サトシと翼の王   作:ヴィット

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■■の日記

 

 1956年2月8日。かいのカセキからポケモンの復元に成功。このポケモンにオムナイトと名付ける。

 

 1956年2月19日。私の娘アイがオムナイトを欲しがっていた。誕生日プレゼントとしてこのポケモンの繁殖実験を行うことにした。

 

 1956年2月23日。オムナイトとメタモンの間にタマゴができる。

 

 1956年2月25日。タマゴからオムナイトが誕生。

 

 1956年3月1日。アイの誕生日になった。約束通り、アイにオムナイトをプレゼントする。アイはとても喜んでいた。

 

 1956年3月8日。アイは死んだ。

 

 

 

 

 

 

 1961年6月9日。私はアイを蘇らせることを決意する。ポケモンの遺伝子を何年も研究し続けてきた私ならそれが可能なはずだ。

 

 1961年7月15日。妻が指輪を置いて逃げてしまった。アイは死んだだの、死んだ人間は生き返らないだの、ふざけたことを言う女だ。そんな妄言ごときに私の決意が揺らぐことなど無い。

 

 1961年7月21日。新しく助手を雇うことにした。若い研究員で名前はサカキという。彼は頭が良く、将来の夢は「最強のポケモンを自らの手で作る」ことだという。私の目的さえ邪魔しなければなんでもいい。

 

 1961年7月24日。思っていた以上にサカキは優秀だった。彼のお陰でこうらのカセキからポケモンの復元に成功した。このポケモンにカブトという名前を付けた。遺伝子研究は予想以上に進みそうだ。

 

 1961年7月29日。おつきみ山からひみつのコハクを取り寄せた。膨大な金額を払うことになったが、それ以上に新たな遺伝子情報のデータを得られたのが大きい。このカセキからポケモンを復元できれば研究が大幅に進むだろう。

 

 1961年8月30日。思っていた以上に研究が難航している。遺伝子情報からして飛行タイプのポケモンの様だが、まともな生物の復元に至っていない。何がいけなかったのだろうか?

 

 1961年9月2日。サカキの提案により、カイリューの遺伝子データを使ってみる。生命力の強さと同じ飛行タイプのポケモンなら、コハクから復元することが可能ではないかと彼が言っていたからだ。しかしネックなのはカイリューの遺伝子情報をどうやって手に入れられるかだが……。

 

 1961年9月8日。ジョウト地方のフスベシティに赴き、カイリューの遺伝子情報を解析して貰うことにした。既に手続きは済ませてある。急いで旅の準備をしなくては。

 

 1961年9月23日。何の成果も得られなかった。何なんだ、あそこの長は! ポケモンの心だと? 馬鹿々々しい……。

 

 1961年9月24日。かなり遠出にはなるが、イッシュ地方のソウリュウシティに行くことにした。前のやらかしをふまえ、ポケモンの医療の為だとか誤魔化せば何とかなる筈だ……。

 

 1961年10月21日、作戦は大成功だった。あの老いぼれジムリーダーは私の話を信じたので、美味いこと遺伝子情報を得ることに成功した。これで更に研究が進む。アイの復活はまだ先だが、希望が大きくなった。

 

 1961年11月1日、ロータの町の近くにある「世界のはじまりの樹」という場所にミュウの化石が発見されたという話があった。しかし私はそんな与太話を信じることができない。あれは目撃情報も実在性も無い、幻のポケモンと呼ばれる人間の妄想だ。

 

 1961年11月13日、失敗した。ひみつのコハクからポケモンを復元すること自体は成功したが、どう考えても本来の姿とは何もかも違う。あれでは現代種と何一つ変わらない……。

 

 1961年11月14日、復元されたポケモンは気性が荒く、とても飼い慣らせるような存在ではない。グランパキャニオンの地下空洞に捨てるしかないだろう……。

 

 1961年11月18日、サカキが裏切った。何故だ。私の研究にあれだけ熱心に取り組んでいたというのに、彼は研究データを持ち去ってしまった。……そういえばあいつは散々ミュウの化石についてとやかく言っていたような気がするが、まさかそれか? よくもまあ下らんことに関心を持ったものだ。

 

 1961年11月24日、どうやらサカキはロケット団という犯罪組織に入ったらしい。そして私から盗んだ研究データを手土産に幹部になったそうだ。……怒りを通り越して呆れてモノが言えない。

 

 1961年12月18日、色んな場所からカセキを収集し、遺伝子情報を得た。しかし私の望みを叶えてくれるデータは未だに見つかっていない。

 

 1962年1月4日。遺伝子研究を行っている私の下に一人の記者がやって来た。月刊オーカルチャーなるオカルト雑誌のネタを探す為の取材らしいが……。胡散臭いことこの上なく、お帰り頂いた。時間泥棒とは正にああいう奴のことだ。

 

 1962年1月5日。懲りずに昨日の記者がやって来た。そして記事の内容を見てくれとしつこく話しかけてくる始末。試しに読んでみればロボットだの兵器だの、訳の分からない話ばかりでうんざりだ。何でもバイオレットブックなる本から得た情報だというが、私にはとても信じられるようなものではない。

 

 1962年1月6日。昨日のオーカルチャーの記者の話で少し思い出したことがある。バイオレットブックなる本はパルデア地方のエリアゼロに関する記述が多かった。「ポケモンではない何か」に襲われたという情報があったが、少なくともミュウよりは幾分信用できる話だ。調査しに行く価値はあるだろう。

 

 1962年1月27日。エリアゼロの調査をパルデア地方のリーグ協会に頼んではいるが、奴らは融通が利かない。こちらは時間が無いというのに……。

 

 1962年3月4日。やっと許可を得られた。何でもフトゥーなる若者が私に話があるらしく、直ぐにでも共同研究がしたいとのこと。未来のポケモンについて興味があるとのことだが、私にはどうでもいいことだ。

 

 1962年3月18日。素晴らしい話が聞けた。テラスタル結晶は離れた時空を繋げることができるという。フトゥーはパルデアの大穴というパワースポットからバイオレットエネルギーを抽出し、テラスタル結晶に注いでいるとのこと。それで未来からポケモンを呼び出すことができると話していた。……これは使えるのではないか?

 

 1962年3月19日。過去からポケモンを呼び出す為には「スカーレットエネルギーが蓄積されたパワースポット」が必要だという。しかしパルデア地方にはそんな場所は無いとのこと。このことについてもう少し学ぶ必要がでてきた。

 

 1962年3月30日。カントー地方に帰還。パワースポットを探すことに専念する。

 

 1962年5月13日。素晴らしい。このカントーにもスカーレットエネルギーが六ヶ所も見つかった。だが残念なことにおつきみ山と発電所近くは人の目があり、テラスタル結晶を使った実験が行えない。よって四ヶ所で行うことにする。

 

 1962年5月20日。ふたご島で実験を開始。テラスタル結晶は成長・拡大していった。スカーレットエネルギーの無い場所だと縮小してしまうが、幸いにもパワースポットのある空間は広い。

 

 1962年5月21日。結晶の力によってオムナイトが出現した。素晴らしい成果だ。

 

 1962年5月22日。パワースポットをポケモンの技を使って封鎖。これでしばらくは人の目に触れることは無いだろう。

 

 1962年6月1日。マサラタウンの近くにある空間で実験。今度はバサギリが出現した。捕獲し、他の研究員に譲渡する予定だ。それにしても、目当てのポケモンが現れる気配が無い。他のパワースポットに賭けてみるか?

 

 1962年6月19日。ハナダシティ近くの洞窟で3回目の実験をした。出現したポケモンはユンゲラーやゴーリキーといった強力なポケモンばかり。カントー地方には生息していないであろうソーナンスまで現れた。だがどれもこれもが私が望んでいるポケモンではない。……もう後はディグダの穴に賭けるしかない。

 

 何なんだ、あのポケモンは。あんなものはレアコイルなどではない。巨大な身体に歪な手足。あれはまるで砂の毛皮だ。

 

 

 

 

 

 

 1968年9月。長い間、日記を書くことを忘れていた。あのポケモンは似ても似つかぬ凶暴な気性故に、あの結晶だらけの空間に閉じ込めておく。

 

 1968年10月。テラスタル結晶に関する実験結果を全て焼却。こんなことならパルデア地方なんかに行くべきでは無かった。

 

 1968年12月16日。ロケット団の連中が私に元にやって来た。何でも強いポケモンを入手したという噂を聞いたらしい。しかしあの化け物に関する話などする気にはなれず、白を切ることにした。悪く思うな、人類の手には負えないポケモンだ。

 

 1969年2月2日。研究から手を退くことにした。あの女は別の男と再婚したらしく、もう私の下へ戻ってくることなど無い。……それでいい。

 

 1969年2月5日。シオンタウンに帰郷。かつて使っていた研究施設を改装し、住居として使うことに決めた。コンパンなど虫タイプのポケモンが勝手に棲みついていたが、サファリゾーンに全て送った。

 

 1969年2月6日。傷ついたカラカラの治療を行う。どうやら野生のポケモンであり、何故かこの町へと逃げ延びた様だ。最初は助ける気など起こらなかったが、

 

 1969年2月8日。カラカラは私に懐いたらしく、しばらくの間は屋敷の中に住まわせることにした。まあ留守番くらいはできるだろう。

 

 1969年2月14日。ロケット団の連中がカラカラの骨を奪うべく、この町にやって来た。過去に捕まえていたポケモンたちは全て逃がしたため、戦えるポケモンはカラカラしかいなかった。……幸いなことに奴等は弱かったが、またカラカラは大怪我を負った。

 

 1969年2月15日。カラカラの治療に成功。かいふくのくすりを使ったがそれだけでは治せなかったので、ポケモンセンターの女医の指示に従って行動した。やはり専門知識を持っている者は侮れない。

 

 1969年2月19日。ガラガラに進化。私たちはお祝いパーティを開いた。

 

 1969年2月26日。ガラガラはシオンタウンで頼られる人気者となりつつあった。子どもを助けたり、率先して建設作業を手伝ったり、できることなら色んなことをする性格の様だ。

 

 1969年3月2日。ガラガラがロケット団に殺された。墓はアイの隣に建てた。

 

 

 

 

 

 

 1974年3月8日。アイとガラガラの前で新たな決意をした。シオンタウンを誇れる町にしたい。

 

 1974年4月10日。次期町長を決める為の選挙に参加。対立候補は名家出身の男であり、私よりもかなり年下だ。奴は都市計画を公表している様だが、そんな実現しないものに憧れる住民は少ない。

 

 1974年5月8日。シオンタウンの町長に就任。公約通り、ポケモンの共同墓地の新設を計画。幸いなことに市民からの反発は無かった。

 

 1974年5月12日。予想以上の支持を得て、計画の変更を行うこととなった。共同墓地改め、ポケモンタワーの建設に着手する。

 

 1974年8月30日。金持ちの男がこの町に引っ越してきた。金になる仕事なら何でもやろうとするらしい。私は一抹の不安を覚えながらも、ポケモンタワーの建設計画を進める。

 

 1974年9月2日。やはりあの男は危険だ。ジョウト地方のコガネシティにあったラジオ塔をこの町に建てようとしている様だった。自費でなら反対はしなかったが、愚かなことにこの町の予算を我らに出させようと企んでいる。ふざけた話だ。

 

 1974年10月2日。汚職の冤罪を被せられ、町長を辞めさせられた。どうやら名家の男と金持ちが手を組んだらしい。シオンタウンで悪評が広まっているため、故郷を離れることになった。

 

 

 

 1976年2月17日。私を裏切ったサカキが訪ねて来た。ガラガラの恨みがある為、最初は追い返そうとした。しかし再び町長に返り咲くチャンスを与えると言われた途端、この老いぼれの心に欲が生まれた。ポケモンタワー建設のチャンスを逃したくない。

 

 1976年2月19日。ミュウツー製作に助力。悪事を働いて得た金で研究を行っていた様だ。最強のポケモンで世界征服でもしたいのだろうか? そうサカキに尋ねた。返事は無かった。

 

 1976年3月4日。幻のミュウは実在していたらしい。「世界のはじまりの樹」とやらで実際に生きているという記録があった。恐らくサカキは毛髪か何かを採取した様だ。

 

 1977年2月6日。ミュウツーが誕生した。それまでこの研究から離れられず、暗い地下で机と向き合う日々。そんなつまらない人生から逃れるべく、人生最後の実験を終わらせる。

 

 1977年9月1日。ミュウツーに「人間を恨んでいるか」という質問を投げた。すると意外なことに「自分を兵器として利用する人間が嫌い」という返事が返って来た。いつかロケット団は壊滅するだろう。

 

 1977年9月2日。実験は終了した。私はトキワシティから去り、シオンタウンに帰る。私を陥れた連中はサカキの手によって投獄されているとのこと。……やはりあの男を敵に回してはならない。

 

 1977年9月9日。再び町長として仕事をすることになった。中止になっていたポケモンタワーの建設に再び取り掛かる。

 

 1978年8月16日。長い時間をかけてポケモンタワーの建設は完了した。悪事に手を染めてしまったが、結果的に死んでいったポケモンたちを埋葬するための場所はできあがった。……ガラガラは救われたのだろうか?

 

 

 

 

 1996年4月22日。肺癌を患っていることが発覚。いつ死んでもおかしくない。

 

 1996年5月1日。もうすぐ私は死ぬだろう。唯一の気がかりはミュウツーのことだ。ロケット団は未だ健在。あのポケモンは軍事兵器として利用されているに違いない。願わくば、善人がミュウツーを救ってくれることを願う。

 

 1996年5月17日。クチバシティのジムリーダー、マチスがあのポケモンを捕獲。事実は小説より奇なり。

 

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