青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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No.6 チームY

 

 

 チームXとの初戦を終えた宵越たちチームZ。彼らの次なる対戦相手はチームYだ。

 青い監獄(ブルーロック)伍号棟の全5チームによる総当たり戦。全試合が終了した時点で上位2チームが二次選考に進む。さらに下位3チームも一人だけ、チームで最も得点が多かった1名が二次選考に進むことができる。

 総当たり戦は、勝利チームに+3、引き分けの場合+1、敗北チームには加点なしというルール。この場合、どの程度勝てば上位2チームとなるのか、ある程度の予想はできる。

 仮に全チームの戦績を互角とした場合、勝ち点は2勝(6加点)2敗(0加点)の6点。当然勝利のためにはそれを上回り、最低でも7点を取らなければならない。これは全4戦のうち2回負けたら届くことのない数字だ。

 理屈でいえば残る3戦で1敗北のみに抑えればいい。この思考は、チームZの他のメンバーに数少ない余裕を与えた。

 そのうえで、チームXに勝利した日のミーティング。宵越は改めて絵心のメッセージから読み取った解釈をチームメイトに伝えた。あくまで得点王復活制度は0から1をつくるための発破に過ぎない、結局はこの1を100にしないと、先のチームXのように瓦解してしまう、ということを。

 ストライカーとして、そう簡単に得点の機会や自分のゴールを譲る気はない。だが他のメンバーの1を見つけてこそ、この先を勝ちぬくことができる。2得点をもぎ取った宵越の1でも、宵越の陰にいても冷静なパス回しとポジショニングで1ゴールを奪った西岡の1でもなく、七星を含めたその他の全員の1が。

 だからこそ。宵越は煽っていく。

「自分のためでも、チームのためでも、なんでもいい。我を出せよ、お前ら」

 灼熱を生み出すために。

 

 

────

 

 

 先の試合を経て、チーム内順位はわずかに変化していた。

 宵越竜哉。266位から265位へ。

 西岡初。265位から266位へ。

 その他のメンバーも、若干の変動があった。

 宵越と西岡についてはゴール得点の数によるたった一つの違いではある。だが、ゴールを生み出せばその分だけ自分の価値が上がっていく。得点が自分の価値になる。それはプロの世界にもある歴然とした事実。青い監獄(ブルーロック)はどこまでもストライカーを煽ってくる。

 そうして、チームX戦から二日後。チームYとの試合が始まる。

 チームZの布陣は初戦と概ね同じだ。宵越を右側、西岡を左側としたツートップ。

 ただし、ポジションとしては西岡がやや前のめりとなり、宵越がわずかに後ろとなる実質4-5-1の攻撃的な布陣だ。西岡、左寄りのCF。宵越、RWG寄り。

 理由は言うまでもなく、前線にいる誰もがゴールを奪えるようになるために。

 キックオフ。今回は相手のキックからのスタートだ。

 初戦を経て、今度はどちらのチームもお団子サッカーのような0を展開しなかった。

 ボールは敵陣に下がり、敵の選手に運ばれる。前線にいる宵越と西岡が前に出るが、下手に突っ込もうとするとさらに敵陣奥深くへボールを下げてしまう。ストライカーだらけの集団としては覇気のない攻め具合だが、サッカーでは立派な戦術である守備的選択。

 サッカーは11人で行うスポーツだ。退場のような状況を除き同じ人数同士が戦う。攻撃側も迂闊に前に出ればカウンターを喰らってしまう。だから無意味に前にはいけない。

 初戦(チームX戦)と比べると、恐ろしく静かで緩やかな立ち上がりだった。敵は攻めてこず、ボールも宵越たちに渡さない。

 そんな立ち回りの最中、宵越と西岡は偶然互いのポジションが近づいた時があった。

 自然、会話が生まれる。

「……妙だね。宵越、どう思う?」

「さあな。向こうは俺たちと違って余裕もないし、手段は選ばねぇんだろ」

 チームYは既にチームVと戦っている。結果、チームYは一敗北だ。後がない。

 同じく、お団子サッカーも初戦で経験してきたのだろう。自信のなさを象徴するような戦法だった。

「だが、わかってるよな、西岡?」

「当然。油断できないよ、この運び方は絶対に『分かってる奴がいる』動きだ」

 それは、恐らくチームZでは宵越と西岡のみがわかっているであろう動きだった。

 膠着状態が過ぎるのだ。いくら何でも。

 宵越と西岡の実力は高い。攻撃力も十分だ。その攻撃力を持って初戦では敵陣を切り裂いてきた。結果チームX相手に点をもぎ取った。仮に相手の防御力が強ければ逆にカウンターを喰らっていた可能性もある。いずれにせよ、宵越と西岡は既にチームYに対して複数回の結果が出るレベルの攻防を仕掛けている。

 しかし、そのすべてが無に帰しているのだ。成功にせよ失敗にせよ、フィールドを穿とうとする攻撃をしているのに、そのギリギリのところで敵が引っ込み、ボールは宵越たちFWの遥か遠くへボールを回す。

 静かすぎる。こちらを焦らすかのように。

 その、鉄壁と言うよりはすべてを吸収するような。こちらの敵意や攻勢という熱を全て冷やすような、冷静な“眼”を持ち、攻撃の一手を摘み取ることができる人間が、チームYにはいる。

 かといって、決して静かすぎるだけではない。油断していれば確実に抜かれるようなパス回しで、ボールは少しづつこちらの陣地に近づいてしまうのだから、気を抜くことは全くない。

(それが誰か──ってのを、まずは探す戦いになりそうだな)

 宵越は嘆息した。久しぶりに精神の持久力を要するような試合展開だ。

 時間は刻々と過ぎていく。10分、20分、30分。

 そして40分が経過し、前半の終わりが近づいた頃。

 西岡と七星の連携、そのオフ・ザ・ボールを利用して前線に出た宵越に向かうパスがあった。

 そのパスをカットした選手は、再びボールを自陣へ下げた。敵からすれば攻撃の組み立て直しだ。

(コイツだっ……!)

 宵越は反転し、後退。西岡に前線を任せ、中盤にいる自分のストーカーへ。

「七星!」

「はいっす!?」

「お前、MFで前に出ろ。西岡のサポートだ」

「うぇ!? 宵越は!?」

「俺は──敵の心臓を潰す」

 言ってのけ、宵越はすぐさま目的の人物の前に立ちはだかった。

 その敵──水色の髪が特徴的な中性的な青年と対面(マッチアップ)する。

 BLランキング、258位。背番号7番。

 名は、氷織(ひおり)(よう)

「よう、お前だよな。チームYの心臓は」

「……ふぅ。ばれてしもた?」

 京都弁。関西の人間か。先の雪宮と同じく、宵越に心当たりはない。

 顔つきこそ中性的だが、宵越に負けない体格を持つ敵7番。けれど雪宮ほどのフィジカルプレイは得意ではないらしい。宵越の執拗なマッチアップを躱そうと試みている。

 だが前半も終了間際、そう簡単に躱せはしない。

(いい眼を持ってやがる。隠れるのが上手すぎてここまで攻撃できなかったのは──)

 自分たちチームZの落ち度と言うべきか、それとも敵7番の隠形の賜物と言うべきか。

 どうして今まで気づかなかったのか。

「だが、お前の存在を見つけた。これ以上自由にはさせねぇよ」

「相変わらずやねぇ。ブルーロックの代表に恥じないエゴイストや」

「あ? 虫唾が走るんだよ。俺を絵心と一緒にすんじゃねぇ」

 自由に動いていた氷織が宵越によって封じられる。戦場は傍から見れば凍り付いたように代わり映えがないが、それでもそこにいる選手たちにはわかる。保守的だったチームYのボール回しに綻びが生まれる。

 絶対防御の要たる氷織に宵越がついた。互いにとっての最強の盾と矛の衝突。それは敵にとっても味方にとっても、最大のカウンターを喰らいかねないという危険性を予感させるからだ。

 こうなれば、果敢に攻めようとチャンスを見計らっていた側に軍配が上がる。ボールは未だチームY側だ。けれど、ボールの回る軌跡が、徐々に、徐々に狭まっていく。

 前半A・T(アディショナルタイム)に突入。残り2分となった時、やっと、チームZにとってのチャンスが生まれた。

 それは劇的でもなんでもない。ただ単に、自然(サッカー)の摂理として生じる、攻撃側の選手が守備側の選手を突破する、それだけのこと。

 成したのは西岡だった。敵を躱し、前線に出て、味方からのパスを受ける。チームとして成長しつつあるチームZ。他のメンバーも弱くはないし、誰もが攻撃側としての意識を持っている。全員がCFを意識し、それを支えるOMFの意識も持っているからこそできるイメージの共有だ。

 静かに、当たり前に。熱もなく。プレーの結果として西岡の蹴撃が放たれ、開始47分にして初めて点が動いた。

 同時に前半終了のブザーがなる。

 西岡がガッツポーズ。自分の得点ではないが、それぞれ貢献した味方たちも快哉を上げる。

 一方敵は意気消沈気味だ。恐らくは終了間際まで鉄壁の守りを固め、最後の最後にカウンターを決める算段だったのだろう。考えによってはまだ後半があるのに、すでに膝に手をついている選手が多かった。

 ただ一人、氷織羊を除いて。けれど……。

(ちげ)ぇ)

 違う。それは宵越が悦ぶような、まだ反撃を諦めないような敵の眼じゃない。

 わかった。何故序盤に氷織の存在を見つけることができなかったのか。

 その原因はチームZの落ち度でも、氷織の強さでもなかった。

「熱が……凍り付いてやがる」

 宵越は汗をぬぐいながら呟いた。プレー終了後、互いのロッカールームに向かうまでのわずかな時間。宵越の後ろにいる氷織は目ざとく、いや耳ざとく聞いていた。

「それって、僕のこと?」

 宵越は振り返りもせずに話す。

「他に誰がいると思うんだ。お前の中の冷えた空気が、チームY全体に伝播しちまってるじゃねぇか」

「……敵にアドバイスなんて、ずいぶん余裕なんやね。《不倒》は」

「さあな。俺は絵心に言ったからな。『強いやつをよこせ』って」

 氷織は眼を瞬かせた。予想外の発言だったらしい。それでも、まだ氷織はあざ笑うでも焦るでもなく、ただ息を吐くだけだ。

「はっ、相変わらずのエゴイストやわ」

「……思い出すんだよ。俺より先にコーチにポジションを任命された癖に、俺を立てるために妥協しようとしたチームメイトを」

「は?」

 それはサッカーの話じゃない。たった数か月前、カバディの話だ。

 どういうわけかカバディ初心者の自分に憧れたそいつ。チームメイトとして妥協することは許せなかった。

 宵越は踵を返し、氷織に相対する。そして、わずかに身長が低いだけの氷織を対等に見た。

「お前、下手すりゃ俺よりも冷静にフィールドを見てやがる。そのくせパスカットだけ、それを攻撃に生かせばチャンスもあるだろうに、主張もねぇ」

 敵に発破をかけるわけじゃない。サッカーに戻ることを決意した宵越にとって、ここにいる300人は敵であり、同時に仲間だ。

 言いたいことは、一つだけ。

 

「むき出しにしろよ、氷織羊」

 

 

 

 




・背番号:宵越(9)、西岡(10)、七星(7)、氷織(7)

・現在の状況:チームY対チームZ
 スコア:0-1
 得点者:西岡



アニメブルーロック2期、すごかったですねぇ!
(凛ちゃん怖いよぉ)

Q3.《灼熱カバディ》既読者に印象をお聞きします。宵越竜哉はブルーロック内(初期)で……

  • 最強だろ。
  • 最上位かな。
  • 平均的じゃないか?
  • 弱ええ!
  • 《灼熱カバディ》未読者です。
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