青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

58 / 58


・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-4
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道、閃堂
試合進行:後半16分(61分)。閃堂ゴール。
残交代枠:BL11傑(2)、U-20日本代表(2)





No.58 その先に

 

 

 U-20日本代表、そのストライカーがゴールを奪った。

 快哉をあげる。

「閃堂!」

 エースに駆け寄る仲間たちは、まるで我がことのように喜び、まるで決勝点のような1点を喜び合う。

 FWたちがもみくちゃになって、それをDF陣が諫め、あるいは立ち上がらせた。

 そして、閃堂は糸師冴に立ち向かった。

「どうだ、天才……獲ってやったぞ! これで文句はねぇだろ!?」

「……はっ」

 冴は後ろを向いた。

「たかが1点で喜んでんじゃねぇよ。ヘボストライカー」

「ぐぅ……」

 閃堂は呻く。この期に及んでも冴の態度は変わらない。

 だが、ただ一つ。

 

 ()()()()()()と、そう呼んだ。

 

 閃堂は、冴に二の句を告げられなかった。それは別に冴が褒めないとか、言葉が悪いことにイラついたからではない。ただ、後ろから衝撃が襲い掛かったから。

 それは士道によるものだった。背中を思いっきり叩いたのだ。

「ぐぉ……!? てめぇ……」

「いいじゃねぇか、欲望丸出し盗人ストライカー!」

「うっせぇ……盗んでんのはてめぇの方だろ!」

「その意気その意気、グラドルストライカー♪」

「さっきからヘボだのグラドルだのなんだお前ら!?」

 どうも閃堂はいじられ役が似合うらしい。

 だが、士道が閃堂をある種褒めたたえているのは真実だった。士道は爆発を求めている。自他を問わず爆発があれば満足する。実力の高低は問わない。

 偶然ではあるし、ピッチの上のストライカーとしての実力が低くても、士道は爆発そのものを讃える。

 だが、今士道が閃堂の背中を叩いたのはそれだけじゃない。

「次は俺がもらうぜ。だが、もっと熱くなれるよなぁ?」

「あ?」

「気づけよサルストライカー。耳と目の穴かっぽじってな」

 ヘボ、グラドル、続きサル。それはともかく、愛空が閃堂に言った。

「あれを見ろよ」

 4人がBL11傑を見る。

 スコア、3‐4。逆転に次ぐ逆転。それだけでなく、ここまで得点者は全員異なる。守備も盤石なU-20日本代表において、冴や士道の助力もあるとはいえ苛烈なまでの攻撃力を得た。それは絶望に他ならない。

 だが、少なくとも視線を落とす者はだれ一人としていない。

 そして、その中のさらに二人は、総指揮にして監督の元に走っていた。

 冴の眼が燃えていた。

「最後のホイッスルが鳴るまで、油断するんじゃねぇよ。あいつらはまだ死んでない」

 愛空は頷いた。

「だな。まだ30分以上……世界を変えるには時間が多すぎる」

 冴・愛空は理解している。そして士道も感じている。

 奴らはもがくつもりだ。いや──

 すべてをぶち壊すつもりだ。

 

「絵心さん!」

 

 監督、絵心甚八の下へやって来たのは2人。

 

 潔世一

 宵越竜哉

 

「このまま終わりたくない……俺たちはどうすればいい?」

 絵心は補佐であるアンリとも話していた。その会話を破り、潔は鬼気迫る表情で、息を切らしながら告げた。

「潔くん……」

「俺たちはアンタの言うとおりに全力で戦ってる! それでも、届かないんだよ!」

 エゴイスト。自らが前に立って英雄になろうとする者たち。

 そうはいっても、チームは監督がまとめる。指針がなければ11人は巨大な1つとなって動きはしない。

 だから合宿をした。作戦を練った。敵の実力を分析した。

 青い監獄(ブルーロック)は、エゴイストとして……同時にチームとして、矛盾するその課題に全力で立ち向かった。

 恐らく、士道や冴のいないこれまでのU-20日本代表には勝つことができただろう。だが、そんなものは関係ない。目の前にいる敵は、その程度ではない。

「教えてくれ……どうすれば勝てる?」

 潔は教えを乞う。勝つために。

 宵越もそれは同じだった。

「だとよ、()()。次、どうするんだ」

 宵越も、また諦めるつもりなど毛頭ない。勝つつもりでいる。それが《不倒》の《不倒》たる所以。

 仮に監督である絵心が現状の作戦を継続するなら、その中でどうにかして突破口を開いて見せると言わんばかりの態度だった。

 数秒の沈黙の後、二人が焦れる直前に絵心は返した。

「バカかお前ら。青い監獄(ブルーロック)はもう既に勝ってる」

「は?」

「へ?」

 宵越とアンリの間の抜けた声。歓声に呑まれて誰にも聞こえない。

 潔は、ただ無言でいる。

「確かにこの試合に負ければ青い監獄(ブルーロック)は消滅し、俺は日本サッカー界から永久追放されるだろう。だが、選手(お前ら)は消えない」

 絵心は言う。

 前半の圧勝、士道龍聖の躍動。ここまでは寸分の狂いもなく、絵心の読み通りだった。

 青い監獄(ブルーロック)は、この試合の最前線で活躍している。それは紛れもない事実。

 糸師冴に見初められた士道龍聖は日本サッカーのスターダムに立つだろう。その次のエースとして、糸師凛はU-20代表に入るだろう。

 そして他の青い監獄(ブルーロック)メンバーも、有名大学や国内リーグ、多方面から声がかかる。

「それだけのパフォーマンスをお前らはしたんだ。だからこの先の未来、青い監獄(ブルーロック)にいたことが有利になる時代が来る」

 ()()()()()()()。つまり、選手は活躍をした。そしてその活躍を結果に変えられなかった絵心ただ1人が、青い監獄(ブルーロック)の尖兵として消えるということ。

 絵心が言うのはそういうことだった。

 確かに、青い監獄(ブルーロック)そのものが消えるなら、「たった1人以外の人生はぐちゃぐちゃになる」ことはない。「負ければこの先一生日本代表になる権利を失う」こともない。

 やはり、青い監獄(ブルーロック)はリスクが高すぎる。たった1人のために、残る299名のかけがえのない才能を潰すわけにもいかない。

「そして俺が消えて、お前らが日本サッカーを──」

 

『ふざけるな』

 

 絵心の言葉を、思索を遮った。

 宵越・潔。二人の声が重なった。一瞬、ほんの一瞬だけ互いを視る。

 お互い想定外の言葉だった宵越にとっては柔和な潔から。潔にとっては厳しくも前向きな宵越から。そんな呪詛のような、殺意のような感情で声が出るとは思わなかったから。

 宵越はいつも以上に。潔は普段の優しさをかなぐり捨てて。

 互いの感情を理解する。相手に譲る気なんてさらさらない。

 けれど自然、言葉のタイミングが噛み合う。

「そんなこと、どうだっていいんだよ。俺たちは、今ここで勝ちたいんだよ」

 次のことなんてどうでもいい。負けることは、死ぬことだ。いや、何よりも。

 まだ、()()1()()()()()()()()()()()。なんの活躍もできていない。そんなことで、世界一のストライカーになんて──なれるはずがない。

「ふざけんなよ絵心。時間はまだ30分()あるんだぞ?」

 スポーツが違えば、当然1点の重みは違う。けれど、それでも。

「後輩を育てて、チームのために自分を捧げて、でも大事な場面、残り《0秒》で2点を取った人がいた。あの人の方が、今のお前(絵心)よりも何倍も熱かった」

 サッカー、カバディ。点差が開いた時、時間を殺すことができるスポーツ。

「なのにたかが《2点》足りないだけで、なに悠長に諦めてんだてめぇ」

 傍で聞いているアンリは思う。負けないために必要なのは、1点ではないのかと。

 違うのだ。

 

 ()()()()()()()()()()()2()()()

 

 負けることは死ぬことだ。負けることは、呪いを生む。

 負けなんていらない。どんなちっぽけな戦いでも。敵がどれだけ強大な存在だとしても。

 

「勝たせろ、クソメガネ。これはあんたが教えた感情だろ……!」

 

「言ったよな。失敗が許されないのはお前だって」

 宵越は決めたのだ。なってやると決めたのだ。絵心の信念すら温いと吐き捨てられるような、そんな存在に。

 連携も、エゴも、熱も、愛も使命も。全てを収斂させて、頂に立つために。

 だから。

 

「選べ、絵心甚八。俺に下るか……てめぇのエゴを貫くか」

 

 アンリは悪寒を覚えた。

 2人の少年。年齢は20にも満たない、無垢なはずの若者たち。

 その二人が抱える、勝利への餓え。敗北への嫌悪。

 世界一への、熱。

 世界一のストライカーを、世界一の日本を追い求める自分(大人)たちより、ずっと。

 だから、恐ろしい。

 世界を変えるのは、殺意にも等しいこの昂りだ。

 

「そうか……だが宵越竜哉。いつ、俺の信念が俺に負けたと言った?」

 

 絵心は眼鏡のフレームを直した。ともすれば手が出ると錯覚するような気迫の2人に、総指揮はまったく翻らない。

「宵越竜哉。潔世一。下りはしない。だが乗ってやる。ここからは俺も読めない未曽有のプランだ」

 そして、解き放たれる。

 血に餓えた獣──あるいは、一振りの剣。

 

「出番だ。馬狼照英、雪宮剣優」

 

 

────

 

 

『さあ後半戦も中盤! あーっとここで! 逆転されたBL11傑、選手交代です! いっきに2枚変えますね!』

 

 OUT 二子一輝・凪誠士郎

 IN  馬狼照英・雪宮剣優

 

CF:糸師凛/宵越竜哉

RWG:馬狼照英

LWG:雪宮剣優

OMF:潔世一

DMF:烏旅人

LSB:蜂楽廻

RSB:氷織羊

CB:御影玲王/蟻生十兵衛

GK:我牙丸吟

 

 

 出ていく、あるいは入る。それぞれの選手が交わる。

 二子と雪宮。ハイタッチをする。

「おつかれ、二子。ナイス守備だった」

「期待してます。ナイスゴール」

「もちろん」

 凪と馬狼。

「俺たちもする? ハイタッチ」

「黙れ。おこぼれゴールで満足して死にやがって、クサオが」

「……」

 凪は去り際、馬狼の頭を叩いた。

「ああ!? てめぇクサオ──」

「黙れよ。痛いとこ突きやがって」

 凪は戦場を見返した。馬狼は舌打ちした。

「チッ、てめぇが気に入らねぇのは別のことだろ」

「……」

「大人しく見とけ。てめぇらの連携も何もかも、全部喰らってやる」

「言っとけ。いや、逝っとけ」

 馬狼が戦場へ入っていく。

 凪は、最後に一度だけ振り返った。

 そして一言呟いた。

「負けんな……玲王。1人でも」

 馬狼・雪宮を迎え入れる、BL11傑。

「来たやんけ、キング。俺らん時(トライアウト)みたいにちゃんと喰らうよなぁ?」

「望み通り5点でも6点でも入れてやるよ。ちゃんと働けよ(心臓)

「へいへい。はっ、こちとら先に1点獲ってるちゅうねん」

「馬狼! お前、ポジション右WGな。縦の連携で右サイドから──」

「おい、(ヘタクソ)

 馬狼はドストレートな悪口で潔の言葉を遮った。ただ、これは潔と馬狼が和解する前の罵り合いの名残で、互いに《ヘタクソ》に少しこだわりを持っていたりする。

「お前のプレーつまんねぇぞ?」

「……うっせぇ」

 潔は何も言えなかった。この独裁の王相手には、連携の確認なんてやっぱり無駄だと再認識した。というより、馬狼が投入された際のパターンも予習はしているから潔がやけくそになったというのもある。

「来たな、雪宮」

「やっとね、《不倒》」

 他方、宵越と雪宮である。

「珍しいじゃん。まだ1点も獲れてないの」

「うっせぇ、こりゃ作戦だ」

「絶対嘘。前半凛に取られて根に持ってる」

「……ちっ」

「俺も同じだ。レギュラー、選ばれて当然だと思ってた。結果はベンチ。恨むよ、宵越」

「おいおい、恨むの俺だけかよ」

「さてね。いずれにしても……」

 雪宮は、最後に一度だけサングラスを整えた。

「刺し違えても獲るよ。諸刃の剣として」

 宵越は笑った。

「頼むぜ」

 馬狼と雪宮。それぞれ下した面子。それでも、諦めることなく絶望を跳ねのけて、宵越のチームからゴールを奪った反逆者たちだ。宵越にとっては頼もしいことこの上ない。

「お前ら、ここからはバランスは無視しろ。刺し違えてでも勝つぞ」

 凛が言った。その言葉に異存はない。

 (LCF)宵越(RCF)(OMF)馬狼(RWG)雪宮(LWG)。全てを破壊に全振りしたフォーメーション。この5人は守ることなど考えない。

 残り約30分。最後まで、諦めない。

 交代劇も、攻撃前振りも、敵味方に殺意を向けるのも、すべては。

 ただ一つ。その先にある、勝利を手に入れるために。

 

 

 

 






・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-4
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛、士道、閃堂
試合進行:後半16分(61分)、二子・凪OUT⇒雪宮・馬狼IN
残交代枠:BL11傑(0)、U-20日本代表(2)



※さて、(やれるかどうかは別として)ネオエゴイストリーグの展開について考えています。
元々の想定してたチームはありまして、もう一つ別チームの候補も含めて、現状2チームまで案が絞られています。ただ、どちらのチームでも現状の宵越㏌ブルーロックでネオエゴ終了までに書きたいことのいくつかが描けないのです……

・Aチームを選べば目標①②が達成できる。
・Bチームを選べば目標②③が達成できる。

はてさてどうするか……
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