・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半28分経過、コーナーキックからの愛空ゴール。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
スコア、1‐2。
冴の攻撃。愛空の襲撃。予想外の連続を前に、
──
巻き起こるコール。観衆は明らかにU-20代表を応援している。いや、厳密に言えばその全てではない。
潔は、攻め方を決めあぐねていた。数回の攻防。凛のシャドウとして、あるいは宵越と共に。U-20代表DF陣を抜き去ろうと試みた。それでも、その
そして極めつけはたった今の愛空のゴール。
(俺のゴールを、奪いやがった……!)
潔の中で、確かに怒りに近い感情があった。
けれど、息を吐く。情熱を胸に、思考は冷静に。
視界の外側で、宵越の声が聞こえた。
「おい、凛」
「……不倒」
2トップの会話。
「兄貴に負けんなよ。天才の弟」
反射的に、凛が宵越の胸倉をつかんできた。
「てめぇ、あのクソ悪魔と同じ目に遭わせてやろうかっ」
宵越は凛の瞳を見た。
2人は互いにそれほど多くを語り合わなかった。それは中学時代戦った時も、伍号棟で争った頃も、最終合宿の時も変わらない。
宵越にとって、凛は未だ勝ち越されている相手。いつか超えるべき相手。そして、いけ好かないが今は仲間だ。
凛にとっても宵越はいけ好かない相手だ。自分と同等の実力を持ち、けれど仲間を思うようなぬるさがある。けれど、熱さも持っている。伍号棟の戦いで、宵越は凛にとってぶっ潰したい奴になった。気に入らなかった。
だから、宵越の言葉は凛の逆鱗に触れるようなものだった。
「お、おい! やめろ2人とも──」
潔が2人を止めようと割って入る。それでも、宵越は挑発姿勢を貫いた。凛の腕を掴み返す。
すべては、勝利のために。
「お前の目的は知らねぇが……勝つってことは同じだろ」
チームメイトが何事かと近づいてくる。
「だったら、冴に勝たなきゃならねぇのは俺も同じだ」
「黙れ負け犬が。
「だったら勝てよ。もっとも、あの天才は執念だけで勝てる相手じゃねぇだろうが」
「……」
珍しく、凛が聞くに徹している。潔は驚いた。
「俺も、お前も。いくら周りが
凛は日本一となったことがある。中学日本において最強だったことに変わりはない。
ただ、凛の目的は冴のサッカーを否定すること。冴に勝つこと。
宵越もカバディで日本一になった。けれど今はサッカーに戻っている。
様々な人に認められてはいるが、トップに立っていない悔しさがある。
だから。
「俺たちは挑戦者だ。冴に勝つために、乗り越えるために、できることは何でもしなきゃなんねぇ」
「……それがお前のエゴか?」
「最善で、最高の、熱くなれることだ」
沈黙。凛は何も言わず、乱雑に宵越の腕を振りほどいた。
喧嘩沙汰までは至らなかった。潔は一息つく。
「お前もだ、潔」
「え、俺?」
宵越は潔のアホ毛を鷲掴みにした。
「ぐぇ……」
「見たぜ。
「……うっせ」
潔はしょげた。実際、まだ潔は活躍らしい活躍をしていない。
「絵心の野郎が示した戦略はチームとして当然守る。だが──」
「わかってるよ。お前の作った化学反応は……戦略だけじゃ生まれない、
「その通りだぜ、潔」
宵越は潔に何か、予感を覚えている。
宵越はそれを『秀でた者の匂い』と呼ぶ。他にも、大小の差はあれ
凛、士道。愛空、冴。彼らからは、特別強いものを感じる。そしてそれは、潔にも。
潔は宵越の手を振りほどいた。アホ毛をいたわりつつ、それでも宵越に挑戦的に噛みつく。
「証明してやる。
「おう、やろうぜ。もたもたしてっと、俺が奪うぞ」
プレーが再開する。
潔・宵越・凛によるトライアングルは健在。簡単には破られない。
とはいえ、前回のプレーで同様に前線へ抜け出したとしても、それをU-20代表守備陣に防がれたのもまた事実だった。
(U-20DF陣を壊す
潔の思考が加速する。
確かに、確かに、最初は宵越の起点と、それに連動した凪や氷織の連携で点を獲れた。けどその先は、攻撃しては防がれての繰り返しだ。
(俺はまだ、何もできていない)
愛空が、自分が乗り越えるべき壁だということは直感した。こいつを出し抜かなければ、自分のゴールは見えないのだと。けれどそのための具体的な方法が、まだわからない。
(それぐらい、俺にとっては未知の強敵なんだ……)
だが、潔もまた
潔世一。伍号棟時代は、初期ランキング299位。所属したチームZは2勝1敗1引き分けの二位通過。二次選考では、2ndステージで脱落の岐路にも立たされたこともあった。勝利した試合は全て敵と1点差。敗北は大差をつけられての惨敗。余裕のある試合など只の一つもない。
常にギリギリの状況を、潔は何度も乗り越えてきた。宵越が評した通り、最初の潔はどこにでもいるような平凡な高校生FWだった。埼玉高校サッカー選手権では、ゴール前GKと1対1の状況で味方にパスを出し、惜敗した。
武器は
それでも、一次選考では凪や玲王を下し、二次選考では馬狼を下し、
(やるべきことは明確だ──)
前には凛。近くには宵越がいる。
無駄な思考をそぎ落とせ。今できること、そして俺が生み出せる可能性に集中しろ。
(俺のこの全能力を──
その先にある、己のゴールを見据えて。
試合開始時の4-2-2-2の布陣に戻る。そして
パス交換は狭くない。凛と宵越は右と左で分かれている。だが潔が凛と宵越の間を動く歯車となることで、二人の選択肢が跳ね上がり、DMF2人に捕まえきれなくなる。
突如、宵越が前へ行く。凛がヒールパスへすぐ後ろ、前に来た蜂楽へスイッチ。凛が前線でフリーとなる。
状況は幾波か前の攻撃と同じ。それでも諦めない。何度でもだ。
突っ込む宵越には、
「仁王となら止められるぞ、不倒」
「クソが……」
潔には愛空がついた。
「疲れさせんなよコソ泥ちゃん」
「くっ」
混戦の中、蜂楽が選択したパスの相手は。
「いつもよりバリ熱じゃん、
左翼からのセンタリング。凛がボールを持ち、フリーでゴール前へ出る。凛がどこまでも我欲のため、潔と宵越を死に役としたことで生まれた状況だった。
凛の中にいくつかある選択肢。冴に対抗するための左脚での
欲望は。左を選択しかけていた。
──執念だけで勝てる相手じゃねぇだろうが──
その言葉が頭をよぎる。
(クソが──)
わかっていた。宵越は得点こそ奪わなかったが、それでも1点目の起点となり注目を奪った。
そして宵越の活躍が、冴の動きを能動的にした……!
(黙れよ──)
俺は宵越竜哉じゃない。お前の描いてきた道も過去も、どうだっていい。
俺は俺のために勝つ。ただ、戦場で生きるためにだ。
閃いたのは右脚。ただ、左側から
道を塞ぐクソ野郎モブ共。加えて音留の一歩による時間稼ぎで、冴がゴールポストの右側を護りに入った。さらに凛のこめかみに筋が浮く。
(この、クソ兄貴……!)
凛の
冴が跳ぶ。ヘディングによるブロック。当然だ、決めきれない。
弾かれたボールは右翼へ。宵越が拾った。
「させるかい、不倒」
後ろから蛇来が圧をかけてくる。けれど。
「残念、それじゃあな仏さん」
《カット》。この試合、初めて見せたカバディ仕込みの超絶ドリブル技術。蛇来が一歩も動けず、宵越はその背後を取り返す。
すぐさま《回転》。狙うはストライカーの存在意義。冴がいない左上角への押し込み。
「まだ……させねぇよ!」
愛空、そして守備に寄った冴が守りに徹したことで生まれた空白。そこに
「ぬらぁ!」
「マジか……! 邪魔だドーベルマン……!」
らしくない、いや戦場においては
飛んだボールは、P・Aの外側へ。
「いったぞ、クリアしろ蛇来!」
「わかっとる!」
クリアボールを蛇来が拾い、
冴が防御に回った分だけ、攻撃力が落ちた。DMF二人で前線へ繋ぐ必要ができた。
そこに立ちふさがらなければならない
烏旅人、氷織羊。2人のDMF。
敵のDMFが迫ってくる。その前の数瞬の間。
「チッ……ゴール決めろやボケナス共」
烏が舌打ちした。自分がせっかくDMFを引き受けてやっているのに何やってるんだ、というエゴイストとしての文句だった。
氷織は違った。
「宵越くん、潔くん、凜くん。3人の連続攻撃でも決まりきらない」
「あん?」
宵越によって、全体のレベルが跳ね上がった。DFの防御力もだ。
ならば。
「主砲が動くには引鉄を。引鉄が動くためには、心臓と血管を。そう思わん? 烏」
「……」
氷織の言葉を理解した烏。烏も点を奪えない責任の全てをFW陣に擦り付けるつもりはない。
わかっていた。ゴールを奪うために必要な
烏は人の悪い笑みを浮かべた。
「しゃーない。いっちょ仕事したるか、ドS」
「行くで、殺し屋」
・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半33分経過、BL11傑によるカウンター失敗、からのカウンター返し。若月ボールキープ。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
Q19 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》の3点先取は……(参考程度に)
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3点先取のままスピーディに!
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4点先取がいい!
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5点先取で満遍なく活躍(2点取る奴も!)
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