青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

53 / 53
No.53 あくなき

 

 

 BL11傑 VS. U-20日本代表。

 スコア、3‐2、BL11傑がリードしている。

 それは方々の予想を裏切った劇的な展開だった。

 開始早々、《不倒》宵越を起点とした凪誠士郎の得点。一時は糸師冴とオリヴァ・愛空による怒涛の反撃で2失点となったが、若きストライカーたちは勢いに呑まれることもなく、烏、凛による2得点を生み出した。

 これまでの日本サッカーにはない、猛攻撃というプレースタイル。

 当初、観客のほとんどはU-20代表の活躍を予想していたし、実際に楽しみにもしていた。BL11傑など高校サッカーに詳しい人間しかしらないのだ。一時その異常な計画が話題にもなったが、結局マスコミは日々流れる国内外のニュースに涎を垂らし、エゴイストの動向を過去のものとした。

 それが、前半45分で世間の下馬評が覆ることになった。そして、なお残り45分を心待ちにさせている。果たしてこのままBL11傑が押し切るのか、それともU-20代表が冴を中心に逆転し英雄の勝利を飾るのか。

 BL11傑の活躍を望んでいる人たちもいる。例えば、それは選手の家族たち。

 そして、能京高校カバディ部のような、赤き灼熱の世界よりやって来た者たちもだ。

 灼熱の余波は、王城正人や井浦慶たちがいる場所以外にも存在する。

 

「先輩! 高谷先先輩!」

「ん~、どしたのオガちゃん?」

 1人は、神奈川県奏和(そうわ)高校カバディ部2年、高谷(たかや)(れん)。跳ねた赤髪、人を食ったような不敵な笑みを浮かべる美丈夫。

 1人は、その高谷の後輩。奏和高校カバディ部1年、緒方(おがた)蒼介(そうすけ)。天然パーマな黒髪、男子としては平均的な体躯を持っている。

 奏和高校は、関東でもカバディ強豪校として有名である。そして高谷は2年生エースとして、緒方は1年にしてチームの参謀として活躍した。

「いいんですか!? 冬の大会も近いのに練習サボって……」

「いいじゃんいいじゃん♪ そういう緒方(オガちゃん)こそノリノリだったっしょー?」

 2人の先輩である3年、六弦(ろくげん)(あゆむ)は世界組4番だった。能京の王城とはライバル関係、何度も鎬を削り合った仲だ。

 そして能京と奏和も、触発されるようにライバルといえる高校同士となった。

「俺を負かしやがったたっつんがいるんだぜ? オガちゃんも気になるっしょ、ライバルが今何してんのか」

「そっ……れは! そうですけど!」

 高谷は天才だ。元水泳のホープにして、気まぐれでカバディをはじめ強豪校のエースとなった。緒方はサッカー時代の宵越を知っていた。サッカー経験者ではないが、宵越の活躍を見て、少なからず憧れてもいた。

 高校カバディ大会で激闘を演じた。だから、二人は他の部員に止められるのを知ってて、秘密裏にこの試合を観に来た。

 緒方は自分の感情に正直になることにした。つまり、優等生でいることを諦めた。少なくとも、もう夏の大会が終わって厳しい3年の部長・副部長はいないのだ。いたら恐らく首根っこを掴まれることになる。

「そうですね。勝ち逃げなんて許しませんよ。少なくとも、サッカーでカバディ以上に活躍してもらわないと」

「ね? でしょ!」

 高谷は笑った。

「楽しませてくれよ、たっつん。0点(ノーゴール)で終わるなんて……そんなカッコ悪いことしないよな?」

 でなければ、俺がサッカーに転向してお前の活躍を奪ってしまうぞと。

 本気で、高谷は考えている。

 

 

────

 

 

 そしてやはり、カバディを知る人間は他にいる。

「そっか……これが宵越くんなんだね」

 穏やかな顔つきだった。だが彼もまたカバディにおける天才である。伸びつつある紅茶の髪。そして、周囲の人を圧迫するようなガタイの良さ。

 埼玉紅葉高校カバディ部2年副部長、佐倉(さくら)(まなぶ)。宵越が現在も扱う《回転》の技術を持つ先駆者である。

「カバディも使って本当に化け物になったじゃん──能京の獣が」

 跳ねた黒髪、特徴的なのは糸目。実力こそ佐倉に劣るが、埼玉紅葉というカバディ部を作り上げ、1年生のみで関東大会ベスト8の結果を生み出した立役者。埼玉紅葉高校カバディ部2年部長、右藤(うとう)大元(ひろもと)

 そして、その隣にはまだ2人、それぞれ質の違う筋肉マンがいる。

「ははは! アイツ、相変わらずバケモンでやんの!」

 天パ、元ヤン。そして現在は1人のスポーツマン。能京高校カバディ部2年、新部長。水澄(みすみ)京平(きょうへい)

「ふむ……脚を使うだけあって、皆見事な大腿四頭筋……特に赤毛の彼、細身の割に素晴らしいじゃないか」

 黒髪白目。三白眼ではない白目。好きなものは筋肉とゴリラ。筋肉を愛し、筋肉に愛された男。能京高校カバディ部2年、新副部長。伊達(だて)真司(しんじ)

 同学年で、共に合宿で研鑽を積んだ仲。四人は共に観ることを試合前に決めていた。

 水澄が言った。

「前、宵越が畦道たちとサッカーで勝負したんだけど。その時も思ったよ、アイツスゲーって」

「だよなぁ。元々デカいし速いし。ズルすぎるんだよ……!」

「あはは、ヒロ(右藤)、言ってたもんね。合宿の頃から文句たらたらで」

 カバディ時代から宵越を評価していた。それぞれ思う所もある。

 水澄も伊達も、宵越と別れた人間だ。寂しさがある。少なくとも、数年のうちに宵越がカバディに戻るなんてことはないのだと、2人ともわかっていた。

 遅れてそれを聞いた佐倉も右藤も、そして埼玉紅葉の全員も。等しく思っている。勝ち逃げされた。悔しいと。

 カバディからいなくなったから助かったなんて思わない。右藤の「ズルい」は、純粋に宵越の能力を評価してのものだ。

 エゴイストだけが、勝ち負けを悔しがるわけではない。

 ここにいる全員が。カバディ部の全員は。観客の一部は、確かに。

 スポーツマンなのだから。

「じゃ、後半戦も見せてもらおうぜ。《不倒》のカックイイところを」

「そうだな。あれからどう筋肉がどう変化したのか。まだ45分だけじゃ物足りない」

「僕も……サッカーから学ばせてもらうよ。宵越くん」

 それぞれの瞳に、熱を携えて。

 

 

────

 

 

 チーム青い監獄(ブルーロック)陣営、ロッカールーム。

 1点をリードしての前半終了。課題はあるが、それでもエゴイストたちは確かにチームとして団結していた。

 ベンチのメンバー、そしてピッチの上で戦うメンバー。それぞれ士気は高い。

 そして、一部怨嗟のような滾りを顕わにしている者もいる。

「みんな、前半お疲れさま!」

 青い監獄(ブルーロック)の職員である、総指揮である絵心を補佐する女性帝襟(ていえり)アンリがやって来た。彼女こそ、この青い監獄(ブルーロック)計画を発進させた張本人であると言っても過言ではない。

 彼女も青い監獄(ブルーロック)のエゴイストだ。

「前半の総括と後半の戦術について、絵心さんから説明があります」

 遅れて、絵心が入ってくる。

「静まれ、才能の原石共。まずは『なぜ得点が奪えたのか』。その正しく理解する必要がある」

 絵心は続けた。

「糸師冴が中核をなし、愛空擁する鉄壁のカルテット。攻撃は何度も入れ替わり、カウンターの応酬もあった。奪った点は3つ。凪誠士郎、烏旅人、そして糸師凛」

 この試合は文字通りの生か死か(デッドオアアライブ)。絶対に負けるわけにはいかない。フォーメーションやコンビネーションなど、事前に作戦を練った。それでも同世代のトッププレイヤーたちは強く、結果的に1点リードのみの接戦となっている。

 その中で注目すべきは、3得点ではなく、その得点を生み出した流れ。

「この得点を得点たらしめた……U-20代表の壁を打破したのは2つの契機だ。宵越竜哉。糸師凛」

 33人の選手たちが、一斉に2人に注目する。

「宵越竜哉。初撃、愛空が弾いたボール。あくまでマイボール、リスタートする選択もあった。練習中では同様の場面、全てを獲ったわけではない。なぜそうした?」

 宵越は不敵に答えた。

「ピッチの上で言ってやったがな。全員、どこかしら緊張して固まってたから……喝を入れてやっただけだ」

 宵越は負けず嫌いで練習の鬼であるが、メンタルの完成度はプロに匹敵する。その宵越が持つ、恐らく誰にも負けない天性の才。それは流れを作る能力。土壇場でわかりやすい奇跡を作る力。そして、序盤は手が付けられないほどに結果を残すのだ。

「フォーメーションチェンジからの、蜂楽の突破。そこに流れ込んだ潔の動き。あのパフォーマンスを殺すべきじゃなかった。だから繋げた」

 その結果、千切豹馬、氷織羊、凪誠士郎へと初撃のパフォーマンスを成し遂げた。

 この宵越のメンタリティこそ、開始たった6分で1ゴールを奪えた契機に他ならないと絵心は言う。

 2点目の烏の得点もまた、宵越の熱によるもの。もちろん、絵心は烏の活躍も等しく評価している。

「糸師凛。1‐1の状況、練習よりも潔世一との距離を詰め。宵越を巻き込んで自分中心の三角形(トライアングル)とすることで、自分の選択肢を大幅に増やしたな。何故そうした?」

「相手のDFが想像以上に堅かった……そこを抜けなきゃ始まんねぇだろ。俺のための死に役が必要だった。それだけだ」

「なるほどね」

「体よく利用できたなんざ思ってねぇよ。結局クソ《不倒》から奪うしかゴールできなかった。泣きたいくらいだ」

「喧嘩売ってんのか凛てめぇ」

「ああ?」

「お?」

「ギャンギャンさえずるな馬鹿(宵越・凛)ども」

 絵心は眼鏡のフレームを直した。

 そして見る。《死に役》と称されたもう1人を。

「……さて、潔世一。お前は自分が死に役だと思っているか?」

「いえ、ゴールを奪う気でいます」

 即答だった。

「ああ、それでいい。フィールドに立つ11人全員が自らを主役だと信じ、戦い抜くためのエゴがお前らにはある」

 宵越と絵心は、ある種対立している。絵心が宵越を誘った、その瞬間から。

 宵越の活躍は、ある種絵心を負かすもの。それでも、絵心が育てた者たちは現状に全く満足していない。()()()勝つんだという矜持を持っている。

 だから絵心自身が満足していない。

「後半、これまでと同じように行くわけがない。お前らはまだ、何も成し遂げていない」

 満足するな。攻め続けろ。最後の1秒がゼロとなるまで。

「己が主役であることを放棄するな。後半の指示は1つだけだ」

 

「圧勝しろ。主役は1人でいい」

 

 絵心がロッカールームを後にする。11人でなくとも、全員が1つの目的と自分の勝利のために改めて己を鼓舞する。

 宵越も同じだ。

(全員が主役だと信じる……でも主役は1人でいいか。煽るじゃねぇか)

 宵越としては文句を垂れたくなる高説ではあるが、少なくとも否定はしない。

 宵越は、絵心の実験を見届けると決めたのだ。最善を尽くすために。

 同じように、最善を尽くすことができる仲間たちがいるのか、見定めるために。

 だから、このチームで戦うのだ。絵心が持つエゴイズムと、自分の熱を混ぜ合わせるのだ。

 勝利のために。

(凛も、烏も、凪も)

 それ以外、ゴールを生み出していない7人のストライカーに向けて。

(一緒に勝とうぜ。そんで、観させてくれよ。俺たちよりも強い(エゴ)って奴を)

 

 後半戦が、始まる。

 

 

 






・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-2
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛
試合進行:後半戦開始
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)

Q21 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》スターチェンジシステムで指導者は……(参考程度に)

  • 原作通り3分間限定でいい!
  • 5~10分限定くらいで柔軟にしよう!
  • 試合後半から居座っていいことにしよう!
  • ずっといれる方が盛り上がるよなぁ!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~(作者:Nera上等兵)(原作:進撃の巨人)

巨人の脅威によって人類が壁の中で暮らす時代に▼シガンシナ区のそこそこ裕福な商人の令嬢だったフローラ・エリクシア▼ある日、彼女の生活は一変した▼飛んできた瓦礫によって、両親は潰されて振り返るとそこに鎧の巨人が居た▼全てを失い、避難船で俯く少女は、少年の決意の一言で鎧の巨人に復讐を誓う!▼ウォール・マリア陥落した日以前の記憶を消失した彼女は、調査日誌にこまめに記…


総合評価:2346/評価:8.04/連載:179話/更新日時:2026年01月03日(土) 22:00 小説情報

ダンジョンに魔虚羅がいるのは絶対に間違っている(作者:パクチーダンス)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

深夜に思いついたネタ▼呪術廻戦とのマコラとは一部乖離がある。▼


総合評価:4720/評価:8.51/連載:4話/更新日時:2026年05月18日(月) 08:30 小説情報

100年に一人の天才と史上最強の弟子(作者:やぶゆー)(原作:史上最強の弟子ケンイチ)

金剛阿含は100年に一人の天才だ。▼勉強、スポーツ、格闘技、何をやらせても栄光を掴むだろう。▼ただちょっと近所が梁山泊なだけ……▼※ケンイチ2発表前から執筆していたため、世界観が異なる場合があります▼現在は毎週月曜夜と金曜夜に固定更新予定です


総合評価:3564/評価:8.28/連載:33話/更新日時:2026年06月26日(金) 18:40 小説情報

ようこそ暗殺者の卵がいる教室へ(作者:塩安)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

暗殺教室の潮田渚スペックのオリ主が、よう実世界を好き勝手に楽しむ話▼アンチ・ヘイトは念の為


総合評価:8017/評価:8.71/連載:27話/更新日時:2026年05月31日(日) 18:08 小説情報

Fate/stay night [Alter Ego of Calamity] ――理外の双貌 (作者:りー037)(原作:Fate/stay night)

冬木市で行われる魔術師たちの殺し合い『第五次聖杯戦争』。▼必勝を期して最強の剣士(セイバー)を召喚したはずの遠坂凛の前に現れたのは、万能の杯すら鼻で嗤う「呪いの王」両面宿儺だった。▼伏黒恵の肉体(全盛期の力)と、一度敗北を知り丸くなった(?)精神。▼二つの極致を併せ持つアルターエゴにとって、この命懸けの儀式は単なる「暇つぶし」でしかない。▼機嫌を損ねれば即・…


総合評価:3839/評価:8.49/完結:52話/更新日時:2026年06月05日(金) 22:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>