青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

50 / 52


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半28分経過、コーナーキックからの愛空ゴール。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)





No.50 名ばかりの最強

 

 

 スコア、1‐2。青い監獄(ブルーロック)11傑、ビハインド。

 冴の攻撃。愛空の襲撃。予想外の連続を前に、青い監獄(ブルーロック)は静かに追い詰められている。

 

 ──(さーえ)!! 愛空(あいく)!! 日本(ニッポン)!!

 

 巻き起こるコール。観衆は明らかにU-20代表を応援している。いや、厳密に言えばその全てではない。青い監獄(ブルーロック)の勝利や、そこにいる1人1人を応援する声は確かにある。ただ、それはあまりにも小さい。

 潔は、攻め方を決めあぐねていた。数回の攻防。凛のシャドウとして、あるいは宵越と共に。U-20代表DF陣を抜き去ろうと試みた。それでも、その(ことごと)くを握りつぶされている。

 そして極めつけはたった今の愛空のゴール。

(俺のゴールを、奪いやがった……!)

 潔の中で、確かに怒りに近い感情があった。

 けれど、息を吐く。情熱を胸に、思考は冷静に。

 視界の外側で、宵越の声が聞こえた。

「おい、凛」

「……不倒」

 2トップの会話。

「兄貴に負けんなよ。天才の弟」

 反射的に、凛が宵越の胸倉をつかんできた。

「てめぇ、あのクソ悪魔と同じ目に遭わせてやろうかっ」

 宵越は凛の瞳を見た。

 2人は互いにそれほど多くを語り合わなかった。それは中学時代戦った時も、伍号棟で争った頃も、最終合宿の時も変わらない。

 宵越にとって、凛は未だ勝ち越されている相手。いつか超えるべき相手。そして、いけ好かないが今は仲間だ。

 凛にとっても宵越はいけ好かない相手だ。自分と同等の実力を持ち、けれど仲間を思うようなぬるさがある。けれど、熱さも持っている。伍号棟の戦いで、宵越は凛にとってぶっ潰したい奴になった。気に入らなかった。

 だから、宵越の言葉は凛の逆鱗に触れるようなものだった。

「お、おい! やめろ2人とも──」

 潔が2人を止めようと割って入る。それでも、宵越は挑発姿勢を貫いた。凛の腕を掴み返す。

 すべては、勝利のために。

「お前の目的は知らねぇが……勝つってことは同じだろ」

 チームメイトが何事かと近づいてくる。

「だったら、冴に勝たなきゃならねぇのは俺も同じだ」

「黙れ負け犬が。(アイツ)は俺の獲物だ」

「だったら勝てよ。もっとも、あの天才は執念だけで勝てる相手じゃねぇだろうが」

「……」

 珍しく、凛が聞くに徹している。潔は驚いた。

「俺も、お前も。いくら周りが()(はや)したって、所詮は『名ばかりの最強』だ」

 凛は日本一となったことがある。中学日本において最強だったことに変わりはない。

 ただ、凛の目的は冴のサッカーを否定すること。冴に勝つこと。

 宵越もカバディで日本一になった。けれど今はサッカーに戻っている。

 様々な人に認められてはいるが、トップに立っていない悔しさがある。

 だから。

「俺たちは挑戦者だ。冴に勝つために、乗り越えるために、できることは何でもしなきゃなんねぇ」

「……それがお前のエゴか?」

「最善で、最高の、熱くなれることだ」

 沈黙。凛は何も言わず、乱雑に宵越の腕を振りほどいた。

 喧嘩沙汰までは至らなかった。潔は一息つく。

「お前もだ、潔」

「え、俺?」

 宵越は潔のアホ毛を鷲掴みにした。

「ぐぇ……」

「見たぜ。適性試験(トライアウト)の最初の試合。それと比べるとつまんねー利口なプレーだ」

「……うっせ」

 潔はしょげた。実際、まだ潔は活躍らしい活躍をしていない。

「絵心の野郎が示した戦略はチームとして当然守る。だが──」

「わかってるよ。お前の作った化学反応は……戦略だけじゃ生まれない、青い監獄(俺たち)だからこそ生まれたゴールだった」

「その通りだぜ、潔」

 宵越は潔に何か、予感を覚えている。

 宵越はそれを『秀でた者の匂い』と呼ぶ。他にも、大小の差はあれ青い監獄(ブルーロック)のエゴイスト共にはそれを感じてきた。

 凛、士道。愛空、冴。彼らからは、特別強いものを感じる。そしてそれは、潔にも。

 潔は宵越の手を振りほどいた。アホ毛をいたわりつつ、それでも宵越に挑戦的に噛みつく。

「証明してやる。青い監獄(ブルーロック)は、お前のやり方に飲み込まれるような奴らじゃないって」

「おう、やろうぜ。もたもたしてっと、俺が奪うぞ」

 プレーが再開する。

 潔・宵越・凛によるトライアングルは健在。簡単には破られない。

 とはいえ、前回のプレーで同様に前線へ抜け出したとしても、それをU-20代表守備陣に防がれたのもまた事実だった。

(U-20DF陣を壊す要素(ピース)がまだ足りない……!)

 潔の思考が加速する。

 確かに、確かに、最初は宵越の起点と、それに連動した凪や氷織の連携で点を獲れた。けどその先は、攻撃しては防がれての繰り返しだ。

(俺はまだ、何もできていない)

 愛空が、自分が乗り越えるべき壁だということは直感した。こいつを出し抜かなければ、自分のゴールは見えないのだと。けれどそのための具体的な方法が、まだわからない。

(それぐらい、俺にとっては未知の強敵なんだ……)

 だが、潔もまた青い監獄(ブルーロック)の11傑。こんな状況を何度も乗り越えてきた。

 潔世一。伍号棟時代は、初期ランキング299位。所属したチームZは2勝1敗1引き分けの二位通過。二次選考では、2ndステージで脱落の岐路にも立たされたこともあった。勝利した試合は全て敵と1点差。敗北は大差をつけられての惨敗。余裕のある試合など只の一つもない。

 常にギリギリの状況を、潔は何度も乗り越えてきた。宵越が評した通り、最初の潔はどこにでもいるような平凡な高校生FWだった。埼玉高校サッカー選手権では、ゴール前GKと1対1の状況で味方にパスを出し、惜敗した。

 武器は直接蹴弾(ダイレクトシュート)と裏抜け、それを可能にする空間認知能力。とはいえ、現時点でトップ6を凌駕するような攻撃力を持つわけではない。

 それでも、一次選考では凪や玲王を下し、二次選考では馬狼を下し、適性試験(トライアウト)では士道と凛を出し抜き1点をもぎ取ったのだ。

(やるべきことは明確だ──)

 前には凛。近くには宵越がいる。

 無駄な思考をそぎ落とせ。今できること、そして俺が生み出せる可能性に集中しろ。

(俺のこの全能力を──化け物(凛・宵越)との化学反応に集約させろ!)

 その先にある、己のゴールを見据えて。

 試合開始時の4-2-2-2の布陣に戻る。そして蜂楽(LSB)千切(RSB)が前に出る、中盤に人数をかけた爆薬陣形(ニトロフォーメーション)。その中で、中央で長く突き出た槍──潔・宵越・凛のパス交換で敵陣を突き崩す。

 パス交換は狭くない。凛と宵越は右と左で分かれている。だが潔が凛と宵越の間を動く歯車となることで、二人の選択肢が跳ね上がり、DMF2人に捕まえきれなくなる。

 突如、宵越が前へ行く。凛がヒールパスへすぐ後ろ、前に来た蜂楽へスイッチ。凛が前線でフリーとなる。

 状況は幾波か前の攻撃と同じ。それでも諦めない。何度でもだ。

 突っ込む宵越には、仁王(CB)蛇来(LSB)がついた。

「仁王となら止められるぞ、不倒」

「クソが……」

 潔には愛空がついた。

「疲れさせんなよコソ泥ちゃん」

「くっ」

 混戦の中、蜂楽が選択したパスの相手は。

「いつもよりバリ熱じゃん、復讐者(リベンジャー)

 左翼からのセンタリング。凛がボールを持ち、フリーでゴール前へ出る。凛がどこまでも我欲のため、潔と宵越を死に役としたことで生まれた状況だった。

 青い監獄(ブルーロック)においてトップレベルの能力、サッカーIQを持つ凛。その思考が加速する。

 凛の中にいくつかある選択肢。冴に対抗するための左脚での横回転蹴弾(カーブシュート)。あるいは、自分の利き足である右での多彩なシュート。

 欲望は。左を選択しかけていた。

 

──執念だけで勝てる相手じゃねぇだろうが──

 

 その言葉が頭をよぎる。

(クソが──)

 わかっていた。宵越は得点こそ奪わなかったが、それでも1点目の起点となり注目を奪った。

 そして宵越の活躍が、冴の動きを能動的にした……!

(黙れよ──)

 

 俺は宵越竜哉じゃない。お前の描いてきた道も過去も、どうだっていい。

 俺は俺のために勝つ。ただ、戦場で生きるためにだ。

 閃いたのは右脚。ただ、左側から音留(RSB)がシュートブロックに走ってきた。これまで二子がしたようなコースを限定するための動きだった。

 道を塞ぐクソ野郎モブ共。加えて音留の一歩による時間稼ぎで、冴がゴールポストの右側を護りに入った。さらに凛のこめかみに筋が浮く。

(この、クソ兄貴……!)

 凛の蹴撃(シュート)。コースは、あえて冴のいる右上角へ正確無比に吸い込まれる。

 冴が跳ぶ。ヘディングによるブロック。当然だ、決めきれない。

 弾かれたボールは右翼へ。宵越が拾った。

「させるかい、不倒」

 後ろから蛇来が圧をかけてくる。けれど。

「残念、それじゃあな仏さん」

 《カット》。この試合、初めて見せたカバディ仕込みの超絶ドリブル技術。蛇来が一歩も動けず、宵越はその背後を取り返す。

 すぐさま《回転》。狙うはストライカーの存在意義。冴がいない左上角への押し込み。

「まだ……させねぇよ!」

 不角(GK)は躱したが、愛空(CB)が飛び込んできた。着地動作など考えない足の振り上げ。さすがに大型のCB。

 愛空、そして守備に寄った冴が守りに徹したことで生まれた空白。そこに潔世一(OMF)が飛び込んできた。

 直接蹴弾(ダイレクトシュート)。だが仁王(CB)が辛うじて反応した。

「ぬらぁ!」

「マジか……! 邪魔だドーベルマン……!」

 らしくない、いや戦場においては()()()舌打ちを潔がした。

 飛んだボールは、P・Aの外側へ。

「いったぞ、クリアしろ蛇来!」

「わかっとる!」

 クリアボールを蛇来が拾い、遠く(ファー)へ逃した。受け取ったのは、DMFの若月。さらに続く颯。

冴が防御に回った分だけ、攻撃力が落ちた。DMF二人で前線へ繋ぐ必要ができた。

 そこに立ちふさがらなければならない青い監獄(ブルーロック)11傑の2人がいた。

 

 烏旅人、氷織羊。2人のDMF。

 敵のDMFが迫ってくる。その前の数瞬の間。

「チッ……ゴール決めろやボケナス共」

 烏が舌打ちした。自分がせっかくDMFを引き受けてやっているのに何やってるんだ、というエゴイストとしての文句だった。

 氷織は違った。

「宵越くん、潔くん、凜くん。3人の連続攻撃でも決まりきらない」

「あん?」

 宵越によって、全体のレベルが跳ね上がった。DFの防御力もだ。

 ならば。

「主砲が動くには引鉄を。引鉄が動くためには、心臓と血管を。そう思わん? 烏」

「……」

 氷織の言葉を理解した烏。烏も点を奪えない責任の全てをFW陣に擦り付けるつもりはない。

 わかっていた。ゴールを奪うために必要な要素(ピース)を。

 烏は人の悪い笑みを浮かべた。

 

「しゃーない。いっちょ仕事したるか、ドS」

「行くで、殺し屋」

 

 

 






・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半33分経過、BL11傑によるカウンター失敗、からのカウンター返し。若月ボールキープ。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)




Q19 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》の3点先取は……(参考程度に)

  • 3点先取のままスピーディに!
  • 4点先取がいい!
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