青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

51 / 52


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :1-2
得点者 :凪、冴、愛空
試合進行:前半33分経過、BL11傑によるカウンター失敗、からのカウンター返し。若月ボールキープ。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)





No.51 舞い上がる熱

 

 

 青い監獄(ブルーロック)、U-20代表戦に向けた最終合宿の最中。

 絵心は青い監獄(ブルーロック)の全ての選手とミーティングを行っていた。それは個人面談の形式をとる場合もあれば、想定されるポジションごとに組まれた時間もあった。

『DMFとしての起用だが──お前たちの役目が防御だけでないということは理解しているな?』

 氷織羊、烏旅人。二人は後ろ手に組み、絵心を舐めることなく、かといって盲信することもなく主体的に話し合いを果たしていた。

『宵越くんと凛くん……2人の主砲が火を噴くための発射台ですよね?』

 サッカーIQの高い2人だ。絵心が自分たちをDMFとした意図はわかっている。

 実際、烏は凛・潔とセットで呼ばれたこともあるし、逆に氷織は右翼側として凪・宵越とセットで呼ばれていた。

『その通り。ゴールを見透かす眼を持つ()、そして決定機を生む(氷織)爆薬陣形(ニトロフォーメーション)では烏が下がるが、お前たちが平行に構える守備時の状況でもカウンターに繋がる選択肢(オプション)を残しておく。攻守に渡るチームの生命線となる』

 烏が口角を上げ、絵心を見下す。それは挑戦状を投げ放った、と言うべき態度だった。

『せやかて、相手ボールの時は純粋に守りもする。場合によっては俺が下がって氷織が前に出て役割を変更させる……違法労働は嫌いですわ。報酬は期待しても構わんよな?』

『当然だ』

 絵心は烏を真っすぐ睨んだ。

『このチームは全員がストライカー。ゴールこそが存在意義。それに見合う報酬(チャンス)もあるだろう。十二分に働いてもらう。文字通り、心臓と血管として』

 

 

────

 

 

 ブルーロックNo.1のボールキープ力を持つ、烏旅人。そして冷徹な視野と天性の左脚の技術を持つ氷織羊。

 二人は、関西ユースで同じチームだった。たったそれだけの関係だが、全国から集められた300名という中では、この間柄には確かな相互理解が存在する。

 烏はかつて、氷織の非凡さを見抜いた。持って生まれた身体能力とボールタッチ、そしてサッカーIQ、左利きのキックセンスも。

 そして、ゴール前での執念がないことも。

 だから、この青い監獄(ブルーロック)三次選考で久々に顔を合わせた時、それまでとは違う氷織のプレーに驚いたし、喜びもあった。

 そして、面白がった。

 

 ──先輩後輩でデカイ顔する気はないけど、ここで決めな俺は凡になっちまうで。

 

 けれど、烏はその本心を見せない。

 烏は自分を凡人だと自覚している。だからこそ、逃避行動として他者を観察し分析する。

 そして、稀有な才能を持つ非凡な人間を尊敬する。

 

 ──失敗すれば悔しいし、誰かから虐められれば傷つくし。

 

 そんな烏も、世界一には憧れる。

 青い監獄(ブルーロック)は、世界一を目指す非凡たちが集まる場所。

 そんな場所で、烏は。凛や士道と戦って。氷織や潔に驚いて。凪という天才に凌駕されて。

 凍り付いた熱を持つ氷織を溶かしたのが、宵越であると気づいて。

 

 ──熱くなる人間がいたら、自分だって感化されて熱くなるんや。

 

 けれど、烏はその本心を見せない。

 あくまで心を燃やし、けれど頭脳はどこまでも冷徹に。

 その熱を、隠し持つ。

 隠し切った熱は、黒羽のように舞い上がるのだ。

 

「防ぐで、ドS」

「わかっとるわ、烏」

 

 烏と氷織に向かってくる、颯と若月。

 青い監獄(ブルーロック)11傑にとっての左側。烏と颯。

 右側。氷織と若月。

 盾と矛が持つDMFたち。

 ボールキープ、若月。状況はU-20代表によるカウンター。

 

 烏・氷織 VS. 颯・若月。

 

 マッチアップ──!

 

 ボールを持った若月は、氷織と対峙する。一度外側へドリブルのフェイントを入れてから横パス。

「颯!」

「了解!」

 DMFとして忠実に任務をこなすU-20代表の2人は、攻撃はやや不得手だ。だが、氷織と烏はそうではない。

 ボールを受け取った颯の動き。さすがに日本トップ選手のドリブル。烏は攪乱される。

 烏の裏を取り、颯は氷織を抜いた若月へスイッチでボールを繋げる。

 それを、()()()()()()()()()()烏がインターセプト。

「アホかい、見え見えのコースやボケッ!」

 若月と颯の思考がストップした。

 烏には見えていた。U-20代表の守備戦法は3段構えだ。

 

①相手ボールになったら、颯が即座にプレスにかかる。

②颯プレスの間に背後で強力DF4枚が領域守備(ゾーンディフェンス)という鉄壁を作る。

③致命的危機に対し、愛空が超捕捉守備(カバーリング)をもって防ぐ。

 

 その守備は実際に宵越・凛・潔の波状攻撃を殺していた。そこに冴も加わって、南山不落の守備となっていた。

 だからこそ、必要なのは①を刈り取ること。

(DMF片翼)が守備の初手。なら若月(もう一方)は攻撃の選択肢(オプション)。お利口すぎて片腹痛いわ……!」

 見え透いた攻撃だ。氷織が上手く若月を誘導してくれたこともあり、簡単に若月・颯の連携を刈り取れた。

「防ぐんだな……!」

 即座に反応する若月。追随する颯。

 若月・颯がカウンター返しを予想する。ただ、その隙を烏は冷徹につき、DMF二人を引き付けたうえで、すぐ後ろの氷織へスイッチ。

 烏はわかっている。青い監獄(ブルーロック)で出会った乙夜という頼れる非凡は、今この場にはいない。それでも。

「行く先はわかっとんな? ドS」

「もちろんや、心臓。はよ血ィ回せ」

 それを、氷織は反射でパスを出す。

 血液は、右サイドギリギリへ。再び青い監獄(ブルーロック)最速の韋駄天へ。

 乙夜はいない。それでも、氷織と千切という非凡たちがいる。自分の思考を理解しパスを繋げた血管と、その命令を忠実に実行する両脚が。

「頼むで、千切くん」

「いけ、赤いの」

 千切豹馬(RSB)が、ボールを前線へ弾いて駆け上がった。

「任せろ──!」

 度重なるカウンターの応酬。しかしこれまでと違うのが、U-20代表が攻めきれずに中盤でボールを奪われたこと。そして、守備戦法の第1段階となる颯のプレスが存在しないこと。

 鉄壁の領域守備(ゾーンディフェンス)はやや遅れた。初撃の混乱とは異なるが、これは紛れもないチャンス。

(加速しろ、俺の両脚──!!)

 それでも第2段階をすっ飛ばし、危機察知に愛空が動く。千切の動きを刈り取りに右翼へ。

(さすがだ主将(キャプテン)。俺を捕まえてみろ!!)

 

 千切豹馬 VS. オリヴァ・愛空。

 

 マッチアップ──!

 

 両者の実力には明確な開きがある。フィールド全体を使った総合力では、間違いなく愛空が上回る。

 だが、ここは右サイド。縦一本の直線一気(ホームストレート)

 ここなら、千切は負けない。負けるはずがない。

(俺の速さ(スピード)が、世界に轟く!!)

 千切豹馬が夢見た瞬間が、今ここに在る。

 愛空という守備を切り裂く、宵越をも超える超速がいななく。

 右サイドを切り裂き、千切が機会(チャンス)を作り出す。青い監獄(ブルーロック)11傑が一気にゴール前へ雪崩れ込む。

 思考する千切。P・Aの横ラインをさらに越え、角点(コーナー)へと近づく。ギリギリまで侵入するか、それともパスを出すか。

 正面から仁王(CB)が来ている。後ろからは愛空も。選択はパスしかない。

 今一番、フリーなのは──

 

「出せや、赤いの」

 

 雪崩れ込んだ密集の後ろにただ1人、遅れて侵入してきた烏旅人。

 千切が右脚を振り切る。ボールは右翼角点(コーナー)から中央、P・Aライン、密集のやや後ろへ。

 フリーとなり、烏が辛うじてゴールを狙える射程距離(シュートレンジ)でもあった。

 だが、天才はどこにでもいる。

 ボールを持った烏が蹴撃動作(シュートモーション)を仕掛ける一瞬前、冴が立ちはだかる。烏のポジショニングをピンポイントで読み切った。

 そして、天才は一人だけではない。

「よう、糸師冴……!」

 

 烏・宵越 VS. 冴。

 

 マッチアップ──!

 

「目障りだ、不倒。消す」

「消せるかよ!」

 烏の代わりに宵越がぶつかる。もちろん、宵越は自分の実力が冴より下だとわかっている。悔しいが、冴に抜かれる可能性だって見える。

 だが、宵越は学習していた。自分1人が通用しなくとも──

「一旦、タイマン勝負は預けるぜ。熱い仲間がいるからよ」

 宵越が冴とぶつかる。1人のフェイントでは止められない。

 けれど、宵越と烏という、2人の腕の使い方(ハンドワーク)による拘束なら。

 左右から襲い掛かる、卓越した技術を持つ殺し屋と不倒の腕。冴を動かさず、ボールをキープし続ける。

 そして、烏は己のボールを見据える。

 冴によって崩された、けれど宵越の助けによって再生したゴールへの道筋。

「どいつもこいつも、非凡共が……」

 文句を垂れる。全てが自分の実力の賜物ではないから。宵越が助けた。氷織と千切の協力があった。何よりこの攻防のきっかけは、潔と宵越を死に役にしてでもゴールを奪おうとした凛によるもの。

 それでもいい。己のゴールを見据える。

 灰の中から現れ出でる。不死と、不倒が。

「借り1や。先にもらっとくで、エゴイスト共!!」

 烏の脚が動く。ごちゃついた陣形から、宵越と冴を隠れ蓑にした一閃。隠形狙撃蹴弾(ステルス・キルバースト)

「熱いじゃねぇか、殺し屋」

 宵越が笑った。

「煽んな、敬語使えや不倒」

 烏が中指を立てて宵越に応える。

 スコア、2‐2タイ。戦いは、まだこれからだ。

 

 

 









えーっとですね。この4点目のゴール。プロットでは「凛がゴール」ってなってたんです。そのつもりで展開も箇条書きで書いてました。
気が付いたら、烏がゴールしてました。
ほんとなんです、嘘じゃないんです。原作、別に「○○の熱」となったら活躍はしても必ず点を奪うとか、そういうお決まりはないんですけど、なんか気が付いたら烏が熱くなってた。
ゴメン凛ちゃん、許して。殺さないで。


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :2-2
得点者 :凪、冴、愛空、烏
試合進行:前半37分経過、烏ゴール。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)


Q20 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》無限交代制は……(参考程度に)

  • 原作通り何度でも何人でも交代OK!
  • 制限緩めて、一度退場した奴は不可にしよう
  • 交代回数も交代人数も有限にしよう
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