青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-0
得点者 :凪
試合進行:前半12分経過、U-20代表冴、ボールキープ。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)




No.47 引き上げられた水準

 

 

 スコア、1‐0。中央で宵越・潔・凪を抜いた糸師冴が駆け抜ける。

 だが、この状況を予想していない青い監獄(ブルーロック)11傑ではない。

(させるかよ……!)

 千切(RSB)が冴の前へ。攻撃時、3‐5‐2の超攻撃型の陣形を採っていたが、攻守に渡り両サイドをアップダウンする千切と蜂楽には「どちらかが前に出る時、もう一方は下がる」というカウンターや守備に適応した決まり事があった。

 作戦に忠実な千切は、見事その役目を全うした。実際、千切のスピードはそれだけで強力な武器だ。先の攻めの一手になったのはもちろん、守備でも人数を+1(プラスワン)することができる。

(俺のスピードで、抜かせない──)

 けれど、やはり相手は天才。

 千切が完璧に詰め切る前に、冴はこれまでしなかったパスを選択した。50mを超える低弾道中速領域向け供給弾(ロングフィード)という超高難度キック。

 それを青い監獄(ブルーロック)陣営、右翼守備範囲で受け取ったのは超健人(LWG)

「素、晴らしい」

 当然、それを見逃す青い監獄(ブルーロック)11傑ではない。

「待った。が相手だ、マネキン肉(筋肉)マン」

 U-20代表のスタイルは堅守速攻。

。キツネ」

 ボールはやや中央、狐里(RWG)へ。

「サクサク前へ、これがカウンターの基本っ」

「そんなことはわかっとるわちんちくりん」

 狐里 VS. 烏旅人(DMF)

 一瞬の判断。烏はU-20代表のMF陣、さらにWG陣の動きが映像とまるで違うことを感じていた。

 最終合宿の最中。青い監獄(ブルーロック)はU-20代表の映像を何度も見て予習していたが、中でも烏は他人の数倍それを観察・シミュレートしていた。なお、それに追随する時間を費やしていたのは潔・氷織・宵越であったりする。

 烏は感じていた。明らかに、糸師冴の存在によって強化されているし──最初の宵越の速攻が、U-20代表の警戒感を最大限引き上げた。

(得点はいいけど、余計なことしおったなぁ《不倒》!)

 狐里は烏を避け、斜め後ろへのパスを選択。ゴール前ミドルレンジ、そこにいたのは糸師冴。糸師冴から始まり、糸師冴で終わる攻撃の形だ。

 だが、烏旅人も宵越の速攻によって水準を引き上げられた。冴に渡る攻撃のパターンを感じていた。狐里のパスを防げずとも読み切り、烏は最大限の加速をもって前進、パスに数瞬遅れて冴に立ちはだかった。

 もう1人のDMF、氷織と共に。

「止めるぞドS」

「カアカアうるさいわ」

 氷織・烏 VS. 冴、マッチアップ。

 ボールキープ力、視野の広さを持つ二人で冴のドリブルを止める。

 動く。両者の間を抜きにかかる。そこに烏が立ちふさがる。

「抜かせるかいな……!」

 ハンドワークを駆使して冴を押し込める。止まった冴の挙動、それでもボールは生きていたが、氷織が足元を狙う。

 否、氷織のスライディングは無意味だった。冴はむしろ烏の寄せを軸にして体を支える。

 そして、烏と氷織の間を縫う絶妙なループパス。

(弟みたいなマネを──!)

(高等テクあっさり使うやんか──!)

 ボールが向かう先は、前線P・Aのわずか1m外側、右翼から飛び出した閃堂(CF)

「しゃおらっ!」

 閃堂の抜け出しよりも、選手や観客は何よりも冴の能力に度肝を抜かれていた。2対1で挟まれても、パス・ドリブルどちらも青い監獄(ブルーロック)を凌駕している。どちらもだ。

 それまで、日本サッカーに大した興味を持たなかった天才が、自らゲームに入り込んでいる。

 フリーの閃堂。それでも、青い監獄(ブルーロック)のディフェンス陣はまだ控えていた。蟻生が前に出され、DMFの2人が冴に抜かれても、まだ二子(CB)蜂楽(LSB)がいる。そして超速(スピードスター)千切豹馬が、その脚を持って後ろへ下がる。

「後ろ頼みます、野生児さん」

「わかった、二子」

 たったそれだけの会話。それでも二子(CB)我牙丸(GK)は、蟻生と共に最終合宿で連携を積んできたのだ。

 二子は閃堂に向かって駆けた。それはシュートコースを限定する動き。曲がりなりにも、閃堂はU-20代表の中でCFのポジションを与えられた選手。だが──

トップ3(凛・宵越・士道)と比べれば……子供だましだ!)

 技術はあるだろう、それでもゴールへの殺気が全く異なる。二子のセンサーにかかる光の数が少ない。

(だったら──)

 二子は閃堂の左側を護った。閃堂の動きを右翼側へ誘導する。

 そして残りをGKへ託す──のではない。

「頼みます……千切くん」

「なっ」

 シュートモーションに入っていた閃堂は、後ろからの刺客に息を呑んだ。

 千切(RSB)が回り込んでいた。それは自分のシュートを拒む存在が我牙丸(GK)のみであると誤解させた二子の罠だった。

 閃堂の視界と気力、そして千切の速度を計算に入れた、二子の守備能力の進化。

「ナイスだ二子──」

 千切が圧し、二子が刈り取るスライディングによってボールは天高く舞う。

「くそっ……!」

 クリアボールに反応したのは糸師冴。P・A内側、左翼付近。

と勝負だ、オ天才(てんシャい)

「守備合流、ディフェンスビー(蜂楽)♪」

 立ちはだかる蟻生と蜂楽。さらに、後ろに我牙丸が構える。

 冴の選択はシュートだった。1トラップ、しかしそれが0トラップとも見まがうような俊敏性をもって振りぬかれる。四肢の長い蟻生を躱すような横回転蹴弾(カーブシュート)

 球質故にやや遅い速度であったことが功を奏した。カーブシュートに、我牙丸は超反応で跳びついた。

「ナイス、我牙丸!」

 叫ぶ千切。まだ油断はできない。

「まだインプレー!」

 吠える我牙丸。ボールは右翼の際へ。(LWG)が反応する。ボールが愛空のクリア程生きていなかった。だからこそ超が何とか拾えた。

「行、くぞ」

「許すかよ!」

 千切が詰める。瞬時、超は呻きと共にフリーエリアにいる冴へ返した。

「防ぎます!」

 冴 VS. 二子。だが、止められない。

(センサーにかからない──)

 気づいた時には後ろにいた。冴は、世界選抜程とは言わずとも、二子をして無限のプレーが視える存在だった。

 もう、残る壁は我牙丸のみ。

 冴は漫然と告げる。敵にではない。味方であるはずのU-20代表に向けて。

「こんなもんかよ。ヘボストライカー共」

 蹴撃。初撃(カーブシュート)とはまるで異なる一直線の閃撃がフィールドを切り裂いた。先のシュートブロックから復帰したばかりの我牙丸を嘲笑うことすらしない、優越感もゴールへの情熱もない、ただ結果をもたらすための一撃だった。

 

 スコア、1‐1。

 

 またも、観客が怒号を震わせる。

 これだ。自分たちはこの瞬間を待っていたのだ。

 俺たちの希望の星、糸師冴。

 私たちと同じ日本人で、新世代世界11傑(ワールドイレブン)に選ばれた天才。

 僕たちのヒーロー。

 

──(さーえ)!! (さーえ)!! (さーえ)!!

 

 それ以外の言葉は何も聴こえない。

 最初、青い監獄(ブルーロック)の先制点という夢物語は、ごく一部の観客を除いて遥か過去のこととなっていた。

 その名の通り、青い監獄(ブルーロック)というのは悪役たちを押しとどめていた()()で、その敵と戦うU-20代表。その代表に初めて選ばれた、糸師冴という主役。

 実況に熱が入る。

『衝撃の青い監獄(ブルーロック)11傑の先制点という幕開けから、すぐさまの糸師冴!これはまさしく英雄……! いや、U-20代表の救世主です!!』

『アハハ! やっぱ天才だよ糸師冴! 守備をものともしない怒涛の2連続シュート……天才のデビューだ……!』

 

 

────

 

 

 

 

「冴くん! ナイスシュート!」

「見、事なゴールだった。天才」

 狐里(RWG)(LWG)。攻撃の両翼を担う二人を中心に、U-20代表はゴールを決めた冴に近づいた。

 青い監獄(ブルーロック)と同じく、初招集かつ嫌な性格の冴であっても、ここでは仲間だ。だからこそ仲間たちは冴を讃えるべく動いたのだが。

「触んな、ヘボ共」

 冴は、合宿への合流直後と同じく杜撰な態度だった。

「2回。俺がシュートを狙えたチャンスの数だ」

 烏・氷織を抜いた直後。シュートを決めた二子を躱した直後。2回。

 実際、蜂楽・蟻生とも対峙した3回目もあった。それは冴が確かにシュートをしたが、防がれたプレーでもあった。

「それを殺して、お前らへのパス供給に時間を割いてやった」

 能動的に動いた冴ではあるが、同時にU-20代表を試すことも忘れていない。だからこその失望。

「サルでも決められる決定機を、お前らゴミ共が外しやがった。だから俺が決めた。それだけだ」

「くっ……」

「……」

 口を歪めたのは二人。二子・千切に防がれた閃堂、そしてキープボールを冴に逃すしかなかった超。

 悪口が過ぎる。愛空が諫めた。

「まーまー、ありゃあっちのDF(二子・千切)も上手かったじゃん?」

「ヘボ共はお前ら(DF陣)もだ」

 それは先の1点目について。もちろん2点目はDF陣もプレーには絡んでいないが、それでも冴は言わずにはいられない。

「DFは止められない。FWは決められない。挙句俺がお情けで同点にしてやった。どういう了見だ?」

 愛空も少しぶっきらぼうに堪える。

「厳しいね、天才ちゃん」

「当たり前だ。自分の役目を果たせないで、何が選手だ。何が日本代表だ」

 冴には矜持がある。ストライカーに求める価値もある。

 MFの自分より得点能力の低い人間を、冴はストライカーとは絶対に認めない。

「……だったら、天才ちゃんも役目を果たしてくれんの?」

「言っただろうが。眼をひん剥いてよく見ろって」

 試し、試される関係性。その根源は変わっていない。

 自分より強いストライカーが、果たして日本にいるのか。冴にとって、この試合の目的はこれだけだ。

「次はないぞ、サル以下野郎共」

「くっ、てめ──」

「まーまー、まだ始まったばっかだ、閃堂」

 愛空は閃堂に肩を回した。

機会(チャンス)を逃すな」

「……ああ愛空。U-20代表は俺のチームだ」

 超も、狐里も、気合が入ることには変わりない。

 一方、1点目を獲られた青い監獄(ブルーロック)。11傑の誰もが理解していた。悪役なのは、紛れもない自分たちだと。

 緊張はない。最初の攻防で、青い監獄(ブルーロック)は間違いなく緊張を捨てた。U-20代表の攻撃も確かに防いだ。練習通りのパフォーマンスを発揮できた。

 だがそれでも、冴の攻撃は異次元。一度も青い監獄(ブルーロック)はボールを奪えずに、最後まで冴によってねじ伏せられたのだ。

 こんな敵を相手に、どうすればいいのか。

 決まっている。

「……お前ら、次行くぞ」

 宵越が、全く堪えることなく仲間たちに発破をかけた。反応したのは、二子、氷織、凪。

「そやね。世界選抜に比べれば、楽勝や」

「二度目はありませんよ」

「だね。まだ一点取られただけだよ」

 宵越竜哉に熱を当てられたエゴイスト共。

 それでも、全員が宵越とフィールドを共にしたことがあるわけではない。

 その一人である潔は、宵越の言葉を頼もしく感じて、それでもまだ昂りを抑えられない。

 潔がこれまで見てきたエゴイストは、他にいるからだ。

「飲まれんな、潔。お前は俺だけを見てろ」

 青い監獄(ブルーロック)11傑、天才の弟、糸師凛。

「90分後……俺がこの歓声を悲鳴に変えてやる」

 宵越竜哉。糸師凛。

 青い監獄(ブルーロック)11傑の両翼の主砲。

 宵越が、フィールド全体に火をつけた。そうしてU-20代表は燻り始め──糸師冴が呼応して燃え盛る。

 そして、灼熱の世界はその趨勢を広げ、敵味方を関係なく巻き込んでいく。

 並び立つ凛、潔。後ろから、宵越が二人の背中を叩いた。

「面白れぇ。やってみろよ、天才の弟」

 青い監獄(ブルーロック)もまた、燃え広がる。

 

 






・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-1
得点者 :凪、冴
試合進行:前半17分経過
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)




Q18 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》、宵越はどこがいいと思う?(参考程度に)

  • 勝利という合理性を求めるドイツへ
  • テクニックと創造性を求めるスペインへ
  • スピードと肉体を更に鍛えるイングランドへ
  • 戦術的に1-0の勝利を求めるイタリアへ
  • 欧州における一大市場となったフランスへ
  • 原作のネタバレはやめろぉ!!
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