青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-0
得点者 :凪
試合進行:前半6分経過
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)





No.46 着火剤

 

 

 青い監獄(ブルーロック)メインスタジアムは、始まりから沸き立っている。

『な、なんと! 凪誠士郎のスーパーゴールでまさかの青い監獄(ブルーロック)先制──!』

 実況席の照朝が、予想とはまるで違う試合内容に、動揺を隠せずに声帯を震わせた。隣の夏木も思わず、解説者としてはあまり褒められない疑問符を浮かべるのみだ。

『ストライカーだらけのチームとは聞いてたけどさ……開始6分だよ!? こんな立ち上がりある!?』

 凪誠士郎。サッカー歴半年の天才。実況席の2人もまた、事前の情報としてしか凪のことを知らない。

『誰!? 凪誠士郎って……無名の選手だよね……!?』

『オリヴァ・愛空のスーパーセーブを嘲笑う宵越竜哉のボールキープ! そこに連動した千切豹馬と氷織羊、そして凪誠士郎……!』

青い監獄(ブルーロック)プロジェクトって、成功してたの!?』

 驚きは実況席、そして観客席だけではない。

「凪!」

「ナイスゴール!」

 潔と千切が凪にダイブした。

「にょ……!?」

 エゴイストだらけであっても、今はU-20代表を壊すための紛れもない仲間たち。喜びは当然だ。

 宵越も、今回のゴールの流れを作った功労者の一人。氷織が、二子が、近づいていた。

「ナイスパスやね」

「おう。お前もナイスパスだ、氷織」

「ナイスプレーです。でも、宵越くんらしくないですね」

「はっ、言ってろ。最後は自分で決める、そのための布石だよ」

「はは、やっぱ宵越くんやね」

 序盤の流れを掴むことに関し、天性の能力を持つ宵越。カバディ時代もその能力は十二分に発揮されていた。万年一回戦負けだった能京高校の一回戦において、最初の攻撃を担ったのもそれが理由だ。

 万年一回戦負けという歴史、その流れを変えるための宵越。

 この試合も同じだ。これまでの日本サッカーの歴史を変えようというのだから。

「かましまくるなぁ、《不倒》」

「烏」

 烏旅人が近づいてくる。

「憎たらしい連携やん。チームCズ」

 宵越は軽く笑った。

「煽んなよ。喝入れてやっただけだ」

「喝?」

「どいつもこいつも、緊張で固まってやがる」

 宵越が、仲間たち全員を順々に指さした。それは潔だったり、凪だったり──二子、我牙丸、氷織、千切だったりする。会話は聞こえているので、名指しされた面々はぐっ……と苦虫を嚙み潰したように笑った。

 そして、宵越は最後に目の前の烏を指し示した。

「……」

「全員、出戻り以下ですかァ? 俺なんざ、半年間辞めてたのになぁ。サッカー」

 沈黙。全員、かなりイラついた。

 今更だが、宵越は高校一年である。同学年の二子と凛はともかく、このピッチでは他全員が先輩である。

「そういう敬語はサラっと言いよってからに」

 烏のこめかみに青筋が浮かぶ。それは、他の全員も同じだ。

 氷織が唸った。

「見とけや不倒人形(やじろべぇ)

 

 

────

 

 

 U-20日本代表OMF、糸師冴。

 未だ、冴の表情には動揺も落胆も何もなく、表情の見えない瞳で戦場を見ている。

 一方で、彼以外のU-20日本代表は明らかに危機感を覚えていた。守備が売りであるチームの自分たちが、早々に先制点を獲られた。しかも年下の高校生たちにしてやられた。屈辱以外の何物でもない。

 冴は主将、オリヴァ・愛空に語り掛けた。語るというような寄り添い方ではなく、たんなる会話でしかないが。

「どうすんだ、我が儘キャプテン」

「あー、まあちょいと誤算だったなぁ。不倒のこと、天才ちゃんは知ってるか?」

「昔のことは知らん」

「さすが天才ちゃん」

 愛空は声を漏らした。

 青い監獄(ブルーロック)のことを除き、冴が宵越のことを知らないのは事実だ。元々冴が年上で頭角も現していた。数年遅れて宵越もメディアに出るようになってはいたが、冴はそもそも周りに大した興味を持たない。

 逆に愛空や閃堂たち他のU-20代表の面子は、あくまで年下のホープという意味で宵越を認知していた。

「不倒……引退したって話だったが、まさかバケモンになって帰ってくるとは」

「……」

「どうした? 天才ちゃん」

 冴の眼が細くなりつつあった。

 冴は、かねてより青い監獄(ブルーロック)に興味を示していた。自身が望むようなストライカーが存在しない日本において、どんなFW(バカ)が誕生するのかと、その動向を注目していた。だからこそ士道のU-20代表招集を求めたのだ。

 そして思う。どうやら、自分が興味の対象たりえるのは士道だけではなく、また宵越だけではないかもしれない、ということ。

「なんでもねぇよ。ともかく、守備のチームがハナから一点取られてどうすんだ。ザルか?」

 愛空は乾いた笑みを浮かべた。笑うしかなかった。

「それをどうにかしてくれるのが天才ちゃんの仕事だろ?」

 主将にしては、なかなかに舐めた物言い。それは冴にしか聞こえなかった。

 冴と愛空の脳裏に、同じ状況と台詞が再現された。

 

──今のU-20代表(おれたち)糸師冴(おまえ)は何をもたらすのか──

 

 それは、数日前に二人の間で交わされた密約。

『士道を使わずにU-20代表(おれたち)を勝たせろ。天才ならそんくらいできるっしょ?』

『それはチームの総意か? それともJFUの大人共の入れ知恵か?』

 前日、U-20日本代表の合宿所。冴の問いかけに対して、愛空は答えたのだ。「お前は俺たちに何をもたらすのか」と。

 冴は返した。

『その挑発、乗ってやる』

 もちろん、冴もただでは引き受けなかった。

『勘違いするな。おまえらを試すのは俺の方だ。ついてこれなきゃ俺は試合から降りるぞ』

 スターティングメンバー、冴が指名したにも関わらず士道が入っていない。青い監獄(ブルーロック)側、ひいては主催である不乱蔦たちは、あくまで士道の性格故の状況だと考えている。だが、事の真相は冴と愛空にあった。

 自らの力で、いや英雄の一撃によって、あるいは舞い降りる天運によって。方法が違っても『世界を変える』という野望を抱いているのは青い監獄(ブルーロック)だけではない。

 だからこそ、愛空は、冴はその密約を果たしたのだ。

 ボールをセンターマークに置く、天才。

 後ろを向き、既に既に表情を引き締め始めている他のU-20日本代表メンバーを睨んだ。

お前ら(U-20代表)……その眼をひん剥いてよく見とけ。死ぬ気でついてこい」

 冴の瞳が、鋭く光る。

 冴とて、大人たちの道楽に付き合うつもりはなかった。技術はあるがただそれだけのMFとして動き、ただBLとU-20の動きを見極める、それだけのつもりだった。

 だが──

 冴の脳裏に走る、宵越竜哉の動き。そしてド頭から突き付けられた現実を前にした、U-20の張りつめた、かつ認識を改めるような空気。

 ──面白い、試してやる。見極めるんじゃなく、俺の手で──

 

「これが、お前らが踏み込んだ領域だ」

 

 糸師冴が、本領を発揮する。

 スコア、1‐0青い監獄(ブルーロック)リード。試合が再開された。

 (DMF)が蹴ったボールは、冴が受け取った。既に青い監獄(ブルーロック)11傑も次なる得点、そして守備のために構える。

 まずはボールを奪わなければ始まらない。

 宵越もまた奪うために動き、張り付く。

(よし、いいぞお前ら)

 蜂楽(LSB)狐里(RWG)に、千切(RSB)(LWG)に、蟻生(CB)閃堂(CF)に、それぞれ付く。未だ(OMF)若月・颯(DMFたち)がボールを回す中、二子はフィールド全体を睥睨していた。

 宵越の狙い通り──決して計算したわけではないが──だった。青い監獄(ブルーロック)11傑は早くも緊張が解け、オフェンス陣、ディフェンス陣共に練習通りに近い動きに戻っている。初撃、潔と蜂楽の連携が愛空に殺された、あの場で無謀無茶のボールキープを選択して正解だった。

 立ちはだかるのは天才MF糸師冴を中心とした堅守速攻のU-20代表。ストライカーだらけの守備陣が簡単に防げるはずがない。だからこそ練習通り、いや練習以上を発揮してもらわなければ困る。

 MFとしての糸師冴の実力、それは抜け目ない視野と左脚から生まれる正確なパス。だからこそ二子は警戒する。

(糸師冴に連動する──危険な選手を感知(キャッチ)するんだ)

 身体能力こそ並み、大した突出力を持たない二子だが、視野に関しては愛空に近いものを持っていた。

 だから、先の愛空と同様、糸師冴が生み出す決定機を殺す。それが二子の役目。

 そして、冴は()()()()()()()()

「冴くん……?」

 狐里が驚いた。声に出たのが彼というだけで、U-20代表も青い監獄(ブルーロック)11傑も同じだ。この場で冴がドリブル突破を選択する。それは予想外。

 だが、エゴイストたちは既に緊張の(くびき)が解かれている。反応が早い。

「防ぐぞ凪!」

「もちろん、潔」

 前線にいる二人、だが守備の不安な青い監獄(ブルーロック)11傑は、相手攻撃の時は基本的に位置を下げて戦う。両翼の銃口である凛と宵越に続く第2列の2人(潔・凪)が、中央で冴に立ちはだかった。

 それを、冴は何の感傷もなく抜き去る。

 潔も凪も、呆気にとられた。ただ2秒程度の攻防だった。だが──そのわずかな時間で、数えきれないほどのフェイントを仕掛けられた。

 世界選抜戦に近い衝撃。潔にとって能力値の底が見えない相手。

 冴は振り向かず、前へ。まだパスを出さない。

 ならば、宵越が続く。

「初めまして、天才」

 続く宵越竜哉。冴VS.宵越。

「弟にはしてやられた。楽しみだぜ、アンタのサッカーも」

 今日の宵越は饒舌だった。冴との対戦経験はない。子供ながらに憧れの対象でもあった記憶がある。

 だが今、自分と冴は対戦者。対等な存在だ。倒すべき敵だ。まるで、カバディで戦った世界組たちのような。

 緊張ではなく高揚。宵越は全力で冴を止めに行く。

 肩からぶつかる2人の天才。互いに弾かれ、けれどすぐに復帰する。

 宵越がボールを狙う。冴がフェイントを仕掛ける。

 フェイントにかかった()()()()()。逆に宵越がアイソレーションによるフェイントを仕掛け、ボールを奪いにかかる。

 結果は。

「早まったな、不倒。フェイントはそれでなくても抜けるからフェイントになる」

 糸師冴の勝利となる。

 宵越を抜き去った冴が前線を見据える。

 残りは守備とDMFたち。

「さあ、魅せてみろ天才ちゃん」

 遠く、自陣から戦況を見渡す愛空が呟いた。

 誰にも聞こえることはない、けれど冴はその挑発を感じていた。

「お披露目の時間だぜ」

 糸師冴が、始動する。

 

 

 







最近原作ネオエゴのフランス戦を読み返したんですが、もしかしてブルロ凛のマインドに近いのってカバディ星海の平良なのか……!?

凛「おれ、怪獣がいい。自分より凄いやつに命をかけて──」
平良「そして強大な敵と戦い! 思い切り倒されて──」


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-0
得点者 :凪
試合進行:前半12分経過、U-20代表冴、ボールキープ。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)

Q17 BL11傑VS.U-20日本代表、実際宵越はどうなるのが妥当だと思っていた?

  • BL11傑に選ばれる
  • BLの控えに選ばれる
  • 冴に見初められて単独でU-20日本代表へ
  • 士道と共に2人でU-20日本代表へ
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