・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-3
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道
試合進行:後半14分(59分)。愛空の連続スーパークリア、冴ボール
残交代枠:BL11傑(2)、U-20日本代表(2)
U-20日本代表CB オリヴァ・愛空による
「愛空、キレッキレじゃん!」
「覚醒、すか」
『さあボールは糸師冴へ──U-20日本代表お家芸の速攻カウンターだぁ!!』
戦況が加速する。
熱が届いたのは
スコア、3‐3。まだ試合時間は30分以上残っている。これまでの乱打戦という状況を考えれば、どちらが失点したとしても取り返せる状況。
だが、ここは戦場だ。
それだけでない。
一点差以上の意味が、この得点にはある。
間違いなく、ここは戦場だ。たった一つの攻防が命のやり取りに等しい状況になりつつある。
流れに乗せてはいけないのだ。
不屈の精神を持つ宵越のみならず。
だから──烏は冴に立ちはだかった。
「させるかい、糸師冴」
センターマーク付近。
ここでもう1点決められたら、状況は絶望的になる。
(中盤で一瞬でも時間を稼ぐ。その間に陣形整えろ、
戦況を見透かし、どんな状況であっても冷静な判断ができる。それが烏旅人の強みだった。
もとより冴を1人で、それも正面から突破できる人間は今の
だからこそのこのマッチアップ。冴からボールを奪うのではなく、時間稼ぎのための動きだ。それによって冴の動きが限定され、パスコースを少しでも読めるようになる。
つまり、二子の
(ナイスです烏くん。糸師冴と
烏×二子の遠距離連動なら、冴の危険なパスコースを読むことができる。
守備の連動。U-20代表には劣る──それがどうした。自分たちは、この試合に勝つために全てを懸けてきた。
経験では勝てないだろう──それがどうした。
勝つのは俺たちだ。だから、過程なんてどうでもいい。
蜂楽は二子に感謝した。走る。状況は切迫している。それでも蜂楽は集中する。
(いいよ、二子が危ないところを視てくれるから──俺は迷わず狐里をマークできる)
左翼自陣。
各々出来ることを全うする。今、右翼で攻守ともに神速を体現したスピードスターはいない。
それでも、残された者の勢いが衰えることはない。
(蜂楽のサイドはケア完了)
かつて千切と二次選考の頂上決戦でマッチアップしたエゴイストは、その運命に酔った。
(ならば俺は
右翼自陣。
1人ずつの守備力でカウンターに備えた。
残されたBL守備、最後の1人。彼はこの時のために、3B体制の中央、
自陣中央。
(あとは俺が──
近づいてくる、世界の悪魔。世界に自分の遺伝子を残そうとする士道の笑顔は、常人にはどこまでも恐ろしく見える。
士道はまだ燃え滾っている。たかが1点ごときで満足できるはずがない。絶頂には程遠い。
(だよな)
ここまでの
復讐心が膨れ上がる。士道を止める──いや、
(来る、
復讐心。それは熱をくべる。士道と冴の連携に集中していく。
士道は迷うことなく突っ込んでくる。悪魔の眼はそれまでと異なっていた。楽しみながらも、深く遠くを見通す集中の眼。
(士道の覚醒は、続いている──!)
士道が右へ走る。即座に左へ切り返す。玲王はなんとか《カット》で食らいつく。それでも完全には防げない。
士道は、玲王の
ついていくのが精一杯。少しずつ遅れていく。
冴が烏の守りを突破した。放たれる士道への縦パス一閃。
瞬間の判断だった。士道と敵対・共闘してきた玲王だから、冴の超技術によるパス──通常であればまずシュート不可能な軌道でさえも、士道なら一撃でシュートを決めてくると理解できた。
その動きを、我牙丸は見ていた。玲王によるシュートブロックで、士道の狙うコースは我牙丸の左側の上下どちらかまで絞られた。
烏が支え、二子が分析し、蜂楽・蟻生・玲王が動く。その連携によって、一級品のストライカーである士道のシュートを、我牙丸が消す。理想的な守備の連携だった。
士道と冴という天才たちの共演を殺すこと。BL11傑守備陣は、その目的を前に協力し、最大限の力を発揮する。
結果──
士道の脚が閃いた。我牙丸が動く。
(ギャンブル! もう──勘!)
本試合がGK初体験という、恐らくこの
当然最終合宿でGKとしての練習をしている──ただ、身体能力のGK適正数値トップである彼は、まさしく野生児の勘を基に反応していたと言ってもいい。
思考を吹き飛ばし、本能で戦う。今この場において、我牙丸がなしうる最大限の動きだった。
下へ跳んだ。ボールは上へ上昇していく。
我牙丸の世界が白黒に染まった。絶望。空虚が襲い掛かった。
(上かよ──)
「どっかん!!」
士道の叫び。刹那の間。
(まだ、ワンチャン──)
跳んだ我牙丸は、大地に手を付けることができた。下へ跳んだから。
重力は我牙丸を動かす。
思い出す、伍号棟の最終試合。我牙丸はストライカーとして動き、身体をそらすアクロバティックプレーでスコーピオンシュートを試みたことがある。
強力なプレーに必要なのは、再現性。
我牙丸はそれを成す。逆立ちで、脚で士道のシュートを弾いた。
「──
「なんじゃそりゃぁ!」
士道は驚いた。喜んだ。哂いながら転がった。
ボールは脚を掠め、左上角のポストにぶち当たる。天に舞うボール。天運の瞬間。
我牙丸は倒れた。落ちるボール付近、近くにいる守備は玲王のみ。
超が、狐里が駆けこんでくる。触れば決まる状況。
玲王に、
「玲王、クリアしろ! コーナーに逃げろ!」
落ちてくるボール。見上げる玲王。
最初にボールに触れたのは──
────
そこに、一人の選手がいた。
玲王の視界の後ろに、いた。
二子の眼を欺けたわけではない。ただ、士道という強い輝きを放つ選手が前にいたから、二子の眼をもってしても辛うじて気づかなかった選手がいた。
「玲王くん、後ろ!!」
「!?」
今の玲王に、周りを俯瞰する余裕はなかった。舞い上がったボール、ただ1人の守備。できるならマイボールで前線へ繋ぐ。それに意識を集中していた。
だから、闇に紛れた閃堂を捉えられなかった。
U-20日本代表 閃堂秋人
閃堂は、二子の視界から離れた場所にいた。それは、二子にボールを奪われないためだ。前半ラストでボールを刈り取れたから、それが忘れられなかった二子に対する閃堂なりの復讐でもある。
悔しさがあった。FWとして、点を獲れない。冴にお株を奪われた。挙句、愛空がDFなのに活躍した。
士道が活躍した。超や狐里、U-20代表の仲間でさえ、士道を頼りにし始めた。
悔しかった。悔しくてたまらない。
──このチームのエースは俺だ!
冴のパス供給と士道の猛攻があったから、閃堂の存在は守備陣の意識から薄れることになった。
冴がいたから、守備陣は士道の攻撃に集中した。それは結果としてシャドウストライカーの動きとなった。
閃堂は、意識的には二子への対策しかしていなかった。閃堂はまだ、己のゴールを奪うためのストライカーとしては未熟すぎた。
偶然の産物だ。計算ではなかった。運がよかった。再現性はない。
けれど、ただ一つ
──最後の最後まで、己がストライカーであることを放棄するな──
──自分のゴールを諦めるな──
──サッカーには、運も偶然もあるんだよ──
──真に戦う人間にのみ、運は平等に降り続ける──
だから、それはまさしく、ストライカーのゴールだった。
「──ぉおらぁぁあ!!!」
駆け、跳ぶ。玲王、超、狐里の三人を乗り越えて。
低い位置でボールを受けようとした玲王よりも高い位置で。ボールを横に蹴っていく、無様な動きと稚拙なシュート。
ただ、それでも。
倒れた我牙丸の上を、白黒の球が進む。ただ一つの軌跡を描いている。
ホイッスルが鳴る。7点目が刻まれる。
熱狂は、ここにある。
閃堂秋人が、挑戦的に集中する。シャドウストライカーとして。士道が輝く中、完全な影からゴールを奪い獲った。
スコア、3‐4
閃堂が、吠えた。
その状況を、遠くで見ていた、オリヴァ・愛空。
(咲け)
愛空は芽を摘まなかった。
常に、ただ一言を伝え続けた。
『
『ああ』
閃堂も応えた。
愛空は、吠えた。拳を突き上げて。
この試合で、日本サッカーは変わる。
(
────
青い灼熱の世界へ
No.57 U-20日本代表FW 閃堂秋人
・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-4
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道、閃堂
試合進行:後半16分(61分)。閃堂ゴール。
残交代枠:BL11傑(2)、U-20日本代表(2)
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世界組8番・早乙女幹也
この回、最高でしたよねぇ……!