・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-1
得点者 :凪、冴
試合進行:前半22分経過、カウンターの応酬後、現在はLMF凪ボールVS.音留。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
日本が誇る盾、U‐20代表。
日本サッカーを壊さんと生み出された矛、
開始20分にして、両者の攻防は絶え間ないカウンター合戦となる。
ボールキーパー、凪誠士郎。瞬間的なトラップが強みの凪は、しかし音留につきまとわれシュートを打てなかった。ならば、選択するのはパス。
「受け取れ、No.1」
踵から肩への
凛がボールを受け取る。だが、そこは仁王のテリトリーだ。
「どいつもこいつも……この俺相手に舐めた身体じゃねぇか!!」
糸師凛 VS. 仁王和真。
仁王の武器はシンプルだ。U‐20代表でもっとも大柄で筋骨も隆々。その膂力を持って、あらゆるストライカーの攻撃を潰してきたパワー型ディフェンス。さらに愛空と連係し、体全体を使って向かってくる敵にプレスを仕掛けることで敵の自由を奪う。
その能力は凛に対して有効に使われた。凪のベストパスが音留によって封じられたことも加わり、凛はボールキープと同時に仁王との接触を迫られた。
「黙れよ負け犬がっ」
しかし、凛もまた天才に他ならない。体幹に潰されながらも体を回し、強引にシュートコースを作り出す。
潰されながらの
「クソが……」
ボールは左翼へ。音留が拾った。小気味よいステップを活かし凪を見定める。
「お返しだっ!」
抜き去る。センタリング。
一連の攻撃を、防御に備えて切り返した宵越は悔しげに見ていた。
「さすがは日本トップ……」
冴が攻守に渡り活躍しているというイレギュラーもあるだろう、それでも事実、
修整が早い。自分たちの攻撃を理解し、徐々に適応してきている。
それはまるで……南山不落のようだ。
中央へのボール、それを冴が拾う。つくづくコートカバーリングが広い。
猛襲を見せ、それでも点を獲りきれなかったU-20代表FW陣。
南山不落の如く、勢いの足りない
それでもまだ足りないというように、糸師冴の眼が細く、鋭くなっていく──
────
兄ちゃんは、かっこいい。
糸師凛が、糸師冴に抱いた最初の感情は、そんな憧れだ。
冴は幼い頃からサッカーで頭角を現していた。同い年の選手をごぼう抜きにし、誰にもボールを奪われず、最後には自分でゴールを決めてしまう。
マスコミも注目した。それでも、冴は自分を崩さず、愛想が悪く──
きっかけは凛の幼さ故の奔放さだった。どこの家族でもあるように、家族でサッカーの試合を見ていた。いつの間にか凛はフィールドに紛れ込んで、冴のロングパスを奪ってゴールにボールを蹴り込んでしまった。
冴は言った。凛の頭を撫でながら。
『凄いぞ凛、俺とサッカーしろ。お前なら、俺の次に凄くなれる』
凛はサッカーを始めた。冴のようにカッコよくなりたくて。
凛もまた頭角を現し、2人はWエース『糸師兄弟』として名を馳せる。
ただ、2人はいつまでも一緒ではなかった。冴は13歳になり、スペインへ渡った。世界一のストライカーになるために。
冴の不在は凛にとって不自由で、息苦しいことも当たり前にある環境だったけれど、それでも凛は冴の影を追いかけ続け、やがて日本一となった。
全ては、冴が世界一の、凛が世界ニのストライカーとなるために。
けれど、終わりはどこにでも現れる。
『俺が勝ったら、
渡西から4年後。冴は唐突に凛の前に現れた。
冴は言った。夢を書き換え、世界一のMFになるのだと。
凛は返した。そんな言葉は納得がいかないと。そんなことをいう冴は兄ちゃんなんかじゃないと。
意見を違えた両者は、1on1で対峙した。そして冴が勝利した。
けれど、凛は納得いくはずがない。2人で決めた世界一の約束。勝手に破られるなんて。
だから凛は弱音を吐いた。
冴は凛を罵倒した。
『消えろ、凛。もう俺の人生にお前はいらない』
あらん限りの暴言と罵倒。これまでの人生を否定されるような感覚を、凛は味わった。
呆然自失し、それでも凛はサッカーを辞めなかった。辞めれなかった。
2人の夢が消えても、サッカーをする意味がなくなってしまっても。
これまでのサッカーで、冴との時間で味わった気持ちの全てが、なかったことになんてできないから。
だから。
『ぐちゃぐちゃにしてやる』
俺の人生を狂わせた糸師冴を。糸師冴の夢を壊すために、凛はサッカーをする。
────
音留から受け取ったボール。冴が受け取る。2度目のカウンター攻撃。
カウンターの応酬、つまり
それでも不安はあった。だが、烏が先陣を切って守るディフェンダーたちは頼もしさを感じる人間がいた。こういう時に、率先して流れをぶち壊す──冴と同じような攻守にわたって動き回るバカ野郎を。
烏が呟いた。けれどそれは無意識で、気がついたら空気に乗っていた。
「ちゃんと責任とれや、《不倒》」
ドリブルを続ける冴の左後ろから、宵越がぶつかる。何度目かの接触だった。冴とは異なり、宵越は他の選手と同じく早くも汗が噴き出しつつある。冴の体幹は崩れない。
「こんなもんかよ? 不倒」
「知らねぇよ。こちとら半年のブランクがあるんだ。他の奴らと一緒にすんな」
「ブランクだと? 反吐が出る」
冴から侮蔑の感情が漏れ出した。当然か。天才MFが見据えるのは世界一の頂ただ一つ。こぼれ落ちた人間などどうでもいいゴミカスに過ぎない。
敗北者。ことこの事実については、宵越も反論はできない。
だが、それでも。
「何のために仕返しって言葉があると思ってる」
「負け犬が吠えるためだろ」
「かもな。けど、そのおかげで視えた景色があんだよ」
冴がさらにフェイント。高い完成度故に、宵越であっても罠にかかり冴との距離が開く。
その後ろ姿に向かって笑った。
「例えば──アンタの弟がどんどん熱くなってることとかな」
冴は前を向いた。そこにいたのは。
「おい、クソ兄貴。何が『世界一のMFになる』だよ」
糸師凛 VS. 糸師冴、マッチアップ。
宵越が右翼から冴に噛みついていた時、凛は両者の死角となる右翼から冴のドリブルの進路に立ちはだかった。
冴は何も答えない。凛とぶつかる。
兄弟の対峙。それは凛が他を邪険に扱うからではなく、正真正銘技術によって他を寄せ付けない2人だけの
冴のフェイントシザーズ、ダブルタッチ、ヒール技術。
フェイントを見極め、重心移動に反射し、腕で道筋を封じる。
「てめぇがFWやってんじゃねぇかっ」
凛は叫んだ。
「あの雪の日の言葉は──戯言かよっ!」
それでも、冴は止められない。
「黙れよ、クソ弟が」
右脚が
凛は辛うじて反応していた。それでも体力の差があった。試合開始からまだ20分足らずの状況には見えないストップ&ダッシュの応酬。それが冴と凛の一瞬の違いを産んだ。
抜き去る。兄弟対決、その第1ラウンドは兄に軍配があがった。
併せて攻め上がるU-20代表のFW陣。単に
宵越が火をつけ、冴が呼応して燃え盛る。その結果が、ありありと表れている。
冴は前へと向かい烏を引き付け、後ろを見ずに颯へ繋げた。ダイレクトパスで狐里へ回る。
その狐里がすぐさま
ルーズボールはP・Aライン上左翼側、糸師冴。
「させるかいな。止めるで蜂楽」
「かしこまり、烏ちゃん」
糸師冴 VS. 烏旅人&蜂楽廻。
一瞬の間。右への重心移動。蜂楽がかかる。烏はまだ耐える。
烏・蜂楽の間を冴が駆ける。上手すぎる──
「そう何回もやられるかい……!」
烏が体を冴にぶつける。さらには得意の
それでも、防げたのは上体の動きだけ。冴のキックまでは殺せない。
センタリング。中央を飛び越し、やや右から飛び込んだ閃堂へ。
惚れ惚れするほどの軌跡。それは受け取る側からすれば容赦のない軌道に他ならない。
それでも閃堂は一歩を踏み出す。自分が
左脚を蹴りだす。
それでも世界が閃堂に言っている。この程度の決意では足りないと。
「ぬりぃな」
凛の眼が殺気だっていた。
こんなパスで世界一なんざ──
「ほざくなクソ兄貴!!」
閃堂の最良のキックを刈り取る。ボールは高く天へと舞う。
「邪魔すんなよな」
かつて凛は、誰にでも等しく訪れる運という現象を己のものにしたことがあった。
誰にも落ちてくる場所がわからないのなら、己の能力を発揮できる場所で運が降ってくることを待つ。そうして凛は二次選考を勝ち抜いた。
やはり兄弟だからだろうか。冴は同質の動きをなした。それも、ボールの行方がゴールへ近づいたことで冴を潰すことへの意識が薄れた──烏と蜂楽をオフ・ザ・ボールで抜き去って躱すことで。
そうして天運は、冴に降ってくる。
「面倒臭い弟だぜ」
我牙丸決死のジャンピングブロックは届かない──
「俺──光る!!」
否、蟻生の誰よりも長い左脚が伸び、回し蹴りとなってボールを掠めた。
重たい残響、ゴールポストが揺れる。ボールがゴールラインを飛び越える。
U-20代表のコーナーキックだ。
────
既に、戦場は燃え盛っている。全員が日本のトップに立ち、あるいはそうなろうとしている選手たちだ。まだまだ動ける。それでも汗は吹き出し、冬の空に白い靄を作っていた。
「いいプレーじゃんか、天才ちゃん」
さも当然のように、コーナーキックへと向け歩く冴。その背中に声をかけた愛空。
愛空は、想像以上に能動的に動く冴に驚きと高揚を感じていた。ストライカーがMFを覚醒させ、DFの進化を呼び、GKを次の次元へと導く。
サッカーというスポーツが発展した軌跡を辿る──それこそが愛空の望んだ戦いだから。
だが、なればこそ自分たちは──自分はゼロへと立ち返る必要がある。
「うるせぇよ我儘キャプテン」
「変わらず、俺らはキミにとっちゃ使えないゴミか?」
「……」
冴は吐き捨てた。
「言っただろうが。お前らを試すのは俺の方だ」
そうだ。試すのは
だからこそ。冴は
「俺のパスは変わらない。欲しけりゃてめぇらが付いてこい」
戦場における22人、全員の準備が整う。
主戦場は、
冴は仮にゴールを狙う場合、利き足ではない右脚で
「よし、護る」
我牙丸が拳と掌を合わせた。追随して蟻生がオシャオーラを振りまく。
DF陣だけでなく、宵越や凛などのFW陣もまた壁となる。ほぼ全員だ。U-20代表側のFW陣にも、超には宵越、狐里には千切、閃堂には氷織──それ以外のメンバーにもできる限り適任を配置した。
プレーが始まる。
サッカー。1点が途方もなく重いスポーツ。その重さが生まれる分水嶺の場所、ゴール前。コーナーキック。
短い1秒1秒が、果てしなく長くなる。
熱狂と静寂が同時に訪れる。
冴の動きが、コマ割りのように止まって見える。
体が揺れ、脚が動き、右脚が鋭く光る。
キックが放たれる。
この時、
──止める!!
守備に不慣れなストライカーたち。けれど、集中力は跳ね上がる。誰もが等しく冴の、あるいは冴に連動するストライカーたちの猛攻を防ぐために動くことができた。
FW陣3人を潰す。それは等しく行えた。
我牙丸は、冴の
ボールは閃堂を追い越し、超を追い越し──誰もいなかった場所へ。
敵味方入り乱れる戦場の中の空白。その場所にただ1人潜り込んだのは。
U‐20日本代表CB オリヴァ・愛空。
──
予想外だった。確かに愛空は体格もあり、ヘディングも警戒するに足る相手だった。だが、他のストライカーと同じように突っ込むとは。
愛空の脚が閃く。DFとして培われた上半身ではなく、走るための、蹴るための右脚が。
ゴールネットを揺らす。
付け焼刃などではない。確かにゴールを奪う──自らの手で世界を変えるために動く、ストライカーの挙動だった。
静寂の中、愛空が拳を掲げる。
『ストライカーは泥棒、DFは警察にたとえられる』
愛空は泥棒に成り下がったのではない。しかし、まさしくストライカーたちから自分がその座を盗んで見せた。
スコア、1‐2。愛空は哂った。
「悪いな。こちとら、元ストライカーなもんで」
・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半28分経過、コーナーキックからの愛空ゴール。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
Q19 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》の3点先取は……(参考程度に)
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3点先取のままスピーディに!
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4点先取がいい!
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5点先取で満遍なく活躍(2点取る奴も!)
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90分でBLTVのスケジュールを調整!