No.66 環境
そこには、2人の少年が──エゴイストがいた。
「契約だ」
片方は告げた。険悪な雰囲気ではない。だが2人の少年が纏うそれは明らかに異質なものだ。快活さとも、情熱とも異なる。
何かを見据え、虎視眈々とその時を待つ──餓えた獣の本能と、なんとしてでも目的を果たそうとする人間の理性。
誰かが言った、スポーツに関わる態度として理想的な状態。それは野性と知性の両立である。
「俺はアイツらに勝ちたい。負け越したまま
「俺もだ。勝ちたいヤツがいる」
この2人にとって、立ちはだかる敵全てが勝つ目標であることに変わりない。
それでも、いつか掲げた目標のために、契約関係を振られた側のエゴイストが、今喰いたい、勝ちたいと思ったのは、ただ1人。
契約を提案した少年が続けた。
「だが、今、1人じゃ勝てねぇ。仲間がいる」
提案された側の少年は笑った。この
それでも。
「言っただろ。ライバルだって。俺にとって、仲間は仲よしこよしのお友達じゃねぇ。いつかそいつを越えるための協定だ」
「なるほど」
「だから、契約なんだ。化け物共を超えるための、この
「壁を越えるための……わかった」
2人は手を叩き合った。ハイタッチだ。
ここに契約が果たされた。
互いに目的は異なる。だが、1人では簡単に叶えられないそれを叶えるために。
望む姿と、望む強さと──望む結果を手に入れるために、2人は仮初めの手を取り合うのだ。
「俺とお前で」
「この
「越えていくぞ」
────
下馬評を覆し、U-20日本代表を相手に劇的な勝利を収めた
当初、
『覚悟しろよ、才能の原石共。
試合の後、絵心が
あの試合の後、生き残った
ある者は予定を合わせて遊び、ある者は家での帰省期間を満喫し、またある者は休みこそサッカーをしたいのだと練習にふけた。
そしてその間も──絵心の
そして
新たなる次元へ。世界一のストライカーへ。
日本サッカー界を飛び越えて、日本そのものにおいて注目の的になった
それでも、エゴイストたちは動じない。
宵越もまた、動じない。
(さあ……2度目だぜ、絵心)
宵越は、合流した潔や、千切や、蜂楽などと一緒に
宵越たちは、集合時間ギリギリにやってきた。待ち構えていたメンバーの顔触れに、ただただ驚くことになる。
CB、オリヴァ・愛空。
FW、閃堂秋人。
他、冴と士道を除く、全10人の
「よっ」
SB、音留が軽く手を振ってくる。
「ケッ、来たか潔世一、宵越竜哉……!」
閃堂が憎々し気に喉を鳴らした。
潔はただただ驚いた。
「U-20メンバー!? なんでお前らもいんの!?」
「なんでって、呼ばれたんだよ。絵心に」
答えたのは、オリヴァ・愛空。
19歳という年齢にしては大人びた──というよりだらしのない眼まで届く髪や、わずかな無精髭。ピッチの上ではこの上なく厄介なDFだったが、今の彼は覇気のにいちゃんとでもいえそうだ。
「新しいプロジェクトのメンバーに入れって」
そんな説明に、潔は呆けた様子で圧倒されていた。
宵越としては、強敵が増えるのは歓迎だ。
「なるほど。最初は敵だったが、次はライバルか」
「そういうこった。よろしくな《不倒》」
「ああ。オリヴァ・愛空」
生き残った35人、そこに元U-20の10名を加えた45名。
再び、頂点を競い合うことになる。
しかし、閃堂たちFW陣はともかく、愛空たちDF陣は世界一のストライカーを育成する実験場で何をするのか。宵越の脳裏に疑問が浮かんだ。
そしてその答えは、すぐさま明かされることになる。
『やあやあ才能の原石共。休日はいかがお過ごしでしたか?』
会場全体の明かりが失せる。今回、絵心は直接登場することはなく、会場奥の大モニターに映されることとなった。
『お察しの通り、既にU-20日本代表の全権は俺にある。負け犬共も利用価値があると見なし……ここにいるメンバーから新生U-20日本代表を創るコトとしました』
人を見下すような、引きつった悪い笑みの絵心甚八。閃堂など元U-20メンバーの一部からは殺気が漏れるが、
それよりも、宵越は納得した。
元々
だが、特別壮行試合によって状況は一変した。絵心の言うとおり下克上によりU-20日本代表の全てが絵心のモノとなったのだ。5人のみではなく、20名を超えるU-20日本代表そのものを選ぶ。そのために、絵心はDF陣すら呼び込んだ。
ここからは、ストライカーでありつつ、正真正銘の《強さ》を求められる戦いになる。
U-20W杯まであと100日余。目指すべき次の目標が示される。
『今のお前らが出場すれば、
生き残った35人、加えてU-20の10人。誰も彼もが成長をしなければ、確かにW杯優勝など不可能だ。
『ここで一つ質問です。お前らが
それぞれ、這い上がってきた人間たちは思索を巡らせる。
エゴの覚醒。潜在能力的武器の自覚。それはこれまで確たる武器や自分がなかった者たちが進化した原因だ。それだけではなく、宵越や凛や士道──最初から
それら全員が進化した原因は……
宵越は一言呟いた。それは誰にも聞こえなかったが、絵心の答えと全く同じが故に重なった。
『環境』
そして、この閉鎖空間故に進化したエゴイストたちをさらなる進化へと導くために、絵心は45人をこれまでの灼熱など生ぬるい、業火の中へと投入することにした。
ここからは
『お前らが次に身を投じるのは──』
絵心の手元に広がる5つの球型ホログラム。現れるのは国旗を模したデザイン。
すなわち──
『世界最高峰──欧州5大リーグだ』
これらは現在において、人・実力・資金力全てにおいて熱さを持つ欧州プロサッカーリーグの中で、さらに5つ、絵心が選んだ5つのリーグからなる。
『この5つの国の内、どの《環境》で自らを研ぎ澄ますか、お前ら各個人にはそれを選択してもらう』
・イングランド
・スペイン
・イタリア
・フランス
・ドイツ
イングランド。スピード&ラッシュを特徴としたこのリーグは、フィジカル至上主義でゴールを奪い合う。息もつかせぬエンターテインメントリーグと言えよう。
スペイン。テクニック&創造性を求められるこのリーグは、ただのゴールでは国民は満足しない。遊びや想像力を求める華麗なフットボーラーの集結する場所だ。
イタリア。狡猾で戦術的なフットボールを好むこのリーグは、古くは『
フランス。欧州における新星・若手の登竜門として機能してきたこのリーグは、近年大富豪たちの資金が流れ込み一大市場と化し……世界一のリーグへとひた走る熱い場所となっている。
ドイツ。『フットボールはゴールを多く奪うスポーツだ』と徹底理解するこのリーグは、超合理的で非常なまでに
これらの印象は絵心の独断と偏見にまみれているが、絵心がこの
そして個人が選んだ環境での新たなサバイバルがU-20W杯に向けての最終選考の場となる。
『世界最高峰の環境に身を置くお前らが勝ちあがるために必要な鍵は──
日本国内では突出していた武器や才能が、
それでもなお、他の誰でもなく、代わりの利かない己の勝ちを証明することが、この先に待つプロフェッショナルの通過儀礼となる。
そのために成りたい自分を思い描き、お前にとってのベストな環境を選ぶ必要がある。
絵心が高らかに嗤った。
『己の未来の全てを賭けて、戦うべき環境を選べ』
申し訳ねぇですが、幕間の2週間オフは飛ばしました。
宵越「俺の技を見せてやる……これが《カット》だ!!」
Q22 印象をお聞きします。宵越はネオエゴ終了時のBLランキングで……
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・1位になってそう
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・2~5位のトップ層に食い込んでいそう
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・6~15位のまずまずで突破しそう
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・15~23位のギリギリ感で生き残りそう
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・24位以下 絵心「ゴーホーム宵越」
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・ネオエゴ知らないんですよ私……