青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

56 / 56


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-3
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道
試合進行:後半12分(57分)。士道ゴール⇒千切・玲王交代⇒玲王によるパスカット
残交代枠:BL11傑(2)、U-20日本代表(2)





No.56 U-20日本代表CB オリヴァ・愛空

 

 

 青い監獄(ブルーロック)が熱をくべれば、U-20日本代表が負けんと奮起する。

 U-20日本代表が奮起すれば、青い監獄(ブルーロック)もまた次の段階へ進化する。

 

 玲王がなした、愛空の反射のプレーを99%コピーした守備。それは冴が進化させたU-20代表、そして、士道の攻撃を弾いた。

 複写(コピー)。自身をして器用大富豪と呼ぶ玲王が、誰かのプレーを真似ることで誰かに限りなく近いプレーを演じること。

 当然、元の選手の全てを真似できるわけではない。玲王自身の身体能力にも限界はある。だが逆に言えば、玲王の身体能力で可能なプレーなら、どんな技術でも99%という完成度で再現できるということだ。

 士道、宵越、馬狼──これまで玲王は複写(コピー)でもって再現してきた。そして今、守備のプレーすら取り入れている。

 そして玲王の記憶には、愛空のヘディングパスカットを宵越が拾った状況も残っている。冴や士道なら、能力値が違っても同じことをしかねない。

 だから、ヘディングの狙いを定めた。

「拾え! 蜂楽!」

「りょーかいカメレオン♪ いいじゃん熱っちぃ!」

 

 蜂楽(LWB)が躍動する。青い監獄(ブルーロック)随一の曲芸師の始動だ。

 目指すはカウンター、一撃必殺。

 蜂楽は即座に狐里(RWG)を躱した。熱くなっているのは化け物たちだけではないのだ。

 けれど、センターマーク付近に下がっている冴までは躱せない。蜂楽はボールを(DMF)へ繋いだ。

「いくで凡ども。はよ非凡になれや……!」

 中盤からのロングパス。ボールは再び潔に回った。

(ナイスお前ら……!)

 玲王がやってくれた。冴‐士道の一撃必殺ラインを無効化した。たった1回だが、この事実は大きい。

 そして無駄にはしない。この守備を己の1点に変えるのだ。

 潔はフィールドを見る。奥に愛空、その少し手前に仁王。横には音留と蛇来が構える。忠実な鉄壁の守備4傑(カルテット)

 それでも。

(恐れるな! 俺のゴールに必要な条件が、全て合わさる場所を探すんだ!)

 潔の能力は、空間認識能力。これをもって戦況の先を読み、どのDFも反応できない空間へフリーで飛び込む。それでも、潔の身体能力はあまりにも平凡だ。潔がこれまで生き残って来たのは、直撃蹴弾(ダイレクトシュート)によって時間を奪い、潔の先読みに追いつかせなかったから。

 つまり潔のゴールのために必要なのは。

 

 ①直撃蹴弾(ダイレクトシュート)でゴールを奪える場所。そのために、

 ②味方が必然潔にパスを出さなければいけない状況。そして、

 ③愛空をはじめとしたDF陣に自身の行動を読まれないこと。

 

(難易度鬼ムズイけど、でも……予見(キャッチ)するんだ、この眼と脳で!)

 潔の挑戦に宵越が乗る。凛を利用しつつ、2人で前線を駆け上がる。宵越‐凛とも凜‐潔とも異なるパス交換。

 試合後、宵越と潔はお互いのパス交換を反省し合い、そして互いにこう言った。

 

 ──お前とのパス交換はやりやすかった(イメージ共有が完璧だった)と──

 

 音留(RSB)を抜く。蛇来(LSB)を封じる。(DMF)を躱す。仁王(CB)さえも躱して見せる。

 (LMF)はフリーポイントに達して見せた。宵越(RCF)の右翼からのバックヒールパス。潔が抜け出したシュートを──

 ゴールポスト左上角に飛び込んだ愛空(CB)が防いでみせた。

(あの野郎……!?)

 宵越は驚愕した。これまでの愛空の動きと、明らかに違っていた。理詰めと反射で動くのではなく、その全てが結実し一瞬の後に動き出す反射のプレー。

 愛空の眼。瞳孔が開き、望洋と……全てを同等に視る。

 青い右目。緑の左目。左右、質の異なる輝き。それぞれが、戦場を睥睨する。

 愛空が弾いたボールは、ゆるく上空へ飛んでいた。それに一瞬目を向け、ヘディングの衝撃を感じさせない身のこなしで動き出した。

 自分でヘディングしたボールを、連続で跳び弾き返すという荒業をやってのける。明らかにこれまでの愛空とは異なる動き。

 宵越との連携によって生じた、最適なパス回しと直撃蹴弾(ダイレクトシュート)を弾かれた潔は、この場面に至っては怒りよりも驚愕に飲まれた顔をしていた。

(まさか、あの野郎……)

 その理由は、ただ一つ。

(愛空も、FLOWへ……!?)

 

 

────

 

 

 オリヴァ・愛空はストライカーになりたかった。

 幼少の頃から続けていたサッカー。その花形である英雄(ストライカー)という存在に憧れていた。

 だが、日本だけでなくドイツ・スウェーデンの血も引く彼は、偶然か必然かその身体を大きくする。

 チーム内でストライカーに憧れるのは彼だけではない。複数のFWが必要なサッカーにおいて、彼に求められたのは恵まれた体格を活かしたポストプレー。

 最前線のCFから、一歩下がった場所。

 お前がいれば他のアタッカーが機能すると、指導者(オトナ)はいつもそう言った。

 ある時、愛空は指導者に牙をむいた。世界一のストライカーになるために。

 

『もっとゴールを奪える戦い方がしたい』

『俺がやりたいサッカーを試させてください』

 

 指導者は返した。

 

『ダメだ。サッカーはチームで勝つスポーツだ』

『規律を守らなきゃ試合には出さない』

 

 愛空はそれ以上牙を出さなかった。

 指導者はみな、咲いていい芽にしか水をあげない。想定通りに育つ花以外は、咲くことを許されない。

 そして咲く場所すら決められて、いつの間にかすべての芽が同じ花になっている。

 愛空も例外ではない。味方へ献身し、中学生サッカーの頂点としての()()を手にした頃。

 

『監督。俺、世界一のストライカーになれますか?』

『なれるさ! 可能性はある!』

『俺はなれないと思います』

 

 気づいた時には、愛空自身が咲き方を忘れていた。

 ストライカーになれると信じていた自分が死んでいた。

 オリヴァ・愛空はストライカーにはなれなくなった。

 愛空は、指導者に怒りをぶつける気はなかった。自分の意志を貫き通せなかったことや、指導者の意志を跳ねのける才能がなかったのも事実だから。

 けれど、愛空はもう、誰かのために動くサッカー人生を辞めたかった。

 だから愛空は世界一のDFを目指す。

 誰かのためにサッカーはしない。同じ咲き方しかしないストライカーを、DFとしてぶち壊したい。

 

 でも、いつか、もしも。

 

 日本に咲こうともがく、本物の英雄(ストライカー)が現れた時。

 俺はその蕾を絶対に摘まない。

 そして手を差し伸べて。

(「咲け」と言える人間になりたい)

 

 

────

 

 

 愛空のスーパークリア。こぼれ球(セカンドボール)はさらにゴールから遠のき、P・Aの外へ流れていく。

 BL11傑は、もう一度攻撃を組み立てなければならない。

 未だ、瞳孔が開き続ける愛空の眼。

(こんな瞬間を、俺は待ってたんだ)

 そして、変化は愛空だけではない。

 愛空が弾いたボールを、凛が拾った。だがその凛の動きと連動して蛇来が食い止めた。2者が弾いたボールに向かって宵越が突っ込む。P・Aの外側中央、けれど仁王が体の全てを駆使してぶつかる。

 再びボールは弾かれた。

 潔のシュートの前、蛇来と仁王は、宵越、潔、凛の連携を前に動けなかった。それぞれ、今の凛と宵越を防ぐ手段と能力はなかった、と言っていい。

 だが、この一瞬、明らかに先のプレーよりも進化している。

 その真相をいち早く理解していたのは、離れた場所でその攻防を観察していた潔。

(愛空のポジショニングに他のDFが反応した──愛空がDFたちを誘導してる……!?)

 不完全だ。不完全だが、日本代表としての阿吽の呼吸を持つ4人だからこそ可能な、愛空に連動する支配的傀儡サッカー。

 いや、U-20日本代表の相互理解による連携。

 潔、凛、宵越の攻撃を防いだ。こぼれ球を拾った(RMF)のスーパートラップを──音留と愛空の二段階プレスで止める。

 攻撃時、WBは攻めの手札となる。氷織(RWB)が冷徹な視野でBL11傑の攻撃を止めない。ボールは敵陣中央の宵越へ。

(FLOWだろうが……勝つのは関係ねぇ)

 挑戦的集中とは、ある種偶然と必然が絡み合って生まれる状況だ。簡単に環境を設定できるわけではない。

 それでも、宵越の真骨頂は身体能力以上に思考力である。

(進化してるなら、それを前提に動く。反応されるなら、愛空を遠ざける)

 最速で最善に辿り着く能力は、世界でも類を見ない。

 それでも下されるのなら、宵越は自身の最善を越えていく。

 2連《カット》。相対した閃堂を置き去りにする。

 それでも、愛空はそこにいた。

 一瞬、ほんの一瞬。時が止まるように感じる宵越。

 一方、愛空とて余裕ではない。

 敵味方の配置、視界や次の行動、全身で理解できる感度が上がっている。その状況でさえ簡単に出し抜こうとしてくる宵越を前に、愛空は燃えあがり、震えあがり、そして哂う。

(お前もクルってんなぁ──どこほっつき歩いてたんだ《不倒》!)

 宵越と愛空が衝突した──背面踵供給(バックヒールパス)。宵越の選択。自分を囮にして別の人間へボールを繋ぐ。

「わかってるぜ《不倒》。お前はそういう奴だ」

「てめぇ、愛空──」

「だから、俺も俺を囮にすんだよ」

 ボールは凛へ。閃堂と仁王が突っ込む。

「舐めんなクソ雑魚共──」

 閃堂と、愛空に誘導された仁王。凛が動く。閃堂を抜く。だが、波状攻撃を前に凛は行動を奪われる。

 守備としての仁王、攻撃としての凛。単体としての実力は凜に軍配が上がるが、状況は全く違った。

 宵越からのパス供給。愛空との共闘。

 同じ連携という状況。どちらが力を発揮できるかは、明白だった。

 業を煮やした凛が、左翼の潔にボールを戻した。

「ようコソ泥ちゃん。何度でも、首輪付けてやるよ」

「愛空──!?」

 

 潔世一 VS. オリヴァ・愛空

 

「どうして俺がここにいるかって? 守備だからに決まってんだろ」

 ボールが潔に戻る。イコール凛による攻撃の勢いが死ぬ。イコール凛と連動した宵越の囮としての動きが減じる。その瞬間に宵越から離れた。言葉にするだけならひどく単純な──U-20における日本守備の頂点にいるしかできない、宵越・凛の波状攻撃を防ぎながら第三者(潔や凪)すらケアする神がかり的な動き。

 それだけではない。愛空もまた、かつて夢を見たサッカー選手だった。前半のゴールは、その残り火が熱にあてられて反応した。

 

『守備の気持ちがわかっていないから止められる』

 

 攻撃の気持ちがわかるから。わかっていたから、守備ができるのだ。

 別に、愛空はストライカーに未練はない。今は守備に生きがいを見出している。

 けれど、何も思わないわけがないのだ。

(なるほど、お前ら(BL11傑)は『もしも』の俺なのか)

 愛空ができなかった、逆境や規律を前に自分のエゴを貫き続けたのが、青い監獄(ブルーロック)のストライカーたち。

(だったら、俺に勝ってみろよ、青い監獄(ブルーロック)

 俺を破ってみせろよ。越えてみせろよ。咲いてみせろ。

 

 日本サッカーが生まれ変わるための。

 俺は、最後の大壁だ!!

 

 そして、愛空は潔のボールを蹴る。

 日本サッカーを変えろと、願いを込めて。

 

「やればできるじゃねーか、我儘主将(キャプテン)

 

 その願いは、エゴイスト()()に届いた。

「その体力、最後まで持つだろうな?」

「当然だろ」

 受け取った、新世代世界11傑、糸師冴。

 愛空は哂った。

 

「やっちゃえ、天才ちゃん!」

 

 

 






・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-3
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道
試合進行:後半14分(59分)。愛空の連続スーパークリア、冴ボール
残交代枠:BL11傑(2)、U-20日本代表(2)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~(作者:Nera上等兵)(原作:進撃の巨人)

巨人の脅威によって人類が壁の中で暮らす時代に▼シガンシナ区のそこそこ裕福な商人の令嬢だったフローラ・エリクシア▼ある日、彼女の生活は一変した▼飛んできた瓦礫によって、両親は潰されて振り返るとそこに鎧の巨人が居た▼全てを失い、避難船で俯く少女は、少年の決意の一言で鎧の巨人に復讐を誓う!▼ウォール・マリア陥落した日以前の記憶を消失した彼女は、調査日誌にこまめに記…


総合評価:2349/評価:8.04/連載:179話/更新日時:2026年01月03日(土) 22:00 小説情報

高嶺清麿の実力至上主義の教室(作者:Gussan0)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

人間界で千年に一度行われる100名の魔物の子による、魔界の王を決める戦いを見事勝ち抜き、遂にガッシュを王へと導いた高嶺清麿(たかみねきよまろ)。▼ガッシュと別れてから数週間後、彼は東京都高度育成高等学校への入学を果たす。▼そこで彼は新たな仲間と共に激動のスクール生活を送ることになる。▼今、高嶺清麿の新たなる戦いが幕を開ける。▼はんたーさんよりファンアートいた…


総合評価:16390/評価:8.2/連載:66話/更新日時:2026年01月14日(水) 19:03 小説情報

100年に一人の天才と史上最強の弟子(作者:やぶゆー)(原作:史上最強の弟子ケンイチ)

金剛阿含は100年に一人の天才だ。▼勉強、スポーツ、格闘技、何をやらせても栄光を掴むだろう。▼ただちょっと近所が梁山泊なだけ……▼※ケンイチ2発表前から執筆していたため、世界観が異なる場合があります▼現在は毎週月曜夜と金曜夜に固定更新予定です


総合評価:3628/評価:8.25/連載:38話/更新日時:2026年07月10日(金) 18:00 小説情報

暗殺教室 不良児は認められたい(作者:ZWAARD)(原作:暗殺教室)

 乃咲圭一は気力、情熱を失いつつあった。▼ 父に認められたい。そんな希望を抱いて努力した日々は父親とのすれ違いで泡の様に消えてしまった。▼ やる気を無くしてしまった彼は時間が経つほどに堕落し、気が付けば『エンドのE組』へ転落してしまう。▼ そんなある時だった。月の大部分が蒸発する大事件で世界が混乱する中、劣悪な隔離校舎の中で後に人生の師と仰ぐことになる2人と…


総合評価:8828/評価:9.09/連載:226話/更新日時:2026年06月05日(金) 11:00 小説情報

四角関係(作者:slo-pe)(原作:アオのハコ)

千夏先輩と同学年に、雛ちゃんの幼馴染がいたお話。▼pixiv▼https://www.pixiv.net/novel/series/12880641


総合評価:1135/評価:9/連載:45話/更新日時:2026年07月08日(水) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>