青い灼熱の世界へ   作:迷えるウリボー

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No.68 新英雄大戦

 

 

世界最高選手(ワールドナンバーワン)

ノエル・ノア

 

 世界一が、目の前にいる。

 いつか、宵越はカバディで日本一を眼にした。

 日本一の高校生。日本一の守備。それぞれ、学びや、闘争心を煽られた

 日本一? 世界一? 規模が違う? そんなことは関係ない。

 頂点に立つ人間は、それぞれが独自の覇気を持つものだ。

 

『勝利した者が強い。それが全てです』

 

 それを発したのは、世界組“1番”不破仁。

 目の前にいるのは、世界最高、ノエルノア。白い短髪。その姿が、いつか使命を掲げた最(・)強(・)と重なった。

 U-20日本代表戦の結果により、青い監獄(ブルーロック)プロジェクトは世界中から注目を集めることになった。絵心やアンリの夢物語、そして青い監獄(ブルーロック)とそこに住まうエゴイストたちの可能性に、強欲なスポンサーが目を向けた。

 そして、第二段階(フェーズ・ツー)は当初の想定より遥かに大規模かつ狂(・)っ(・)た(・)始まりとなる。

 ドイツ、バスタード・ミュンヘン。そのエースにして、現在世界最高選手の称号を持つノエル・ノアが、ドイツを選択した者たちの指導者(マスター)となる。

 そして、その前代未聞の環(・)境(・)はドイツに留まらない。

 それぞれの棟にそれぞれの国のチャンピオンチームのU-20代表11傑(イレブン)と、指導者(マスター)ストライカーが集結した。

 

 イングランド《マンシャイン・シティ》からは鋼の肉体を持つ、ノエル・ノアと評価を二分する世界的ストライカー。

完全英雄(パーフェクトヒーロー)

クリス・プリンス

 

 スペイン《FCバルチャ》からはリーグ得点王、ブラジルが誇る華麗なる天才ドリブラー。

舞踏技師(ダンスマン)

ラヴィーニョ

 

 イタリア《ユーヴァース》からは勝利の旅人、移籍したチームを常にチャンピオンに導き続ける優勝請負人。

王冠配達士(クラウン・メッセンジャー)

マルク・スナッフィー

 

 フランス《P・X・G》からは快速ストライカー、現在において世界のフットボールファンが最も注目する新世代No.1超新星。

神速神童(ゴッドスプリンター)

ジュリアン・ロキ

 

 それぞれがそれぞれの哲学を基に、青い監獄(ブルーロック)を指導していく。

 そして、その果てに行われるのが──

 

『ではここからは第二段階(フェーズ・ツー)の詳細を説明する』

 

 ホログラムに投映された絵心が、狂ったように笑った。

 まず、指導者の下でトレーニングを行い、招聘したメンバーを含めた20名のなかで、11人のレギュラーに選ばれる必要がある。

 次に、その11人には試合(ゲーム)が待っている。それはそれぞれの棟の選抜メンバー、つまり5大チームによるリーグ戦だ。

 その試合は、一定の特殊ルールの下に行われる。

 

 まず1つ目は、①3点先取制。スピーディーかつ劇的な試合を望むため。

 次に、②無限交代制。試合中は何度でも、何人でも交代が認められる。

 そして最後に、③スターチェンジシステム。ある一定のルールに則って、限定的に指導者ストライカーが出場を認める。

 そして『第二段階(フェーズ・ツー)』はU-20W杯にむけた最終選考の場でもある。やはり試合ごとにランキングは可視化され、その都度順位は変動し──

 

『最終試合終了時のランキング上位23名を、日本代表とする!!』

 

 青い監獄(ブルーロック)はもはや反逆者ではない。ついにU-20日本代表の座を正式に手にする段階まで来た。

『これがフットボール史上最高レベルの新世代世界生存競争(ワールドサバイバル)──』

 

『新英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)だ!!』

 

 震える者たちがいる。ドイツを選んだ9名、いや、8名。

 ただ一人。宵越は思考する。

(5チームのリーグ戦。全10試合、1チームは4試合)

 その中で、45人から約半数が脱落し、23人が選ばれることになる。

 いや、自分は23人に生き残る必要がある。

(いいぜ。やってやるよ)

 たった4試合で自分の存在を証明する。

 やれる。何度だって、こんな修羅場は乗り越えてきた。

 世界一への道を、大きな壁を。

(越えていく──!)

 宵越でなくとも、誰しも気合は十分だ。

 果たしてこれからどのような試練が待っているのか。興奮冷めやらない。

 だが、訪れたのは沈黙だ。

 新英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)の概要は理解した。だが、号令がない。『これから開始だ』という言葉がない。

 それは、まだ一つ、衝撃が残っているから。

『あーそれと、忘れる前に言っておこう』

 ホログラムの絵心は続けた。

『ドイツ、《バスタード・ミュンヘン》。ノエル・ノアのいるこのチームに、俺からの特別推薦でどうしても参加させたい人間(ヤツ)がいる』

 ドイツのみならず、別のチームにも同時に伝えているのだろうか。例え見えずとも、注目を受けることとなったドイツメンバーにわずかな緊張が走った。

『ここまで勝ち上がったエゴイストたちよ。お前らがこの計画の表(・)ル(・)ー(・)ト(・)だとすれば、敗れた者たちに俺は裏(・)ル(・)ー(・)ト(・)を用意し、強制的に異なる哲学をブチ込んだ』

 勝ち残った35人を衝撃が襲った。

 敗北からの復活。全く予想しないことだ。誰しも、青い監獄(ブルーロック)での敗北イコール死を意味していたから。

 だが、絵心は善良な人間ではない。彼こそ真正のエゴイストであり、選手たちの運命を弄び、自分の目的のために骨の髄まで利用する狂人だった。

『そこで生まれた強制実験体(モンスター)を──俺はここで再臨させる』

 絵心にとって、そ(・)れ(・)はもはや可能性を持つ才能の原石ではない。敗北し、地獄の底に堕ち、それでも死ぬことを許されずもがき苦しむ単なる生命体。

『さあ入れ! 敗者復活(ワイルドカード)から唯一生還したラスト・ワンの逆転者(ダークホース)──』

 

『國神錬介!!』

 

 現れた、青い監獄(ブルーロック)に特徴的な黒のボディスーツ。サッカーシューズはボロボロで見るに耐えない。

 オレンジ色の無造作に跳ねた髪は本来彼の快活さを表すのだろう。だがその男が瞳に宿すのは光ではない。どこまでも冷たく地獄を見てきた者の放つ、闇。

 國神錬介。宵越に覚えはない。

 たが、潔に五十嵐、そして我牙丸。五号棟時代に同チームだと聞いた彼ら3人が息を呑む音が聞こえた。

 ことスポーツに限り、どこまでも聡い男は思い出した。御影玲王と共に戦い、士道龍聖に敗れて脱落した男の名前を。

 

『役者は集結した。世界一熱い場所はここにある』

 

 全てを仕組んだ黒幕(フィクサー)が告げた。

 青い監獄(ブルーロック)第二段階。新英雄大戦が始まるのだ。

『あとはよろしく、指導者(マスター)ストライカー』

 絵心の映像は、その言葉を最後に儚く消えた。代わりに立ちはだかるのは、サッカー界の頂点に立つ男。

 まるで感情の見えない眼で、ノエル・ノアは壇上から降りてきた。

 同時、暗かった部屋に光が入る。部屋の一角の壁がスライドし、その奥には広大空間が広がっていた。近未来的な光の格子によって形どられた空間に、数階層上のゴールまで定められたいくつかのルート。

 そのアスレチックコースを背に、ノアは言った。

『ゴールまで進め。そこで待つ』

 その言葉はドイツ語で、宵越を始めほとんどの青い監獄(ブルーロック)メンバーには理解しえなかった。

 だが、ドイツの選手11人の覇気を見れば自ずとわかる。

 宵越が荷物を置き、軽くアップを始める。その横で清羅が仲間たちに告げた。

「ゴールまで来いだってよ」

 初っ端からドイツメンバー、いや21人での競争。

 五十嵐や我牙丸が気合いを入れる。Uー20から来た超や音留も準備は万全だ。

 宵越はスタートラインの前へ。10からのカウントダウンが始まった。

「さあ……勝負だぜバスタード・ミュンヘン」

 隣を見やる。穏やかそうな天パのベビーフェイス、全てを悲観した目のロン毛太眉、刈り上げに剃り込みを入れた糸目男。誰も彼も強そうなのは間違いない。

 だが明らかに彼らと一段階違う空気を持つのは、左腕に薔薇の刺青を入れたいけすかない青髪野郎。

 青髪野郎が、宵越に目を向けて酷く見下げた笑みを浮かべてきた。

 相手の言葉はわからない、こちらの言葉もわからないだろう。

 それでも、サッカー選手にとって一番の会話は言葉ではない。

「超えてやるよ、No.1」

 カウントダウンが進む。残り6。

「國神!」

 後ろから潔の声が聞こえた。

「敗者復活戦があったなんて知らなかった……! おかえりヒーロー!」

 試合中の潔からは信じられないほど爽やかで、嬉しそうな声色だった。

 かつて二次選考の終わり、35人集結の時に士道に喰ってかかったのだ。その時の怒りやショックを考えれば、今の潔の様子も納得だ。

「勝ち上がってきたのがお前で嬉しいよ俺……! また一緒に戦える!」

 絵心のアナウンスを考えれば、ドイツの様子は他の国のメンバーも聞かされている。千切や蜂楽の表情が眼に浮かぶ。

「やめろ。俺はもうヒーローじゃねえ」

 だが。

 かつて、士道にして『無垢で真面目な糞(クソ)ヒーロー』と言われた男は、正義とは真逆のヴィランめいた蔑みを返した。

 カウントダウン、残り4。

「そんな青臭ぇ戯言は地獄に捨ててきた」

 潔が、五十嵐が、我牙丸の言葉が続かない。残り3。

「覚悟しろ潔……世界一になるのは國神(おれ)だ」

 残り2。

 それでも、世界は弱い者を待ってはくれない。ドイツメンバーだけでなく、この場の全員の選手が構えた。

 残り1。

 新しい舞台(ステージ)へ飛び込むのだ。

 

 0。

 

TRAINING

START!!

 

 最初の勝(・)負(・)が始まる。

 

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