BL11傑 VS. U-20日本代表。
スコア、3‐2、BL11傑がリードしている。
それは方々の予想を裏切った劇的な展開だった。
開始早々、《不倒》宵越を起点とした凪誠士郎の得点。一時は糸師冴とオリヴァ・愛空による怒涛の反撃で2失点となったが、若きストライカーたちは勢いに呑まれることもなく、烏、凛による2得点を生み出した。
これまでの日本サッカーにはない、猛攻撃というプレースタイル。
当初、観客のほとんどはU-20代表の活躍を予想していたし、実際に楽しみにもしていた。BL11傑など高校サッカーに詳しい人間しかしらないのだ。一時その異常な計画が話題にもなったが、結局マスコミは日々流れる国内外のニュースに涎を垂らし、エゴイストの動向を過去のものとした。
それが、前半45分で世間の下馬評が覆ることになった。そして、なお残り45分を心待ちにさせている。果たしてこのままBL11傑が押し切るのか、それともU-20代表が冴を中心に逆転し英雄の勝利を飾るのか。
BL11傑の活躍を望んでいる人たちもいる。例えば、それは選手の家族たち。
そして、能京高校カバディ部のような、赤き灼熱の世界よりやって来た者たちもだ。
灼熱の余波は、王城正人や井浦慶たちがいる場所以外にも存在する。
「先輩! 高谷先先輩!」
「ん~、どしたのオガちゃん?」
1人は、神奈川県
1人は、その高谷の後輩。奏和高校カバディ部1年、
奏和高校は、関東でもカバディ強豪校として有名である。そして高谷は2年生エースとして、緒方は1年にしてチームの参謀として活躍した。
「いいんですか!? 冬の大会も近いのに練習サボって……」
「いいじゃんいいじゃん♪ そういう
2人の先輩である3年、
そして能京と奏和も、触発されるようにライバルといえる高校同士となった。
「俺を負かしやがったたっつんがいるんだぜ? オガちゃんも気になるっしょ、ライバルが今何してんのか」
「そっ……れは! そうですけど!」
高谷は天才だ。元水泳のホープにして、気まぐれでカバディをはじめ強豪校のエースとなった。緒方はサッカー時代の宵越を知っていた。サッカー経験者ではないが、宵越の活躍を見て、少なからず憧れてもいた。
高校カバディ大会で激闘を演じた。だから、二人は他の部員に止められるのを知ってて、秘密裏にこの試合を観に来た。
緒方は自分の感情に正直になることにした。つまり、優等生でいることを諦めた。少なくとも、もう夏の大会が終わって厳しい3年の部長・副部長はいないのだ。いたら恐らく首根っこを掴まれることになる。
「そうですね。勝ち逃げなんて許しませんよ。少なくとも、サッカーでカバディ以上に活躍してもらわないと」
「ね? でしょ!」
高谷は笑った。
「楽しませてくれよ、たっつん。
でなければ、俺がサッカーに転向してお前の活躍を奪ってしまうぞと。
本気で、高谷は考えている。
────
そしてやはり、カバディを知る人間は他にいる。
「そっか……これが宵越くんなんだね」
穏やかな顔つきだった。だが彼もまたカバディにおける天才である。伸びつつある紅茶の髪。そして、周囲の人を圧迫するようなガタイの良さ。
埼玉紅葉高校カバディ部2年副部長、
「カバディも使って本当に化け物になったじゃん──能京の獣が」
跳ねた黒髪、特徴的なのは糸目。実力こそ佐倉に劣るが、埼玉紅葉というカバディ部を作り上げ、1年生のみで関東大会ベスト8の結果を生み出した立役者。埼玉紅葉高校カバディ部2年部長、
そして、その隣にはまだ2人、それぞれ質の違う筋肉マンがいる。
「ははは! アイツ、相変わらずバケモンでやんの!」
天パ、元ヤン。そして現在は1人のスポーツマン。能京高校カバディ部2年、新部長。
「ふむ……脚を使うだけあって、皆見事な大腿四頭筋……特に赤毛の彼、細身の割に素晴らしいじゃないか」
黒髪白目。三白眼ではない白目。好きなものは筋肉とゴリラ。筋肉を愛し、筋肉に愛された男。能京高校カバディ部2年、新副部長。
同学年で、共に合宿で研鑽を積んだ仲。四人は共に観ることを試合前に決めていた。
水澄が言った。
「前、宵越が畦道たちとサッカーで勝負したんだけど。その時も思ったよ、アイツスゲーって」
「だよなぁ。元々デカいし速いし。ズルすぎるんだよ……!」
「あはは、
カバディ時代から宵越を評価していた。それぞれ思う所もある。
水澄も伊達も、宵越と別れた人間だ。寂しさがある。少なくとも、数年のうちに宵越がカバディに戻るなんてことはないのだと、2人ともわかっていた。
遅れてそれを聞いた佐倉も右藤も、そして埼玉紅葉の全員も。等しく思っている。勝ち逃げされた。悔しいと。
カバディからいなくなったから助かったなんて思わない。右藤の「ズルい」は、純粋に宵越の能力を評価してのものだ。
エゴイストだけが、勝ち負けを悔しがるわけではない。
ここにいる全員が。カバディ部の全員は。観客の一部は、確かに。
スポーツマンなのだから。
「じゃ、後半戦も見せてもらおうぜ。《不倒》のカックイイところを」
「そうだな。あれからどう筋肉がどう変化したのか。まだ45分だけじゃ物足りない」
「僕も……サッカーから学ばせてもらうよ。宵越くん」
それぞれの瞳に、熱を携えて。
────
チーム
1点をリードしての前半終了。課題はあるが、それでもエゴイストたちは確かにチームとして団結していた。
ベンチのメンバー、そしてピッチの上で戦うメンバー。それぞれ士気は高い。
そして、一部怨嗟のような滾りを顕わにしている者もいる。
「みんな、前半お疲れさま!」
彼女も
「前半の総括と後半の戦術について、絵心さんから説明があります」
遅れて、絵心が入ってくる。
「静まれ、才能の原石共。まずは『なぜ得点が奪えたのか』。その正しく理解する必要がある」
絵心は続けた。
「糸師冴が中核をなし、愛空擁する鉄壁のカルテット。攻撃は何度も入れ替わり、カウンターの応酬もあった。奪った点は3つ。凪誠士郎、烏旅人、そして糸師凛」
この試合は文字通りの
その中で注目すべきは、3得点ではなく、その得点を生み出した流れ。
「この得点を得点たらしめた……U-20代表の壁を打破したのは2つの契機だ。宵越竜哉。糸師凛」
33人の選手たちが、一斉に2人に注目する。
「宵越竜哉。初撃、愛空が弾いたボール。あくまでマイボール、リスタートする選択もあった。練習中では同様の場面、全てを獲ったわけではない。なぜそうした?」
宵越は不敵に答えた。
「ピッチの上で言ってやったがな。全員、どこかしら緊張して固まってたから……喝を入れてやっただけだ」
宵越は負けず嫌いで練習の鬼であるが、メンタルの完成度はプロに匹敵する。その宵越が持つ、恐らく誰にも負けない天性の才。それは流れを作る能力。土壇場でわかりやすい奇跡を作る力。そして、序盤は手が付けられないほどに結果を残すのだ。
「フォーメーションチェンジからの、蜂楽の突破。そこに流れ込んだ潔の動き。あのパフォーマンスを殺すべきじゃなかった。だから繋げた」
その結果、千切豹馬、氷織羊、凪誠士郎へと初撃のパフォーマンスを成し遂げた。
この宵越のメンタリティこそ、開始たった6分で1ゴールを奪えた契機に他ならないと絵心は言う。
2点目の烏の得点もまた、宵越の熱によるもの。もちろん、絵心は烏の活躍も等しく評価している。
「糸師凛。1‐1の状況、練習よりも潔世一との距離を詰め。宵越を巻き込んで自分中心の
「相手のDFが想像以上に堅かった……そこを抜けなきゃ始まんねぇだろ。俺のための死に役が必要だった。それだけだ」
「なるほどね」
「体よく利用できたなんざ思ってねぇよ。結局クソ《不倒》から奪うしかゴールできなかった。泣きたいくらいだ」
「喧嘩売ってんのか凛てめぇ」
「ああ?」
「お?」
「ギャンギャンさえずるな
絵心は眼鏡のフレームを直した。
そして見る。《死に役》と称されたもう1人を。
「……さて、潔世一。お前は自分が死に役だと思っているか?」
「いえ、ゴールを奪う気でいます」
即答だった。
「ああ、それでいい。フィールドに立つ11人全員が自らを主役だと信じ、戦い抜くためのエゴがお前らにはある」
宵越と絵心は、ある種対立している。絵心が宵越を誘った、その瞬間から。
宵越の活躍は、ある種絵心を負かすもの。それでも、絵心が育てた者たちは現状に全く満足していない。
だから絵心自身が満足していない。
「後半、これまでと同じように行くわけがない。お前らはまだ、何も成し遂げていない」
満足するな。攻め続けろ。最後の1秒がゼロとなるまで。
「己が主役であることを放棄するな。後半の指示は1つだけだ」
「圧勝しろ。主役は1人でいい」
絵心がロッカールームを後にする。11人でなくとも、全員が1つの目的と自分の勝利のために改めて己を鼓舞する。
宵越も同じだ。
(全員が主役だと信じる……でも主役は1人でいいか。煽るじゃねぇか)
宵越としては文句を垂れたくなる高説ではあるが、少なくとも否定はしない。
宵越は、絵心の実験を見届けると決めたのだ。最善を尽くすために。
同じように、最善を尽くすことができる仲間たちがいるのか、見定めるために。
だから、このチームで戦うのだ。絵心が持つエゴイズムと、自分の熱を混ぜ合わせるのだ。
勝利のために。
(凛も、烏も、凪も)
それ以外、ゴールを生み出していない7人のストライカーに向けて。
(一緒に勝とうぜ。そんで、観させてくれよ。俺たちよりも強い
後半戦が、始まる。
・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-2
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛
試合進行:後半戦開始
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
Q21 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》スターチェンジシステムで指導者は……(参考程度に)
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原作通り3分間限定でいい!
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5~10分限定くらいで柔軟にしよう!
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試合後半から居座っていいことにしよう!
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ずっといれる方が盛り上がるよなぁ!?