄(ブルーロック)オフェンス陣は前へ。

 蜂楽の最高のプレーに、最適に最速に連携できたのは──

「やっぱ潔じゃん♪」

 

 青い監獄(ブルーロック)11傑、潔世一。

 

 ごちゃつくU-20代表陣地。MF以上それぞれのゴールを待つストライカー、それを防ぐディフェンダー。P・Aライン中央付近、(LCF)宵越(RCF)のシャドウとして若月の裏を抜けた潔がいた。

 蜂楽のパス(ラブレター)。センタリング。ただ一人、完璧に、蜂楽が求める形で動いた潔。蜂楽にとって、初めて見つけた生きた友達(かいぶつ)。二人は繋がっている。蜂楽はただ、歓喜した。

 ボールは山なりに、正確に潔の下へ。

(マジ完璧だ蜂楽!)

 潔もまた、蜂楽のドリブルをこの戦場で最も高く評価し信じている。

 だからこそ生まれた連動、そして開始数分の攻撃。潔と蜂楽(自分たち)のサッカーはU-20代表にも突き刺さるのだと、実感した。

 その時。

「抜かせるかよ、コソ泥ちゃん」

 

 U-20日本代表、主将オリヴァ・愛空。

 

 中央付近、愛空(CB)はその攻撃を視ていた。いや、敵味方のプレイヤーの位置も、攻撃の気も全て視えていた。

(マジかよ! なんでいる──!?)

 愛空が跳ぶ。並みの選手ではまず不可能な1m近い空間を越え、潔が受け取ろうとしていたボールをヘディングクリアした。

 愛空の能力、それは超広域守備範囲(スーパーコートカバーリング)。ディフェンス陣の中核を成す鉄壁は、潔と蜂楽の連動などものともしない。

 愛空が未だ空中にいる一瞬。潔の頭脳は高速で回転し、そして呻く。

(あいつ、()()で守備をやってやがる──)

 未だ発展途上の潔にとり、持てる能力の全てが結実し一気に実力を発揮する、言わば既存の思考(ソフトウェア)を活かした使い方(ハードウェア)の進化。それを潔は《反射》と呼んでいた。

 これまで、青い監獄(ブルーロック)で戦っていたストライカー上がりの未熟な守備ではない。日本サッカーにおける必要な要素の1進化系。それがオリヴァ・愛空だった。

 初撃、潔は愛空が強敵であることを理解した。それがどれほどの強敵であるかもわからないほどに。

 クリアボールは速度を保ち、右翼(敵左翼)敵陣の角点(コーナーフラッグ)付近へと流れる。ゲームが中断──しない。

「いや、まだだろ」

 

 青い監獄(ブルーロック)11傑、宵越竜哉。

 

 蛇来(LSB)仁王(CB)。いや、(CF)(RCF)さえ、潔や愛空を中心とした左翼の攻防に意識を割かれていた。

 本来ならアウトオブプレーとなる速度のボール。ただ一人、宵越(ST)だけが、フェイントと超速で抜け出した。これもまた、潔をして反射と評させる程のプレー。

 タッチライン(外側線)のまさに真上で宵越がボールキープ。愛空の瞳孔が開いた。まだインプレー(プレーは続いている)

「蛇来、カバー!」

「わかっとる!」

 蛇来が遅れて宵越へ突貫してくる。これもまたU‐20代表に相応しい動き。宵越とて簡単には抜けない守備。

 だが、宵越は蛇来を見ない。視るのはただ一つ。目標のみ。

 宵越は笑った。

「なに緊張してんだよ青い監獄(ブルーロック)

 ゴールまで約25m。宵越なら横面からゴールを狙える。たとえ不角(GK)や着地した愛空(CB)が控えていたとしても、《不倒》の殺気はゴールへ向いていた。

 どう来る。どう出る。守備陣の一瞬の思考。

「俺たちの始まりがスローインなんざ……締まらねぇだろ!」

 宵越がなしたのは、縦パス。U‐20だけではない、青い監獄(ブルーロック)オフェンス陣さえも嘲笑う一撃だった。

 ボールがタッチラインスレスレの低空を駆け抜ける。右サイド後方へ。宵越以上の超速で駆け上がる、千切豹馬の下へ。

(さすがだ、不倒──!)

 千切自身、虚を突かれた。宵越がボールを持ったことで遅れて動き出した。超速(スピードスター)だから、他者と同時に動き出した千切は周りと異なるタイミングでボールを持つ。

 そのボールは、千切の手前でバックスピンによって減速、千切が蹴りやすい位置へと至る。

 不倒の絶技。意思が聴こえる。「行け」と。

 千切は駆け上がった。予想外の宵越の突貫によって、MF陣(若月と颯)は完全に出遅れていた。ボールを一瞬下げたとて、千切にとっても残る壁はディフェンス陣のみだった。

 フィールドは間違いなく混乱していた。千切自身のシュートレンジにはまだ遠い。それでも、この混乱の中で淀みなく動く3つの光があった。

 

 ──宵越竜哉。凪誠士郎。糸師凛。

 

 千切は即座に行動(パス)を起こした。3人を囮に、下がった烏と反対に前のめりになっていたフリーの氷織へ。

「出せ、氷織!」

「ナイスパスや、千切くん」

 中央前線、氷織羊。チャンスは一瞬。1秒後には糸師冴が来てしまう。

 だがその未来は訪れない。潔世一に《反射》の思考をもたらしたのは、他ならぬ氷織だ。

 前線に目を向ける。自分の少し前には潔がいる。

 そして、中央、凛。左翼、凪。右翼、宵越。

「行くで、エゴイストども」

 早襲供給弾(アーリークロス)。向かう先は、宵越竜哉。

「いい熱だ、氷織」

「うっさい。見せてみぃや《不倒》」

 宵越がP・Aライン右角でボールを持った。

 立ちはだかる仁王・愛空。

 マッチアップ。

「番犬が許さねえよ」

「いい子だ、仁王」

 圧の強い二人のCB。シンプルなパワー型の仁王に、心技体が揃った愛空。前線の致命的な危機を何度も救ってきた重心たる2人だ。

 それでも、不倒(宵越竜哉)は止まらない。

「ドーベルマン? 警察? ぬるいぜ」

 ぶつかりに来るCBの2人。圧倒的なパワーを持って自分を制しに来る守備(アンティ)ども。攻撃手(レイダー)たる宵越には覚えがあった。

 それが背後からだろうが、正面だろうが、ボールではなく体そのものを潰しに来た者たち。それに比べれば──今の状況のなんたる軽いものか。

 

 ──守備の気持ちがわかってないから止められる。守備を良く見て。

 

 思い出す瞬間。大山律心戦、2点ビハインド。

 0.999999……を1に変えた、完璧な連携を逆手に取った攻撃。

 

 宵越の身体が、一瞬奥へ。愛空との仁王にぶつかる。それは本当に一瞬で、すぐさまアイソレーションフェイントで離れた。宵越と仁王の最初の攻防。軍配は宵越に上がる。不倒と仁王の間に穿たれた1mの空間。さらに内へ切り込む。

「だから抜かせねぇって言っただろ」

 否、愛空は肉薄している。さすがはU-20代表の主将。

 それでも。宵越は笑った。

「残念だな、サッカーは11人でやるんだよ」

 そして青い監獄(ブルーロック)は、全員がエゴイスト。

 宵越が横へパス。向かう先は、凪誠士郎。

「え、俺?」

 一身に注目を集め、最初のゴールを予感させた圧倒的な個(不倒宵越)。それでもU-20代表の守備は堅固。だからこそ影となったその他大勢のゴールが見える。仲間を、守備をよく見ることができたから。

 凪の脚に向けてボールが近づく。不倒の意志を乗せて。

引鉄(ひきがね)を引いたんだ。さっさと飛べよ」

「うえー、スパルタ上司じゃん」

 凪の右脚が閃く。蹴撃動作(シュートモーション)

「させない……!」

 音留(RCB)のスライディング。けれど右脚は囮。右足でボールの勢いを瞬間吸収し、叩弾球上(タップリフト)で自分の身体の後ろへ、そのまま跳躍回転(ジャンピングターン)

「Yes、不倒」

 左脚が閃く。不角(GK)すら、前線が密集地帯となり、誰がボールがどこへ向かったのかの判断が遅れた。

 静寂だった。ゴールの瞬間は必ずうるさくなるはずの会場は、けれど凪誠士郎というどこの誰かもわからないストライカーの一撃。U-20代表ではなく青い監獄(ブルーロック)のゴールだったから。

 静寂だったから、凪が蹴撃(シュート)の後に鈍い音を発して背中から着地する音が聴こえた。

 一瞬の間があって、凪は呟いた。

 

「……あ、自己紹介しわすれた」

 

 怒号。一気に会場が沸く。叫びが圧力となってフィールドを震わせる。

 スコア、1‐0。青い監獄(ブルーロック)、一歩リード。

 凪が、握り拳を上げる。

 潔が、千切が、凪の元へと駆けていく。

 舌打ちする凛。人の悪い笑みを浮かべた宵越。

 表情の読めないU-20代表たち。

 そして──

青い監獄(ブルーロック)。不倒か」

 糸師冴。

「いい度胸してんじゃねーか」

 天才の瞳に。

 灼熱が、灯り始める。

 

 

 








・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-0
得点者 :凪
試合進行:前半6分経過
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)

Q17 BL11傑VS.U-20日本代表、実際宵越はどうなるのが妥当だと思っていた?

  • BL11傑に選ばれる
  • BLの控えに選ばれる
  • 冴に見初められて単独でU-20日本代表へ
  • 士道と共に2人でU-20日本代表へ
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