チームXとの初戦を終えた宵越たちチームZ。彼らの次なる対戦相手はチームYだ。
総当たり戦は、勝利チームに+3、引き分けの場合+1、敗北チームには加点なしというルール。この場合、どの程度勝てば上位2チームとなるのか、ある程度の予想はできる。
仮に全チームの戦績を互角とした場合、勝ち点は
理屈でいえば残る3戦で1敗北のみに抑えればいい。この思考は、チームZの他のメンバーに数少ない余裕を与えた。
そのうえで、チームXに勝利した日のミーティング。宵越は改めて絵心のメッセージから読み取った解釈をチームメイトに伝えた。あくまで得点王復活制度は0から1をつくるための発破に過ぎない、結局はこの1を100にしないと、先のチームXのように瓦解してしまう、ということを。
ストライカーとして、そう簡単に得点の機会や自分のゴールを譲る気はない。だが他のメンバーの1を見つけてこそ、この先を勝ちぬくことができる。2得点をもぎ取った宵越の1でも、宵越の陰にいても冷静なパス回しとポジショニングで1ゴールを奪った西岡の1でもなく、七星を含めたその他の全員の1が。
だからこそ。宵越は煽っていく。
「自分のためでも、チームのためでも、なんでもいい。我を出せよ、お前ら」
灼熱を生み出すために。
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先の試合を経て、チーム内順位はわずかに変化していた。
宵越竜哉。266位から265位へ。
西岡初。265位から266位へ。
その他のメンバーも、若干の変動があった。
宵越と西岡についてはゴール得点の数によるたった一つの違いではある。だが、ゴールを生み出せばその分だけ自分の価値が上がっていく。得点が自分の価値になる。それはプロの世界にもある歴然とした事実。
そうして、チームX戦から二日後。チームYとの試合が始まる。
チームZの布陣は初戦と概ね同じだ。宵越を右側、西岡を左側としたツートップ。
ただし、ポジションとしては西岡がやや前のめりとなり、宵越がわずかに後ろとなる実質4-5-1の攻撃的な布陣だ。西岡、左寄りのCF。宵越、RWG寄り。
理由は言うまでもなく、前線にいる誰もがゴールを奪えるようになるために。
キックオフ。今回は相手のキックからのスタートだ。
初戦を経て、今度はどちらのチームもお団子サッカーのような0を展開しなかった。
ボールは敵陣に下がり、敵の選手に運ばれる。前線にいる宵越と西岡が前に出るが、下手に突っ込もうとするとさらに敵陣奥深くへボールを下げてしまう。ストライカーだらけの集団としては覇気のない攻め具合だが、サッカーでは立派な戦術である守備的選択。
サッカーは11人で行うスポーツだ。退場のような状況を除き同じ人数同士が戦う。攻撃側も迂闊に前に出ればカウンターを喰らってしまう。だから無意味に前にはいけない。
そんな立ち回りの最中、宵越と西岡は偶然互いのポジションが近づいた時があった。
自然、会話が生まれる。
「……妙だね。宵越、どう思う?」
「さあな。向こうは俺たちと違って余裕もないし、手段は選ばねぇんだろ」
チームYは既にチームVと戦っている。結果、チームYは一敗北だ。後がない。
同じく、お団子サッカーも初戦で経験してきたのだろう。自信のなさを象徴するような戦法だった。
「だが、わかってるよな、西岡?」
「当然。油断できないよ、この運び方は絶対に『分かってる奴がいる』動きだ」
それは、恐らくチームZでは宵越と西岡のみがわかっているであろう動きだった。
膠着状態が過ぎるのだ。いくら何でも。
宵越と西岡の実力は高い。攻撃力も十分だ。その攻撃力を持って初戦では敵陣を切り裂いてきた。結果チームX相手に点をもぎ取った。仮に相手の防御力が強ければ逆にカウンターを喰らっていた可能性もある。いずれにせよ、宵越と西岡は既にチームYに対して複数回の結果が出るレベルの攻防を仕掛けている。
しかし、そのすべてが無に帰しているのだ。成功にせよ失敗にせよ、フィールドを穿とうとする攻撃をしているのに、そのギリギリのところで敵が引っ込み、ボールは宵越たちFWの遥か遠くへボールを回す。
静かすぎる。こちらを焦らすかのように。
その、鉄壁と言うよりはすべてを吸収するような。こちらの敵意や攻勢という熱を全て冷やすような、冷静な“眼”を持ち、攻撃の一手を摘み取ることができる人間が、チームYにはいる。
かといって、決して静かすぎるだけではない。油断していれば確実に抜かれるようなパス回しで、ボールは少しづつこちらの陣地に近づいてしまうのだから、気を抜くことは全くない。
(それが誰か──ってのを、まずは探す戦いになりそうだな)
宵越は嘆息した。久しぶりに精神の持久力を要するような試合展開だ。
時間は刻々と過ぎていく。10分、20分、30分。
そして40分が経過し、前半の終わりが近づいた頃。
西岡と七星の連携、そのオフ・ザ・ボールを利用して前線に出た宵越に向かうパスがあった。
そのパスをカットした選手は、再びボールを自陣へ下げた。敵からすれば攻撃の組み立て直しだ。
(コイツだっ……!)
宵越は反転し、後退。西岡に前線を任せ、中盤にいる自分のストーカーへ。
「七星!」
「はいっす!?」
「お前、MFで前に出ろ。西岡のサポートだ」
「うぇ!? 宵越は!?」
「俺は──敵の心臓を潰す」
言ってのけ、宵越はすぐさま目的の人物の前に立ちはだかった。
その敵──水色の髪が特徴的な中性的な青年と
BLランキング、258位。背番号7番。
名は、
「よう、お前だよな。チームYの心臓は」
「……ふぅ。ばれてしもた?」
京都弁。関西の人間か。先の雪宮と同じく、宵越に心当たりはない。
顔つきこそ中性的だが、宵越に負けない体格を持つ敵7番。けれど雪宮ほどのフィジカルプレイは得意ではないらしい。宵越の執拗なマッチアップを躱そうと試みている。
だが前半も終了間際、そう簡単に躱せはしない。
(いい眼を持ってやがる。隠れるのが上手すぎてここまで攻撃できなかったのは──)
自分たちチームZの落ち度と言うべきか、それとも敵7番の隠形の賜物と言うべきか。
どうして今まで気づかなかったのか。
「だが、お前の存在を見つけた。これ以上自由にはさせねぇよ」
「相変わらずやねぇ。ブルーロックの代表に恥じないエゴイストや」
「あ? 虫唾が走るんだよ。俺を絵心と一緒にすんじゃねぇ」
自由に動いていた氷織が宵越によって封じられる。戦場は傍から見れば凍り付いたように代わり映えがないが、それでもそこにいる選手たちにはわかる。保守的だったチームYのボール回しに綻びが生まれる。
絶対防御の要たる氷織に宵越がついた。互いにとっての最強の盾と矛の衝突。それは敵にとっても味方にとっても、最大のカウンターを喰らいかねないという危険性を予感させるからだ。
こうなれば、果敢に攻めようとチャンスを見計らっていた側に軍配が上がる。ボールは未だチームY側だ。けれど、ボールの回る軌跡が、徐々に、徐々に狭まっていく。
前半
それは劇的でもなんでもない。ただ単に、
成したのは西岡だった。敵を躱し、前線に出て、味方からのパスを受ける。チームとして成長しつつあるチームZ。他のメンバーも弱くはないし、誰もが攻撃側としての意識を持っている。全員がCFを意識し、それを支えるOMFの意識も持っているからこそできるイメージの共有だ。
静かに、当たり前に。熱もなく。プレーの結果として西岡の蹴撃が放たれ、開始47分にして初めて点が動いた。
同時に前半終了のブザーがなる。
西岡がガッツポーズ。自分の得点ではないが、それぞれ貢献した味方たちも快哉を上げる。
一方敵は意気消沈気味だ。恐らくは終了間際まで鉄壁の守りを固め、最後の最後にカウンターを決める算段だったのだろう。考えによってはまだ後半があるのに、すでに膝に手をついている選手が多かった。
ただ一人、氷織羊を除いて。けれど……。
(
違う。それは宵越が悦ぶような、まだ反撃を諦めないような敵の眼じゃない。
わかった。何故序盤に氷織の存在を見つけることができなかったのか。
その原因はチームZの落ち度でも、氷織の強さでもなかった。
「熱が……凍り付いてやがる」
宵越は汗をぬぐいながら呟いた。プレー終了後、互いのロッカールームに向かうまでのわずかな時間。宵越の後ろにいる氷織は目ざとく、いや耳ざとく聞いていた。
「それって、僕のこと?」
宵越は振り返りもせずに話す。
「他に誰がいると思うんだ。お前の中の冷えた空気が、チームY全体に伝播しちまってるじゃねぇか」
「……敵にアドバイスなんて、ずいぶん余裕なんやね。《不倒》は」
「さあな。俺は絵心に言ったからな。『強いやつをよこせ』って」
氷織は眼を瞬かせた。予想外の発言だったらしい。それでも、まだ氷織はあざ笑うでも焦るでもなく、ただ息を吐くだけだ。
「はっ、相変わらずのエゴイストやわ」
「……思い出すんだよ。俺より先にコーチにポジションを任命された癖に、俺を立てるために妥協しようとしたチームメイトを」
「は?」
それはサッカーの話じゃない。たった数か月前、カバディの話だ。
どういうわけかカバディ初心者の自分に憧れたそいつ。チームメイトとして妥協することは許せなかった。
宵越は踵を返し、氷織に相対する。そして、わずかに身長が低いだけの氷織を対等に見た。
「お前、下手すりゃ俺よりも冷静にフィールドを見てやがる。そのくせパスカットだけ、それを攻撃に生かせばチャンスもあるだろうに、主張もねぇ」
敵に発破をかけるわけじゃない。サッカーに戻ることを決意した宵越にとって、ここにいる300人は敵であり、同時に仲間だ。
言いたいことは、一つだけ。
「むき出しにしろよ、氷織羊」
・背番号:宵越(9)、西岡(10)、七星(7)、氷織(7)
・現在の状況:チームY対チームZ
スコア:0-1
得点者:西岡
アニメブルーロック2期、すごかったですねぇ!
(凛ちゃん怖いよぉ)
Q3.《灼熱カバディ》既読者に印象をお聞きします。宵越竜哉はブルーロック内(初期)で……
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最強だろ。
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最上位かな。
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平均的じゃないか?
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弱ええ!
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《灼熱カバディ》未読者です。