チームX、チームYとの戦いを経て、チームZの連携と個の役割はさらに強固なものになった。
チームZの攻撃の中心であり、恵まれた身体能力を持って大抵の敵の動きを封じる役割をこなす宵越。宵越の思考を読み取り、連携の要として動きつつ、必要があれば自身もゴールを狙える西岡。
この二人を主体として、七星を始めとしたポストプレーヤーが中盤を繋ぎ、DF陣もそれぞれの役割を全うする。
宵越が最初の頃にかけた発破もあって、全員がストライカーとしての矜持を忘れたことはない。特にMFの位置にいるメンバーは、宵越と西岡が必要があればパスを回すこともあるから、ゴールを奪うメンバーもいた。
チームZの快進撃は止まらず、続くチームW戦も敵チームを勢いに乗せることもなく完勝することができた。
リーグ戦は当然チームZ以外のチームも戦い合っている。総当たりにして全10試合。
そして9試合が終わり……残るは最終試合、チームV対チームZを残すのみになった。
A.伍号棟総当たり戦結果
・①X対Z:Zの勝利
・②V対Y:Vの勝利
・③W対X:Xの勝利
・④Y対Z:Zの勝利
・⑤V対W:Vの勝利
・⑥X対Y:引き分け
・⑦W対Z:Zの勝利
・⑧V対X:Vの勝利
・⑨W対Y:Yの勝利
B.各チーム戦績
・V(3勝0敗)
・W(0勝4敗)
・X(1勝2敗1分け)
・Y(1勝2敗1分け)
・Z(3勝0敗)
C.暫定順位
・同率1位:V・Z(9点)
・同率3位:X・Y(4点)
・5位:W(0点)
「これが……ここまでの9試合の結果だ」
チームZのモニタールームには、11人全員が集合している。
モニターの前で、ミーティングの進行を仕切っていた西岡はそう告げた。
「現状、俺たちチームZはチームVと共に暫定1位だ。残り1試合、仮に負けたとしてもVが1位、俺たちが2位。上位2チームには入れる」
つまり、この一次選考はチームZ全員で通過できるということだ。
チームW戦を終えた時点で確定した事実ではあったが、改めてそれを噛みしめる時間は必要だった。
生き残った。また、明日も戦うことができる。少なくともこれでもう二度と日本代表に入ることができないなんていう絶望を味わうことは、少なくとも次の戦いではない。
残る1戦は、チームVとの事実上の頂上決戦になったわけだが。
「油断はしない。そうだよな、宵越?」
「ああ」
憮然とした態度で、けれど不真面目ではなくしっかりとモニターを見据えている宵越が肯定する。
「どういうことっすか……? 宵越さん」
「単純な話だ、七星。俺たちは今どこにいる?」
「えと……ブルーロック、すか?」
「ちげえよ」
七星はしょげた。
間違いではないのだが、この場で宵越が求める答えはそれじゃない。
「俺たちは……今、ブルーロック300人のチームZ。最底辺にいるんだ」
その言葉で自分たちの現状を理解したメンバーが……生唾を飲み込んだ。
300人──正確には入寮テストによって生き残った275人の中で、自分たちは底辺の11人。絵心の独断と偏見という、純粋な技術や選手の能力だけで測れるとは思えない選考基準ではあるが、自分たちはこの青い監獄で目指す頂点から一番遠い場所にいる。
七星が手を挙げた。
「でも……それでもおかしくねぇすか? だって《不倒》宵越がここにいるんですよ?」
「俺は一度サッカーから離れたからな。絵心のイカレ具合からしたら、別に底辺でもおかしくはないと思うが」
「ま、それに一番納得してないのは宵越だしね」
「うるせぇよ西岡ァ」
宵越、いやヨイゴシは駄犬みたいに西岡を威嚇する。
ランキングの基準は謎だ。そもそも独断と偏見というし、ゴールを奪えばその分だけランキングが上がる。さらにランキングの変動はあくまでチームの中で行われて、宵越と西岡は前3試合でそれなりの数のゴール数をたたき出しているが、チームZの次、Yチームのランキングにまで食い込むことはない。265位、266位のままだ。
明らかにランキングには作為的なものがみられる。
だが、ランキングの高低は関係ない。大事なのは「上位2チームと下位3チームのチーム内得点王3人、合計25人が二次選考に進める」という事実だけだ。
そして、この事実にはもう一つ示唆できることがある。
「大会だって、地区予選から本選、そして全国大会……果ては世界大会だ。大会の種類によるが、一つのブロックから複数のチームが選ばれるのはザラ。そして上位通過チームはシードとして、下位通過チームは別ブロックの上位通過チームと当たる。必然のことだろ」
宵越たちがいるのは伍号棟。先には
油断はできない。頂点に立つまで。
だから、次の伍号棟の頂上決戦も。
「勝つぞ。チーム……Z。油断せず。作戦を練って。伍号棟の頂点は俺たちだと証明する」
絵心の鼻を明かすために。
まだ見ぬ敵を──しのぎを削りあい、いつかそいつを越えると決めた
────
24時間後。
最終戦。チームV対チームZ。
頂上決戦。
両チームが入場する。
ポジション。宵越RCF、西岡LCF。二人を2トップとした4-4-2の布陣。
敵、チームVは、4-5-1。
戦いの前。どちらも負けたとしても、一次選考を生き残ることは決定している者同士の戦い。
それでも、22人全員が確かな熱を持っていた。瞳をたぎらせていた。
宵越が伝播させたチームZの熱だけじゃない。チームVもまた同じなのだ。果たして全員が何も言わずとも頂点への渇望を持っているのか……それとも、宵越と同じような熱を持つエゴイストが、チームVにもいるのか。
宵越はその答えを知っていた。
前を歩く。自分のスタートポジションまで進んでも、止まることなく。
宵越は好戦的な性格でもある。とはいえそれが態度に出るのは試合中か、あるいは煽られた時だけだ。
一度負けた相手のことはリベンジを果たすまで忘れない。それが宵越竜哉で、カバディでも何度か敗北を経験したことがあり、そして再選を果たしてきたことがある。
その時でさえ、敵を煽りにはいかなかった。
今日、この
目の前にいるのは──
チームVトップ、伍号棟
同じく伍号棟一次選考、暫定得点ランキングトップ、10ゴール。
「よう、久しぶりだな──
宵越との身長差、わずか1.5cm。ほぼ対等な目線。日本人としては珍しくもない黒髪。眼にかかる流れる髪だが、それ以上に特徴的なのは長い下まつげ──いや、すべてを撃ち殺すような冷徹な目線。
現在、日本サッカーで最も有名かつ人気が高い選手は、PIFAが選ぶ新世代
その弟──宵越と同学年にして、中学時代、宵越を全国ベスト4という称号に
BLランキング221位、糸師凛。
凛は、宵越を一瞥する。それだけだ。
「お前は……不倒」
「さすがに覚えてるか。嬉しいぜ」
「知らねぇよ。もう1年以上ものことだろ。死んだ奴が亡霊みたいな顔して現れようが興味もねぇ」
「……ああ?」
ひりつく空気。宵越のこめかみも動くが、けれどそれ以上に気になることが。
「お前……雰囲気変わったか?」
「……」
凛は踵を返した。
「ここは戦場だぞ? これ以上無駄口を叩く気はねぇよ」
「おいっ……くそ、無視かよ」
西岡が宵越をなだめた。
「宵越。試合が始まるぞ。これ以上はプレーで語るんだ」
「……しゃーねぇな」
凛も、宵越も、西岡も。全員が、今度こそスタート位置に立つ。
『それでは第伍号棟最終試合。45分ハーフ、チームX対チームZ──』
(戦場? 一度死んだ奴はもう生き返れないだと?)
宵越は最強ではない。強くはあっても、最高成績はベスト4。目の前にいる凛のように、いくらでも上がいる。
この
それなのに、凛は既にこのイカれた環境に適応しつつある。
(いや──中学時代はそんな奴じゃなかった)
油断もないが、仲間と連携もするし、まっとうに攻撃的で強い選手だった。
それがこの一年間と少しの間で、いったい何があった。
「確かめてやるよ、この俺の脚で」
『
チームZトップランカー、《不倒》宵越竜哉
VS.
チームVトップランカー、《天才の弟》糸師凛
決闘、開始──
前話Q.4の答えは……
魔王 でした!
なんとここ最近(2024年頃)の潔くんが読者から呼ばれてるのと同じ渾名なんですねー。王城の場合は素で登場人物から魔王と言われてます。
あ、でもカバディ以外の時は細身ですぐ倒れちゃいそうで、ご飯も上手で服のセンスが変わってる、優しい部長さんなんですよ?
潔とはちょっと違うタイプの魔王だと思います。
言葉遣いは「それは僕の獲物だ」とか言いますけど「沈んでイッてろ泥船が」なんて言わないし。あ、でもプレー中は最近の凛ちゃんみたいに眼の色が真っ黒になったりします。
Q5.《灼熱カバディ》未読者にお聞きします。宵越竜哉の本気エフェクト(潔のパズル、凪の骸骨みたいな)はどれだと思う?
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