世界一が、目の前にいる。
いつか、宵越はカバディで日本一を眼にした。
日本一の高校生。日本一の守備。それぞれ、学びや、闘争心を煽られた
日本一? 世界一? 規模が違う? そんなことは関係ない。
頂点に立つ人間は、それぞれが独自の覇気を持つものだ。
『勝利した者が強い。それが全てです』
それを発したのは、世界組“1番”不破仁。
目の前にいるのは、世界最高、ノエルノア。白い短髪。その姿が、いつか使命を掲げた
U-20日本代表戦の結果により、
そして、
ドイツ、バスタード・ミュンヘン。そのエースにして、現在世界最高選手の称号を持つノエル・ノアが、ドイツを選択した者たちの
そして、その前代未聞の
それぞれの棟にそれぞれの国のチャンピオンチームのU-20代表
イングランド《マンシャイン・シティ》からは鋼の肉体を持つ、ノエル・ノアと評価を二分する世界的ストライカー。
スペイン《FCバルチャ》からはリーグ得点王、ブラジルが誇る華麗なる天才ドリブラー。
イタリア《ユーヴァース》からは勝利の旅人、移籍したチームを常にチャンピオンに導き続ける優勝請負人。
フランス《P・X・G》からは快速ストライカー、現在において世界のフットボールファンが最も注目する新世代No.1超新星。
それぞれがそれぞれの哲学を基に、
そして、その果てに行われるのが──
『ではここからは
ホログラムに投映された絵心が、狂ったように笑った。
まず、指導者の下でトレーニングを行い、招聘したメンバーを含めた20名のなかで、11人のレギュラーに選ばれる必要がある。
次に、その11人には
その試合は、一定の特殊ルールの下に行われる。
まず1つ目は、①3点先取制。スピーディーかつ劇的な試合を望むため。
次に、②無限交代制。試合中は何度でも、何人でも交代が認められる。
そして最後に、③スターチェンジシステム。ある一定のルールに則って、限定的に指導者ストライカーが出場を認める。
そして『
『最終試合終了時のランキング上位23名を、日本代表とする!!』
『これがフットボール史上最高レベルの新世代
震える者たちがいる。ドイツを選んだ9名、いや、8名。
ただ一人。宵越は思考する。
(5チームのリーグ戦。全10試合、1チームは4試合)
その中で、45人から約半数が脱落し、23人が選ばれることになる。
いや、自分は23人に生き残る必要がある。
(いいぜ。やってやるよ)
たった4試合で自分の存在を証明する。
やれる。何度だって、こんな修羅場は乗り越えてきた。
世界一への道を、大きな壁を。
(越えていく──!)
宵越でなくとも、誰しも気合は十分だ。
果たしてこれからどのような試練が待っているのか。興奮冷めやらない。
だが、訪れたのは沈黙だ。
それは、まだ一つ、衝撃が残っているから。
『あーそれと、忘れる前に言っておこう』
ホログラムの絵心は続けた。
『ドイツ、《バスタード・ミュンヘン》。ノエル・ノアのいるこのチームに、俺からの特別推薦でどうしても参加させたい
ドイツのみならず、別のチームにも同時に伝えているのだろうか。例え見えずとも、注目を受けることとなったドイツメンバーにわずかな緊張が走った。
『ここまで勝ち上がったエゴイストたちよ。お前らがこの計画の
勝ち残った35人を衝撃が襲った。
敗北からの復活。全く予想しないことだ。誰しも、
だが、絵心は善良な人間ではない。彼こそ真正のエゴイストであり、選手たちの運命を弄び、自分の目的のために骨の髄まで利用する狂人だった。
『そこで生まれた
絵心にとって、
『さあ入れ!
『國神錬介!!』
現れた、
オレンジ色の無造作に跳ねた髪は本来彼の快活さを表すのだろう。だがその男が瞳に宿すのは光ではない。どこまでも冷たく地獄を見てきた者の放つ、闇。
國神錬介。宵越に覚えはない。
たが、潔に五十嵐、そして我牙丸。五号棟時代に同チームだと聞いた彼ら3人が息を呑む音が聞こえた。
ことスポーツに限り、どこまでも聡い男は思い出した。御影玲王と共に戦い、士道龍聖に敗れて脱落した男の名前を。
『役者は集結した。世界一熱い場所はここにある』
全てを仕組んだ
『あとはよろしく、
絵心の映像は、その言葉を最後に儚く消えた。代わりに立ちはだかるのは、サッカー界の頂点に立つ男。
まるで感情の見えない眼で、ノエル・ノアは壇上から降りてきた。
同時、暗かった部屋に光が入る。部屋の一角の壁がスライドし、その奥には広大空間が広がっていた。近未来的な光の格子によって形どられた空間に、数階層上のゴールまで定められたいくつかのルート。
そのアスレチックコースを背に、ノアは言った。
『ゴールまで進め。そこで待つ』
その言葉はドイツ語で、宵越を始めほとんどの
だが、ドイツの選手11人の覇気を見れば自ずとわかる。
宵越が荷物を置き、軽くアップを始める。その横で清羅が仲間たちに告げた。
「ゴールまで来いだってよ」
初っ端からドイツメンバー、いや21人での競争。
五十嵐や我牙丸が気合いを入れる。Uー20から来た超や音留も準備は万全だ。
宵越はスタートラインの前へ。10からのカウントダウンが始まった。
「さあ……勝負だぜバスタード・ミュンヘン」
隣を見やる。穏やかそうな天パのベビーフェイス、全てを悲観した目のロン毛太眉、刈り上げに剃り込みを入れた糸目男。誰も彼も強そうなのは間違いない。
だが明らかに彼らと一段階違う空気を持つのは、左腕に薔薇の刺青を入れたいけすかない青髪野郎。
青髪野郎が、宵越に目を向けて酷く見下げた笑みを浮かべてきた。
相手の言葉はわからない、こちらの言葉もわからないだろう。
それでも、サッカー選手にとって一番の会話は言葉ではない。
「超えてやるよ、No.1」
カウントダウンが進む。残り6。
「國神!」
後ろから潔の声が聞こえた。
「敗者復活戦があったなんて知らなかった……! おかえりヒーロー!」
試合中の潔からは信じられないほど爽やかで、嬉しそうな声色だった。
かつて二次選考の終わり、35人集結の時に士道に喰ってかかったのだ。その時の怒りやショックを考えれば、今の潔の様子も納得だ。
「勝ち上がってきたのがお前で嬉しいよ俺……! また一緒に戦える!」
絵心のアナウンスを考えれば、ドイツの様子は他の国のメンバーも聞かされている。千切や蜂楽の表情が眼に浮かぶ。
「やめろ。俺はもうヒーローじゃねえ」
だが。
かつて、士道にして『無垢で真面目な
カウントダウン、残り4。
「そんな青臭ぇ戯言は地獄に捨ててきた」
潔が、五十嵐が、我牙丸の言葉が続かない。残り3。
「覚悟しろ潔……世界一になるのは
残り2。
それでも、世界は弱い者を待ってはくれない。ドイツメンバーだけでなく、この場の全員の選手が構えた。
残り1。
新しい
0。
最初の